ラブライブ!サンシャイン!!×仮面ライダードライブサーガ 仮面ライダーソニック   作:MasterTree

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長きに渡るコラボ編も残り僅か!はたして隼斗は果南を無事助け出すことができるのか?
今回も両者の作品でかなりストーリー展開が異なっています。
あちら側も合わせてご覧ください!

そして今回はこのコラボ編でやりたかった事トップのあの戦いが!
世界と作品を超えたドリームマッチをお見逃しなく!!



ラブダブルコラボ編 第8話 駆け抜けろS/激戦のロード

これまでのサンシャインサーガ!

 

攫われた果南を助けるため、一人エルバのアジトへ突撃した隼斗。しかしそこには、他にも曜や梨子、そしてその他大勢の人達が。

 

隼斗は一人エルバに戦いを挑むも苦戦を強いられてしまう。そして決死の覚悟でオーバーブレイクモードを発動するも、後一歩のところで力及ばず倒れてしまった。

 

逆に倒されるかと思われたが、なんと果南が1人残るという条件と引き換えに見逃される。

 

与えられた猶予、36時間が過ぎついに決戦の日を迎えたのであった…

 

 

_____________________________________________

 

 

バイクを走らせやってきたのは昨日攻め入ったエルバのアジトであった研究所。

 

上の方には撃ち抜かれたような痕(俺の)やら

壁には大穴が空いたりしていた。

これに関しては覚えがないんでこれが後から聞いた瞬樹くんが突撃したって言ってたやつか…

 

ちなみにメンバーは俺(隼斗)と憐、アラシだ。瞬樹くん及び黒澤姉妹とは未だ連絡が取れず、永斗少年は何やらやる事があるらしく霧香博士と留守番。

 

「準備はいいか?」

 

「とっくに一回突撃してんだ、準備も何もAll readyだぜ!」

 

「ちなみに俺は全くだけどな。ドライバー見つかってねぇし」

 

やる気は充分なんだが戦力的には正直かなりしんどい。俺と憐はともかくアラシはダブルドライバーが未だ行方不明のため変身不能。

 

それでもやるしかない、そう思い中に入ろうとするもアラシが突如その足を止めた。

 

 

「このアジト、どうにも怪しい感じすんだよな」

 

「罠ってことカ? まぁこんなバリア張ってあるくらいだしナ…」

 

憐が手を伸ばすと、そこには透明だが確かにそこにあるエネルギーの壁。というよりドームに近い形で展開されたバリアがあった。

 

事前のbriefingで話を聞いた限りでは、昨日の内にシグナルバイク達や永斗少年の分身のメカであるファングメモリで各地の偵察を試みていたらしいが、この場所に関してはコレのせいでほとんど収穫が無かったらしい。

 

事前情報ほとんど無しで攻め込むとか無謀にも程がある。まあ罠だと分かっててもやるしかねぇんだけどな。姉ちゃんも待ってるし。

 

「……あぁもう、しゃらくせぇ!! どうせ分かんねぇんだ! フクザツに考えるのはもうやめだ!」

 

「気が合うじゃねえかアラシ! そうだよな、こーいうのは…Dashで突破あるのみだぜ!!」

 

《SignalBike!》

 

「Ready! Hensin!!」

 

《Rider!Sonic!!》

 

仮面ライダーソニックへ変身。

握りしめた右拳に風を纏わせる。

 

「Rider……Wind Knuckle!!」

 

 

そしてそれをバリアに向けて思い切り叩きつける。ヒビが入り砕けたところで転がり込みなんとか侵入成功。振り返るとバリアがもう再生していた。

どういう仕組みしてんだコレ…

 

 

「しゃあ! 突入成功!!」

 

「マジで雑だなハーさん…アラシサンももうちょいクールだった気ガ…」

 

「永斗曰く脳筋らしいぞ、俺は。知らんけど。んで…どうにも予想通りガッツリ罠だったみてぇだな」

 

「ま、罠ごとBreakすればいいだけだろ!行くぞ!」

 

そのまま建物の中へ突入。

だが、俺たちを待っていたのはエルバではなく……

 

「クク…待っていたぞ愚かな下等生物共が。まんまと罠に嵌ったな!」

 

そこにいたのはエルバでもドーパントでもなく、スパイダー型の下級ロイミュード。

 

胸に刻まれたナンバーは050。

かつてシーカー・ロイミュードとしてマッハ先輩達を苦しめたという個体だ。

 

「050…!」

 

「テメェは…見覚えある番号だな。海底でスクラップになったかと思ってたぜ」

 

「あの程度で死ぬとでも思ったか! この上なく不愉快だ。借りは返させてもらおうか切風アラシ!」

 

そういやアラシと千歌がコイツに遭遇してたんだっけか。何があったかは知らんが、相当怒らせたことは確からしい。

 

 

「ハッ!たかが下級1匹、お前に何ができるってんだ!今は西堀令子もいねぇ、進化態にもなれねぇお前が、俺たち相手にどうするつもりだ?」

 

確かに050の持つ『負の感情増幅』の能力は厄介だが、進化もしてない今はそこまで脅威では無いはず…だが奴は何処か余裕のある様子だった。

 

「これが何か、お前たちに分かるか?」

 

そう言って奴が取り出したのは、青いドーパント用のガイアメモリ。…なんだよまたそのパターンか。

 

「東京で出くわした奴みたいに、ロイミュードでもドーパントに変身できるんだったな、そういえば!」

 

「そんなのは凡人の発想だ。ロイミュードがガイアメモリを使ったところで、できあがるのは多少強力なドーパント。進化態と大差は無い、077が良い例だ。だがもし、進化態とドーパントの力を融合できれば? これはそういう実験だ!」

 

《Aquarium!》

 

アクアリウム…水族館?

 

奴が肩にメモリを突き刺した途端、その姿はドーム状のエネルギーと水に包まれ進化態に変化する時のように歪みその姿を変えていく。

 

そしてその姿は元のシーカー・ロイミュード同様の魔術師のような見た目に、無数の水棲生物の意匠が施された見たことない進化態へと変化した。

 

「馬鹿な!シーカー・ロイミュード!?」

 

「でも色がチゲーぜ!?」

 

「コイツ、ドーパントの力を取り込んだってのか…!」

 

ガイアメモリの力を取り込んでの進化…方法的には異常っちゃ異常だがディファレント程じゃない。さしずめ『亜種進化態』…アクアリウム・ドーパント・シーカーってところか!

 

 

「実験は成功だ! 次は性能検証に移行しよう!」

 

 

アクアリウム・シーカーの右腕がウツボに変化。ドライバーを構えていた憐の体に絡みつくと、そのまま放り投げ窓ガラスを突き破った。

 

「憐っ!」

 

腕には珊瑚に貝殻の装甲が。

切り落としに行ったら間に合わないと判断し先回りしてキャッチ。

 

「わ、ワリィハーさん……」

 

「気にすんな。ロイミュードがドーパントの力取り込んで進化とか予想できる方がcrazyだぜ。…だが」

 

気づけばそこはバリアの外側。

まぁno problem.

 

「この程度、またぶち抜いて…!!」

 

拳に風を纏い、バリアを殴りつける。

が……

 

「…ってぇ…!!」

 

痛ってぇ…!今度はヒビすら入らねぇ…コレ

明らか強度が上がってやがる…

 

「だったらコイツで…!」

 

ゼンリンシューターを取り出し連射。

前輪を回転させ殴りつける。まだダメ。

 

「こうなったら……!」

 

煌風を抜刀し、ドライバーからシグナルソニックを抜き煌風のスロットに挿入。

 

《ヒッサツ!ぁふるすろっとる!!》

 

「隼斗流剣技 捌ノ芸!一刀流……」

 

助走をつけて駆け出す。

そして、バリアの目前まで来たところで回転し、足を思い切り踏み込む。

そして半円を描くように刀を切り上げる!

 

怒魃天(どはつてん)!!」

 

 

エネルギーの斬撃がバリアに直撃。

強力なバリアだろうが、フルスロットルならザックリといける…と思ったがそれでも多少傷ついたぐらいでほぼダメージはなかった。

 

 

「…これが狙いかお魚天国」

 

「最初の実験モルモットはお前と決めていたんだ。おっと、逃げようとしても無駄だぞ? 変身したことでバリアの強度は上がっている」

 

「水族館の水槽ってとこか。アクリル板を何層にも重ねてるっつう」

 

そうか、この建物を覆ってるバリアは水槽って訳か!確かに水族館の水槽は水圧で割れたりしないようにとても頑丈な極厚アクリル板でできている。ちょっとやそっとじゃ割れなくて当たり前…

 

「こうなりゃブレイヴで…!」

 

ブレイヴ・ファルコンを呼び寄せ、強行突破を試みたが窓から見えたのはアラシのハンドサイン。アレは……

 

 

『早く行け』

 

 

「…っ!」

 

「ハーさん、アレって…」

 

「…行くぞ」

 

「デモ…!」

 

「憐!!」

 

正直なんとしてでもバリアを破ってアラシを助けたいが…破るのに無駄に時間を食ったら敵の思う壺。エルバの奴はここにはいねぇ、となると別の候補の……

 

「…いいんだナ」

 

「ああ。…アラシを、信じる」

 

 

俺たちはバイクに乗り込み、もう一つのアジトの候補地である場所に向かった。

行き先は駿河湾沿いにある鷲頭山。ここらの山並は『沼津アルプス』なんて呼ばれてて、割とハイカーに人気のスポットだ。

 

 

「山ん中、か…」

 

「つってもよーハーさん、さっきのあの場所は科学研究所、ここはいい感ジの有名スポット。アジト候補地がいくらなんでも人目につきそうな場所ばっかじゃネ?」

 

「これはただの予想なんだが…多分アイツの例の能力が関係してんだろ。人が多い方があの止めるやつ使う時により多くの人間を巻き込める…バレたところでアイツならどうとでもなるしな」

 

「ナルホド、それは一理アル」

 

「それに有名スポットとはいえここは山…普通の人じゃくるのが難しい場所にアジト作っちまえば多少セキュリティの面も楽になるしな」

 

「確かニ。…待てよ、って事はさハーさん…」

 

「ああ。こっからは……」

 

 

『ーッ!』

 

空から偵察させてたファルコンが戻ってきた。一通りこの山の周辺を探らせていたが、どうやらそれが済んだようだ。

 

「山登り、だな」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「よっ…」

 

「テリャッ」

 

まあ山登りつってもわざわざ登山もrock-climbingもする必要なく飛べるからめっちゃeasyだったんだけどな。俺はブレイヴ、憐はメテオデッドヒートを使い、一気に上空まで飛び上がる。向こうの世界のアジトみたいな対空防御兵器が無かったのは幸いだったな。

 

「ハーさん、なんか見えル?」

 

「こっからじゃあなんともだな…もう少し高度下げて探索するぞ」

 

「オケ〜」

 

高度を下げ、地上に近づくように飛びながら辺りを見渡す俺たち。だが辺りを見渡しても木々が生い茂るばかりでそれらしき建物一つ見当たらない。まああったらあったでそれは困るんだが…

 

「どこ見ても木ばっかだな…」

 

「なーハーさん、これ降りた方がいいんじゃねぇカ?多分空から探してたら木に邪魔されてマトモに見えねーゼ?」

 

「そうだな」

 

地上へ降り、一旦通常フォームへ戻す。

ファルコンには引き続き空から探索を続けてもらい、俺たちは歩いて探すことに。

 

 

「しかし、さっきの050…ガイアメモリの力を完全に取り込んで進化した、みたいな感じだったな…」

 

「ああ、あの青いヤツか…ロイミュードは本来人間の感情が進化条件…シーカーに関しては融合進化だったカラ…」

 

「ああ、アイツの融合してた人間…西堀令子は今は檻の中だ。それに、他の人間を探すにしても、再度融合できるほどの条件を満たす悪意を持つ人間ってのは限られてくる」

 

「その制限を克服されちまっタ…」

 

「多分エルバの奴だろうな。天才だってんだから、ロイミュードにガイアメモリの力を馴染ませて進化を促す…そういうtuningができても不思議じゃねぇ」

 

「厄介ダナ…」

 

「ま、だとしても関係ねぇよ。進化条件が変えられただけで、大きな問題じゃねぇ。倒すってのは変わらな……っ!」

 

何かを感じ、即座に煌風を抜刀。

すると奥の方から木々を切り裂いてエネルギーの斬撃が飛んできた。

 

ギリギリの所でそれを弾き、近くにあった木が真っ二つに切り倒された。

 

「っぶねぇ…!?」

 

「今のっテ…!」

 

 

「なんだよ!せっかくぶった斬れたと思ったのに…悪運の強い奴め!」

 

奥の方から現れたのはロイミュード007。

下級状態のバット型だったが、一本の灰色のガイアメモリを取り出すと、それを腕に挿した。

 

《bullet!》

 

するとその姿が歪み、変化する。

007の進化態ソード・ロイミュード。

だがその姿はさっきのシーカー同様に変化を遂げており、ガンメタカラーのボディに両腕の刃には銃口のような筒がつき、体中にはガトリングや弾丸などの意匠が施された見たことのない姿になっていた。

 

「007カ!」

 

「またてめえもドーパントの力を…」

 

「何故それを…」

 

「さっき050がくっちゃべってくれたからな。どーせお前も融合進化出来なくて仕方なくガイアメモリ使ってんだろ?」

 

「フン!侮ってもらっては困る!今の俺はあの時よりも性能ははるかに上がっている、もはや融合すべき多賀の奴も不要だ!津島善子と国木田花丸は仕留め損ねたが…あの黒の剣士や他の連中の前にまずはお前たちから始末してくれる!!」

 

 

「黒の剣士?」

 

「ああ、ヨッちゃん達が助けられたって言う…ま、どうでもいいカ。ハーさん、やれる?」

 

「ああ!たかがロイミュードの1匹、今の俺たちの実力ならno problemだ」

 

 

「そんなら……俺っちだけでもジューぶんカナ」

 

 

「は?」

 

そう言うとスレイヤーが俺の前に出てクローを構えた。おいおい、まさかお前……!

 

「行きなよハーさん、コイツは俺っちが引き受けル!」

 

「なっ…馬鹿言うんじゃねぇ!この進化態の力は正直わかんねぇ、いくらお前とはいえ1人は…」

 

「そっちこそ馬鹿言うナ!果南サン待たせてんダロ!?アンタが行ってやらないでどーする!!」

 

「でもよ…」

 

 

「それともなに?俺っちの…仲間の事が信じられないトカ?」

 

そう言われてハッとなる。

…そうだ、自分から残った果南姉ちゃんも、さっきのアラシも、俺を…俺たちを信じてくれたからそういう判断をした。

 

だったら────信じると言われた俺たちが…俺が仲間を信じないでどうする!!

 

 

「…やれるか?」

 

「何度も言わすなヨ。俺っちダゼ?」

 

「…分かった。なら遠慮なく!!」

 

《ズーット!Sonic!!》

 

憐を信じ、シフトアップして駆け出す。

目指すはこの山のどっかにあるエルバのアジト!!

 

「逃がすか!」

「こっちの台詞だボケ!!」

 

ソード・ロイミュード改めバレット・ドーパント・ソードはエネルギー斬撃と共に銃口から弾丸を放とうとするが、直前にスレイヤーが奴に飛びつき攻撃を中止させた。

 

「オメーの相手は俺っちダ!!」

 

「ならまずは貴様から切り刻んでやる!!」

 

「ジョートーだ!逆にそのナマクラへし折ってやラァ!!」

 

 

頼んだぞ…憐!

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

って、さっきハーさんに啖呵切ったのはいいんだケド…ちょっとこれきビィかなぁ……?

 

 

「っルァ!」

 

「ッ!」

 

ソードが振り下ろす両腕の刃を避け、クローで一閃。再び振り下ろされた右腕の刃を受け止め、右腕のクローを突き出す。

 

「クッ…!」

 

火花を散らし、怯んだ所に蹴りを入れ両手のクローで二撃。後ろ回し蹴りを入れて吹っ飛ばス。

 

「やるな…ならこれはどうだァ!?」

 

すると今度はソードが両腕からエネルギーを纏った刃を射出。加えて腕や体の銃口から弾丸を連射してキタ。

 

「ハァ!?銃は聞いてネェんだケド!?」

 

何発かは叩き落とせたものの、流石に全てを捌き切ることはできず二被弾してしまう。

 

「ソード…剣じゃなかったのかよテメェ!」

 

「甘いな!今のオレはガイアメモリで別の力を取り込んでいる!刃物だけがオレの武器だと思うな!!」

 

そう言うと右腕の銃口をこちらに向け、また弾丸を放ってキタ。

 

走り出してその場を離れ連続で撃たれる銃を避ける。木の陰に隠れるが、すぐ横をぶち抜いたのはなんと弾丸ではなく刃。

 

「ハァ!?なんだよソレェッ!!」

 

《ズーット!Slayer!!》

 

シフトアップしてすぐさまそこから飛び出すも、ソードは既に目の前に。腕の刃の一撃をガードできずニもらってはしまい、加えて反対の腕の銃口から剣のように鋭い弾丸が俺っちを襲い、吹っ飛ばされる。

 

「ぐうっ!」

 

追撃で叩きつけられる弾丸の雨。コレを突破スルのは至難の技。

 

俺っちはハーさんみたいに多種多様なシグナルバイクを持たない。

相手に応じてシグナル交換を使っての対策はできない…ケド!

 

「ソニックになくてスレイヤーにあるモノ…それは基礎のパワーと装甲の硬サ!これさえありゃ……多少の無理は、押し通セル!」

 

左腕で奴の腕を掴むと、脇に挟んでガッツリ固定。右腕のクローで何度も何度も切りつける。

 

「クッソ!離せ!」

 

「へっ…やなこった!!」

 

だが、こっちも敵の刃が装甲に食い込み、銃弾が至近距離から撃ち込まれ続けることでじわじわと俺っちもダメージを負ってル。

どっちが先に根を上げるか…こっからは我慢比べダ!!

 

こっちも負けじとクローで引っ掻きまくる。ソードの方も連続で切り続けたダメージが蓄積していってるのか、そのボディーに傷が増え始めている。

 

「クッソ!なんだコイツ…!」

 

「オメェが!死ぬまで!離すもんか!!」

 

「いい加減に……しやがれぇぇッ!!!」

 

その叫びと共に放たれる弾丸。

だが俺っちも負けじと蹴り飛ばしたあと食らいついてクローで連撃を浴びせて吹っ飛ばし地面を転がる。

 

起き上がった007の体がよろめき、一瞬動きが止まった。

 

「(っ!チャンスだ!!)」

 

一気に駆け出し、トドメを刺さんと爪を構えた。

 

「コレで────!」

 

俺っちの勝ち、そう思いドライバーに手をかけた瞬間

 

 

ガガガガガ!!

 

 

何処からか目に見えない何かが一斉に飛んできて全身に直撃。

バランスを崩し思い切り転倒、その場に倒れ伏してしまった。

 

「ガアアッ!?」

 

「ふーっ、危ねぇ危ねぇ。ダメ元でやってみたが…思いの外上手くいったな?」

 

「今、なに…ガ……!」

 

「ああ?…ああそうか、お前には見えてなかったのか。コレが」

 

ふと見上げると、007の周りには肉眼でやっと見えるレベルの極小サイズの無数の弾丸と金属片が浮いていた。

 

そうか、アイツはそれを射出シテ…!

 

「俺がエルバの野郎からいただいたメモリは『バレット』使えるモノをなんでも弾丸に変えちまうとんでもねぇメモリでな?こういう事も…できんだよ!!」

 

蹴飛ばされ地面を転がる。

弾丸はともかく、あの金属片は何処から…と思ったが、すぐさま理解した。

 

アレは戦闘で打ち合った時に刃こぼれしたりして散らばったモノだ。それを奴は能力で弾丸に変え、高速で射出する事で弾丸にした…!

 

「めんどくセェメモリ使いやがって…!」

 

 

「しかし、これなら仮面ライダーも敵じゃないな!お前を倒したあとはあの青い方を、そして別世界の仮面ライダーどもを倒し…あの忌々しい仮面ライダーも始末してやる!」

 

「なん…だと…!?」

 

「ああそうだ、それとも…先にお前のお友達からぶっ殺してやろうか?全員切り刻んで、二度とアイドルなんてできないように……」

 

 

その瞬間、脳裏に浮かんだのは幼い日に目にしたある光景。

燃え上がり崩れた建物、逃げ惑う人々。

 

 

そして────()()()()()()()()()()()()

 

「………ざけんな」

 

 

「ああ?」

 

飛んできたシフトデッドヒートメテオを掴み取り、ウイングを畳みリアウイングを押す。

 

「そんな事……させるか!!!」

 

《burst!Overd Power!!》

 

《SignalBike/Shift Car!

Rider!Dead Heat!!》

 

《Meteor!!》

 

真紅の竜鎧を身に纏い、デッドヒートメテオにフォームチェンジ。

 

 

「姿が変わった所でなんだってんだ!」

 

再び弾丸と金属片を飛ばしてくる007。

だが、もうその手は通用しない。

 

大きく息を吸い込み、口部装甲が展開。

収束させたエネルギーを放出するブレス・オブ・バーンで飛んできた弾丸や金属片を焼き尽くす。

 

「なにっ!?」

 

「俺っちの…()()大事な仲間に手ェ出すってなら……」

 

紅蓮の炎を纏った爪が007に炸裂。

そして散らばる金属片は炎の熱に溶かされ、弾丸としては使えなくなった。

 

 

「ぶっ殺す!!」

 

前のエルバの時といい、俺もハーさんのこと言えねえなぁ……体の奥底から湧き上がるのは、大切な仲間達を脅かす奴らへの怒り。

それは己の中の黒い感情を呼び起こし、赤黒い炎となり、自身の体を包み込む。

 

「なんだ…なんだお前は!!」

 

007が銃弾や刃を連射するもそれは熱く燃え上がる炎に阻まれ溶け落ちる。真っ直ぐ、ゆっくりとガードもせずに近づいていく。

 

間合いに入った瞬間、炎爪を振り下ろし007のボディを焼き切りつける。

斬撃とともに炎の熱による溶解で射出能力も使用不可。こうなればあとはこちらのものだ。

 

左右のクローで滅多切り、至近距離からブレスで焼き尽くす。

 

「ッ!テメェ!!」

 

再び腕の刃を振りかざしてくる007。

だがその攻撃は見切っている!

 

左のクローで受け止め、それを先程と同じく腕を締め上げるようにして挟んで捕らえる。

 

「オルァァッ!!」

 

そしてそのままもう片方の腕で瓦割りの如く掴んだ刃を叩き折る!

 

「ガアアアアッ!?」

 

叩き折った刃は弾として再利用される可能性があるため、念入りに踏み砕き熱で溶かす。

銃身ごと叩き折ったことで、コレで片方の攻撃手段は潰した。

 

そのまま掴み、膝蹴りを2連で入れ殴りつける。そのまま左右のクローで切りつけ、蹴りで吹っ飛ばした。

 

「何故だ……何故だ何故だ何故だァァ!!!!」

 

ヤケになった007が残った片方の刃からエネルギーの刃を飛ばしてくるが、メテオデッドヒートの装甲に柔な攻撃は通用しない。

 

《ヒッサツ!》

 

俺はドライバーのパネルを上げ、イグナイターを押して必殺体制にはいる。

 

「────終わりだ!!」

 

《Volca Full throttle!Dead Heat!!》

 

《Meteor!!》

 

右足に赤黒い炎を纏い、飛び上がる。

そしてそのまま007に向けてその足を突き出した!!

 

「メテオ・インフェルノブレイク!!!」

 

吠える竜のような獄炎を纏ったライダーキック。それはさながら、太古の時代に大絶滅を引き起こした隕石の大激突。

 

無防備な007にその一撃が炸裂し、その体が燃え上がった。

 

 

 

「グッ………ッハハハ……!!」

 

 

「…何がおかしい」

 

「やるじゃねぇか…だがコレで終わりだと思うな!俺が消えようがお前らの敗北は変わらない…!今のうちにせいぜい喜んでおくといい…ガッ!?」

 

「うるせぇな…さっさと消えろ」

 

喋っている007にクローを突き刺し黙らせる。そのまま引き抜き最後にもう一撃喰らわせると同時にその体は爆散。

 

ガイアメモリが排出され、コアと共に砕け散った。

 

「……ふぅ」

 

それを確認し変身解除。

一息つき、空を見上げた。

 

「……やべ、落ち着いてル場合じゃネェや。急がなきゃ!ハーさんが待ってるゼ!」

 

俺は……俺っちは先に行った先輩のことを思い出し、急いで走り出した。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

憐に007の相手を任せ、俺はアジト探しに専念するべく山を駆け抜けていたのだが……

 

「全く見つからねえ……!」

 

怪しい隠し扉の一つも見つからずどうしたものかと困り果てていた。

 

ちなみにだが、こういうのってなんかこう斜面とかに土で隠されてるんじゃ?と思い先程銃撃や剣で掘ってみたものの全然見つからなかった。

 

「地面とかに隠されてる、無し。どっか人間では到達できないエリアにある、これも無し……あーもうどうしろってんだよ!!!」

 

思わず近くの木に八つ当たりしてしまう。

煌風を持っていたせいか、木の幹が真っ二つになりザザザザと大きな音を立てて倒れた。

 

「………………そうだ!!」

 

《ヒッサツ!ぁふるすろっとる!!》

 

木の幹が倒れた瞬間、俺の中にあるideaが浮かび上がった。シグナルカクサーンⅡを煌風にセットし、baseballでバットを構えるかのように並行に大きく振りかぶる。

 

煌風の刀身が青い光を纏い、輝きを増す。

 

「隼斗流剣技陸ノ芸(ろくのわざ)。一刀流…!」

 

そして、勢いのままにそれを振りかぶりその場で加速、高速回転!!

 

乱レ旋(みだれつむじ)!!」

 

エネルギーの刃が四方八方に向けて無差別に飛んでいく。この技は多数の敵を同時に相手にするために作ったのだが、この通り攻撃が飛んでいく先が制御不能で実戦で使うには不向きだというのが難点だった。

 

だが今の状況ならBestな技。

木が多過ぎて何も見つからんのなら木を減らせばなんか見つかるはず!

環境破壊?この際気にしてられん!!

 

周りの木々が切れ、視界が開けて来た。

それはいいんだ、だが………

 

 

「……ウェッ………」

 

回転するのを止め、煌風を杖にして平衡感覚を保つ。

 

この技の難点その2、『めっちゃ酔う』。

何度も練習したが、どうにも慣れることができず、未だ克服できていない。

 

だから極力使いたくないんだこれ………やべ、吐きそう……

 

「無理…ちょっと…休憩しよ…」

 

落ち着くために一度座って休もうとしたその瞬間、近くでバチバチと何かがショートするような音がして振り向く。

 

すると、透明なそれがハッキリとしてきて…それまでは見えて無かった扉のようなものが出現していた。

 

「…マジか」

 

光学迷彩か?まさかこんな形で隠されていたなんて…そりゃ分からねえはずだわ。

ともあれコレはlucky!入口が見つかった以上あとは突入してエルバボコってサクッと姉ちゃんを救出するだけ…そう思った瞬間、突如として地鳴りが。それもだんだんとこちらに近づいてきて………

 

「っ!」

 

咄嗟にその場から飛び退く。

周りの土を巻き上げ、それは姿を表した。

 

爬虫類のような鱗と大地に突き刺さる爪。

鋭利な牙にギロリとした眼。巨大で長い角、空を覆う翼。

 

「なんだ…!?」

 

それは正に、太古の時代においてこの地球の頂点に君臨していた最強の生物。

色々混ざってこそいるが、それは紛れもなく『恐竜』そのものだった。

 

 

『────────!!!!』

 

 

「なんだコイツ!?これもドーパント…なんだよな?」

 

『……!!』

 

謎の恐竜はこちらを認識するや否や咆哮し、こちらに向かって来た。アンキロサウルスのような棘付きハンマーのような尻尾を此方に向けて振ってくる。大振りだったため跳躍で回避、逆に煌風の刃を叩きつける。が…

 

「っ!硬え…!」

 

硬い鱗に阻まれ刃はほとんど通らず。恐竜は

逆に大口を開け、噛み付いてきた。

 

「っがぁ…!痛えっつぅの…!離せコラ!俺なんて食っても美味くはねぇぞ!!」

 

ゼンリンシューターを顔面に向けて連射、加えて煌風で何度も斬りつけるが効いていない+咬合力がとてつもなく、食らいついたまま離さない。

 

恐竜はそのまま木々を薙ぎ倒しながら突進。木に何度も叩きつけた俺を投げ飛ばした。

 

「っぇ……!番犬役に恐竜とかイカれてんだろ!ふざけやがってこの野郎!!」

 

《SignalBike!》

《Signal koukan!超・カクサーン!!》

 

シグナルカクサーンⅡにシグナル交換。

奴の頭上に向けて弾丸を放ち、カクサーンⅡの能力で弾丸を分裂、エネルギー弾の雨を降らせる。

 

弾丸で牽制している隙にその間を縫うようにすり抜け、煌風でのhit&awayを繰り返す。

 

加速により風を取り込み、それを力に変えて刃を叩きつける。風の力を得た刀は切れ味を増し先程よりは目に見えて傷はつけられているが、恐竜はそれをものともせずにこちらを真っ直ぐ睨み大気が震えるような咆哮を轟かせた。

 

「敵意MAX、加えてさっきの攻撃といい硬さといい……変身してんのが誰だか知らねえが、コイツ確実にこっちを殺しに来てやがる…」

 

生半可な攻撃は鱗に阻まれる、かといって時間をかければスタミナ切れでこっちが食われてお陀仏だ。だったらここは…!

 

「come on!ブレイヴ・ファルコン!」

 

『ーッ!』

 

ブレイヴ・ファルコンを呼び寄せ、射出されたシグナルブレイヴを掴み取る。カクサーンⅡと入れ替え、そのままパネルを下ろした。

 

《Evolution!》

《Super Rider!Brave!TAKE OFF‼︎》

 

ファルコンと合体変身し、ブレイヴソニックへと姿を変える。攻撃力とスピード、得意とする二つを兼ね備えたこのブレイヴなら!

 

「行くぜ!」

 

一気に加速し足元へ。

また噛みつかれる前に煌風で首から顎にかけて切り上げ、空いた口に向けてシューターを連射。流石に鱗で守られてない部分だったから効いたのか、口から煙を上げながら悶えている。

 

高くジャンプし、そのまま真っ向で追撃。

思った通りだ、さっきまでと違って深く切り込めた感覚が手から伝わって来た。

 

「よし!思った通りだ、ブレイヴの攻撃力なら奴の硬さをぶち抜ける!」

 

《カナリ!Brave!!》

 

シフトアップし更に加速する。

恐竜の周りを高速で駆け抜けることで敵を撹乱し、死角から煌風で一閃。飛び上がり空中へ。恐竜もその背にプテラノドンのような翼がついているためこちらを追って空へと舞い上がり、口から火炎弾を乱射。

 

火炎弾は煌風で叩き斬り、最後の1発は持ち替えたリジェネレイトブラッシャーのガンモードで撃ち落とす。

 

「コイツでどうだ!」

 

《Signal Sonic!》

 

《Signal Boost!Sonic!!》

 

リジェネレイトブラッシャーにシグナルソニックを装填、強化弾を撃ち出す。だが恐竜はその頭部に鋭い3本のツノを生やし、それを伸ばして強化弾を叩き落とした。

 

「トリケラトプスかっつーの…!それなら!」

 

《signal kakusa-n!》

《Signal Boost!Kakusa-n!!》

 

装填するシグナルバイクをカクサーンⅡに変更し強化弾を拡散弾に変える。発射された弾丸は無数に分裂し、雨となって降り注いだ。

 

『────!!』

 

「一気に決める!鳥!もう一段boostかけるぜ!!」

 

《カナリ!Brave!!》

 

もう一度イグナイターを連打しシフトアップ。更に加速し、二刀流を振るい連続で敵を斬りつける。

 

『────!────!!』

 

噛みつき、火炎弾、更には両腕を巨大化させての鉤爪攻撃。それら全てを加速し、急停止し、身を捻って避けきる。

 

ブレイヴの時はかなり無茶苦茶な空中軌道と加速、そして停止を繰り返しているが、腰にある尾羽『Fテイルスラスター』が空中での姿勢制御をサポートしてくれている。

 

そのためBlue Impulseもびっくり仰天なアクロバティック飛行を可能としているのだ!

 

「ってか、いい加減ブンブン飛び回ってんじゃ………ねぇ!!」

 

一気に上に飛び上がったあと急降下、両手の刃で片翼を切り落とす。翼を失ったことで平衡感覚を保てず落下していく巨体に追いつき更にもう一撃。両翼を切り落とした。

 

『────!!!?』

 

「落ちろ!!」

 

ダメ押しのリジェネレイトブラッシャーでゼロレンジ銃撃。恐竜を地面に叩きつけた。

着地し、煌風を鞘に納めるとブラッシャーにトマーレⅡを装填。

 

《Signal Boost!Toma-re!!》

 

強化拘束弾を発射し、エネルギーの網で恐竜を捕らえ、動きを止めた。

 

「よし!このまま一気に……!!」

『───ッ!────ッ!!』

 

《ヒッサツ!Full throttle Over!!》

 

「喰らえ!テンペスト・バース……」

『───ッ!────ッ!!』

 

トドメを刺そうとリジェネレイトブラッシャーにシグナルソニック、シグナルブレイヴを装填。必殺技を放とうとした瞬間、ファルコンからけたたましく警告が発された。

 

「ってなんだよ鳥!アイツが拘束振り払う前に仕留めねえと………」

 

トドメを刺そうとした瞬間、突如として発されたファルコンからの警告。瞬間、メット内のモニターに表示されたのはスキャン結果の画像だった。

 

「は?あの中身に人間の生体反応?そんなんあたりメェだろ、人間が変身してんだから。いや、グリモアの例があったか…で?その反応ってのは一体どんな野郎の…………は?」

 

その結果をみた瞬間、俺は衝撃のあまり武器を落とし、言葉を失った。

 

「なんで……どうして!?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

真相の話の為、少し時間を巻き戻す。

ここはアジト内部。

そこに果南とエルバは2人でいた。

 

 

「…そろそろ気付いた頃か」

 

「待ってるんじゃなかったの? こんな山の中に逃げ込んでさ」

 

「切風アラシと狩夜憐の足止めには成功したようだが、天城隼斗は間もなくここに来るだろう。松浦果南、君を助けに。こちらも見つからないよう場所を移すか」

 

「だからなんで逃げるの!? 隼斗と勝負したいんじゃないの!」

 

「勝負? 勘違いを正すが、このまま彼と俺が遭えば、俺は天城隼斗を殺す。殺せる。間違いなくだ。それが君の望みか?」

 

「隼斗は負けない」

 

「根拠のない自信は笑えない…が、君と彼の関係性は興味深い。それもまた肯定しよう。しかし、俺から見ればその結果は必然なんだ。それで終幕では、余りに退屈で俺は死んでしまう。力量差があるのに挑みに来る彼は理解できないが、それならこちらは計画を完遂させるだけだ」

 

「結局、計画ってなんなの? 昨日から暇潰しだとか、世界征服だとか言ってるけど、まさか具体的なこと何も考えてないとか無いよね? これだけ私たちの街と、友達と、色んなもの巻き込んどいて」

 

「それは理解する気があると解釈してもいいか?」

 

「……まさか」

 

「まぁ聞いてくれ。君との会話は悪くない」

 

 

そう言うとエルバはこちらを手で制し、椅子に深々と腰掛けた。

 

 

「…ねぇ、聞かせてよ。私たちを巻き込んで、あなたが何をしようとしてるのか」

 

 

「この憂鬱を晴らすために、俺は世界を統べたい。そのために───

 

 

この街を俺の城にする。俺の憂鬱を晴らせない凡夫は、もはや価値もない。『憂鬱世界』で永久に静止させる」

 

 

「どういうこと……!?」

 

 

「どうした。あぁ、表現が分かりにくかったか」

 

エルバは近くに居たディファレントロイミュードを操作し、映像を空中に投影した。

 

 

そこに映っていたのは実家のダイビングショップの「映像」で、そこでは父さんと母さんが完全に動かなくなっていた。窓から見える動く雲がなければ、写真と勘違いしてしまうところだ。

 

「この街を拠点に陣地を広げ、ある程度の憂鬱に耐えられる器だけを手駒として置く。労働力にしても君の両親程度の者はいらない。そして、俺が設計した『兵器』を始めとした戦力を生産した末、あの世界への侵攻を行う。そのために、こちらの世界のメモリと、この『ゴールドメモリ』を用意したのだ。この戦争に勝利した時、俺の憂鬱が晴れるはずさ」

 

思わず思考が停止してしまった。

手駒?兵器?何を言ってるの…この人は

 

「……つまり、あなたは…大勢の人を動かない人形にして…奴隷にして…! 人を殺す兵器を作らせて、化け物にして! 戦争に使おうって言うの!?」

 

「そうなる。だが安心していい、兵力として『消費』するのは中の上レベルの人間。松浦果南、君はそんな真似をすることはない。君もまた、俺の憂鬱を晴らす可能性がある存在だからな」

 

「なに…それ…!!」

 

何が「自分を悪と自覚している」、だ。

自分のしていること、やろうとしていることの恐ろしさをまるで理解していない。

ここまで話してみて、もしかしたら────なんて、一瞬でも思ったわたしが馬鹿だった。

 

「やっぱり…分かり合うなんてできない! だって、あんたは人の気持ちをまるで理解できないから! 理解できるなら、そんな恐ろしいこと言わない! やっと分かった、あんたは自分が退屈だ、憂鬱だって、自分のことしか考えてない!」

 

「…何をそんなに怒っている? 君には危害は加えないと言ったはずだが…そうか、もしかして両親や天城隼斗のことか。それならこうしよう、君が選んだ人間は特別待遇にする。君の意見次第で、俺の計画を変えてもいい」

 

いつの間にかそれまで自分の手を縛っていた鎖が消えていた。その言葉は確かなのだろうけど、その言葉に首を縦に振ることはもう今のわたしにはできなかった。

 

そして、次に続く言葉がそれを決定付けた。

 

 

 

「特に君と天城隼斗は俺にとっての鍵、もはや手荒な真似はしないと約束する。君たち2人は…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

わたしを、みんなを。そして───隼斗を。

その全てを否定するような無情な言葉。

 

気付けばわたしは、その横面を思い切り引っ叩いていた。

 

 

「ふざけないで…! 隼斗は命を懸けて、私を助けようと戦ってくれる。それなのに…隼斗に誰かが傷つくのを安全圏から見てろって!? しかもあんたなんかの下で! 隼斗を…私のヒーローを馬鹿にするな!!」

 

 

「……!」

 

《Dystopia!》

 

驚きか、困惑か、それまでの態度から一変した顔を見せたエルバは、ドーパントとしての姿へと変わるとわたしの頭を乱暴に掴んだ。

 

 

「やめ…て…!!放して……っ……!!?」

 

その手から流れ込んでくるのは、怒りか、拒絶か。他に何もない負の感情『悪意』。

 

 

「……何故だ、君は俺の憂鬱を晴らす存在ではなかったのか? 何故俺に反抗する…?」

 

「違…う…! 私も、隼斗も…あんたの都合のいい道具なんかじゃ…ない…!!」

 

「馬鹿な……どういうことだ。思い通りにいかない、それなのに何故俺の心は晴れない。何故こんなにも気分が悪い…!?」

 

「やっぱり、分かるわけ…ない…! それが分かんないなら…あんたの『憂鬱』は、一生………」

 

そして、気づけばわたしの腕には一本の金のガイアメモリが。それが挿された瞬間、わたしの中でその悪意が膨れ上がる。自分が自分で無くなっていく。自我も意識も薄れていって────

 

 

「隼…斗……………」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「そんな……!あのドーパントが、果南姉ちゃん!?」

 

スキャンの結果、あの恐竜ドーパントに変身しているのが果南姉ちゃんだと分かった。

でもなんで!?姉ちゃんが自ら望んでドーパントになるなんて100%あり得ない、だとしたら────

 

 

『────!!!』

 

「っ!やべぇ!!」

 

気づけば恐竜ドーパントは拘束を破り再びこちらに向けて突撃してきた。

尻尾の振り下ろしを避け、鉤爪で切り裂く攻撃を寸前で回避。その衝撃波は転がっていた木の幹ごと地面を切り裂いた。

 

「っ!このっ…!」

 

ブラッシャーのトリガーを引こうとして踏みとどまる。アレが、果南姉ちゃんだと分かってしまった以上、無闇に攻撃することはできない。どうすれば………

 

『────!!!!』

 

「しまっ……!」

 

その躊躇が俺の判断を鈍らせた。

尻尾の攻撃が腹部に直撃。コンクリートの柱で腹を思い切り殴られたような衝撃が体を襲い、俺を大きく吹っ飛ばした。

 

「ガッ………!?」

 

木々を薙ぎ倒し、地面に叩きつけられる。

その瞬間過剰な被ダメージによりファルコンとの合体が強制解除、元のソニックに戻ってしまった。

 

「っ……ぁ………」

 

数瞬呼吸が止まるほどの衝撃。ブレイヴじゃなければ恐らく1発で意識を持ってかれていただろう。

 

「ゲホッ!ゲホッ!……っ…はぁ……」

 

なんとか息を整え立ち上がる。けどさっきのダメージ+ショックがかなりこたえてる…気を抜いたら多分タダじゃ済まねえだろうなぁ…

 

 

「くっそ……どうすりゃいいんだよ…!下手に倒したら果南姉ちゃんがどうなるか分からねえ、かといってこのままジリ貧になればそれこそ時間が…アラシ達も…戦ってるのに…ここで俺が倒れたら………!」

 

『────ッ!────ッ!!』

 

鳥の鳴き声が聞こえた。

気づけば大きな足音と咆哮を響かせ、恐竜ドーパントがすぐ側まで来ていた。

 

なんとか避けようと足を踏み出す、が……

 

「…え」

 

ここまでの疲労か、はたまた怪我か。

足がもつれて地面に倒れ込んでしまった。

 

今にも俺を食い殺そうと大口を開けてこちらに襲いくる巨体。あ、これ無理かも……

 

あーあ…情けねえ死に方…。

ゴメン、姉ちゃん…やっぱ俺には………

 

 

 

『わたしは大丈夫』

 

 

「っ!!」

 

瞬間、脳裏に浮かんだのはあの時の笑顔。

それが俺の体を活性化させ、その場から飛び退かせた。

 

 

「………っ!!」

 

 

マスク越しに自分の頬を思い切りぶん殴る。

衝撃は少し緩和されているが、この痛みのおかげで目は覚めた。

 

「ふざけんな俺!何が『無理かも』だ!!

それは俺が1番言っちゃいけねえ言葉だろうが!!」

 

そうだ、俺は託されたんだ。

μ'sの皆さん、Aqoursの仲間達、アラシから、そしてなにより果南姉ちゃんから!

 

何があっても助けるんだって!絶対にエルバの野郎を倒すんだって!!だから!!

 

 

「こんなところで…死んでたまるかァァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

 

「よく吠えた。諦めという感情への怒り…それは己への戒めであると同時に、自身の背中を押し戦う力となる。それでこそと言うものだ」

 

「は?」

 

 

その瞬間、俺の隣を黒い影が通り過ぎた。

そして振り向いた直後、一筋の斬撃が恐竜の尻尾を切り裂いていた。

 

 

「ダイノエイジ…憂鬱め、まさか他にゴールドメモリを持ち出していたとはな」

 

 

そこに立っていたのは、1人の剣士だった。

だが、その姿は人間とは言えない異形であり漆黒の外套に鎧姿。右腕には向こうの世界でみたガイアメモリの生体コネクタのような模様が描かれている。

 

まるで黒騎士のような、禍々しくも雄々しい姿形をしたそれが、そこに立っていた。

 

「お前は……!?」

 

「貴様か?異世界の仮面ライダー、ソニックとやらは」

 

「確かに、俺は仮面ライダーソニックだが…どうしてその名前を!まさかお前もエルバの…!」

 

「勘違いするな、俺はむしろ奴を葬りに来た側だ」

 

「倒しに…?…そういやアイツ裏切り者だって…なんでそれを?」

 

「話は岸戸から全て聞いている。ある程度の貴様達の動向もな」

 

「岸戸?…誰だそれ、仲間か?」

 

「ハイド…と言えばわかるか」

 

ハイド!?それってあの医者の……ってことはこの剣士は!

 

「結局お前も敵じゃねえか!ちょうどいい、これ以上面倒増えるのも厄介だ、まずはお前から……!」

 

『────!!!』

 

「っ!避けろ!」

 

剣士に突き飛ばされ、なんとか突進を回避。コイツ、今俺を助けて…!?

 

「俺の前に立ち塞がるというのなら、叩き斬るのみ。覚悟しろ…!」

 

「待ってくれ!!」

 

剣士は刀を生成し、今にも恐竜ドーパント…もといダイノエイジ?に斬りかかろうとしていた。咄嗟に殺気満々だった剣士に飛びついて止めに入る。

 

「離せ、何故邪魔をする!」

 

「アレは姉ちゃんなんだ!俺の大切な……」

 

 

「姉ちゃん…姉なのか」

 

「いや、血は繋がってないんだけど…ってそれはいいんだ!とにかく、俺にとって大事な人なんだ!なんとか助ける方法は……」

 

 

「…無くはない」

 

「本当か!?それってどうすれば……」

 

「だがその為には貴様の協力が不可欠だ。一時だけだが……俺を、信用できるか」

 

「…協力しろって事か。それで果南姉ちゃんは助けられるんだな!約束できるのか!?」

 

「武士は約束を違えない。

力を貸せ、仮面ライダーソニック」

 

そう言いながら手を差し伸べる剣士。

信じていいのか正直不安なのは確か、だがこのまま俺1人だけじゃどうしようもないってのも事実。

だったら────やるしかねぇか!

 

その手を取り、引っ張り上げられる。

 

「いいか、奴は今恐らく暴走状態にある。

原因は不明だが、このまま暴れ続ければやがて生命力を使い果たし、最悪死に至る」

 

「じゃあどうすれば…」

 

「最後まで聞け。俺のメモリ『スラッシュ』と奴を同調させ、体内のメモリの位置を探る。そしてメモリのみを正確に破壊できれば奴は助かるはずだ」

 

「メモリを同調だって…!?」

 

「俺のメモリはオリジンメモリ…通常のガイアメモリを凌駕する物だ。このくらいどうということは無い」

 

オリジンメモリ…なるほど、アラシ達と同じ特別なメモリって訳か、understand!

 

「了解。で、俺は何をすれば良い?」

 

「お前は速さが自慢なのだろう?奴を撹乱し動きを止めろ。その隙に俺が奴のメモリを探る、最後はお前が仕留めろ」

 

「俺が?」

 

「大事な存在、なのだろう?ならばその手で救ってみせろ」

 

「…ああ、分かった!」

 

《ズーット!Sonic!!》

 

ダイノエイジがこちらに向かってきながら火炎弾を連射してくるので、シフトアップしてそれを避け、周囲をグルグルと走り回る。

 

大振りな尻尾の攻撃を跳躍で避け、バランスを崩したところでドロップキック、その巨体を地面に倒す。

 

その瞬間剣士がその手に剣を生成し、刀と共に斬りつける。俺じゃまともにダメージを与えられなさったのに、その斬撃は深々と斬り込まれていた。なんて斬れ味だ……

 

そしてダイノエイジに飛び乗るとその手に持っていた剣を突き立てる。

 

腕にあるコネクタが光を放ち始め、剣を伝ってダイノエイジに流れていく。するとその胴体部分の一箇所が光を放ち始めた。

 

光の中心には、歪で細長い形をした形状の物が一つ。あれが内部のメモリ!

 

「仮面ライダーソニック!コレが奴のメモリの位置だ!」

 

『────!!!!────!!」

 

「クッ……ええい、大人しくしていろ暴れ蜥蜴!!」

 

ダイノエイジは起きあがろうと手足をジタバタさせて暴れもがく。剣士は新たに剣を何本も生成し、それを使って地面に縫い付けるように突き刺した。おいそんな乱暴な…!

 

「討て!そう長くはもたんぞ!!」

 

落ちていたシグナルブレイヴを煌風に装填。

青い光が刃に流れ、輝きを放つ。

 

《ヒッサツ!ぁふるすろっとる!!》 

 

「一撃で決める!一刀流…伍ノ芸!」

 

力強く踏み出し、そこに向けて刃を突き出した!

 

「風孔突!!」

 

 

シグナルブレイヴの力、加速力、そして風の力。その全てを込めた刃がメモリに突き刺さった。

 

 

『────!!』

 

メモリを中心にその巨体にヒビが入っていきダイノエイジは爆発。

 

その爆煙が晴れると、中からは果南姉ちゃんを抱えた剣士が出てきた。加えて姉ちゃんの腕からヒビの入った金色のメモリが飛び出して地面に落下。え、破壊できてねぇじゃん…まあ、いいか!姉ちゃんは一応元に戻ってるしコレでなんとか解決…じゃねぇ!

 

「っ!姉ちゃん!!おい、姉ちゃん!!」

 

咄嗟に剣士を突き飛ばし、変身解除して果南姉ちゃんを手の中から奪った。

見た感じ目立った外傷は無さそうだ………

 

 

「……………隼、斗………?」

 

「っ!姉ちゃん……!」

 

「…ゴメン。心配…かけちゃったね…」

 

「そんな事無いよ…。俺の方こそごめん…また危険な目に遭わせちゃって……」

 

「何言ってるの…そんなの全然だよ。隼斗が助けてくれるって、信じてたもん」

 

 

「っ…!!」

 

 

助けられた安心感とようやく再会できた喜びからか、思わず涙が溢れる。それを見せまいと姉ちゃんの肩に顔を埋めて思い切り抱きしめた。

 

「その様子ならば命に別状は無さそうだな」

 

剣士は飛び出したメモリを拾い上げ、こちらに近づいてきた。

 

「ああ、悪い!アンタのこと忘れてた…。ありがとうな」

 

「気にするな、ただの気まぐれだ」

 

「それでも、本当に…本当にありがとう…!」

 

深く深く頭を下げる。

例え敵だったのだとしても、助けてもらった以上礼はキッチリしないとな。

 

「ああそういや、アンタ名前は?」

 

「名前?」

 

「ほら、せっかく助けられたのにその恩人の名前聞いてないのもなんかアレだからよ…」

 

「…俺の名はファースト。またの名を…スラッシュ」

 

「ファースト!?」

 

「…なんだ」

 

今朝の作戦会議中、俺は昨日寝ていた間の話を簡潔に聞かされていた。

 

その中の一つに善子と花丸が007に襲われていたところを謎の剣士に助けられたと聞かされたのを思い出した。そしてアラシ曰く、そいつがファーストだと。

 

「剣士…まさか、善子と花丸ちゃんを助けたのって!」

 

「善子、花丸…そうか、あの女子高生2人は貴様の仲間だったのか。そしてその鳥……」

 

「鳥?」

 

『────ッ!』

 

システムが復旧したのか、ブレイヴ・ファルコンがファーストの周りを飛び回る。

なんだ?お前ら知り合いだったのか?

 

「あちらの世界で拾ったのだが、どうやら助けて正解だったようだな」

 

「拾った!?まさかコイツもアンタが助けて…」

 

「破損していたからな。修復をしたのは俺では無いが……」

 

なるほど…だからあの時…

 

「そうか…あっちの世界では2回もアンタに助けられてたって事か」

 

「2度?どういう事だ」

 

「まず1回目が鳥を助けてくれた事。そして2回目…サテライトのレーザーをぶった斬ったアレ、アンタなんだろ?」

 

「ほう…何故わかった?」

 

「湖だよ。俺が栃木のエルバのアジトに行った時、門番の野郎が既に倒されていた。しかも周りにはいくつも鋭利な斬撃の痕が残っていた。…さっきの戦いを見て確信が持てた、あんなことができるのはアンタぐらいだって。違うか?」

 

 

「…間違ってはいない。良い観察眼を持っているな」

 

「そうか?まあアンタがそう言うならそうなのかもな!ともかくそれもだな、ありがとう!なんか礼をしたいところだが…」

 

「礼は不要だ。ただ…そうだな、もし一つ望んでも良いと言うのであれば」

 

するとファーストは刀を生成、それを真っ直ぐこちらに向けて来た。

 

 

「俺と戦え」

 

 

「何…!?」

 

「あの世界で貴様を見た時から、俺はお前が気になっていた。俺に無い強さを持つお前が…俺は強くならなければならない、憂鬱を斬り、ゼロを超える…何者にも屈しない、最強の力を手にする!その為に、俺はお前と戦う!」

 

あのハイドって医者の仲間って事はコイツはアラシ達の敵…だがコイツはエルバ達とは違うみてぇだ。

 

強さを求める…なるほど、根っからの武人気質ってことか。

 

「…隼斗?どうしたの?」

 

「…姉ちゃん、ちょっとごめんな」

 

「え?」

 

抱えていた果南姉ちゃんを下ろしジャケットを脱いでそれを敷いた上に姉ちゃんを寝かせる。

 

「隼斗?」

 

「…いいぜ、受けて立つ!」

 

「隼斗!?」

 

 

何度も助けられて、なんか分からんが認められて…そこまで言われて戦わねえ理由が見つからねえ!

 

「ほう…」

 

「実の所、俺もアンタがずっと気になってた。あの剣筋、あの強さ…それにさっき共闘してた時、アンタとは何か近いものを感じた。そのせいかな…ヒーローとかそういうの以前に、お前と戦いたいって体が疼いてやがるんだ!!」

 

 

確かにエルバは早くぶっ潰さなきゃならねぇ、それは分かってる。

 

だけど今この時だけは、正義のヒーローではなく1人の戦士として。

俺は今、コイツと向き合ってみたい!

 

「それでこそだ。さぁ、構えろ!」

 

《SignalBike!》

 

「Ready……Hensin!!」

 

《Rider!Sonic!!》

 

装甲を纏うと同時に煌風を抜刀。

構えを取った。

 

「悪は撃滅、正義は不滅…だが今この時だけは1人の戦士としてお前と戦う!

 

仮面ライダー…ソニック!!」

 

「ただ一振りの剣として、俺は貴様を超えていく!

ファースト……またの名をスラッシュ!!」

 

 

「来やがれ!」

 

「行くぞ!!」

 

互いに駆け出し、刃を交える。

Slash VS Sonic、戦士としての意地を賭けた戦いが幕を開けた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ハァァッ!」

 

「オオオッ!」

 

 

ぶつかる刃、飛び散る火花。

ファーストと俺、互いの持つ剣と刀が甲高い音を立てて衝突し合う。

 

ファーストが剣を振るえば俺がそれを受け流し、俺が斬りかかればファーストは意図も容易くそれをかわし、逆に斬られる。

 

ってかアイツの使ってる剣や刀、見た目はマジで普通の刀や剣なのにこっちの装甲に確実にダメージ与えてきやがる!アイツのメモリには武器を強化する能力でもあんのか!?

 

それに、予想してはいたがこうして斬り合って確信した。純粋な剣の腕なら向こうが圧倒的……でも!

 

「っルァァ!!」

 

「っ…!」

 

煌風の一閃がファーストの外套を掠める。

そこから手首を返して斬りあげ、真っ向、一文字。

 

技で敵わないなら速さでそれを上回れ、力が足りないのなら手数で攻めろ!

 

シフトアップで加速して、間合いの外からの斬りかかる。hit&awayで極力刀での斬り合いを避ける。

 

 

「っ!」

 

「なるほどな、マトモに斬り合わなければ或いは…と考えたか。だが甘い!」

 

ファーストが手を振り上げると空中に何本もの剣が現れ、それが一斉にこちらに向かって飛んでくる。

 

「っ!やべっ」

 

煌風一本だけで弾き切ることは流石に不可能と判断し、リジェネレイトブラッシャーを呼び寄せ二刀流に。

 

全てを叩き落とし、ブラッシャーをガンモードに変形しエネルギー弾を乱射。だがファーストが手に持った刀で全て叩き落とされた。

 

更に新たに生成された大剣がこちらに向かって振り下ろされる。マトモに受けるのは無理と判断し咄嗟に回避すると、その衝撃は山肌を伝い地面に大きな斬撃の痕を刻んだ。

 

「武士とか剣士っつーから正面戦闘だけかと思いきや、存外器用な真似するじゃねえか!まさに剣のMagicianだな!」

 

「貴様こそ、速さだけでなく力もそれなりにあるらしいな。…だが!」

 

新たに剣を2本生成、二刀流でこちらに接近しその剣を振り下ろす。咄嗟に2本を交差させてガードし、上に弾いて2連撃。

 

ファーストも負けじと連続斬りを繰り出し、最後に力強い一閃が入り俺を地面に転がした。

 

「っ…!」

 

「隼斗…!」

 

「貴様の剣には速さはある、強さもある。だが…貴様は第一に『剣を使う』ということを理解していない」

 

「剣を使うことを理解してない…だと…!?」

 

2本を杖にして立ち上がる。

煌風もブラッシャーも、この2本は何度も特訓して使いこなしてると自負している。

 

なのに、使いこなしていないってことか?

…どういう意味だ?

 

「それを俺が教えてやる…」

 

そう言うとファーストは持っていた剣を消し一本の日本刀を生成した。

 

「行くぞ…髭切」

 

「っ!髭切…鬼切丸か!」

 

以前煌風を名付けるに当たって、日本の刀剣について調べた時に知った。鬼の腕を切ってみせたという極めて強力な伝承を持つ刀!

 

ファーストはそれを構えるとこちらに急接近、その刀を振り下ろす。咄嗟に避けられたから良かったがギリギリだったせいか刀の切先がマフラーを掠めた。

 

「敵の攻撃の対処だけに気を取られるな!剣による勝負では、常にその二手三手先を予測しろ!」

 

こちらも負けじと煌風を振り抜き牽制、2度3度に渡って振り抜くもそれは避けられ、上に弾かれた隙に逆に突きでダメージを受けてしまう。

 

 

「っ!この野郎!」

 

 

ブラッシャーと煌風の二刀を連続で繰り出すが、ファーストの刀が器用にそれらを受け流しマトモに攻撃を当てさせてくれない。

だったら!

 

「このっ!」

 

斬撃を繰り返し注意を引きつける。

こちらから攻めることで先程とは出方を変え動きを多少読みにくくさせる狙いだ。

もちろんその攻撃は避けられるが……

 

「闇雲に振った所で当たらなければ意味はない!もっと相手をその目で見ろ!如何に敵が動くか、どの軌道ならば避けられないか!瞬時に考え、そして動け!」

 

「分かってる!だから……」

 

 

姿勢を低くし、足元を払いバランスを崩させる。そして奴の腹部に銃口を突きつけブラッシャーでゼロ距離射撃!

 

「っ!」

 

「Chance!」

 

《ズーット!Sonic!!》

 

射撃の衝撃で吹っ飛んだ所でシフトアップし一気に再接近。2本の武器による連続斬りで反撃。

 

ファーストも瞬時に立ち上がり、その攻撃をかわすと髭切を使いブラッシャーを弾きこちらに二撃。

 

「このっ…!」

 

「っ!」

 

煌風と髭切、互いに力強く振り下ろした刃が互いの装甲を切り裂く。火花が散り、互いにその場を飛びのいた。

 

ファーストは斬られた箇所を手で払い、余裕そうにしている。クッソ…こっち割と痛えんだが…!?スーツが無かったら多分左肩辺りの骨逝ってたぞコレ…!!

 

「クッ…しぶといな……」

 

「アンタもな…!」

 

トルネードと同等…いや、純粋な力量ならアイツや蛮野よりずっと強えし多分エルバにも匹敵するレベルだ。ファースト(一番手)ってのは伊達じゃ無いらしい…

 

「一つ、聞かせろ」

 

「なんだよ?」

 

「何故貴様は仮面ライダーとして戦う?ここまで戦って理解した、貴様は相当な修羅場を潜り抜けてきている。だが…それでも疑問が残る。貴様はなんのためにその命を賭ける。なんの為に、この戦いの定めを受け入れたのか」

 

 

「…別に、大層な理由は無いさ。強いて言うならそうだな…『守るため』だ」

 

「守る…?」

 

「大切な人、大切な町。大切な日常…変わらずに来る今日という日が少しでも長く続けられるようにする。それを壊そうとする障害は一切合切討ち滅ぼす!…その証の一つがまあその…あの人だ」

 

煌風で果南姉ちゃんを指す。

どうやら戦ってる間にだいぶ離れてしまったらしく、かなり遠くにいるのが見えた。

 

「あの少女が?」

 

「俺達の学校さ、見ての通り田舎だから人数少なすぎて廃校の危機だったんだ。んで、俺の仲間たちはそれを阻止しようと頑張ってたんだが……つい先日、正式に統廃合が決まった」

 

「…努力が報われなかった、という事か」

 

「ああ、みんな相当悔しい思いをしたはずだ。俺もな、ずっと頑張ってきたのに、どうして報われなかったんだって…俺のやってきた事に意味はあったのかってな…めちゃくちゃ落ち込んだよ。でもな、アイツらはずっと落ち込んでばかりじゃ無かったんだ」

 

『努力は報われる』人は皆そう言うが、その全てが報われるとは限らない…こんな形で思い知るとは、俺も思いはしなかった。

 

だがそのまま終わるアイツらじゃ無かった。立ち上がったんだ、俺なんかよりも早く。

 

アイツらを強いとおもった。

学校の名前を残すため、そこにあったという証を残すため、未来を少しでも明るいものにするため。

 

俺は、そんなアイツらの力になる事を誓ってまた立ち上がった。

 

「大切な仲間達の未来を守る。アイツらの想いを、夢を!最後まで見届けるって誓った!だから俺は負けられない…奴らの道に立ち塞がる障害は、邪魔する奴らは!ロイミュードだろうがドーパントだろうが、異世界の敵だろうが全て砕く!

 

それが…『仮面ライダー』という力を手に入れた俺の責任だと思うからな!!」

 

未来の為に、かけがえのない輝きを守る為にどこまでも駆け抜ける、強くなる!

それが…『仮面ライダーソニック』だ!!

 

「…そうか。貴様もダブルと同じ、という事か」

 

「まあな。少なくとも、アラシとは似たもの同士だと思ってる。向こうがどう思ってるかは知らねえけどな?」

 

「だからこそ憂鬱は己の手で倒す、そういう事か?」

 

「ああ、俺はアイツに勝つ。例えどんなに強い相手でも、俺は超えていかなきゃならねぇ」

 

「…勝ちたいか」

 

「勝ちたい?違うな………勝つ!!」

 

 

絶対に、何があっても。

この覚悟は揺るがないと言わんばかりに堂々と叫んだ。

 

ファーストは一言「…そうか」と呟くと

 

「ならば、ここからは更に本気で行かせてもらう!俺の全てを貴様に叩き込む!ここで倒れるようならば、憂鬱を倒すなど夢のまた夢と思え!!」

 

髭切を消し、新たな日本刀を2本生成。

 

「天下五剣 三日月宗近!同じく、鬼丸国綱!」

 

天下五剣。

この国において最も優れた刀と称される業物のうち二振りを出してきた。いよいよアイツも本気度MAXって訳か!

 

それだけじゃない、その2本を手にした瞬間から奴の雰囲気がガラッと変わった。

 

「レベル…2!!」

 

紫の炎が奴を包み、その姿を変えてゆく。

半身が異形へと変わり、鎧に変化が。

角の生えたその姿は正に鬼のようであった。

 

通常フォームで太刀打ち不可能なのは明らか。ならばこちらも!

 

「…鳥!」

 

『────ッ!』

 

ブレイヴ・ファルコンを呼び寄せ、内部のシグナルブレイヴを手にする。そしてドライバーを展開し、それを装填!

 

《Evolution!》

 

「I'm Ready!超変身!!」

 

《Super Rider!Brave!TAKE OFF‼︎》

 

ブレイヴソニックへ強化変身。

けどまだ足りない、コイツは全てを叩き込むと言った。だったらこっちも本気の本気でいかなきゃ…なぁ!

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

イグナイターを連打し体のうちにエネルギーを収束させる。体はだいぶ慣れてきた、いざという時の対策もある。今の俺なら!

 

「オーバーブレイクモード、強制解放!」

 

《O V E R - B R E A K!!》

 

心を落ち着かせるフェーズをカットし、強制的にシステム起動。

装甲展開、蒼く光輝く力を纏う。

MAX of MAX、オーバーブレイクモード!!

 

「とことんまで付き合ってやる!」

 

「来い!」

 

風と光、炎を纏った2人の異形が互いに駆け出し────消えた。

 

残ったものは辺りに響くは剣戟の音と微かに見える残像のみ。常人ではまず目で追うことが不可能な速度での斬り合いを繰り広げる。

 

斬り、防ぎ、避け、弾き、また斬る。

ただでさえ瞬時かつ正確な判断が要求されるこの戦闘は互いにパワーアップしたことでさらに苛烈になる。

 

互いの刃がぶつかり合い、斬って斬られの激しい応酬。かつタイムリミットも気にしなければならない…

 

「ったくめんどくせえ奴だな!」

 

「その言葉、そのまま貴様に返してやる!」

 

「残念だったな返品お断りだ!それに、めんどくせえのは本当だが、それ以上に……」

 

急接近、交差させた刃での押し合いになる。

ああそうだ、奴の幹部ですら面倒くさかったエルバ達に加えてまさかお前と戦う事になるとか考えてもいなかった。

 

けど戦えて良かったとも思ってる。

だって…正義も悪も関係なしにこんなに本気でぶつかり合える奴にまた会えると思っていなかった。

 

だから────

 

「それ以上に、俺は楽しい!!」

 

「ああ、俺もだ!」

 

死力を尽くして戦える、だから俺は強くなれる!何処までも、何処までも!

 

「…一つ、礼を言わねばなるまい」

 

「どうしたよ。戦いの最中だぜ?」

 

「貴様は俺だ。貴様と斬り合うことで、俺は俺の怒りを再確認できた。俺の剣は更に研ぎ澄まされた。俺の原点…その憤怒、覚悟、燃える命の全てを刃に乗せる!」

 

「っ……」

 

またファーストの雰囲気が変わった…!?囂々と燃える紫の炎が、呼吸を思い出したみたいに、周りの空気を取り込んで青く変わっていく。

 

ひりつく風が教えてくれる。ここから先、僅かでも気圧された方が負ける。勝負の決着はすぐそこだ。それなら…

 

「次で決める!」

 

《ヒッサツ!ぁふるすろっとる!!》

 

《ヒッサツ!Full throttle Over!Brave!カクサーン!!》

 

煌風にシグナルソニックを、ブラッシャーにはシグナルブレイヴとカクサーンⅡを装填。

2つの刃にエネルギーがチャージされていく。

 

「行くぜファースト……これが俺の全力だ!」

 

「面白い…ならば俺も最大の力をもって貴様を叩き伏せよう!」

 

青い炎で熱された2本の刀を構えた。その隅々にまで奴の意識が張り巡らされているのが分かる。それだけじゃない、ソニックの風を取り込んで、炎が更に青く、細く───

 

「───レベル3」

 

鬼じゃない。これは……火の鳥…?

いいや…関係ねえ。俺は俺のこの一撃で、ファーストを凌駕する!

 

「隼斗流剣技、二刀流奥義!」

 

「最大の賞賛と敬意を込めて、この技を貴様にくれてやる!我流剣 十一ノ技・改────」

 

 

一気に飛び出し、奴の間合いへ。

そして互いに今持てる最大の力を込めた斬撃を繰り出す!!

 

 

「絶禍凌嵐!!」(ぜっかりょうらん)

 

「裂空!!」

 

 

互いにくり出した全力の剣技がぶつかるその刹那、発生した凄まじい衝撃波が周囲に倒れる木々を吹き飛ばした。

 

 

互いに剣を構えたまま、背中合わせの状態。静寂が空間を支配していたが………

 

「っ…………!?」

 

斬撃が体を襲い、装甲に無数の傷をつける。

変身が解け、先に倒れたのは俺の方だった。

 

 

「隼斗!!」

 

姉ちゃんがおぼつかない足取りで駆け寄ってきて、体を起こしてくれた。

無理しなくていいのに………

 

「見事だ、仮面ライダーソニック……」

 

ファーストは体に無数の切傷を作りながらも未だ立ち続けており、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

どうやら向こうもそれなりにダメージを受けていたらしい。

 

俺の目の前まで来ると片膝を突き、俺の胸に手を当てる。そこから発された紫色の光が俺の体を包み、戦いで負った傷を癒していく。

同時にオーバーブレイクの反動による苦しみも和らいでいっている。

 

「これは……」

 

「ここまで付き合わせた礼代わりというやつだ、俺の力の一部を分けてやった。これでもうしばらくすればまた立てるようにはなるだろう」

 

そう言って立ち去ろうとするファーストだったが、歩き出した直後に苦しみ出しその場で膝をついた。

 

「ファースト!」

 

果南姉ちゃんと揃って駆け寄る。

まだ余裕ありそうに見えたがやっぱアンタも限界だったんじゃ……

 

「俺のことならば心配するな、この程度の傷どうということは無い…」

 

「無理すんな。さっき俺にも言ったけどアンタこそ休んだ方がいい、まだお互いに倒さなきゃならない相手がいるだろ?」

 

「互いに、か……そうだな」

 

 

「…ファースト、提案がある」

 

 

「……聞くだけは聞いてやる」

 

「手、組まねえか?」

 

 

俺はそう思いながら、ファーストの目を真っ直ぐに見て言った。

 

「貴様と…だと?」

 

「ああ。見ての通りお互い全力出してボロボロ。このまま行ったら目標達成出来ないどころか2人まとめてお陀仏だ。それに…俺はアンタに恩を返し切れていない」

 

「だから礼など不要だと…」

 

「助けてもらいっぱなしは性に合わなくてな。それに────俺には奴を許せない理由が増えた」

 

側にいる果南姉ちゃんを一瞥してその一言を言う瞬間、自然と声のトーンが一つ落ちたのを覚えている。胸の中にモヤモヤとしているコレ。紛れもなく『怒り』そのものだ。

 

「そうか、貴様も……」

 

「…どういうことだ?」

 

 

「いや、なんでもない。……いいだろう」

 

「…っし!交渉成立だな!」

 

 

「ただし条件がある」

 

「…条件?」

 

「全てが終わった後、貴様との決着を着ける。だからそれまで死ぬことは絶対に許さん、いいな」

 

「All right.それぐらいお安い御用だ!」

 

俺が手を出すと、ファーストが渋々ながらもその手を握る。そのまま引っ張り上げファーストを立ち上がらせた。

 

「っし、んじゃ行くか!」

 

「ああ」

 

「隼斗、わたしは……」

 

「姉ちゃんは留守番」

 

「…だよねぇ」

 

「ちょっと迎え呼ぶから待ってて。…博士、聞こえる?」

 

 

『ああ、こちら霧香。隼斗かい?その様子だと果南くんの救出には成功したようだな』

 

耳元につけっぱなしだった通信機で呼び出すと、少し時間を置いて霧香博士が出た。

 

「ああ。んで今からちょっと意気投合した異世界の剣士と一緒にアイツぶん殴りに行ってくるから姉ちゃん迎えに来てくれない?」

 

『異世界の剣士?…ああ善子くんと花丸くんを助けたっていう…え、マジ?何があったんだ一体…まあそれは後で聞こう。で、迎え?正直私も手が離せないんだがねぇ…まあ、あとはコンピューターに任せて細かい所は後で手直しして……あ、そうだ隼斗()()使えばいいんじゃないか?』

 

「アレ?」

 

『ほら、君と憐のバイクを合体させたあのライドクロッサー擬き』

 

あーライドXガンナー(仮)の事か。

ってなんでそれ知ってんだよ最後に使ったのだいぶ前だしまだアンタいなかっただろうが。

 

「擬き言うな。まあ実際擬きなんだが…確かにオートパイロットシステムがあるとはいえ今の姉ちゃんをバイクに乗せるのは不安だしな…そうするか」

 

『バイクはこちらから操作して向かわせる、そしたらあとは果南くんを乗せるだけだろう?そんじゃそういう事で!あー忙しい忙しい…この能力の再現がなぁ……!』

 

そう言って通信は切られた。

なんか気になるワードが聞こえてきたんだが…なに能力の再現って。

 

「よし…そしたら姉ちゃんはしばらくここで待っててよ、座標拾って迎えがそのうち来るはずだからさ。あ、寂しかったらそのジャケット俺の代わりにして持って行っても…」

 

「あ、それはいいや」

 

「あ、さいですか……」

 

バッサリ切られた。うーんさすがのサバサバ感、いつも通りの姉ちゃんだわ。

 

「それに、これは隼斗の大事なものでしょ?気合い入れる為にも着てってもらわなきゃ」

 

そう言って姉ちゃんは土で汚れたジャケットを投げ渡してくる。叩いて土を落とし、再びそれに袖を通した。

うん、やっぱこれがある方がしっくり来る!

 

「用は済んだか」

 

「ああ、待たせて悪かったな。んじゃま…

お楽しみは、俺達からだ!」

 

シグナルブレイヴを手に、それを上へと放り投げるといつもの変身ポーズを取り…

 

「……変身!!」

 

右手でシグナルブレイヴをキャッチ、展開したドライバーに装填!

 

《Evolution!》

 

《Super Rider!Brave!TAKE OFF‼︎》

 

青き装甲をその身に纏う。今の俺を突き動かすのは、純粋な『怒り』のみ。

 

「……行くぜ!!」

 

深呼吸。加速して一気に駆け出すのと同時に、ファーストもその後を追って走り出した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

走る。

 

走る。

 

走る。

 

許さない、許せない。

ふざけるな、何が『彼女に傷をつける事はしないとも』だ。お前は約束を破った。

 

当然だ。奴は悪、俺は正義。

そんな単純な事すら考えてなかった自分が腹立たしい。デッドヒートになっていないのに怒りが止まない。怒りを通り越して、もはや憎しみすら湧いてくる。

 

 

それが頂点に達しようとしていたその時。

目の前に見えたのは、傷だらけで倒れている永斗少年と、今しがたその対象になっていた元凶(エルバ)がそこに剣を振り下ろそうとしている所だった。

 

瞬間、堪忍袋はついに爆発四散し────

 

 

「エルバァァァァァァッッ!!!」

 

 

エネルギーの高まりでほんの一瞬オーバーブレイクのように全身が光輝き、そのまま煌風の刃を奴の胸目掛けて突き出す。

 

全力を刀に乗せ、一撃で命を奪いに行ったつもりだったが刃が深く突き刺さることは無くその身を吹っ飛ばしよろめかせた。

 

「フーッ……!フーッ……!!」

 

怒りを、殺意を乗せた全力の一撃だった。

けど…外しちまったか……心の中で舌打ちをしつつ永斗少年を起こす。

 

「大丈夫か永斗少年!」

 

「気付いてたよ、厳密に言えばアラシがだけど。ね、言ったでしょ憂鬱さん。君は…何も成し遂げられない」

 

《Cyclone!》

 

永斗少年はサイクロンメモリを起動しドライバーに挿入、メモリが消失した。アラシの元へ転送されたのだろう。

 

その隙を狙ってディストピアの剣が振り下ろされる、この状況からじゃ俺では対処できない。そう、()()()

 

 

防御不可能の空間切断の能力が発現する瞬間一振りの剣がそれを防いだ。

 

「ようやくお目にかかれたな、組織の離反者…“憂鬱”!」

 

「君は、憤怒の…! それに仮面ライダーソニック…まさか、ダイノエイジを倒したのか」

 

追いついてきたのは、次元を越えて出会った好敵手。こいつなら追いついてきて防いでくれるだろうなという読みはなんとか当たってくれた。更には……

 

「待たせたな、第2ラウンド…いや、最終ラウンドだ!」

 

その言葉と共に打たれる連撃。

サイクロンジョーカーになったダブルが俺とファーストと共にディストピアを退けた。

 

『で、なんでファーストいんのさ』

「そうだ。しれーっと並んでんじゃねぇよ帰れ」

 

「さっき一緒に戦おうってなったんだよ! 協力してアイツに勝とう、ってな!いやぁ本当なら小一時間は喋り倒してえ所だ!あんなに充実した戦いは初めてだったからな!」

 

「やはり手は退かないか。が、ヤツを斬るのは俺だ。そしてその次は貴様らだ。そのメモリはついでに頂く」

 

「うるせぇなやってみろや。エルバのついでに勢い余ってぶっ飛ばされないよう気ぃつけろ」

 

「え、何? お前ら仲悪いのか?」

 

そういや憤怒とは何度か共闘関係にあった、とは聞いていたが…まあ結局は敵同士だし、何度もある呉越同舟なんて本当に稀だしな……

 

「不思議だな。ソニックにファースト、相応の才が集っているのに期待ができない。俺の憂鬱は増す一方だ。それも全て…貴様のせいか、仮面ライダーダブル」

 

『そうやってさ、人のせいにするのやめてもらっていいかな?』

「そうだ三下野郎。自分とこどころか人様の世界で…俺の()()の居場所で好き勝手やった報い、受けさせてやるよ!」

 

「あぁ…エルバ! お前はやっちゃいけねえことをやった。町を…仲間を…そして果南姉ちゃんを……! 大切なものを傷つけまくったてめぇだけは、絶対に許さない!! 俺の…俺達の『正義』が、お前という『悪』を討ち滅ぼす!!!」

 

始めはどうしようもねぇ相手だった。

2人ぼっちで別世界に飛ばされて、仲間とも引き離されて。でもそんな中で嫌々ながらも手を差し伸べ、力を貸してくれた奴らがいた。

 

だが今は嫌々でも成り行きでもない。

自分達の世界を、大切な人たちを守るために俺たちは今肩を並べて立つ。

 

「勝つぞ。ここまでお膳立てしてもらって勝てなけりゃ先はねぇ。ここで大罪の一柱、へし折ってやる」

 

長かった俺たち史上最大クラスの大事件。

今度こそ……ここで終わらせる!!

 

次回に続く!

 




というわけでコラボ編8話でした!

ちょっとした小ネタになりますが、ラブダブル古参読者の人ならご存知でしょう、ファースト…もといスラッシュを作ったのは何を隠そう自分Master Treeなのです。
後に146さんによりオリジンメモリ云々の設定が追加され、現在の形になっています。

ファーストVSソニック、この組み合わせはコラボ編企画当初からやりたいとリクエストしていたので今回やれて大満足です。


次回、決戦!VSディストピア!!
2つの世界を賭けた戦いの行方を最後までどうか見届けてください!
それでは次回もお楽しみに!!

146さんサイドのお話は下のリンクからどうぞ!

https://syosetu.org/novel/96993/71.html

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