錬鉄の英雄 プリズマ☆シロウ   作:gurenn

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今回はほとんど原作と同じです。
それでは、どうぞ。


現れた『モノ』

【士郎視点】

 

「衛宮君、イリヤ、クロ!」

 

元の空間(せかい)に戻ってきた俺達の耳に最初に聞こえてきたのは遠坂の声だった。どうやら、敵が出した最後の剣の攻撃から辛うじて逃げ延びる事に成功したようだ。その実感を感じ、俺達は息を吐く。

 

「だ……脱出、できた……?」

 

『いやはやー、間一髪でしたね』

 

「なんだったの、アレ……」

 

「本気で死ぬかと思ったな……」

 

「この、バカ兄妹! なんでアンタ達は、揃って周りを心配させるのよ! 特に衛宮君! アンタはホントに反省しなさい! バーサーカーの時の事をまったく反省してなかったみたいだから!」

 

「イリヤスフィールもですわ。美遊のジャンプの直前で抜け出すなんて。勿論、一番悪いのは貴女にそんな行動をさせた士郎(シェロ)ですけども。遠坂凛に賛同するのは非常に癪ですが、反省なさい!」

 

だが、命からがら逃げ延びた先にはあかいあくまとあおいあくまが待ち構えていた。二人は揃って俺の両脇に立って、俺を責め立てた。怖すぎる。二人の言う事は正論であるだけに反論できない。

 

ちなみに、クロが怒られなかったのはイリヤの後を追ったからだそうだ。イリヤが魔法陣から出る姿を見て、イリヤを無事に連れ戻す事を遠坂達に言い残していった事を考慮した結果なんだとか。

 

「わ、悪かった! 反省してる」

 

「ふん、ホントかしらね。まあ、全員無事だったみたいだからこれ以上は言わないであげるけど」

 

「いえ……どうやら、無事とも言い切れないようですわね? 一体、なにがあったんですの?」

 

今の状況もあって、俺への説教はここまでにしてくれた二人だけど、俺達の様子を見たルヴィアがその事情を聞いてきた。それに俺達は、お互いの顔を見合わせる。そして、バゼットが口を開く。

 

「地獄……いや、神話を見ました。とりあえず、現状で分かった事は2つだけ。あの英霊の正体は不明ですが、そのクラスは【アーチャー】です」

 

「2枚目のアーチャーですって!?」

 

そう。あの時バゼットがカードを抉り出した時にこの目で確認した。あれは間違いなくアーチャーのカードだった。その事実に、驚愕する遠坂達。そんな遠坂達に対し、バゼットはさらに続ける。

 

「そして、我々ではどうあっても勝ち目がない。最早カードを回収するのではなく、別の解決案を模索すべきだ。アレは、そういう『モノ』です」

 

「そんな……!」

 

「私も同感。正直、2度と戦うのはゴメンだわ」

 

「だからって、このまま放っておいたら……」

 

「とにかく1度協会に……」

 

誰もが、今日の戦いは終わったと思った。だってそうだろう。今まで、鏡面界の外に出てきた敵は1人もいなかったんだから。だからこそ、その音を聞いた時、誰もがなんの音か分からなかった。

 

それは、なにかが割れるような音だった。全員がその音に足を止め、音が聞こえてきた方を見た。

 

「なに!? なんの音!?」

 

「これは一体……!?」

 

「亀裂が広がって……割れていきます!」

 

「割れるって……なにがよ!?」

 

「なにが割れてるの!?」

 

「おいおい……これって、まさか!?」

 

次の瞬間、盛大な音と共に目の前の空間が割れ、そこから風が吹き出してきた。全員が、その光景に唖然として動けなくなる。そんな俺達の前で、空間の裂け目からなにかが現れた。それは……

 

『こんな事が……あり得るとは……』

 

アイツ(・・・)だ。この時、全員の思考が止まっていた。誰1人として、一歩も動けなかった。()鏡面界()を破った。ただそれだけの事実だけど、脳が理解を拒んでいた。この時、ただ1人動いたのは……

 

Zeicben(サイン)

 

ルヴィアだった。壁に手を付けながら、ルヴィアが魔術を起動する。その瞬間、その壁に埋め込まれていたらしい大量の宝石を光が繋いでいった。そして、その宝石は次々と連鎖爆発していく。

 

「なっ……!」

 

「爆発!?」

 

「まさか、最終手段を実界(こちら)で使う事になるとは」

 

「天井が……」

 

「崩れる!」

 

ルヴィア以外の全員が、驚きで固まる。ルヴィアが発動した魔術によって、大量の瓦礫が敵の頭上に降り注ぐ。ルヴィアの意図は、明らかだった。そんな俺の考えを肯定するように、彼女は叫ぶ。

 

「さあ、逃げますわよ! 生き埋めになるのは、あいつ1人だけで十分ですわ! 動きなさい!」

 

「階段じゃ間に合わない……イリヤ! 美遊! 私とルヴィアを引っ張って飛んで! 早く!」

 

「わ、分かった!」

 

「はい!」

 

ルヴィアの叱責に、ようやく俺達は我に返った。そしていち早く立ち直った遠坂が、イリヤと美遊に指示を出す。相変わらず、こういう時は頼りになる二人だ。そして、俺達英霊組はというと……

 

「で、私らは徒歩って訳ね」

 

「自力で逃げられるからな」

 

「……」

 

空を飛んで脱出しているイリヤ達の後を追って、階段を文字通り駆け上がっていく。内じゃなく、外の手すり部分をな。そんな俺達の下では、今もなお、大量の瓦礫が敵の頭上に降り注いでいた。

 

「想定外の事が起こりすぎてるわ! まさかあの敵が、こっちの世界に出てくるなんて……!」

 

「一体鏡面界(むこう)でなにがあったというの姉さん? まさか、敵も虚軸の移動手段を持っているの?」

 

「……いいえ、私達のやり方とはまるで違うようですよ。恐らくですが……敵が最後に使用した、奇妙な宝具。あの剣が、鏡面界(せかい)そのものを切り裂いたのではないかと思います。仮説ですけどね」

 

「そんな事ができる宝具って……」

 

ルビーの言葉を聞いた俺以外の全員が、その言葉に信じられないという顔をする。だが俺だけは、それに心の中で頷く。あれは、そういう規格外の代物だ。あの剣を見て、俺はそう確信していた。

 

「どんな宝具を持っていようと……そしてどんな英霊であろうと、160万トンのコンクリートと720万トンの地層に押し潰されれば―――!」

 

ルヴィアは自信満々にそう告げた。だが……

 

「ダメ……かもね……」

 

遠坂の声に、全員が後ろを振り向く。すると……

 

「いっ……!」

 

「今のは!?」

 

「黒いなにかが、飛び上がって……!」

 

美遊の言葉通り、黒い物体が一瞬で上空へ昇っていくのが見えた。あまりにも速すぎて、英霊の目でも捉えられなかった。続いて、なにかが地層を突き破る音が俺達の耳に響く。さっきの物体か?

 

「急いでイリヤ! 早く、地上へ!」

 

次々と起こる異常事態。遠坂が焦りに満ちた声でイリヤに指示する。俺達も階段の手すりを蹴る足に力を込めて、全速力で地上を目指す。みるみる縦穴の入口が迫ってくる。よし、もう少しだ!

 

「なんて事……!」

 

しかし、地上に出た俺達は、そこで絶望する光景を目撃した。それを見た遠坂が、呆然と呟く。

 

「敵が、市街地に出てしまった!」

 

「90メートルの地層を、いとも簡単に!?」

 

「幾つ宝具持ってるのよアイツ? あんな風に、後出しで秘密道具出されちゃ敵いっこないわ!」

 

敵が、乗り物の宝具を出したようだ。どうやら、あいつが持ってるのは武具だけじゃないらしい。クロの言う通り、あれでは勝てない。あいつより一歩早く、大量の武器を扱えれば、あるいは……

 

そんな事を考える俺の横では、遠坂が上空にいる敵を睨んで顔を焦りに歪ませていた。そして次にその口から発せられた言葉は、今の事態の深刻さを表す言葉だった。遠坂は、こう言ったんだ。

 

「このままじゃ最悪、街に被害が出てしまう!」

 

「なんとかならないのか!?」

 

その言葉に、思わず叫んでしまう。だけど、そう簡単に解決策が出てくる筈もない。まずバゼットが空中にいる相手では手出しはできないと言い、美遊が飛んで近付くと言えば、遠坂達が止める。

 

「危険すぎるわ。近付けても勝算はないのよ!」

 

「その通りですわ。わたくし達の全力は、なにも効かなかったのですから。忘れたんですの?」

 

「それは……」

 

『不用意に近付いた場合、宝具の投射を誘発するだけでしょうしね。もしもその内の一本でも街に落ちたら、それこそ取り返しがつきませんよ』

 

「で……でもだからって、このまま放っておく訳にはいかないよ! 一体どうすればいいの!?」

 

なんとかしたいのは全員同じ。だけど、その為の方法はなにも思い付かない。俺達の議論は答えが出ないまま、ただ焦りだけが増していく。やはり鏡面界で仕留めておくべきだったのだろうか。

 

「手詰まりよ! こんなの、どうしようも!」

 

ついに遠坂が右手で頭を押さえて、諦めの言葉を吐き出す。その言葉に全員が項垂れそうになったその時……俺達の耳に、予期せぬ声が聞こえた。そしてその声を聞いた俺は、心の底から驚いた。

 

何故ならば、その声に聞き覚えがあったからだ。

 

「―――豚の鳴き声がするわ」

 

「「「……は?」」」

 

「まったく。名家の魔術師二人に執行者が、雁首並べてピイピイと。恥ずかしくないのかしら?」

 

「なっ!? 貴女……!」

 

「どっ……どうしてここに……」

 

「華憐先生!?」

 

そう。そこにいたのは、穂群原学園が誇る変人。保険医の折手死亜(おるてしあ)華憐(かれん)先生だった。華憐先生は、なにやら奇妙な格好で俺達を見据えている。彼女の罵声に遠坂が反発したが、先生は涼しい顔だ。

 

「なによ、この無礼な女は! ちょっと衛宮君とイリヤ、知り合いなの!? 早く教えなさい!」

 

「いや、知り合いっていうか……」

 

「学校の保険の先生だよ、凛さん!」

 

「初めまして。折手死亜華憐と申します」

 

どうやら遠坂は先生の事を知らなかったようだ。俺とイリヤが教えると、先生は自分の名前が書かれた紙を広げて遠坂とルヴィアに見せた。それを見た二人は、胡散臭げな顔をする。当然だな……

 

「カレン・オルテンシア。聖堂教会所属。此度のカード回収作業のバックアップ兼、監視者です」

 

だけどその時、バゼットが驚愕の事実を語った。

 

「監視者!?」

 

「聖堂教会が絡んでるなんて聞いてないわよ!」

 

「保険の先生っていうのは、嘘だったの!?」

 

「嘘というか……趣味? 私は、怪我をした子供を間近で見るのが楽しくて……超ウケる」

 

ああ、いつか聞いたそれは嘘じゃなかったのか。できれば嘘であって欲しかった事実を、無表情で語る華憐先生に肩を落とす。だけど華憐先生は、そんな俺の微妙な気持ちを無視して淡々と語る。

 

「表立って動くつもりはなかったのですけれど。迷える子豚があまりに無様で可哀想だったから」

 

「なっ、なにを!」

 

(こたえ)を見つけるプロセスなんて決まっています。観察し、思考し、行動しなさい。簡単な事です。貴女方にできる事なんて、それだけでしょう?」

 

「……『祈りなさい』じゃないの? 教会の人間とは思えない言葉ね、この似非シスター」

 

「信仰のない者に、教えを説く気はないわ」

 

辛辣なやり取りだな。どうやら、遠坂と華憐先生は相性が悪いらしいな。となるとルヴィアもか。そう思って横を見てみると、案の定ルヴィアも、とても機嫌が悪そうな顔で華憐先生を見ていた。

 

とその時、そんな遠坂達の横で美遊が呟いた。

 

「……街に、明かりがありません」

 

「え?」

 

「点いているのは街灯だけで……建物の明かりはまったく見当たりません。明らかに不自然です」

 

「っ!? 言われてみれば、確かに……!」

 

美遊の言葉通り、幾ら今の時間が深夜とはいえ、一つも明かりがないのはおかしい。なにかいつもとは違った事が起きているのは間違いなかった。すると、そんな俺達の考えを先生は肯定した。

 

「正解よ。一キロ四方に、人避けと誘眠の結界を張ってあるわ。それが、私の仕事の一つだから。さあ、これでひとまず人目を気にする必要はなくなりましたね。では……次に見るべきは?」

 

はい、そこの日焼け少女、と華憐先生がクロの顔を指揮棒で差す。差されたクロは、日焼け違う、と一言文句を言ってから、その質問に答えた。

 

「あからさまな誘導が癪に障るわね。そんなの、決まってるでしょ? アイツをどうするかよ」

 

クロの言葉に、改めて上空の敵を見上げる。

 

「さっきから浮いてるだけで……結局なにもしてないよね。一体なにがしたいんだろうね、あれ」

 

「無差別攻撃をする意志はない、と……?」

 

「……まあ、そういう事に……」

 

ルヴィアの言葉に答えようとして、何故か遠坂は言葉を止めた。その反応の意味が分からなくて、遠坂に視線を送ってみるが反応なし。ならばと、声を掛けようとした時、華憐先生が口を開いた。

 

「なにか、アレの意志を推定できる情報は?」

 

「情報って言ったって……」

 

その問い掛けに、言葉を詰まらせる遠坂。すると俺の脳裏に、あの時の奴の言葉が甦ってきた。

 

「……奴は最後に、『セイハイ』って言ってた」

 

「っ!?」

 

「……なんだ。ならば、話は早いです。ほとんど答えは出ていたんじゃありませんか。それです」

 

「どういう……?」

 

「う、動いたよ!」

 

「どこへ行く気……!?」

 

「『セイハイ』、と言ったのでしょう? なら、決まっているではないですか。聖杯(・・)の眠る地……柳洞寺がある、円蔵山の(はらわた)。地下大空洞です」

 

円蔵山の地下大空洞って、あそこか。2ヶ月前にクロが生まれた、あの空洞。あそこに聖杯が? 初めて聞く情報に、俺達は驚く。なんで華憐先生はそんな事を知っているんだ? 彼女は一体……

 

「このままじゃ見失う! 敵を追います!」

 

「美遊、お待ちなさい!」

 

ルヴィアが制止するが、美遊は聞かなかった。

 

「私も……!」

 

「待てイリヤ!」

 

「お兄ちゃん、美遊を1人にしておけないよ!」

 

「それは……確かにそうだが!」

 

確かに、空を飛べるイリヤしか美遊を追い掛ける事はできない。美遊を1人にする事もできない。

 

「いい!? 追うだけよ! 私達が追い付くまで絶対に奴と交戦しちゃダメよ! 分かった!?」

 

「うん!」

 

悩む俺を押し退けて、遠坂が指示を出す。それを聞いたイリヤは頷いて、不安そうな顔をする俺を安心させるように笑って、美遊を追う。いつの間にかあんな表情をするようになっていたんだな。

 

…………………………………………………………

 

「そう……アインツベルンが10年前に起こした『願望器』降臨の儀式。今回の事件は、その残骸が原因だと私は思ってた。でも、それは違った。ママに確認したけど、聖杯戦争はもう終わった。少なくとも、クラスカードは私達(・・)の聖杯戦争にはまったくの無関係だったのよ。間違いないわ」

 

円蔵山を目指して進む車の中で、クロが俺達全員に聞かせるようにそう語る。その合間に俺の血の魔力を移した宝石で失った魔力を補給しながら。これは遠坂が用意してくれた物で、携帯できる。

 

血のままじゃ持ち運びに不便だからと。ちなみに魔力を移す為の空っぽの宝石は、ルヴィアが用意してくれた物だ。出世払いという条件で、な。

 

「聖杯戦争は10年前に不完全な形で終結した。聖杯は成る事はなく、その術式は半壊したまま。今も地下の大空洞の中に眠っている筈よ……」

 

「聖杯戦争がこの土地で起こったという事!? あり得ないわよ! それほど大掛かりな儀式を、冬木の管理者(セカンドオーナー)の遠坂に、知られる事なく……」

 

「知ってたんじゃない?」

 

「っ!?」

 

「なんらかの形で遠坂が関与していてもまったくおかしくはないわ……いずれにせよ、それはもう終わった事よ。問題は、今起こっている事……」

 

「……」

 

遠坂はまだ納得してない様子だが、今はその事を考えてる場合じゃないと思ったんだろう。すぐに表情を引き締めた。そして、目だけでクロに話の続きを促す。それを見たクロも、話を続けた。

 

「つまり、今起きている事に、アインツベルンの聖杯戦争は無関係という事になる。英霊の召喚にカードなんて使わなかったしね。となると可能性は一つしかないわ。もう予想がつくでしょ?」

 

丁寧にそう語って、ルヴィアに目を向けるクロ。その視線を受けたルヴィアは、静かに答えた。

 

「……つまり貴女は、こう言いたいのですね? アインツベルンの物とは別に……『もう一つの』聖杯戦争が存在する、と―――!」

 

「そういう事。さて、魔力の補給も終わったし、私は先に行かせて貰うわよ? 聖杯戦争となると私も気になるし、イリヤ達だけじゃ不安だしね」

 

「クロ……」

 

「私に任せて、お兄ちゃん」

 

「……頼んだ」

 

この時のクロの表情は、さっきのイリヤの表情と良く似ていた。車のドアを開けて、両足に加速のルーンを施すクロ。そして、車よりも遥かに速いスピードで目的地に向かって走り去っていった。

 

俺は、その後ろ姿をしばし見詰めた……

 

…………………………………………………………

【イリヤ視点】

 

「なっ!?」

 

「くっ!?」

 

私達は、目の前の光景に固まる。奇妙な乗り物で目的地に辿り着いた敵は、地面に向かって複数の宝具を射出した。その攻撃によって地面は大爆発を起こして消し飛んで、大穴が空いてしまった。

 

「こんなの……めちゃくちゃだよ!」

 

「地表が蒸発して……大空洞がむき出しに!」

 

だけど、それで終わりじゃなかった。敵はさらに宝具を取り出して、大穴の中に落ちていく。柄の先にも刃が付いた大きな剣。その剣を地面に突き立てて、大空洞の地下の地面を割ってしまう。

 

「地面が……割れて!?」

 

「地下に、なにか……!」

 

「そんな……どうして……」

 

「……美遊?」

 

どうしてここにあるの(・・・・・・・・・・)……!?」

 

クッ……ハハははハ破ハははハ覇ハ!

 

敵の笑い声が不気味に響き渡る。割れた地面の中にあった物に、私と美遊は驚いた。それは……

 

「魔法陣!? 大空洞の地下にこんな物が!?」

 

『途方もなく巨大で複雑な術式です! ですが、なにか……この術式、見覚えがあるような?』

 

横でルビーが良く分からない事を言ってるけど、私はそれを気にしてる暇はなかった。何故なら、その魔法陣の中心にいた敵が、なにかをし始めていたからだ。敵の体を巨大な渦が包み込んだ。

 

「……ねぇ、まずいよ……良く分かんないけど、多分……このままじゃ、大変な事になる!」

 

「イリヤ!?」

 

それを見て背筋を冷たくした私は、真っ直ぐに敵に突撃した。根拠はなにもない。だけど……

 

「手伝って美遊! 敵を魔法陣の外に出す!」

 

「っ!?」

 

『危険ですよ、イリヤさん! 絶対に交戦してはダメだと、凛さんにも言われたでしょう!』

 

「分かってる! ……でも!」

 

何故か、不思議な確信があった。今止めないと、きっと取り返しがつかないと。だから私は……

 

「【斬撃(シュナイデン)】!」

 

「最大出力! 【放射(シュート)】!」

 

私達の攻撃が、敵を包む渦に命中する。

 

「敵はッ!?」

 

「まだ……渦の中に!」

 

「でも、渦が晴れた! これなら直接……!」

 

「イリヤッ!?」

 

敵を押し出せる。そう確信した私は、ルビーを顔の前で横に構えて突撃する。直接体当たりして、あの魔法陣から出すんだ。一刻も早くこの儀式(・・)を止めなくちゃ! 私は無意識にそう思っていた。

 

早く、早く、早く! この時の私はとにかく必死だった。深く考えて行動してた訳じゃない。ただ自分の直感に従っていただけだった。そんな風に考える余裕もない中で、敵の体にぶつかった。

 

「んくっ……! んぎぎぎ……!」

 

もう少し、あと少しで……そう思った時、奇妙な感覚が私を襲った。えっ!? なに!? なにが起きたの!? 全身を駆け抜ける悪寒。これってもしかして、もう間に―――合わなかっ―――

 

「たは……?」

 

「あら?」

 

あれ? なにコレ? 目の前の光景に固まる。

 

「うやあああ!?」

 

だけど、勢いは止まる筈もない。私はそのまま、敵の体の向こう側に突き抜けて地面を転がった。

 

「なっ……なにが!? イリヤ!?」

 

「いっ……一体なにが起こったの!?」

 

転がった事で舞い散った土煙に咳き込みながら、私は現状を把握しようとして手を動かす。するとなにやら、柔らかい物に触れた。なんだろう?

 

「イッ……イリヤ……それ……ッ!」

 

「へっ?」

 

美遊の引き攣った声に、私はそれを見た。

 

「いったー……キミさぁ。もうちょっと、優しくしてくれないかなぁ。その左手の事も含めてね」

 

「―――ッ!?」

 

声にもならなかった。何故なら、私の下に全裸の金髪の男の子がいて、さっきから私の左手に触れていた柔らかい物の正体が、その男の子の股間にある物体だったからだ。そう、それは所謂……

 

「いやーッ!?」

 

「うわぁ、ちょっとちょっと! いきなりそれは酷くない!? ホントに危ないってば!?」

 

冷静な判断なんてできる筈もない。私は無我夢中で魔力砲を、その男の子に向かって乱射した。

 

「なんだよもー。叫びたいのはこっちだよ」

 

結局の所……間に合ったのか、間に合わなかったのか。この結果をどう判断していいのか、私には分からなかった。ただ一つ、確かな事は……私の女の子として大切ななにかが、この時壊れた……

 

「ど……どういう……事なの……?」

 

《触っちゃった触っちゃった触っちゃったー! しっかりとこの手で握っちゃったよー!》

 

それだけは、きっと間違いなかった……




最後の最後にシリアスブレイクするイリヤ。
いやー、あれは笑いますよね(笑)。
そして士郎はそれを目撃してない。
もし見てたらイリヤの魔力砲より危険な矢を乱射していたでしょうから、良かったなギル。

さて、クロの魔力を補給する為の物ですが、久しぶりにUBWを観ましてね。
そこで凛が遠坂の魔術について言ってたんです。
転換の魔術で、物に魔力を移せるとか。
それで、特に宝石ができるらしいので、こういう方法にしてみました。
そんな事できないと言われるかもしれませんが、これも私の独自設定と思ってください。
何故凛達の魔力を込めないかの理由は、直接魔力を宝石に移す事はできないから、です。
血や唾液として外に出さないと移せない。
という感じです。

それではまた次回。
感想待ってます。

追記
続きを書いていると、士郎達は円蔵山の地下大空洞の事を知っている事に気付きました。
なので、修正しておきました。
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