錬鉄の英雄 プリズマ☆シロウ   作:gurenn

50 / 53
多くは語りません。
皆さん、どうぞご覧ください。
あ、士郎視点の所は、脳内でエミヤを流しながら読んでみてください(笑)。


二重夢幻召喚

【士郎視点】

 

「これは……」

 

「綺麗……」

 

『固有結界……魔術の最奥と言われる、大魔術』

 

「俺が道を開く。奴の宝具は俺が全部防ぐから、二人はその隙になんとか美遊を取り戻すんだ」

 

イリヤとクロにそう告げて、俺は手近にあった剣を抜いて構えた。俺の後ろの丘以外の荒野には、アーチャーの世界と同じく無数の剣が突き立っている。今の俺には、この世界の力も理解できた。

 

武器であるなら、俺がオリジナルをこの目で見ただけで瞬時に複製し貯蔵する。というより、元々アーチャーの投影魔術は、この空間に貯蔵された武器をその都度取り出していただけだったんだ。

 

「偽物のお兄さんが、本物の僕を倒す……?」

 

「……」

 

「……その態度は高く付くよ」

 

「ご託はいい」

 

「【贋作者(フェイカー)】……!」

 

9枚目のカードとの最後の戦いは、こうして開始された。俺の言葉に今までにないくらいの苛立ちを見せた9枚目は、俺達の視界を埋め尽くす程の数の宝具を射出する。だが、この世界なら……

 

「っ!?」

 

射出される宝具を全て俺が視認した瞬間、結界の中にその全ての宝具が複製、貯蔵された。それを認識した俺は、その宝具を呼び寄せて敵の宝具にぶつける。まるで鏡合わせのような光景だった。

 

「……なぜ、偽物が本物を退ける……?」

 

「お前の言う通り、ここにある武器は全て偽物。だが、偽物が本物に敵わないなんて道理はない」

 

「……」

 

ぶつかり合った宝具は互いに砕け散り、その破片が地面に落ちていく。その光景を見て言葉を失う9枚目に、静かに告げる。俺は知っている。最後の最後まで偽物の理想を貫き通した彼の強さを。

 

ならば、その彼の力を借りている俺に、その偉業を否定させる事ができる筈がない。そんな想いを胸に、俺は9枚目を睨み付ける。奴は、そんな俺を冷たい視線で射抜き、無言で殺気を放った。

 

「お前が本物だって言うのなら、その全てを凌駕して、その存在を叩き落とす。行くぞ!」

 

「……殺すよ……君だけは、必ず殺す!」

 

そう言って俺が走り出すのと同時に、再び無数の宝具が射出される。だが、無駄だ。お前が宝具を出せば出す程、この世界は牙を剥く。果てしない荒野に、その宝具が次々と突き刺さっていく。

 

それらの宝具を再び呼び寄せると同時に、他にもある宝具を呼び寄せる。敵の宝具は悉く砕けて、9枚目までの道ができる。そこに向かって、俺は後から呼び寄せた無数の宝具を射出する……!

 

「っ!? ……やってくれたね!」

 

その反撃は、奴が出した無数の盾の宝具によって防がれてしまうが、自分と同じような攻撃で反撃された9枚目はさらに激昂する。よし、このまま冷静にさせてはいけない。もっと怒らせないと。

 

奴のプライドをとことん貶して、冷静な判断力を失わせる。その作戦は上手くいって、奴はムキになって無数の宝具を射出しようとする。だけど、奴のその能力の弱点を俺はすでに見抜いていた。

 

「っ!? 射出前に……!?」

 

「遅い」

 

奴は黒い泥で構成された怪物の体から直接宝具を取り出して射出している訳だが、取り出してから射出するまでには、少し時間が掛かる。だけど、この空間は武器を視認した瞬間に貯蔵される。

 

取り出された宝具の一部が見えた瞬間にはもう、この空間内にその宝具の贋作があるという事だ。だから俺は、その贋作を即座に呼び寄せて、射出される前の状態の本物を全て叩き潰したんだ。

 

「……一体、どこまで君は……!」

 

「言っただろ。全てを凌駕して叩き落とすって」

 

「【贋作者(フェイカー)】め……! なら!」

 

「……っ!?」

 

次に奴が出した宝具に、俺は目を見開いた。その宝具があまりにも巨大な剣だったからだ。当然、奴がその剣を直接持てる訳もなく、巨大な怪物の右手に持たせている訳だが。しかも、その剣……

 

《構造が、全部は視えない……!》

 

おそらくは神造兵装だ。つまり、人の手によって造られた剣ではない、という事だ。アーチャーの投影では完全な再現が難しい。だから奴はそれを出したんだろう。だけど、顔は屈辱に歪んでる。

 

「君ごときに、これを使う事になるなんてね」

 

「くっ……!?」

 

「【イガリマ】!」

 

うっ……おおおおおッ!

 

視ろ! 完全な再現が出来なくてもいい! 迫る巨大な剣を睨み付けて、その構造を映し取った。そして、振り下ろされた神の剣を投影する。例え強度が足りなくても、ぶつける角度を考えれば!

 

「っ!?」

 

「【虚・千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)】!」

 

斜め下から斬り上げて、敵の剣にぶつける。俺が投影した形だけの剣はぶつかった瞬間に真っ二つに折れたけど、奴の剣もその軌道がズレた。俺の体のすぐ横を通り過ぎ、大地を二つに割った。

 

「斬山剣まで……! だけど、まだだよ!」

 

「うっ……!?」

 

奴の言葉に顔を上げてみると、そこにはさっきと同じくらいに巨大な剣を左手に構える敵がいた。その剣の構造も、さっきの剣と同じように、完全には読み取れない。同じような神造兵装か……!

 

「【シュルシャガナ】!」

 

ぐっ……あああああッ!

 

考えている暇もない。さっきのようにその構造を分かる範囲で映し取り、全力で投影する。無茶な連続投影に魔術回路が悲鳴を上げているが、今は構っていられない。頼む、間に合ってくれ……!

 

「【絶・万海灼き祓う暁の水平(シュルシャガナ)】!」

 

なんとか間に合った。その結果はさっきと同じ。俺が投影した形だけの剣は本物とぶつかった瞬間に真っ二つに折れたけど、その軌道を逸らす事はできた。巨大な剣が大地を抉り、爪痕を残す。

 

「ハアッ……ハアッ……!」

 

「……形だけのハリボテとは言え、神造兵装まで投影するとはね。ちょっと見くびっていたよ」

 

「……!」

 

「だけど、さすがに限界でしょ? 諦めなよ」

 

無茶な連続投影で膝をつき、荒い呼吸を繰り返す俺を見下ろして、奴はそう言った。その言葉に、俺は口元を歪めて凄絶な笑みを浮かべる。確かにお前の言う通りだ。もう限界に近い。だがな……

 

「俺は、一人で戦ってるんじゃないんだよ……」

 

「なにを言って……っ!?」

 

「今だ、クロ!」

 

俺の言葉に、奴はやっとそれを見た。俺はずっと奴の注意を引き付ける役だったんだ。その隙に、彼女達は奴に接近していた。奴が上空を見上げるとそこには、イリヤの手にぶら下がるクロが……

 

俺の声を合図に、クロはその手を放して……

 

…………………………………………………………

【クロエ視点】

 

「ホント、驚く事ばっかりよね」

 

「うん」

 

9枚目と正面から戦うお兄ちゃんの姿。その姿を私達は見下ろしていた。最初はお兄ちゃんの後ろをついていってたけど、途中から9枚目の意識がお兄ちゃんに釘付けになった事に私は気付いた。

 

反則じみた9枚目の能力に、ピンポイントで相性が良いお兄ちゃんの固有結界に、私達の事を気にする余裕がなくなったからだ。さらにお兄ちゃんは奴をあからさまに挑発して冷静さを失わせた。

 

それを見た私は、チャンスだと思った。きっと、お兄ちゃんもそれを狙って怒らせたんだろう。奴の意識が私達から逸れた今、私達は自由に動けるようになった。この隙に近付く事は簡単だろう。

 

その読みは間違ってなかった。奴の真上辺りまで到達した私はそう確信する。けれど、改めて今の状況を見てみると、驚く事ばっかりだと思った。美遊が完成された聖杯だとか、完全に予想外だ。

 

私達なんかよりずっと、あの娘の方が大きな秘密を秘めていた。しかも平行世界の人間とか、その世界の聖杯戦争とか、もうホントついてけない。ここまでくると驚きを通り越して、呆れるわ。

 

心の中でため息をついて、眼下の怪物を眺める。あの中に、美遊がいる。奇跡のような偶然で誕生したこの私を、初めて友達と言ってくれた娘が。あの日の美遊の言葉は、今も胸に刻まれてる。

 

でも、だからこそ……だからこそ私は……

 

「ねえ、美遊。私、今とても怒ってるのよ?」

 

「クロ……」

 

「貴女が言ってくれたんじゃない。『友達が死ぬなんて絶対に嫌』、って。それなのに自分の事になったら、『私を壊して』、ですって……?」

 

ふざけるんじゃないわよ! その言葉に怒ってるのが、お兄ちゃんだけだと思わないで欲しいわ。あの時の貴女の言葉を、そっくりそのまま返してあげる。友達が死ぬなんて、私は絶対に嫌よ。

 

だから……私は私にできる事をする。一刻も早く美遊をあそこから助けて、思い切りひっぱたいてあげないと気が済まないしね。微妙なバランスで存在している私は、力を気軽に使えないけど……

 

「それでも、大切な友達の為になら……景気よく使ってあげようじゃない。行くわよ、ルビー!」

 

『分かりました。クロさんをゲスト承認します』

 

「お願いね、クロ」

 

小聖杯の力で導き出した答え。あの9枚目の使う盾は今の私の全力攻撃すら簡単に防いだ。なら、どうすればあの盾を貫けるのか。イリヤの手からルビーを受け取り、懐からある物を取り出す。

 

それは、バゼットから返して貰ったバーサーカーのカード……9枚目を倒す為に必要だと言って、他のカードも返して貰っている。こっちの準備は万端だ。眼下の光景も、丁度良い感じになった。

 

「っ!? 気付かれた!?」

 

「みたいね。だけど、もう遅い」

 

「今だ、クロ!」

 

9枚目が私達を見上げた瞬間、お兄ちゃんの声が私達の耳に届いた。その声を合図に、私はイリヤの手を放した。一瞬の浮遊感の後、巨大な怪物に向かって落下が始まった。よし、行くわよ……!

 

「【転身】!」

 

『一回限りの特別バンク! 行きますよ~!』

 

ルビーを掲げて、私は転身する。今から私がする事は、私の魔力では全然足りない。だからルビーの力を使って無限の魔力を得るんだ。これなら、この手を使っても私は消えずに済む筈だった。

 

『「【カレイドルビー・プリズマクロエ】!」』

 

魔法少女の姿に転身した私は、左手に持っていたバーサーカーのカードを掲げる。お願い、貴方の力を貸して頂戴。私の大切な友達を助ける為に。祈りを込めて呼び掛けると、カードが光った。

 

カードの英霊が、応えてくれたような気がした。その事に笑みを浮かべて、私は小聖杯とルビーの力で英霊の座にアクセスする。私の小聖杯としての力は、恐らく後一回使うのが限度だろう……

 

つまり、これで打ち止め。だけど、悔いはない。待ってなさいよ、美遊。今こいつを倒すからね!

 

「【二重夢幻召喚(ツヴァイ・インストール)】!」

 

バーサーカーの力を使って、ランサーの別の側面の力を引き出す。二つのクラスカードを、同時に使った【夢幻召喚(インストール)】だ。ランサーのクラスだったクー・フーリンが、バーサーカーに変わった。

 

「宝具展開! 【噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)】!」

 

「くっ!?」

 

全身に禍々しい骨の鎧を纏う宝具。これによって私の攻撃力は飛躍的に高まった。バーサーカーのクラスに変わった影響か、軽く理性が飛びかけるけど、必死に自分を制御して9枚目に突撃する。

 

アアッ!

 

9枚目はまたあの巨大な盾を出して、私の攻撃を防ごうとするけど、そんな物では止められない。爪の初撃は防がれたけど、まだまだこれからだ。私は休む事なく連続で、盾に爪を突き立てる。

 

ウアアアアッ!

 

「ぐうっ……! 神々の盾がッ……!」

 

「なによ、こんなモノッ……!」

 

こんな……こんな盾なんか……!

 

粉々にしてやるんだからッ!

 

私はそう叫び、忌々しい大盾に向かって呪いの槍を思い切り突き立てた。私の連撃で軋みを上げていた大盾は、その止めの一撃でついに貫かれた。9枚目の体を貫いて、怪物の巨体に縫い止める。

 

「……はっ……! ……はっ……!」

 

『クロさん、体が……!』

 

「……大丈夫よ、これくらい……」

 

強化宝具に加えて、ルーン魔術も限界まで使用。再生のルーンも使ってたけど、強化が激しすぎて再生が追い付かなかっただけだから……全身から血を流す私を見たルビーが騒ぐけど、全然平気。

 

「……ハハッ……やってくれたね、君たち……」

 

「っ!?」

 

こいつ、まだ動けるの!? 体に突き刺さってるゲイ・ボルクを右手で掴んで、引き抜こうとする9枚目に私は目を見開く。そんな私を冷たい目で睨み付けて、9枚目は呪いの槍を引き抜いた。

 

「もういい……まとめて吹き飛ばしてあげるよ」

 

そう言った9枚目が、最後に取り出した宝具は。それを見て、私は背筋が凍った。何故なら、その宝具はあの時、私達に根源的な恐怖をもたらしたあの剣だったから。まずい、この剣だけは……!

 

「受け止めて、クロ!」

 

「イリヤ……!」

 

その宝具を見て固まる私の耳に、イリヤの必死な声が聞こえてきた。上を見てみると、魔法少女の姿ではないイリヤが私に向かって落ちてきてる。そうか、今は私がルビーで転身してるから……

 

イリヤをキャッチして、ルビーを返す。私の転身はそれで解けて、バーサーカーのカードも体外に出てくる。私達がそんな事をしてる間に、9枚目はあの宝具の力を開放し始めていた。くっ……!

 

「クロ、お兄ちゃんの所まで行って!」

 

「……なんですって?」

 

「早く! もう時間がない!」

 

けれどイリヤは、そんな事を言ってきた。必死の形相で。チラッと9枚目を見てから、お兄ちゃんに目を移す。お兄ちゃんは私達の方に走ってきているけど、その足取りは重い。無茶をしたのね。

 

私と同じで。似た者兄妹か。となると、イリヤもなにか無茶をするつもりかしらね……そんな風に思って、こんな状況なのに私は笑ってしまった。今にもあの攻撃が飛んでくるかもしれないのに。

 

「……今度こそ、舌噛むんじゃないわよ!」

 

そう言って、私はお兄ちゃんの元に急いだ。

 

…………………………………………………………

【イリヤ視点】

 

お兄ちゃんとクロが必死になって美遊を助けようと頑張ってる姿を、私は見ていた。ただ見てる事しかできない自分の不甲斐なさがとても悔しくて堪らなくて、唇を噛む。私の力はあまりに弱い。

 

クロが分離してからというもの、魔力は半分以下になってしまったし、こういう時にまったく戦力になれない。それを補う為の特訓はしたけれど、一定以上の力を持った敵が出てくると通じない。

 

特に今相手にしてる9枚目は、今までの相手とはレベルが違った。生半可なカードを【夢幻召喚(インストール)】しても、きっと役に立たない。私にはクロみたいな事はできないし、無力感に打ちのめされた。

 

どうすればいいの? あの剣を取り出した9枚目の姿を見て、絶望に支配されそうになる。だから私は無意識にお兄ちゃんの姿を見た。落ちていく恐怖も忘れて、お兄ちゃんに助けを求めて……

 

「っ!?」

 

その時、私は見た。あの剣を振りかざす9枚目の姿を睨み付けて、必死に走ってくるお兄ちゃんの姿を。その目には、諦めの色なんて全然浮かんでいない。お兄ちゃんは、まだ諦めてないんだ。

 

その強い瞳に、私は目を奪われる。そして、同時に無限の勇気が溢れてくる。そうだ。まだ私達は終わっていない。絶対にアイツを倒して、美遊を取り戻すんだ。私にできる事……それは守る事。

 

そう思った瞬間、カードケースが光った。なにかと思って見てみると、あるカードが光っていた。

 

「……【シールダー】のカード……」

 

自分を使え。まるでこのカードが、そう言ってるみたいな感じがした……それに頷いて、私は下のクロに呼び掛けた。クロにルビーを返して貰い、私は転身する。よし、早くお兄ちゃんの元に!

 

「さあ、これで終わりだ……この剣に銘はない。僕はただ『エア』と呼んでる。かつて、天と地を分けた───文字通り『世界を切り裂き創造した(・・・・・・・・・・・)最古の剣(・・・・)』さ……感じるかい? 君たちの遺伝子に刻まれた、始まりの記憶をさ……」

 

9枚目は静かにそう語り、あの剣からは凄まじい豪風が巻き起こっている。回転する刀身の速度がどんどん速くなり、豪風は剣先に収束していく。もうすぐ、凄まじい一撃があれから放たれる。

 

私達はそう確信した。あんなものを撃たれたら、きっと私達は全滅するだろう。当然お兄ちゃんも死んでしまう。そんな事は絶対にさせない。私はシールダーのカードを胸に抱いて、必死に祈る。

 

お願い、助けて。私は、もう何度もクロがカードを使う姿は見てる。だからできる。きっと私は!

 

「自分の意志で、カードを使える!」

 

「イリヤ、貴女……!」

 

「【夢幻召喚(インストール)】!」

 

お兄ちゃんの元に辿り着いた私は、シールダーのカードを使って変身した。十字架みたいな大きな盾を構えて、お兄ちゃんとクロの前に立つ。貴方なんかに、私の大切な人達は奪わせない……!

 

「この汚らわしい世界ごと君たちを切り裂いて、今ここに原初の地獄を織り成してあげるよ!」

 

「させない! お兄ちゃんもクロも絶対守る!」

 

オオオオオオオオッ!

 

「真名、開帳───私は災厄の席に立つ……其は全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷───」

 

あの時の黒化英霊を思い出す。私は祈るように盾を天に掲げて、魔力を高める。9枚目もあの剣を天に掲げて、雄叫びを上げる。世界を包む豪風が頂点に達したその時、ついにそれは放たれた。

 

「【天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)】!」

 

凄まじい一撃が向かってくる。だけど、私は全然怖くはなかった。それよりも強い一つの意志が、私の心を支配しているから! 天に掲げていた盾を勢いよく振り下ろして、私は力の限り叫んだ。

 

「顕現せよ───【いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)】!」

 

次の瞬間、巨大な城壁が私の前に出現する。その城壁は9枚目の放った一撃を見事に受け止める事に成功して、後ろにいるお兄ちゃん達を守った。9枚目もこれには驚いたらしく、目を見開いた。

 

「エアの一撃を……止めるだって……?」

 

うああああっ!

 

「「イリヤ!」」

 

まだだ。まだこの攻撃を防ぎきった訳じゃない。あの剣からはまだ衝撃波が放たれている。私は、それを必死になって支える。盾には凄まじい衝撃と重みがまだ続いてる。少しでも気を抜けば……

 

『大丈夫だ』

 

『っ!?』

 

その時、頭の中で優しい声が響いた。誰の声かは分からないけど、不思議と安心する。これは……

 

『この城壁は、君の心が折れない限り無敵だ……もっと肩の力を抜いて、心を乱さないように』

 

『えっ、えっと……こ、こう?』

 

『そう。筋がいいね。白亜の城は、持ち主の心により変化する。曇り、汚れがあれば綻びを生み、荒波に壊される。けれど、その心に一点の迷いもなければ、この正門は決して崩れはしない!』

 

『貴方は、まさか……』

 

『この声はもう二度と届かないだろう。けれど、君なら大丈夫。きっと守りたいものを守れるさ』

 

『待って……!』

 

『頑張って……』

 

それきり、その声は聞こえなくなった。今の声、やっぱり……私は心の中でその声にお礼を言う。力を貸してくれてありがとう、盾の英霊さん。

 

「お兄ちゃん、クロ! 今の内にアイツを!」

 

そして後ろにいるお兄ちゃん達に向かって、私はそう叫んだ。今なら、きっとアイツを倒せる!

 

…………………………………………………………

【士郎視点】

 

9枚目の放った凄まじい一撃によって、俺の固有結界が砕けていく。だが、まだ俺達のいる場所は結界の中だ。緑溢れる丘は、まだ砕けていない。イリヤがあの攻撃を防いでくれているからだ。

 

「お兄ちゃん、これ!」

 

「これは……!」

 

「バゼットから返して貰ったの」

 

その隙にクロが渡してきた物。それは、セイバーのカードだった。そうか、これがあれば! あの時の事を思い出し、クロからカードを受け取る。ありがとう、二人とも。これでアイツを倒せる!

 

俺一人では、きっと勝てなかっただろう。これは俺達全員の、努力の結果だ。セイバーのカードを握り締めて9枚目を睨み付ける。さあ、お前こそこれで終わりだ。何故ならば、この輝きは……!

 

「【投影限定展開(トレース・インクルード)】……」

 

最強の聖剣にして、人の願いの結晶。その名は!

 

「【永久に遥か黄金の剣(エクスカリバー・イマージュ)】!」

 

「なっ!? うおおおっ!」

 

聖剣の輝きは、黒き怪物を消し飛ばしていく……こうして、最後の戦いは終わったのだった。だがこの時、俺達はまだ知らなかった。次の戦いが、すぐそこまで迫っているという事を。そして……

 

その戦いこそが俺達の最大の試練だという事も。これまでの戦いは、全て序章でしかなかった……その事を、俺達は間もなく知る事になる。それを知らない俺達の頭上には、割れた空があった……




さて、いかがでしたか?
原作ではツヴァイ・フォームのあまりの強さで、全然出番がなかったクロの活躍も書けました。
私としては満足な出来でしたが……
感想を頂けると嬉しいです。
最近は感想が少なくて寂しいんです……
前回も皆さんはどう思ったのかなって不安で。

さて、プリヤ士郎の無限の剣製ですが、イメージとしては雨上がりの昼間です。
原作の士郎が明け方、アーチャーが夕方、美遊兄士郎が吹雪の夜という事ですので、そのどれとも違う感じのイメージになるようにしました。

最後のエクスカリバー・イマージュですが、ギルのエヌマ・エリシュからズラして撃ちました。

それではまた次回。
いよいよツヴァイ編の最終話です。
お楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。