錬鉄の英雄 プリズマ☆シロウ   作:gurenn

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今回は色々悩みました。
それでは、どうぞ。


神話の景色

【士郎視点】

 

「なに……あれ……なんなの!? なにが起きてるのっ!? バゼットさんが、死んっ……」

 

イリヤの悲鳴が周囲に木霊する。無数の剣に全身を貫かれたバゼットが地面に落下していく。全員が身動き1つ取れない。そんな俺達の耳に響く雄叫び。それと同時に黒い泥から、さらに剣が……

 

敵が呼び出した物である事は明白だった。さっきクロの攻撃を防いだあの巨大な盾も、ああやって呼び出したのか。あの強度、もしかして……あれが全部? その事に思い当たり、俺は戦慄する。

 

「刺創……8ヵ所……うち、致命は腹部の二創」

 

その時、バゼットの弱々しい声が聞こえてきた。まだ生きてる。その事に安堵した瞬間、宙に浮いていた無数の剣のうちの1つが凄まじい速度で、動けないでいるバゼットを目掛けて飛んでいく。

 

「バゼッ……!」

 

イリヤの悲鳴にも似た叫びは間に合わなかった。その剣は狙い過たず、バゼットの左胸を貫いた。

 

「心臓を……! あれはもう……!」

 

遠坂の言葉通り、あれはもう助からない。そんな風に思った時、バゼットの小さな声が聞こえた。

 

「条件……完了……!」

 

「なっ!?」

 

完全に死んだと思われていたバゼットが、何事もなかったかのように動き出した。凄まじい速度で敵に向かって突進し、その首を掴んで壁に叩き付ける。その非常識な光景に、俺達は唖然とする。

 

「嘘!? 心臓貫かれたのにどうして!?」

 

「蘇生……」

 

「え!?」

 

「あれは蘇生のルーンよ。あのバサカ女、ホント生意気ね。多分心停止した瞬間に、蘇生のルーンを発動したんだわ。私も同じ事できるけど、1つ間違えれば本当に死んじゃうからやらないのに」

 

「そんなの、宝具クラスの魔術(きせき)じゃない!」

 

「だから、生意気だって言ってるのよ。あの女、正真正銘のバーサーカー女だったって事ね……」

 

クロの解説に、遠坂もルヴィアも驚愕する。あの魔術は、それだけの高等魔術だって事か。そんな俺達の眼前で、その魔術の使い手であるバゼットは敵に拳の乱打を浴びせる。だが、それでも……

 

「くっ!」

 

敵は殴っても殴っても、損傷が即座に再生する。莫大な黒い魔力が、敵に無限の修復力を与えているようだった。加えて、周囲の黒い泥から無造作に現れる無数の剣が、バゼットを遠ざけていく。

 

いや、剣だけじゃない。その泥から現れるのは、様々な種類の武具。槍、斧、槌、杖、そして盾。それらの武具は、攻撃力も防御力も普通の武具を超えている。それが意味する事は、たった1つ。

 

「でも、ムリだわ。いくらバゼットが英霊じみた力を持っていても絶対に敵いっこないわ……」

 

「え? どういう……!?」

 

そう。クロの言う通りだ。何故なら、アレは……

 

「なんの冗談って感じ。アレがなにか分かる?」

 

「アレは、宝具だ。あの無数の武具が全部……」

 

クロの言葉を引き継いで、俺はその驚愕の事実を皆に告げる。あまりにも残酷で、絶望の事実を。あの敵が使う全ての武具が、英霊の切り札である宝具なんだ。俺の言葉を聞いた全員が声を失う。

 

「宝具!? あの1つ1つが、エクスカリバーやゲイ・ボルクのような宝具だと言うんですか!」

 

『そんな、あり得ません! 英霊が持つ己が伝説を象徴する武具が宝具なんですよ? それは原則として1人に1つ……多くとも3つの筈です! それを、あのように無数に持つ英霊など……!』

 

美遊の驚愕の声が響く。そして、俺の言葉を否定するサファイア。だがサファイアは、言葉の途中でなにかに気付いたように、俺の方を見てくる。そう。無数の宝具を持つ英霊は他にもいるんだ。

 

「こっちにも攻撃が来ますわ!」

 

「ルッ、ルビー! 物理保護……」

 

「俺に任せろ」

 

「衛宮君……?」

 

無数の剣が俺達の方にもその矛先を向けてきた。それを見た俺は全員の前に出て、手を前に翳す。頼むアーチャー。今こそお前の力を貸してくれ。そう心の中で念じると、イメージが流れてきた。

 

そのイメージに従い、俺は敵の無数の剣を見る。『視える』。視えるぞ。その剣の基本構造が、手に取るように解る。あとはその構造を、いつもの言葉(じゅもん)でなぞるだけ。俺は、静かにそれを告げた。

 

「―――【投影、開始(トレース・オン)】」

 

向かってくる無数の剣と同じ剣を投影して、敵の剣にぶつける。俺の投影した剣は少しだけ強度が落ちるから、ぶつかった瞬間に砕け散る。だが、敵の剣もその勢いを失って、全て弾かれていく。

 

「っ……!?」

 

だけどその瞬間、全身に妙な感覚が走った。寒気にも似たその感覚はすぐに収まったが、俺の中のなにかが警告を発している。この感覚はやはり。頭の中に昨夜のアーチャーの言葉が甦ってきた。

 

『お前は元に戻れなくなる。元に戻れなく……』

 

俺が俺でなくなっていく感覚。どうやら、本当に俺の存在は限界に近付いているようだ。少し制限を緩めただけでこれか。アーチャーが焦っているような感覚も感じる。だけど俺は、止まらない。

 

「皆は脱出するんだ」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「皆はって……アンタはどうするのよ!」

 

「そうです。まさか残るつもりじゃ……」

 

「無茶ですわ!」

 

「無茶じゃないさ。今見ただろ? あいつに対抗できる能力が、アーチャーにはある。あの無数の宝具に対処できるのは俺だけだ。でも皆がいると俺は攻撃に集中できないんだ。分かるだろ?」

 

「それは……確かにそうだけど!」

 

「時間がない。早く脱出するんだ」

 

「こら、待ちなさい衛宮君!」

 

これ以上話していると、バゼットが死んでしまうと判断した俺は説得を中断する。遠坂の怒鳴り声が耳に届くけど、振り返っている暇もない。視線の先のバゼットの姿を見つめて、足を早める。

 

…………………………………………………………

【イリヤ視点】

 

「っとにもう! あの時から、全然変わってないじゃないの、アイツは! 戻ってきなさいよ!」

 

凛さんの怒鳴り声が周囲に響く。でもお兄ちゃんはこっちを振り向いてくれなかった。ただ一直線にバゼットさんの元に向かって走っていく。その後ろ姿に、私は無意識に右手を伸ばしていた。

 

なんだかお兄ちゃんが遠くへ行ってしまうような気がしたんだ。このまま、2度と会えなくなってしまうような気がして、その事があの恐ろしい敵よりも怖かった。私の大好きなお兄ちゃんが……

 

それは、不思議な確信だった。私がそんな恐怖を感じている横では、凛さん達の話が続いている。

 

「どうするんですの!?」

 

「どうするもこうするも、あの馬鹿を連れて撤退するしか道はないでしょうが! 今の私達じゃ、どうやってもあの化物を倒す手段がないんだし」

 

「そんな事言ってる暇もないわよ! お兄ちゃんを置いてく事もできないけど、この宝具の雨! いい加減、私1人じゃ捌き切れないんだけど! 私は矢避けの加護があるけど、あんた達は……」

 

「士郎さんとバゼットさん、それに私達の方にも同時にこれだけの数の宝具を撃ってくるなんて」

 

『本当にとんでもない英霊ですね、アレ!』

 

『……士郎様……』

 

敵はお兄ちゃん達への攻撃と同時に、私達の事も攻撃してきている。クロが前に立ってそれらを槍で弾いてくれているけど、数が多すぎる。クロの言葉からクロだけならまだ大丈夫そうだけど……

 

私達全員を守る事は、難しいみたい。クロの言葉と状況から、凛さんもそれを理解したみたいだ。悔しそうに唇を噛んで、なにかを考え込んでる。もしかして、お兄ちゃんを置いて脱出するの?

 

嫌だ。そんなの、絶対に嫌だ。お兄ちゃんっ!

 

『皆様、ここは士郎様の言う通りにしましょう』

 

「「「っ!?」」」

 

そう私が心の中で叫んだ時、サファイアのそんな声が聞こえてきた。なに言ってるのサファイア。お兄ちゃんの言う通りにする? ……それって、お兄ちゃんを置いて脱出するって事なの……?

 

『士郎様の仰った通り、あの敵に対抗できる能力がアーチャーにはあるようです。私達がこの場に残っていては、士郎様が戦いに集中できない事も事実でしょう。ならば、私達は邪魔でしかない』

 

「だけど!」

 

『それとも、ここに残って全滅しますか?』

 

「サファイア? 一体どうしたの……?」

 

『……美遊様、申し訳ありません。ですが……』

 

「ちょっと! ホントに、もう限界だってば! 脱出するならするで、早くしてよね! これ以上は守りきれないわよ! 一体どうするのよ!?」

 

サファイアらしくない言葉に美遊が質問しようとするけど、クロの怒声に遮られる。その声にクロの方を見てみると、クロは私達のすぐ前で懸命に敵の攻撃を防いでいた。本当に限界みたいだ。

 

「ああーっ、もう! 一旦脱出するわよ!」

 

「美遊!」

 

「……っ!」

 

クロの悲鳴にも似た叫び。それを聞いた美遊は、唇を噛み締めてからサファイアを掲げた。私達のすぐ下の地面にいつもの魔法陣が浮かび上がる。あと数秒で私達は鏡面界から脱出する。でも……

 

私は、もう一度お兄ちゃんの後ろ姿を見つめる。お兄ちゃんの事は、信じてる。お兄ちゃんなら、きっとなんとかしてくれると思ってる。だけど、さっき感じた不安はまったく消えてくれない。

 

だからだと思う。この時、足が前に出たのは。

 

…………………………………………………………

【士郎視点】

 

敵の無数の剣を躱すだけで精一杯、という様子のバゼットは、中々それを掻い潜って接近する事ができないようだ。そんな事を考える俺に向かい、再び無数の剣が襲い掛かってくる。無駄だ……

 

「―――【投影、開始(トレース・オン)】」

 

視える。俺は再びその剣を全て投影して、敵の剣にぶつける。その結果は、さっきと同じだ。俺が投影した偽物の剣は全て砕け散り、敵の剣は勢いを失い弾かれていく。俺はその横を駆け抜けた。

 

再び奇妙な感覚に襲われても足を止めない。ただ真っ直ぐに進んで、バゼットとの距離を縮める。イリヤ達は無事に脱出しただろうか、と少し意識を後ろに向けてみると、微かな声が聞こえた。

 

離界(ジャンプ)!」

 

今のは美遊の声だ。良かった。どうやらちゃんと脱出してくれたようだ。あとは、俺達であの怪物を倒すだけだ。ただ1つの心配が片付いた俺は、心の中で安堵しながらバゼットの横に辿り着く。

 

「大丈夫か?」

 

「……何故貴方は残ったのですか?」

 

「話してる暇はないから手短に言う。アーチャーの能力であの宝具を防ぐ。だから、その隙にお前が倒してくれ。お前ならそれができるだろ?」

 

「……」

 

「躱したりする必要はない。真っ直ぐに突っ込んでくれ。奴の剣は、俺が必ず防いでみせるから」

 

「……良いでしょう」

 

オオオアアアッ!

 

俺とバゼットが作戦を決めた瞬間、凄まじい咆哮が空間に響き渡る。その叫びに、俺達は弾かれたように同時に顔を向ける。するとそこには今までの比ではない程の数の剣を従えている敵がいた。

 

「……まるで剣の壁ですね」

 

「約束通り全部防ぐ。だから……突っ込め!」

 

「……任せます」

 

そう言ってバゼットが飛び出すと同時に、一斉に剣がバゼットを串刺しにしようと放たれた。

 

「―――【投影、開始(トレース・オン)】」

 

だが、当然そんな事はさせない。俺は三度全ての剣を投影して、剣の壁にぶつけた。今までと比較にならない程の数の投影は少し大変だったけど、なんとかなった。アーチャーの助力のお陰だな。

 

『おい、衛宮士郎! それ以上投影はするな!』

 

その時、頭の中でアーチャーの焦ったような声が響いたけど、それに俺は心の中で一言謝るだけで終わらせる。すまないな、アーチャー。そして、本当にありがとう。だけど、止まれないんだ。

 

バゼットの後を追って走りながら、さらに追加で射出されてくる無数の剣を投影して、迎撃する。その度に、俺はどんどん強くなる感覚に耐える。剣を投影する度に、俺が俺でなくなっていく。

 

『オレの経験値を、吸収しているな? 本当に、これ以上続ければ衛宮士郎に戻れなくなるぞ!』

 

俺の存在が、アーチャーに近付いていく。だから前は一方通行だった力の制限に、俺の方から干渉できるようになっているんだ。現にさっきから、アーチャーは力の制限を元に戻そうとしている。

 

だけど、俺がそれを拒否している。アーチャーがさっきから頭の中で怒鳴っているのはその為だ。

 

『おい、聞いているのか衛宮士郎!』

 

『すまない。でも、駄目なんだ』

 

『何故だ? お前の大切な妹達とやらは、すでにこの空間から脱出したのだろう? ならば……』

 

『ああ、だけど……あの敵を倒さないと、結局は同じ事なんだ。態勢を立て直して、また戦わないといけなくなる。それじゃ、意味がないんだよ』

 

頭の中でアーチャーとそんな会話をしながらも、俺は絶え間なく射出される宝具を迎撃し続ける。少しでも気を抜いたら、あの無数の剣がバゼットの体を串刺しにするだろう。それはさせない。

 

あと少し。ほんの10メートル程の距離が絶望的に遠い。宝具の射出は、前方からだけじゃない。地面に侵食してる黒い泥から、無限に湧き出してくる。それら全てを迎撃するのは、骨が折れる。

 

少しでも投影の手を緩めれば、確実に防げない。いや、この近距離ではもう、投影が間に合わなくなってきている。射出された剣が目に映ると同時に投影してるんだが、それでもなお遅かった。

 

「―――【投影(トレー)……ちっ!」

 

駄目だ、間に合わない。瞬時にそう判断した俺は投影を中断し、なんとか2本だけ作れた剣を手に前にジャンプした。バゼットの頭上を飛び越え、その前に降り立った。そして、迫る剣を弾く。

 

「―――【投影、開始(トレース・オン)】!」

 

手にした2本の剣で迫っていた剣をなんとか払いのける事に成功。その間に、ギリギリ次の投影を間に合わせる。弾いた剣が腕や足を掠めて裂傷ができても気にせずに、次の剣にぶつけて防いだ。

 

「うおおおっ!」

 

もう頭で考える暇もなくなった。次から次に射出される剣を手にした剣と投影で弾きながら、前に進んでいく。魔術回路に休む事なく魔力を流し、自分の体の事も気にせずに、ただ前へと進む。

 

その時、周囲の全てがゆっくりになった。そして頭の中に知らない映像が浮かんできた。その映像は投影をする度に、鮮明に浮かび上がってくる。これはもしかすると、アーチャーの記憶か……?

 

見覚えがある街並み。見覚えがある人達。なぜ、アーチャーの記憶にこんな景色が? そう思うと同時に映像が切り替わる。赤い宝石の首飾り? これは知らない。また映像が切り替わった……

 

どこかの工場? 燃えている。そして目の前に、青白い光が見えた。なんだこれ? と思う前に、またも映像が切り替わる。今度はなんだ? 裁判の法廷か? 周囲の人間達が、なにか言ってる。

 

その声は聞こえない。だけど、俺は唇を無意識に噛み締める。また映像が切り替わった。次の映像を見た俺は、全てを理解した。何故なら、それは絞首台だったからだ。この光景は知っている。

 

アーチャーの事を、夢に見た時に。夢だった為に記憶から薄れていた事が鮮明に甦る。アーチャーがどんな最後を迎え、その後どうなったのかが。すると彼の記憶までも俺の中に流れ込んでくる。

 

そして、俺は今度こそ全てを理解した。何故俺が彼の力を使えたのかという事も。いつだったか、遠坂が英霊について、さらに詳しく語ってくれた事があった。英霊とは、過去の英雄。けれど……

 

非常に低い確率ではあるけど、今の神秘の薄れた時代でもその域に辿り着ける存在もいるという。いや、アーチャーはそれとも違ったみたいだが。けれど、現在でも『それ』になる者はいる……

 

アーチャーは、そういった非常に稀な英霊だったらしい。それを理解した瞬間、時間が元の速さを取り戻した。さっきまでとのその時間感覚の差がいきなり襲い掛かって、俺の感覚を狂わせる。

 

「しまっ……!」

 

いつの間にか敵の目の前にいた俺は、至近距離で射出された槍を防げない。俺の額に迫るその槍を呆然と見つめながら、避けられない死を覚悟した時だった。なにかが飛来して、槍を弾いたのは。

 

「え……」

 

「間一髪……」

 

後ろを振り向くと、なにかを投擲したような格好をしているクロが遠くにいた。どうやら、さっき飛来したなにかは、クロの槍だったらしい。それが俺の額に刺さる寸前だった槍を弾いたようだ。

 

それを理解した瞬間、目の前の敵の手足を星形の光が拘束した。今度はなんだと思った俺の耳に、もう脱出したと思っていた、もう1人の妹の声が聞こえてきた。二人とも、まだ残っていたのか。

 

「バゼットさん、お願い!」

 

「……お互い、まさかあの子供二人に助けられるとは思っていませんでしたね。ですが……」

 

イリヤの声に応えるように、バゼットは俺の前に出て左手を振りかぶる。そしてクロと同じようにルーン魔術を重ね掛けし、敵の心臓(カード)を抉り出す。よし、決まった! 幾らなんでも、これなら……

 

そう思った俺は、バゼットの左手にある、最後のカードを見た。こいつのクラスは一体……え? そこに記されていたクラスに、俺は固まる。その瞬間、敵が微かな呻き声を上げた。まさか……?

 

グアアアアアッ!

 

「そんなっ!?」

 

「馬鹿な!? カードを抉り出されてなお……」

 

「動けるのかよ!」

 

俺達の驚愕する声が響く。敵の体を再び黒い霧が包み込んで、周囲に凄まじい魔力を撒き散らす。バゼットが開けた胸の穴は塞がらず、その中心にカードが浮かんでる。なんなんだ、こいつは。

 

戦慄して固まる俺達の耳に、それは聴こえた。

 

『セイ……ハ……イ……』

 

だが、その言葉の意味を考える間もなく、最後に現れたその剣は……奴が足元の黒い泥から出したその剣は。誰よりも俺を恐怖させた。アーチャーの眼でも、まったくその構造が読み取れない。

 

な、なんだあれは……イリヤ達が慌てて動く姿を横目で見ながらも、俺は一ミリも動けなかった。きっとこの場にいる誰よりも、俺は一目でその剣の恐ろしさを、理解してしまったのだろう……

 

凄まじい魔力と衝撃が空間を満たし、空と大地が割れていく。それはまさに世界の終わりの光景。一歩も動けない俺をバゼットが抱えてイリヤ達の元に急ぐ中、俺はその光景をただ見つめていた。

 

イリヤ達の声が聞こえるが、なにを言ってるのか分からない。だが、1つだけ分かった事がある。あの剣を出されてしまったら、どうしようもないという事。俺は嫌でもそう悟らされてしまった。

 

「行くよ! 離界(ジャンプ)!」

 

イリヤのその声を最後に、目の前に現れた神話の景色は俺達の前から消え去っていくのだった……




アーチャーの助力は、無限の剣製ではなく剣の構造を瞬時に読み取って投影するという物でした。
つまり、剣製の前段階。
UBWのギル戦の初期の状態です。
今の状態で無限の剣製使っちゃうと、士郎が危ないとアーチャーが思ったからです。
まあ、その段階でも危なかったんですが。
もう今回で、かなりの所まで行きましたしね。

いよいよ最終も最終。
果たして士郎はどうなってしまうのか。
次回もお楽しみに。
感想待ってます。

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