ラブライブ!サンシャイン!!×仮面ライダードライブサーガ 仮面ライダーソニック   作:MasterTree

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コラボ編も終盤に突入(多分)!
アラシ達3人と共についに元の世界への帰還を果たした隼斗と憐。

残すはラスボスエルバのみ、果たして彼らは勝利することができるのか!?


ラブダブルコラボ編 第6話 Dの襲来/憂鬱ナル絶望郷

これまでのサンシャインサーガ !

 

謎の斬撃による一般人大量殺害の阻止、

そしてようやく戻ってきたブレイヴ・ファルコンによりブレイヴソニックの力を取り戻し憂鬱幹部達を撃破した隼斗達。

そして永斗の機転によりエルバを帰還させることなくついに元の世界へ戻ってこられた。

 

だが帰ってきた彼らを待っていたのは重加速が起こっている訳でも無いのに停止した人々と、彼らを異世界へ飛ばした元凶『憂鬱』のエルバだった────

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「俺はポエムが嫌いなんだ、分かりにくくて仕方ねぇ。文句があるなら聞いてやるよ、拳でな」

 

「…はっ、やる気みたいだなアラシ。だったら俺も最初からFull speedだ!今の俺達は、俄然負ける気がしないんでね!!」

 

「そうだな。御託ばかりじゃいつまで経っても笑えない。

そろそろ楽しませてもらおうか、仮面ライダー」

 

 

《Dystopia!》

 

 

中心に窪みのついたベルト…『ガイアドライバー』と言うらしいそれを装着し、エルバがメモリを挿す。

 

忘れるはずもない、手も足も出なかった黒鎧のドーパント『ディストピア』。

あの時は俺達2人だけだったが、今は違う。

 

隣には戦友達がいる。

今の俺たちならきっと────!

 

「初手から全力だ!行くぞみんな!!」

 

「オウよ!」

 

「覚悟しやがれ憂鬱野郎、とっとと片付けてアイツらの所に帰らせてもらう!」

 

「ステージ移動したらいきなりラスボスとかちょっと笑えないんだけど…ま、それもそうだね」

 

「貴様はここで俺が裁く!」

 

俺はシグナルブレイヴ、憐はシフトデッドヒートメテオ、アラシ、永斗少年はそれぞれジョーカーメモリとサイクロンメモリを、瞬樹くんはドラゴンメモリをそれぞれのドライバーをセットし構えた。

 

《Evolution!》

 

《SignalBike/Shift Car!》

 

《Cyclone!》

 

《Joker!》

 

《Dragon!》

 

 

「Ready────!」

 

 

「「「「「変身(Hensin)!!」」」」」

 

《Brave!TAKE OFF‼︎》

 

《Rider!Dead Heat!Meteor!!》

 

《Cyclone/Joker!!》

 

《Dragon!!》

 

 

 

とりあえず俺らは最初にやり合った時に実力をある程度把握しているので初手ブレイヴ&メテオデッドヒート。

 

ダブルは緑と黒のサイクロンジョーカーに、エデンも初期フォームへと変身した。

 

この両者にも強化フォームはあるらしいが、敵の全貌が分からない今、初手から軽率には使えないという事だろう。

 

 

「来るがいい」

 

 

「名乗り省略!まずは俺だ!!」

 

「あ、おい待て隼斗!!」

 

下手に出方を伺っていればまたあの(空間を斬り裂く)技を撃ってくる可能性が大いにある。アレを撃たせる前にケリをつければ行けるはずだ!!

 

煌風とリジェネレイトブラッシャーの二刀流を構え一気に加速しディストピアの懐へ。

 

「っラァっ!」

 

煌風を振り抜き、胴へ一閃。

ブラッシャーと煌風でもう二撃。

 

ディストピアも剣を取り出すが、ガードは間に合わずその身に刃を受けてしまう。

 

「…ほう」

 

「まだまだ!」

 

続けて左手のリジェネレイトブラッシャーを振り抜くが、これはディストピアの持つ剣で受け止められた。

 

このままだとカウンター攻撃を貰って俺は大ダメージ…だっただろう。

 

だがそれは1()()()()の話だ。

 

 

「余所見すんな憂鬱野郎!」

 

そこから離れることなく剣で剣を抑えていると、ダブルがディストピアの死角から上段蹴りを繰り出す。

 

「先走りがちな馬鹿の扱いなんて、ここんとこ日常茶飯事なんだよ!おら行けバカ二号!」

 

「竜騎士だ!」

 

 

続けてエデンが自身の得物である槍を剣のように叩きつけた。

それを見てすぐさまその場を離れると

 

 

「黒騎士!」

 

「オウ!グレン・メテオ・レイン!」

 

エデンの合図で空中のスレイヤーが両手で生成した火球を放り投げ蹴り飛ばす。

 

分裂した隕石型エネルギー弾がディストピアを襲い、更には追加攻撃の『ブレス・オブ・バーン』による火炎放射。

 

『手数には手数、アレで行くよ』

「分かってる!」

 

《Luna/Trigger!!》

 

 

ダブルがルナトリガーにチェンジし、専用の銃トリガーマグナムから追尾弾を連射し文字通りの集中砲火。

ディストピアに反撃の余地すら与えない。

 

 

「Yes!これなら行ける!」

 

「オウ!ブレイヴにメテオデドヒ、加えてアラシサン達の力!初戦とはちげーゼ!」

 

 

「…ほう、少しは手応えのある戦い振りになったみたいだな。だが……」

 

「……ッ!?こいつは───!」

 

集中攻撃の中から聞こえる余裕のある声。

そこから危険を感じ取ったダブルは、全ての攻撃を中断して退避に切り替える。

 

瞬間ダブルが立っていた場所が『斬り取られた』。

 

地面のコンクリートは抉られたのではなく、削り取られている。

 

『ディストピアの斬撃が通った場所は無に還る。まぁ月並みな表現だけど“空間を切り裂く剣”がディストピアの能力の一つだね』

 

「おい待てコラ永斗、あと隼斗!お前ら知ってただろ!言えや!死ぬとこだったぞ!」

 

「アラシ!俺でも知っていたぞ!?傲慢のヤツが…」

「黙れボケカス中二病!」

 

「説明の暇も無かったんだよ!それに…あんなNo motion(予備動作無し)な攻撃どうしようもねえだろ」

 

 

あの集中攻撃の中でこんな大技を繰り出してきたディストピア。相手がどれだけの手練れであってもそんなの予想しろって方がムズイんだよ!

 

『それでこれは余談なんだけど…憂鬱は組織の中で最も才能に優れる者の称号だった』

 

「なんでもござれの全能の天才…ってことカ?」

 

「全方位の天才、どっかのクソ親父思い出すな」

 

『そんでこれ言おうか迷ってたけど…七幹部の序列教えたよね?

憂鬱、エルバは追放時点で傲慢の一つ下に入ってた。つまり……』

 

 

頭の中から向こうで聞いた話を引っ張り出す。序列は上から『憤怒』『色欲』『傲慢』『嫉妬』『強欲』『暴食』『怠惰』。

 

三番手傲慢は確か朱月、1番下の怠惰が元は永斗少年だったっけか。といっても怠惰は非戦闘員らしいからノーカンでもいいんだが。

 

一つ下ということは、『憂鬱』は組織の四天王に名を連ねる強敵ということになる。

 

 

「やはり笑えない…もう終わりにしよう」

 

 

ディストピアの剣にエネルギーが集中していく。またあの空間を斬り裂く斬撃を飛ばす気だ。今喰らえば今度こそ全員即死のGAME OVER不可避。

 

けど、それはもうやらせねぇよ!

 

「永斗少年!」

 

『アラシ、早撃ちゲーってやれる?』

「やれるに決まってんだろ!」

 

《Lightning/Trigger!!》

 

右半身がターコイズカラーに。全身には稲妻のディテールの施された姿にフォームチェンジ。トリガーマグナムから放たれた、雷に匹敵する疾さの弾丸がディストピアの手から剣を弾き飛ばした。

 

 

「なに?」

 

 

「隼斗!行け!!」

 

 

《ヒッサツ!Full throttle Over!Sonic!Brave!!》

 

リジェネレイトブラッシャーをブラスターガンモードに変形させ、シグナルソニックとシグナルブレイヴを装填。

ブーストをかけディストピアに急接近。

 

 

「愚かな。早めに決着を着けたいからとはいえ、闇雲に接近すればいいというものでは……」

 

 

ライトニングトリガーの弾丸を弾き、こちらを向いたディストピア。だが、余所見をしたのは失策だぜ!

 

 

《Metal!マキシマムドライブ!!》

 

 

「これは……」

 

 

ディストピアの体を縛り上げる光で生成されたクロー。

 

さながらクワガタのツノのようなそれは黄色と銀のダブル、ルナメタルが自身の武器であるメタルシャフトとスタッグフォンを合体させることで機能拡張されたもの。

それでディストピアを縛り上げているのだ。

 

その手に剣は無く、防御姿勢もこれではとれない。懐に飛び込み、リジェネレイトブラッシャーの銃口をディストピアに突きつけた!

 

 

「吹っ飛びやがれ!テンペスト・バーストォォッ!!!」

 

 

身動きの取れないディストピアにゼロ距離でのテンペスト・バーストが直撃。

 

凄まじい風を纏った蒼嵐の如きエネルギー砲が黒鎧を撃ち抜き、地面を抉りながら吹き飛ばした。

 

 

『…いや、本当すごいねソレ…速いしオマケに高火力、攻撃と素早さにスペックガン振りって』

 

「蒼き嵐…これが蒼騎士の真の力か…!」

 

「どうだ……!?」

 

 

粉塵の中から現れる影。

テンペスト・バーストを喰らったディストピアだが………

 

 

 

「────なるほど、これが今の君達の力量か」

 

 

中から現れたディストピア・ドーパント。

だが目立った外傷はほとんど無く無傷と言っても過言では無かった。

 

 

「なん…だと…!?」

 

「今のは確かに会心の一撃だったはず!それを奴は……」

 

『まぁいくらこのメンバーとはいえ相手は元最高幹部最強クラス。瞬殺は無理だとは思ってたけど、まさかね…』

 

「冗談ダロ…!?強いなんてもんじゃねーゾ……!」

 

 

驚嘆と弱音が漏れながらも、まだ戦いの意志は研ぎ澄まされている。誰一人として一歩たりとも退くつもりはない、その覚悟をディストピアに見せつける。

 

 

「…なるほど、悪くない。少し試そうか」

 

「試すだと…!?」

 

「選別さ、仮面ライダーソニック。君たちが俺の憂鬱を晴らしてくれる希望か、つまらない凡夫か、はたまた俺の理解者になってくれるか……」

 

 

ディストピアが剣の先を地面に向ける。

ほんの一瞬ディストピアから戦意が消え、感じ取れるのは僅かな高揚と深い憂鬱。

そして──その剣を両手で突き立てた。

 

「開闢せよ、『憂鬱世界』───」

 

黒いオーラが大気を染め上げる。

それと同時に奇妙な不快感が俺達を襲った。

 

重加速とは性質の異なる何かが自分を押さえつける。

 

いいや、身体だけじゃない。まるで粘液の海に沈んてるようで、だが空気は感じられるのに酸素が喉を通らない。

 

しかも心臓の音すら徐々に遅くなって……

 

 

認識する思考さえも、

動きが鈍くなっていく。

 

なんだ………これ………………?

 

 

「憂鬱とは停滞の意志さ。外界に希望を見いだせなくなり、前進の意味を見失った時、人はそれを憂鬱と呼ぶ。君たちが今感じているソレは、俺を蝕む憂鬱の一片だ」

 

奴の言葉がそのまま重さとなってのしかかってくる。

クソっ……頭が………回らねえ……!

 

「チッ…!重加速でもねぇのに…ソニックが止められるなんて……ッ!!」

 

「面倒な能力……持ちやがって…!」

 

「どーすんだヨ……ハーさん…!!」

 

「動けないか…仮面ライダー、どうやらとんだ期待外れだったようだな」

 

「なんだと……!?」

 

「選別はこれまでにも行っていた。俺以外にこの退屈を共有できるものがいれば、そう思ったんだが……誰一人として俺の憂鬱を受け入れる者はいなかった」

 

辺りを見回すディストピア。その言いぶりと苦悶の表情を浮かべたまま止まる街の人々から、何をしたのかは理解できた。

 

そうか、コイツの変な力で街の人達が…!

 

「まさか、お前そんなことのために…!」

 

『この街の人たちを次々に止めていったって訳ね…本当暇人なのこの人?』

 

「暇だとも。この世界は退屈な事ばかりだ。

毎日を生きる人の人生も、人が描く物語も…俺にとってはどうでもいい。だが一つ面白いことを思いついてね」

 

「面白いことだと…?」

『この手の面白いこととか絶対碌でもないでしょ』

 

自分が所属していた組織を裏切ってまで楽しみを求めたエルバ。そこまでして一体何をする気だ……?

 

エルバが出した結論、それは────

 

 

「────世界を己が物とする。

これほど面白いことは無いだろう、とね。

その時俺は…あぁ、久々に笑える気がするよ」

 

『………驚いた。大層な能力持ってる割に、やりたい事が世界征服なんてね』

 

「あぁ……思いの外……拍子抜けで助かったぜ…!」

 

2人もそこまで驚愕はしておらず、かえって落ち着いているようだ。

 

世界を手にする…要するに世界征服宣言だ。

おいおい本気かよ…確かにありきたりだが、たかが一組織の元一幹部にしちゃ、やる事壮大過ぎねえか……?

 

「だったら…止めなきゃな…!sober&better(地味だしありきたり)なのも良いとこだが…世界征服の阻止……HEROらしくていいじゃねえか…!」

 

 

 

煌風を杖になんとか体勢を整える。

さて、とは言ったものの…この状況をどう打破したらいいものか……!

 

頭も体もまともに動かない、気を抜けば意識を持っていかれそうだ。

 

 

「ヒーロー…か………フフッ」

 

「ッ!何がおかしい!」

 

「いや何、少し驚いてね。思わず失笑してしまった。

確か君達が来る前…街の方でこの姿で力を使っていたら、警察の連中が立ち向かってきたのをふと思い出してね」

 

「警察…?」

 

「ドーパントに立ち向かうとは…勇気ある者達だ!」

 

「ああそうだね。だが…いやはや、流石は市民の味方と言ったところか?その姿勢は評価するが…その盲目さは凡人の証だ、実に笑えない。自分達では勝てないと思っていながら、敵わないと理解していながらも…

 

 

 

 

 

 

 

 

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感情の無い笑いで、ため息交じりの侮辱を吐き出す。

 

嘲笑うかのように言ったディストピア。

マジか…って事は内浦だけじゃねぇ、沼津の方までコイツに……!

 

 

「市民どころか警察にまで犠牲者が……!」

 

「何という事を……!!」

 

『マズイね…思ったより事態が深刻そうだ。

とりあえずこの状況をなんとかしないと………憐くん?』

 

 

 

 

「………ろ」

 

「憐?お前────」

 

永斗少年が何やら疑問系の言い方に。

ふと横を向くと、スレイヤーデッドヒートメテオが握りしめた拳が震えており、全身からは赤黒い炎がたち上っていた。

 

それはさながら、アイツ自身の怒りを表しているかのようで────

 

 

「もういっぺん……言ってみろ!!!

 

 

 

その瞬間、スレイヤーの全身から放たれた獄炎の咆哮が周囲を焼き、炎がその爪や翼に宿る。

 

それはさながら、煉獄のドラゴンとでも言うべき姿に。

 

「エルバァァァァァァ!!!!」

 

スレイヤーが急加速しディストピアに突撃。

俺達は3人ともマスクの下で目を見張っていた。

 

そう、鈍化した状態から『憐だけ』が解き放たれていたのだから。

 

獄炎の龍爪がディストピアを焼き切るかと思われたが、それは突如飛来した謎の怪物に阻まれた。

 

「コイツは──!?」

 

「……参ったな。せっかく笑えるかもしれない所に…」

 

『なるほどね、コイツが隼斗さんの言ってた…』

 

「あぁ、俺達をあっちの世界に飛ばした…謎のロイミュード……!」

 

 

その正体は、異世界へのゲートを開いた謎の漆黒のロイミュード。

108/パラドックスに酷似しており、片目にはまるでサイボーグのようなカメラアイが付いている他、所々人工的に改造された跡がある。

 

 

「謎のロイミュードか…その名でもいいんだが、それだと些か呼びづらいだろう。これの名は『ディファレント』。俺が作り出した、忠実なる僕だ。たまにこうして勝手な真似をするのが玉に瑕だがね」

 

「different…」

 

「ハーさん、コイツは…」

 

「分かってる。恐らくコイツは今まで戦ってきた奴らの中でも特に強敵だ…」

 

 

「君たちの思う通り『強敵』という解釈に間違いは無い。選別はやめだ、兎角今は…それだけでは無いということを覚えてもらおうか」

 

 

ディストピアが剣を振るうとかかっていた謎の重圧が途端に消え失せた。スレイヤーはそんな事を気にしないとばかりに炎を纏う爪を振るおうとするが、ディファレントが右手にエネルギーを集中させていく。

 

それを地面に叩きつけた途端、とてつもなく重い衝撃と共に紫のオーラフィールドが展開された。

 

ほんの一瞬感じたプレッシャー。

だが、今度はすぐさま打ち消された。

 

「っ!おい、なんだこれ……!?」

 

『体が重い…こっちは重加速!?いや、あの時とは…レベルが違う!』

 

「この途轍も無い威圧感…ヤツが放っているのか……!?」

 

やっぱ重加速だったか。それならno problemだ、充分対処でき……いや、それにしちゃ強すぎる。ダブルとエデンの動きが鈍るどころか、ほぼ完全停止状態。

重加速……違う、これは────!

 

「重加速…いや、『超』重加速だと!?」

 

「ありえねぇ!だって超重加速を使えてたのっテ……」

 

「あぁ…魔進…否、仮面ライダーチェイサーと言うべきか?それとハート…その2機のみがこれを使用していた。ソレについてこの世界に来てから調べ、そして利用させてもらった。仕組み自体を解き明かすのは極めて簡単だったからな」

 

メテオデッドヒート、そしてブレイヴは一応超重加速対策機構を搭載した上で調整されている。まさか本当に使ってくる奴がいるとは思わなかったけどな…!

 

蛮野の時といい、備えあれば憂いなしとは言ったが本当に来いとは言ってねえんだよ!

 

 

「shit!けど無いよりはマシか…!マガール!カクサーン!それからお前もだキケーン!」

 

マガールⅡとカクサーンⅡをダブルの元へ、キケーンⅡをエデンに向けて飛ばし、その手に握らせる。すると、完全停止状態からダブル達が解放された。

 

「すまねぇ助かった!」

『まだちょっと重いけどね…なんだったの今の…』

 

「おお!体が動く!なんのこれしき!竜騎士を舐めるな!」

 

それでもこれらの次世代シグナルバイク達では超重加速相手だと旧式デッドヒートと同じでギリギリ動ける程度だ。動きが制限された状態だとちっとばかし厳しいか…!

 

「憐!正直コイツの相手はアラシ達じゃ難しい!俺達でなんとかするぞ!!」

 

「分かってる!行くぜ!!!」

 

炎と風、それぞれの翼にそれらを纏わせディファレントへと向かっていき、二刀流とクロー、それぞれの得物を構えながら周囲を飛び回りhit&awayを繰り返す。

 

「アイツらに任せっきりにさせてたまるかよ…!いいとこ無しで帰ったらアイツらに顔向けできねぇ!永斗!こんなもん死ぬ気で振り払え!!」

 

『いやいやアラシ、これは気力でどうにかなるもんじゃないから。今の僕らにできるのは…ま、後方支援だよね』

 

《Heat/Trigger!!》

 

ダブルが赤と青の灼熱のガンマン、火力ならトップクラスのヒートトリガーにチェンジ。

炎の弾丸をその場から連射する。

 

「クッ…先の決戦でハイドラを使ってさえいなければ…!」

 

一方のエデンはシグナルバイクの力でなんとか超重加速フィールド内で動けるようで、槍を振り回し俺達と共に近接戦を仕掛ける。

 

遠距離攻撃が可能なメモリもあったようだが、どうやら一度使うとしばらくは使えなくなる代物のようだ。

 

恐らくタワー戦で使ってしまったのだろう。ここであると楽だったんだが…無いものねだりはできない、あるものでどうにかしてやる!!

 

「っのやろっ!!」

 

煌風で斬りつけ、ブラッシャーの銃撃。

怯んだ所をブレードモードにチェンジし叩き斬る。

 

「ゼリャアッ!」

 

「オオッ!」

 

いつもより攻撃が荒々しいスレイヤーとエデンのドラゴンコンビもクローと槍で息のあった連携攻撃を次々に繰り出している。

 

そこにダブルの後方支援もあり、ディストピアよりかは戦いやすい。最も当の本人は文字通りの高みの見物を決め込んでいるが。

手を出してこないだけマシと見るべきか…

 

「この程度に手こずるか…やはりまだ早かったようだ。この程度では退屈凌ぎにもならない…全く、あれを超えてきたから少しは楽しめると思ったのだが…笑えないな…」

 

「んだと…!?」

 

「ハッ!そんなこと言ってられるのも…今のうちだぜ!」

 

退屈だとばかりにこちらを見下ろすディストピア。

全くムカつくなこのキザ野郎…だがな!

 

「そんなこと言ってられるのも…今のうちだぜ!」

 

《SignalBike!Signal Boost!トマーレ!》

 

トマーレⅡをブラッシャーに装填し、強化拘束弾を発射。黄色の網状の電磁ネットがディストピアを拘束した。

 

「そこで大人しく見てろ!お前の最高傑作が無惨にscrapになる瞬間をな!みんな!!」

 

《ヒッサツ!Full throttle!Brave!!》

 

《ヒッサツ!Volca Full throttle!Dead Heat!Meteor!!》

 

《Dragon!マキシマムドライブ!!》

 

「ディファレントだがなんだか知らねえが、これで終わりだ!憐!瞬樹くん!合わせろ!!」

 

「分かってる!!」

 

「承知!」

 

3人同時に飛び上がり、右足にエネルギーを集中。ライダーキックを繰り出した!!

 

「ブレイヴ・エクストリーム!!」

 

「メテオ・インフェルノブレイク!!!」

 

竜爪蹴砕撃(ドラゴニック・ミョルニル)!!」

 

 

3人同時に放たれたライダーキック。

だがそれが直撃する瞬間、ディファレントは両手を広げ紫色の障壁を貼りそれを防いでいた。

 

『────!』

 

「バリア!?おいそれは聞いてねえぞ!!」

 

「けどこの程度!ハーさん!シュヴァルツ!息を合わせてブチ抜くぜ!!」

 

「おう!黒騎士!蒼騎士!力の全てを!!」

 

 

一度飛び退くと、再びその足を突き出しバリアに向けてライダーキック。

ブレイヴの風の力で2人を後押しして威力を増したことで、バリアにヒビが入りだす。

 

 

「踏ん張れ2人とも!もうちょっとだ!」

 

「「オオッ!!」」

 

だが、その亀裂も入った側から修復されていく。なんとか3人同時攻撃で修復を食い止めてる状態だ。

これだけならまだ足りないが────

 

この状況を打ち破れる可能性…silver bullet(銀の弾丸)なら既にある!

 

 

《Trigger!マキシマムドライブ!!》

 

「撃て!アラシ!永斗少年!!」

 

 

「お前らばっかにいいとこ持ってかせるかよ!行くぞ!!」

 

 

「『トリガー・エクスプロージョン!!』」

 

 

銃口から放たれた凄まじい威力の火炎放射がディファレントに向かっていく。

 

バリアを焼き尽くそうとする超火力の一撃。

3人のライダーキック+2人分のライダーの技。これなら或いは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていた。ディファレントから紫の光が放たれるまでは。

 

 

 

『────!!』

 

その光が放たれたのと同時に、バリアが一瞬にして修復。それに加え、俺達全員の攻撃のエネルギーがバリアに吸収されていっている。

 

「何っ!?」

 

「我らの必殺技が……!」

 

「エネルギーが吸われテル…!?」

 

それだけならまだ良かった。

見るとバリアにはダブルの放った炎が。

加えて体にあるラインに光を宿し、点滅し出していた。本体に必殺技のエネルギーが流れ込んでいるのだ。

 

──まさか

 

 

そう思うや否や、俺は全員に向けて叫んでいた。

 

 

「全員ソイツから離れ───!」

 

 

遅かった。

強い光に炎、衝撃波が放たれ、全員纏めて吹き飛ばされた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「────無事か、お前ら…?」

 

「ギリ…ってとこかな……」

 

「俺っちもなんとか……」

 

 

気がついた俺達は辺りを見渡してみる。先程とは別のところに飛ばされたらしい。

ここは確か近くの神社。前に果南姉ちゃんの後をつけてた頃を思い出す。

 

「にしても隼斗さん、よくあの場を切り抜けられたね?」

 

「そーそー。普通あの一瞬であんな事できるカ?」

 

口々にそう言う後輩組。

ちなみにあの時どうしたかと言うと………

 

 

「全員ソイツから離れ───!」

 

 

あのロイミュード、ディファレントから光が放たれる瞬間、俺はシフトアップして駆け出し地面に倒れていた空っぽの永斗少年の肉体と近くにいた憐をどうにか回収。

 

そんでもって咄嗟にブレイヴのエネルギーをオーバーブレイク手前まで強制解放。

 

衝撃をある程度緩和し、なんとかあの場で全員爆死は避けた……と言いたいが…ッ

流石に無茶し過ぎたか?また傷が……それに

 

 

「sorry.永斗少年、アラシと瞬樹くんを取り損ねた………」

 

 

「あー、それなら大丈夫だよ隼斗さん。僕らはドライバーで精神が繋がってるからアラシの安否は………」

 

「エイくん、そのドライバードコ?」

 

「え?…………………あ」

 

永斗少年が腹部を見てみると、そこにはあのダブルドライバーは無く、代わりに身体中には火傷や爆破の衝撃で怪我を追っていた。

 

和らげたとはいえかなりの衝撃を生身で喰らった影響か、大怪我とまでは行かずともアスファルトの破片が刺さっていたり皮膚が焼け焦げていたりしている。

 

「エイくん!?」

 

「ドライバーが……それに怪我してるじゃねぇか!!」

 

「そんな慌てなくても大丈夫大丈夫。だってほら………」

 

永斗少年がそう言うと、みるみるうちにおったはずの怪我が治っていく。いや、治っていくと言うよりは()()()()()()()と言うべきか。まるで巻き戻しのようにその傷が無かったことになっていき…………

 

 

「ね?」

 

あっという間に無傷の状態になった。

What do you mean?

 

「な、治った……!?」

 

「実は僕、『オリジンメモリ』っていう特別なガイアメモリと一体化して不変…まあ事実上の不老不死みたいな感じになってるんだよね。だから怪我とかもこの通り、少しあればすぐに治るんだ」

 

「オリジンメモリ……?」

 

「地球の意思が分裂した普通のガイアメモリとは違ったやつで…まあその話は長くなるからまた時間がある時にね。それよりベルトが無いってことは……」

 

「オリジンメモリ…博士あたりに話してやってくれ。多分食いつくだろうし……でだ、アラシの奴的にこの状況でドライバーを外す…なんてのはまずあり得ない。恐らくさっきの衝撃で外れたと見るべきか。生きてりゃ良いけど…」

 

「それなら心配しなくても大丈夫だよ隼斗さん。アラシってよっぽどの事がない限り死なないバカ高い生命力持ってるから」

 

「……あれ、シュヴァルツは?」

 

「まああの竜騎士も……うん、死んではないでしょ」

 

「雑!?もうちょい心配してやれよ仲間なんだから!」

「まあ、言動や厨二な所が玉に瑕なだけで瞬樹自身かなり強いし…それに、信頼してるから」

 

「ならいいか……それより憐、少し気になったんだが……」

 

「何?」

 

「珍しいな、お前がブチ切れるなんて…確かに俺も頭には来たが…なんかあったか?」

 

「────別に、何も…」

 

「何もって事はねぇだろ、普段あんなに落ち着いてるお前があそこまでなるってよっぽどだぞ?」

 

「そうなの?」

 

「ああ、憐がキレた所は俺も仲間たちも見た事がない。今回が初めてだ」

 

「へぇ……」

 

「なんかワケあるんだろ?それとも…仲間にも話せないような事なのか?」

 

「……俺っちが話したくないだけ。それに、今その話は関係ないでしょ」

 

「でもよ……」

 

「ストップ。例えハーさんでもそれ以上()の中踏み込むなら────

 

 

相応の覚悟はしてもらうけど」

 

 

そう言った憐の目は、明らかな敵意を持っていた。今までになく冷徹な、いつもの穏やかなアイツとは相反する表情だった。

 

「お前…………」

 

「…………」

 

 

「はいはい2人とも、そこまでにしてくれる?僕置いてけぼりでシリアス展開しないで。今は仲間割れしてる場合じゃないって散々向こうで話したでしょ?」

 

「…そうだな。悪い、永斗少年。…憐も」

 

 

「いいよ。ゴメンね、話せなくって」

 

憐はそう言って何処か憂いた表情で言った。

憐は確かに俺達の仲間、それは分かってる。

だが───俺はまだコイツを知らなさ過ぎるみたいだ。

 

「気が向いたらいつでも言ってくれ。俺達は仲間なんだ、悩みや迷いはできる限りない方がいい」

 

「個人の悩みって意外と他人に話すと楽になるしね。……僕も、そうだったから。

 

それで2人とも、今後の行動方針なんだけど……」

 

「そうだな……アラシと瞬樹くんの捜索とかか?」

 

「いいや、エイくんの言った通リ、2人とも生きている確率が高いならそれは後回しでも大丈夫だと思う」

 

「うん、多分憂鬱はさっきの戦いで僕ら全員の実力を把握した。あの様子じゃ当分手出ししてこないと考えるのがいいと思う。

 

隼斗さん、僕としては霧香博士と合流するのをオススメするよ。こっちの世界の出来事を知っておきたいしね」

 

「だな、せっかく戻ってきたんだ。まずはアイツらの安否確認だな。それに…姉ちゃんに帰ってきた事伝えなくっちゃ!」

 

「本当好きなんだね、果南さんのこと」

 

「まぁな!そうと決まれば善は急げ!鳥!」

 

「メテオデッドヒート!」

 

バイクが無いためブレイヴとデッドヒートを呼び出し、俺達は再変身。スレイヤーが永斗少年を抱え、空へと飛び立った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「へぇ、ここが浦の星女学院……田舎の古き良き学校って感じだね」

 

「ああ、俺達の仲間の学校。Aqoursの本拠地だ」

 

 

 

俺達3人は浦の星女学院へ。

校舎内を通り抜け、体育館裏の倉庫の方へと向かった。

 

「ここに基地があるの?」

 

「ああ、えーと確かこの辺に……」

 

『移動禁止』と書かれた段ボール箱の山をどかしていくと、電子パネルのようなものが現れた。えーとパスワードは……あれ、なんだっけ?

 

「ハーさん、まさか忘れたトカ?」

 

「バカいえ!俺がそんな大事な事忘れるわけが……」

 

「隼斗さん、お言葉だけどそう言う人は大抵忘れてるんだよ」

 

「クッ、永斗少年まで…!」

 

 

『何をしている3人とも?早く入ってきたまえ!』

 

すると突然ガシュン!という音がし、足元をみると地下へと続く滑り台が現れていた。

ラボへの入り口だ。

 

「3人ともって…」

 

「ああ、そういやこの部屋隠し監視カメラみたいなのあるんだっけな」

 

「ああ、なんか聞いたようナ……」

「だから僕の事も分かったんだね」

 

「よし、ついてこい永斗少年!」

 

そういうや否やスライダーに飛び込み、続く憐と永斗少年も飛び込んだ。

 

 

長めのトンネルを抜けると、ドライブピットをモデルにしたいつもの見慣れたラボへと着いた。

 

 

「おお……正に秘密基地だね。良い趣味してるよ、ここを作った人」

 

 

「そうだろうそうだろう!流石天才少年だな士門くん!!」

 

 

声がした方を向く。

緑がかったゆるふわな黒髪、白のYシャツに緑ネクタイと黒ベスト。黒のパンツスーツ姿に丈の長い白衣を羽織った女性。

 

直接顔を合わせるのは数日ぶりになる我らの霧香博士だった。

 

「「博士!!」」

 

「やぁ、2人とも!よくぞ無事に帰ってきてくれた。異世界に飛ばされるなんてトラブルがありながらもよく生き延びてくれたもんだ!流石私自慢の教え子達だ!!」

 

そう言って俺達2人を抱き寄せた博士。

何もそこまでしなくても……!

 

 

「仲良さそうで何より。僕も加えてくれると嬉しかったけどね」

 

「ん?…ああ悪いな士門くん。ほら、君も!」

 

永斗少年もこの中に加わり、纏めてハグされた。帰ってきて姉ちゃんより先に博士にされるとは……ちょっと悔しい。

しかしこうしてると本当生徒と教師だよな…実際そうだけど。

 

数秒すると博士は俺達を離し、改めて向き合った。

 

「改めて…だな。はじめまして、士門永斗くん。一時霧香だ、まさか君達もこっちに来ていたとはね」

 

「来る気は無かったんだけど仲間たちに背中を押されるどころか蹴飛ばされてきたもんで。僕とアラシ、それともう1人の3人で来ました」

 

「もう1人?」

 

「瞬樹っていう仲間の1人です。どうやら血縁上はこっちの世界のAqoursの身内みたいなんですけど…」

 

「Aqoursの身内?誰だい?」

 

「俺達の見立てじゃ120%善子と思われる」

「キャラもそっくりだっタ」

 

「ほう…仲間、という事はその彼も仮面ライダーか…会うのが楽しみだよ。

それで、君の相棒とその仲間は?」

 

「ああ、実は────」

 

俺達はここまでの出来事を簡潔に纏めて霧香博士に報告した。

 

μ'sに会ってきたこと、向こうで憂鬱の3幹部(2幹部)を倒した事。

それ以上に強力な最高幹部『傲慢』朱月と戦ったことや異世界のゲートをなんとかエルバを向こうの世界に戻さずに開けて帰ってきたこと。

 

それからこっちに戻ってきて早々エルバとの戦闘になったことなど────

 

全てを話し終えると、霧香博士は椅子に深々と腰掛けた。

 

「なるほど、そしてエルバとの戦闘中に謎のロイミュード、ディファレントの攻撃によって吹っ飛ばされ、切風くんや瞬樹くん達とはぐれてしまったと……」

 

「do you understand?」

 

「Yes…とは言いたくないものだね…状況は割と悪い方だ、深刻とまではいかないけどな」

 

「けど、2人とも死んではないと思うので多分大丈夫だと思います」

 

「君がそう言うなら、一先ずはそれを信じようか。しかし、エルバの手によって改造された強力なロイミュードか…超重加速を使えるって一体どんな方法で…」

 

「あぁ、正直めちゃくちゃ強かっタ…」

 

「俺達5人がかりでも厳しいとなると、超進化態に匹敵…もしくはそれ以上かもな」

 

「さしずめ、『異常進化態』ってところか。融合でもなく、通常進化でもない……厄介なものを作り出しやがって……!」

 

「ロイミュードの進化?」

 

永斗少年が何やら首を傾げる。

そうか、本棚じゃロイミュードの情報は不充分なんだっけか?

 

「ロイミュードは、機械生命体でありながら『人間の感情』を糧として進化する怪物なんだ。人間の心とシンクロするパターンや、ネオバイラルコアってのを使って人間そのものと融合するパターン。だが今回のパターンはどれにも該当しない……」

 

霧香博士がコンピュータでロイミュードのデータを見せながら永斗少年に解説をしている。これで穴だらけの情報も少しはマシになるか…?

 

「なるほどね…だから異常ってことか。ロイミュードの事もこれでほぼ完璧にインプットできた、これならなんとか対策は立てられるかもね」

 

「本当すげえな……あ、ところで博士!姉ちゃん達は!?」

 

「彼女達なら各々自宅の筈だ。心配せずとも無事だとも」

 

「そうか……」

 

 

家にいるってならとりあえず安心……いや、この目で確かめるまでは安心はできねぇ!

 

「悪い博士!憐!永斗少年!俺姉ちゃんの所行ってくるわ!」

 

「え?今行かなくてもいいだろう!それに、君らとはこれからの方針を話し合わなくてはいけないし」

 

「頭脳派天才が2人もいりゃ充分だろ!んじゃな!!」

 

 

そう言ってあとは天才共に任せ、俺はラボを飛び出した。

 

 

「…やれやれ…ま、ここんとこ心配かけっぱなしだったし顔見せついでに怒られてくるといいさ」

 

「本当大好きなんだね、果南さんのこと」

 

「なんでも彼らは幼少期からの長い付き合いらしいからな。まあ、何があってああなったかとかのことは私も詳しく知っているわけではないからあまり語れはしないが」

 

「ふーん……じゃ博士、僕らは頭脳担当同士これからの方針について語りますか」

 

「だな。君がいるなら心強いことこの上ない、頼りにしているぞ」

 

「なにせエイくんは地球の全てを知ってるらしいからナ!」

 

「地球の全て…だと?」

 

「ええ、まあ……色々複雑で長くなりますけど、聞きます?」

 

「是非聞かせてもらおうか!知識の世界に生きる者として、そいつは聞き逃せないよ!」

 

「おっけー。ちょっと面倒くさいけど…それじゃあまずは────」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

バイクが行方不明なので、すごく面倒だったが歩いて向かうことにした。

 

距離だけならそう遠くはないし、ブレイヴを使えばすぐなのだが…鳥をさっき無理させすぎたので休ませてやらねえとな。

 

本来なら船着場から船にのる…はずだったが船を操縦する人も止まってた。まあ幸いすぐに動かせる状態ではあったので事故らないよう慎重に動かしながらマリンパーク方面にある姉ちゃんの家へ。

そして店の方へと顔を出す。

 

が、店は閉まっておりcloseの看板がぶら下がっていた。

 

「まあ、そらそうか…」

 

季節が季節、加えて今日は確か平日だった。

定休日だっけか……けどおかしいな…それでも家にいるなら何かしら誰かの返事は来るはず……

 

「…いやな予感がする」

 

 

背に背負った煌風を抜き、鍵穴のすぐ隣に狙いを定める。

 

「おじさん、おばさん…sorry!」

 

出来るだけ他の部分に影響を与えないよう正確に突き刺す。

そうしてできたスペースから手を突っ込み鍵を開けて中に。

 

すると────

 

 

「……だと思ったぜ」

 

そこには何か作業をしている果南姉ちゃんの親父さんとお母さんの姿が。

それも、()()()()()()で。

 

「shit!手遅れだったか……っ!?姉ちゃん!」

 

 

何度か遊びにきたときに場所は知っているので急いで姉ちゃんの部屋に。だが部屋はもぬけの殻、誰もいなかった。

 

「いねぇ……そうだ!携帯携帯……!」

 

電話帳から連絡先を見てダイヤル。

何度か呼び出し音が鳴るも……

 

『おかけになった電話は電波の届かない所にあるか、電源が入っていない可能性が────』

 

無機質なアナウンスだけが流れる。

だと思ったぜ畜生が!!

 

しかもよく見たら圏外だ、普段は問題なく使えてたから……アイツがなんかしらのjammingをしているとみた。

 

「電話は使えない…こっから1番近い奴は……っ!アイツなら!鳥!来い!!」

 

無理はさせられないとか言ってられる状況じゃなくなった。俺はブレイヴ・ファルコンを呼び戻し即座に変身。近くに堂々と立つホテルの上の階へと飛び上がった。

 

「携帯が繋がらねえ、行方不明になるまで姉ちゃんが誰かと一緒にいたとして、それを知ってるとしたら……」

 

ジェット機も目じゃないスピードでかっ飛ばし、外周をぐるりと回る。

 

「っ!いた!」

 

ふと下に目を向けると、出入り口から誰かが飛び出してくるのが見えた。特徴的な輝くような金髪と黄色の目。探していた張本人だ!

 

「マリー!!!」

 

 

「へ………Falcon!?」

 

勢いよく目の前に着地。

地面が少しひび割れたが、そんな事気にしてられない。

 

「帰ってきてたの!?」

 

「ああ、ちょうどついさっきな!話したい事は山みてえにあるんだがそれはまた後回しで!とんでもなくemergencyなんだよ!」

 

「アナタの聞きたいことは分かるわ。ワタシもそれを伝えに行こうとしてたから……カナンでしょ?」

 

「ああ!今姉ちゃんは何処に!?」

 

「あの怪物男……アイツがカナンを…!」

 

エルバが!?にしても姉ちゃんまたかよ…なんか攫われるのこれで3度目だぞ!姉ちゃんのせいじゃないから怒っても仕方ねえけどよ…!

 

「っの野郎……!何処に!?」

 

「それがなんとも…場所は言ってなかったわ」

 

「…オーケー、別にいい」

 

「ハヤト?」

 

「虱潰しに探せばいいだけだ!ちょうど町の人はいつもより少ねえ、シグナルバイク達と俺のカンで!集まれお前たち!」

 

口笛を吹きシグナルバイク達を呼び戻す。

あとは俺が空から探せば大丈夫なはずだ。

 

恐らく奴はこの町からは出ちゃいない。

この状況だ、外に出ようもんなら先輩方が動かないはずはない。

 

それがないってことは、この惨状が外には伝わってないということ。

恐らく今の内浦はなんらかの影響で完全孤立状態…それならこっちの事情的にも都合がいい。

 

早く見つかる可能性は大いにある!

 

「マリー、とりあえず博士のラボに行っとけ。あそこには博士と憐と…あと向こうの世界から一緒に来た仲間がいる。家に篭ってるよりは安全だ。できれば他の連中にも声かけて欲しいが…」

 

「携帯がどこにも通じないの、だから…」

 

「だろうな、今から全員を集めるのは危険が過ぎる。そこんとこは憐に頼むしかねえか……とにかく、早く学校の方に!」

 

「ハヤトは!?」

 

「決まってんだろ?

 

…果南姉ちゃんが攫われて、大人しくしてろって方がどうかしてるぜ!!」

 

アクセラーウイングにエネルギーを集中させ風と共に一気に跳躍。マリーが飛ばされそうになってしまったがそこはすまんと心の中で謝る。

 

そして空中でブーストをかけ一気に急加速。

とりあえず街の方へと進路をとった。

 

待ってろ姉ちゃん!あとエルバ、てめえは俺がぶっ飛ばす!!

 

 

「……気をつけて、ハヤト」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「それにしても、まさか2人まで捕まってたとはね……」

 

「本当、驚いたよ……」

 

「でも、2人が一緒にいて少し安心かも。1人じゃ心細かったもの」

 

私達が連れてこられたのは、何処かの研究所みたいな所だった。

まさか、曜と梨子まで一緒だったとは思わなかったけどね。

 

「みんな無事かなぁ…」

 

「ここに来ては無さそうだし、もう捕まったってことは無さそうね。外の様子は分からないのがちょっと怖いけど…」

 

「隼斗……」

 

未だ向こうの世界から帰ってこない弟分。

無事だっていうのは分かってるけど、それでも気になって仕方がない。

 

それに、ここには私達の他にも沢山の人達が捕まっていた。

 

テレビで見たことがあるような人も多くいて…どうやらあの人は物事に対して優れた才能を持った人を集めてるらしい。理由はわからないけど…

 

「でも、才能でなんで私なんだろうね?そりゃ曜は水泳、梨子はピアノで分かるけどさぁ」

 

「果南ちゃんも私から見れば凄いよ。体力とか色々…」

 

 

「いい観点じゃないか。思考停止しない、則ち憂鬱に沈まない心というのは十分に才能だ。やはり俺の目に狂いは無かった。それはそれで…笑えないがな」

 

あの男が戻ってきた。私達を攫った張本人、隼斗達を別の世界に飛ばしたドーパント。

 

「で!いつまで私たちをこうしておくつもりなわけ!?」

 

「俺の手の上での自由なら許すと言ったはずだけどね。君たちは俺が興味を持った才能の持ち主なんだ。あっちの世界で敗れ、減った手駒の補填として迎え入れてもいいと言っているだろう。君たちに適したメモリも用意してある」

 

「だーかーらー!嫌だって言ってるでしょ!?早くここから帰して!」

 

それにそのガイアメモリ?っていうの危ないやつなんでしょ!?なんてもの渡そうとしてんのこの人!!

 

それを知らないのか、普通に貰っちゃってる人もいるし…!しかもこれ言われるの5回目!

 

「無駄だ。ここから出ても既にこの街は俺の拠点、俺が世界を掌握するための城となっている」

 

「世界を…掌握…!?」

 

「言っていなかったかな桜内梨子、そう怪訝な顔をされるのは心外だ。通信妨害で情報は遮断し、外部にこの状況が漏れることはない。誰も俺の計画を知り得ない。今、別の仮面ライダーに来られるとそれはそれで笑えないからな」

 

別の仮面ライダー?

…そう言えば隼斗がいつだったか言ってたっけ?隼斗達の先駆け、かつて世界を救ったもの凄い偉大な先輩たちがいるって。

 

けど……ふーん。そうなんだ?結構大それた計画を立ててるみたいだけど……

 

「散々なんでもできるって言っておいて、仮面ライダーには怯えるんだ。戦って楽しくなりたいなら他所の仮面ライダーのとこに行っちゃえばいいのに」

 

「…例えば、だ。強さに飢える戦闘民族がいたとして、彼は迫る津波に勝負を挑むか?…答えは否だ、それでは笑えない。何故なら彼らは死にたいわけじゃないからだ。俺も失敗したいわけじゃない。順序を立て、その道のりを噛み締め…作り上げた城の上で笑うのさ。

 

一つの挑戦を乗り越えてこそ、憂鬱を晴らし前に進める。その届き得る限界こそ、俺の場合は二つの世界の支配なんだ」

 

そう言うとその人は新しく2本のメモリを取り出した。色は2本とも金色で、他の人にあげてた奴とは別格だというのは、素人の私でも分かる。

 

「今のところつまらないほど予想通りに苦戦し、順調で、少し苛立っている。世界を掌握し、憤怒も『神』も殺し地球の意志を掌上に置いた時…その時にようやく笑えるのかもしれないな。最も…このままでは退屈でその前に死んでしまいそうだが…」

 

「…あっそう。別にあんたのことなんて知らないけどさ、さっきから聞いてりゃ面白くないつまらないって文句ばっかり。子供じゃないんだから」

 

「何…?」

 

「自分ばっかり不幸な顔してるのが可笑しいって言ってるの。自分だけが憂鬱だなんて馬鹿みたい」

 

憂鬱なんて、そんなもの私はよく知ってる。

多分、梨子も曜も同じ。

 

ピアノでスランプに陥っていた梨子。

その梨子がいないときに曜も千歌と一悶着あったと聞いている。

 

私は────大切な親友のことで。

 

父さんのこともあって学校に行ってなかったのもあったけど、大元の原因があるとしたらそれだ。

 

負の感情の雁字搦め。

私は自分から鞠莉を突き放し続け、危うく修復不可能な傷を負わせるところだった。

 

「そうか、ならば教えてくれ。俺の憂鬱はどうすれば晴れる?憂鬱を知っているというのなら、君はどうやってそこから解き放たれた?」

 

「……そんなの、言ったってあんたなんかに分かるわけない。でもさ、もしあんたが世界征服して誰も敵わなくなったとしても……本当にそれで笑えると思ってる?」

 

 

「…面白いことを言うな。それを確かめるため、成し遂げるのさ」

 

その言葉に思わず驚いたような顔を見せた男。少なくとも少しは響いたらしい。

 

「確かめる、ね……悪いけど、多分あなたの目的は果たせないよ、『絶対』に」

 

 

「それは、彼のことを言ってるのかい?天城隼斗……確か君の幼馴染だったな。幼馴染…いや違うな。もはや姉弟と言っても過言ではない…理解はできないが、彼と君との間には切っても切れない縁がある…そう、人が言う『絆』というものが。硬い鎖のように君達を繋いでいる」

 

「隼斗達がいる限り、絶対にあなたの目的は果たせない。いや、果たさせない」

 

「そうだよ!隼斗達を打ち負かした気になってるみたいだけど、隼斗が本気出したらすごいんだからね!!」

 

「隼斗君と憐君がいる限り、あなたが目的を果たす事はないですよ。倒れても立ち上がる…憐君はともかく、隼斗君すごく負けず嫌いだから」

 

「だとしてもだ。彼は一度俺に完膚なきまでに倒されている。いくら力をつけたところで、仲間を増やしたところで勝てはしないさ。それに、今の彼にここを突き止めることは────」

 

そう言いかけた途端、突如として揺れ始める地面。大きな音を立て、床や天井にヒビが入り出したのが見えた。

 

「え!え!?何!?」

 

「地震!?こんなときに……」

 

「いや、待って!地震だけじゃない……これは────────風?」

 

まさか、そう思った私は咄嗟にみんなに呼びかけていた。

 

「みんな!気をつけて────」

 

その瞬間、天井を風をまとった凄まじい光が貫いた。しかも的確に数秒前までその男の人がいたところを撃ち抜いていた。

 

 

「…全く、野蛮な訪問者だ。笑えない…正義のヒーローとは思えないな」

 

 

晴れていく煙の中から、うっすらと影が見えた。

現れたそれを見て、喜びや驚き、そしてほんのちょっぴりの怒りが私の中に湧き上がったのを感じていた。

 

 

 

「────エルバァ!!」

 

 

青いスーツとゴーグルを光らせて空から降り立ったのは、危なっかしくて、強くて、優しくて。

 

とっても頼りになる、私のヒーローだった。

 

次回に続く!




対策?それよりも動く!それが大切な人のためなら尚のこと。
ダブル達を連れてきたもののまたしてもはぐれ、別行動かと思いきや攫われた彼女たちを助けるべく隼斗は単身エルバの隠れ家へ!

一方のアラシはどうなったのか?それは146さんのラブダブルサイドでお楽しみください。↓146さんのラブダブルはこちらのリンクから!
https://syosetu.org/novel/96993/69.html

それでは次回もお楽しみに!

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