霧鍵式<フェンリル>を巡る戦いが終わっておよそ二週間、武装郵便屋<蝶と鯱>の、もしかしたらあったのかもしれないとある一日模様。
 ※ガガガ文庫様より発刊されております、『飛べない蝶と空の鯱』の二次創作SSです。誰か知ってる人いませんかねえ……。

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不機嫌/上機嫌

 

 

 

 

 

 0/

 

 

 ジェシカ=シルバーベルは不機嫌だった。

 なぜなのかは、自分でもよくわかっていない。どういうわけか、朝に目を覚ました時から、やけに気分が優れなくなっていた。

 体調は良好だ。咳も熱も眩暈も寒気もないし、食欲だっていつも通り。ただ心の奥になにかまとわりつくような違和感があって、どうしようもなく不快だった。

 泥沼の中にいるみたいだと、ジェシカは思う。

 

「……はあ」

 

 こうしてため息をこぼすのは、果たして何度目だろうか。無論、ジェシカがそれを知る由などないし、今更になって知りたいとも思わないが、ため息が回数を重ねるだけ、心の不快感が比例して大きくなっていくのは確かだった。

 今日は、窓から望む青空がいやに遠い。

 

 世界は、二つの空に分かたれている。見果てぬ天を深い群青で染め上げる<蒼界(そうかい)>、そしてその下を底知れぬ白妙で覆い尽くす<雲界(うんかい)>。二つの空に挟まれた宙をたゆたい、ジェシカたちが暮らす<島>――ハイフォニアは存在している。

 その<島>の一角に、ジェシカが身を置く郵便屋、<蝶と鯱>の事務所はあった。武装郵便屋――<島>において情報伝達手段の主流となっている手紙の他、数々の配達物や、時には<封書>と呼ばれる特別な手紙の配達を請け負う、<渡り鳥>呼ばれる配達人たちの事務所だ。

 狭い事務所である。少し前まで従業員がジェシカともう一人しかおらず、その時点で既に営業は赤字ギリギリだった。いわゆるところの零細企業であり、それは残念ながら今も変わってはいない。

 そんな事務所の中で唯一立派な、大きな三人掛けのソファ。その上で、ジェシカは悶々とした気持ちとともに寝返りを打った。

 お気に入りの<渡り鳥>情報誌は、今はテーブルの上で無造作に散らばっている。何度か手に取ってはみたが、気分転換にすらならなかった。

 少し前は、事務所の改装をして気晴らしをしようか、とも考えた。けれど考えただけで、体は動いてはくれなかった。ソファの上で延々寝返りを打つばかりで、それ以外のことなんて、何一つとしてやる気になれやしない。

 正確に言えば、この寝返りでさえ、やる気から起こる行動ではないのだけれど。

 

「……退屈」

 

 この言葉を口にするのも、もう何度目になるのか。口にしただけ気分が滅入っていくのは、既にわかっているはずなのに。

 ふと時計を見遣ると、二つの針が示す時間は午前だった。もう随分と長い時間が経ったように感じるが、まだ午後にすらなっていないらしい。

 午後に、なれば。

 午後になって、郵便の配達に行ければ、きっとこの憂鬱も消えてなくなるのに。

 

 ジェシカは、空が好きだ。<翼舟(つばさぶね)>と呼ばれる舟に跨り、空を飛び、人々に手紙を届ける――そんな<渡り鳥>の仕事が好きだった。

 それにも関わらず、ジェシカは一人で配達に行くことができない。配達に行ければと強く思いつつも、未だソファの上から動けないでいるのは、それが理由。

 

 ジェシカは、一人で空を飛ぶことができないのだから。

 

 <渡り鳥>たちが配達の際に使う<翼舟>は、基本的に一人乗りだ。鯱を彷彿とさせるその機体に生身で乗り込み、手綱を操って空を翔ける。

 ジェシカには、それができない。およそ八ヶ月前のある事件が発端になって、空を恐れるように――高所恐怖症に――なってしまったから。

 けれど、空に恋する心は消えなかった。空に馳せる想いは消えなかった。

 だからジェシカは、“彼”とともに空を飛ぶことを選んだ。<翼舟>の操縦がどうしようもなく下手で、どうしようもなく気配りができない愚鈍で、どうしようもなく救えない唐変木で――でも、嫌いじゃない、“彼”と。

 

「……ウィル」

 

 彼の名を、呼ぶ。

 <渡り鳥>であると同時に軍人でもある彼は、午前中は軍学校に通っている。そして午後になるとこの事務所で合流し、二人で一緒に配達へ向かう。

 一日の中で最も心地がいいその一時は、未だ、遠い。

 

「……ん」

 

 その時、彼の名が誘い水となったのか、ジェシカの脳裏にある閃きが走った。

 そうだ、どうして忘れていたのだろう。<渡り鳥>情報誌に心惹かれず、事務所の改装もする気になれない時、ジェシカは決まってこうやって暇を潰すのだ。

 桃色の唇をかすかに動かし、紡ぐのは一つの歌。鼻歌と大して変わらない小さな歌だったけれど、その旋律は事務所の隅々にまで響き渡った。

 やがて歌に誘われるようにして、ジェシカの周りに小さな燐光が舞い降りる。虹色の翅を持ち、淡い光の粒子を振りまく蝶――虹色蝶(グランツフィー)

 ジェシカは立ち上がり、近くの窓を開けて、虹色蝶を空へと解き放った。

 この虹色蝶は、深い霧で覆われ視界の利かない<雲界>を渡る際に、ジェシカの目を代わりをしてくれるもの。

 この力を使って、彼――ウィルの生活を観察(のぞきみ)するのが、ジェシカのささやかな、暇潰しだった。

 

 

 

 

 

 1/

 

 

 その時、ウィル――ウィリアム=スターリングもまた、退屈していた。

 ハイフォニアに存在する唯一の軍学校。敷地が限られる<島>においては、多くの建物が縦に積み上げられて巨大な塔を成すが、この軍学校は平地に腰を据えて建てられている。その上、周囲の貴重な土地をまるまる高い石壁でくくって広大な演習場にした、島の中でも指折り贅沢な建造物だ。

 その軍学校のとある教室で、ウィルは重いまぶたを懸命に支えて、長く伸びるあくびを噛み殺していた。

 軍学校とは文字通りに軍人の卵を育てるための施設であるが、また文字通りに、“学校”でもある。戦闘訓練などの実技はもちろん、数学や政治学に始まる軍人に必要な座学もまた、カリキュラムの一端に組み込まれている。

 そしてウィルは、それら座学の授業がどうしようもないほどに苦手なのだった。

 理系の座学は、<渡り鳥>の仕事にも通じるものがあるから嫌いではない。だが文系の座学はからっきしだ。退屈で退屈で、あくびのしすぎで顎が痛くなるくらい。

 しかして今の講義は、歴史学。

 果てしなく、途方もなく、退屈であった。

 教室の壁に掛けられた時計を一瞥してみるが、講義が始まってからまだほんの三十分だった。折り返し地点すら、まだまだ遠い。

 

(ふあ……、……眠)

 

 うららな日差しを注ぐ太陽が、今だけは恨めしい。お陰様で、眠気がとても抗いがたい重さでまぶたにのしかかってくる。

 しかし、ここは軍学校。学校とはいえ、本物の軍隊に負けず劣らずの厳しい規律で管理される場所だ。講義中に居眠りなどしたら最後、先生の容赦ない大喝がウィルの鼓膜を突き破るだろう。

 わかってはいる。

 わかってはいる、のだけど。

 

(あー……これは、やば……)

 

 わかっていても抗えないのが、睡魔という魔物の恐ろしいところで。

 結局ウィルは、机に頬杖をついた姿勢のまま、人知れずひっそりと眠りに落ちた。

 

(……?)

 

 意識を失うその寸前、窓の外に見慣れた燐光が光ったような気がしたのは。

 きっと既に夢だったのだろうなと、そう思いながら。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 一歩と事務所の外に踏み出すことなく、ジェシカは<ハイフォニア>の街並みを知る。虹色蝶(グランツフィー)が、ジェシカに外の光景を教えてくれていた。

 ハイフォニアに限らず、人間が暮らすことのできる唯一の土地である<島>は、敷地が大きく限られている。そのため人々は空間を縦に使い、建物を塔として積み上げていく術を覚えた。虹色蝶の視界から見上げる塔たちは、<蒼界>の果てを衝くほどに、限りなく天へ伸びていくようだった。

 ジェシカが虹色蝶を飛ばした先は、塔たちの森林を抜けた先、ウィルが通う軍学校だ。人目につかないよう物陰から物陰へと飛び移りながら、ジェシカは虹色蝶を通して、ウィルの姿を捜していた。

 

(外に人がいない……。ということは、中で授業をしてるはず)

 

 ぱたぱた羽ばたき、校舎の方へと向かう。ただ、近づきすぎてはいけない。虹色蝶は過去の乱獲によって<島>より姿を消した生き物だから、もし見つかったら面倒なことになってしまう。騒ぎになってしまうという意味でもそうだし、こうやって時たまにウィルを観察(のぞきみ)していることが、彼にバレてしまうという意味でも。

 校舎を囲む植木にひっそりと身をひそめながら、一階から順番にウィルの姿を捜す。窓一枚を隔てた先に広がる教室では、軍服に身を包んだ生徒たちが、みな真剣な眼差しで講義に耳を傾けていた。

 ウィルもこうやって、真面目に授業を受けているのだろうか。

 想像できない、とジェシカは思う。ウィルが座学を嫌うのはジェシカも知るところだ。きっと頬杖でもついて、懸命にあくびを噛み殺しているに違いない。

 ウィルの姿を見つけたのは、校舎二階の一番端に位置する教室だった。窓際に近い席で、あろうことか生徒の中で一人だけ、頬杖を枕にして舟を漕いでいる。

 

(……居眠りしてる)

 

 ジェシカはがっかりとため息を落とした。こちらの予想を悪い意味で裏切り、まさか居眠りとは。

 

(情けない)

 

 ウィルから軍学校について話をされることは何度かあったが、総じて、厳しい場所だと言っていた気がする。なら、居眠りなんてしていたら怒られるのではないだろうか。

 教壇に立つのは、実にがたいのいい男教師だ。鹿爪らしい表情はとても厳つくて、いかにも規律とか、そういう決まり事にはうるさそうである。居眠りをするような生徒には、説教どころか拳骨の一つでも飛ばしそうだった。

 幸い彼は、まだウィルの居眠りに気づいていないようだが。

 

(怒られればいいのに)

 

 そう、ジェシカは思う。そうしたら面白そうだ。場合によっては<封書>――過去の一部を残留思念として切り取り、いつでも再生できるように保存する特別な手紙――に記録しておいてもいいかもしれない。あとで繰り返し見て、楽しむことができるから。

 こんなに間抜けな寝顔をしているのだし、とてもいい考えだと――

 

(……)

 

 ジェシカは木の枝先に止まり、繁る枝葉の隙間からウィルの寝顔を眺めた。窓際の席だったことが幸いした。虹色蝶と共有できる視覚情報は決して鮮明ではないが、それでもよく見えた。

 本当に間抜けな彼の寝顔が、よくわかる。

 

(…………)

 

 しばしの間、ジェシカは時間に対する感覚を失った。間抜けだと思った。あいかわらずウィルは愚鈍、と思った。そうやって、鼻で笑ってやるつもりだった。

 でも、どうしてだろう。

 目が、離せない。

 もしここに、ジェシカとウィルを仕切る窓ガラスと、そして周囲の人の目がなければ。

 あの寝顔に止まって、羽を休めてみたいと。

 そう、ジェシカは、思った。

 

『――ウィリアム=スターリングッ!!』

 

 直後、ジェシカが思わず空に逃げ出してしまうほどの、とてつもない大喝が響き渡った。教壇の方から勢いよく飛んできた白く細長い物体が、ウィルの額を爽快に打ち抜く。

 

『いっ……だあ!?』

 

 バチン! と、まるで平手打ちでもかまされたかのように派手な音がして、ウィルが後ろに仰け反った。白い物体は縦に回転しながら宙に跳ね上がり、ウィルの机の中心に落ちて二つに砕ける。――あれは確か、『黒板』という板に字を書くために用いる、『チョーク』だったろうか。

 

(素晴らしい一撃)

 

 再び枝葉の間に身を隠しながら、ジェシカは感嘆した。見たところあのチョークを投げたのは、教壇の上で講義をしていた男教師だ。目標を正確に撃ち抜く見事な腕前だった。きっと、彼は銃器の扱いも上手いだろう。

 ウィルは、額に込み上げてきた痛みと、あとは居眠りを見咎められた焦りからだろう、顔を青くして立ち上がり、教師に向けて頭を下げようとした。

 すると、そこにまたチョークが飛んできた。まっすぐ額を狙った一撃を、ウィルは咄嗟にしゃがんで回避。チェークはそのまま窓に直撃し、ガラスにひびを入れた。

 

『てめえ、俺の講義で寝るたあいい度胸だ! つーかよけんなっ!』

『む、無茶言わないでくれよ! あんたのチョーク投げは人殺せる威力だろうがっ!?」

『おうおう年長者に敬語使わねえその反骨精神はあいかわらずか! そんじゃここいらで、どっちが敬われる立場なのかハッキリさせとこうじゃねえかスターリングウウゥ!!』

『ちょ、待っ』

 

 次々放たれる銃弾(チョーク)、それを手に取った(きょうかしょ)で遮二無二防ぐウィル。相手に呼吸を合わせ、動きを先読みする――そんな特殊な技術を持っている彼でさえ、防御はすべて間一髪だった。 

 巻き添えを恐れて、ウィルの周囲の生徒たちが教室の隅に避難していく。

 

『ハッ、さすが<(オルカ)>なんて呼ばれてるやつは違うね! 俺のチョーク投げをここまで耐えたやつは初めてだ!』

『あんた俺を殺す気か!?』

『馬鹿言えてめえは撃たれて死ぬようなタマじゃねえだろオラオラオラオラオラアアア!』

『う、うわあああ!?』

 

(……馬鹿みたい)

 

 教室で繰り広げられる茶番を眺めながら、ジェシカは静かに目を眇めた。

 ウィルが居眠りする姿を見て、怒られればいい、と思った。けれど実際にウィルが教師に怒られている今、ジェシカの心の中にあるのは落胆で。

 残念だと、ため息をつく。

 それからふと、首を傾げた。

 

(……残念?)

 

 ジェシカは一体、なにを、残念だと思ったのだろうか。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 次の講義は、演習場での模擬訓練だった。

 <鯱>の面目躍如である。相手に呼吸を合わせることで次の動きを先読みできるウィルは、足が地につく戦場であれば、その細身からは想像もできないほど無類の強さを発揮する。

 ジェシカは最寄りの適当な木で羽を休め、ウィルの観察を続ける。白兵戦を想定しての模擬訓練は、開始してまだ間もないながら、完全にウィルの独壇場と化していた。

 <鯱>の名の由来。人、壁、あらゆるものを足場とし、上下左右関係なく、まさに縦横無尽に戦場を駆け抜ける。

 それはさながら、鯱が海を切り裂くように。

 故の、(オルカ)

 訓練は、ものの数分で終了した。終了せざるを得なくなった。<鯱>が、たったそれだけの時間で戦場を制圧してしまったから。

 

『あーちくしょうっ! ウィル、てめえちょっとは手加減しろよ!』

『強すぎんだよ! これじゃあ訓練になんねえじゃねえかー!』

 

 敵側のクラスメイトから早速非難の声が上がる。一方の味方側は、ウィルと同じチームだと楽ができると、口々に彼の実力を称えていた。

 当然だ、とジェシカは誇らしい気持ちになった。<翼舟>の腕前はまだまだだが、白兵戦の実力ならばジェシカも一目置くところだ。ウィルはああ見えて、過去、そのへんの軍人とは比べ物にならない強敵を打ち倒してきたのだから。

 ――これくらい、できて当たり前。

 ウィルが鮮やかに戦場を駆け抜ける様は、見ていて実に気持ちがよかった。いつまででも飽きずに眺めていられる気がしたし、いつまで続いても構わないと思った。

 だが、好事魔多しということなのだろうか。ジェシカの期待を裏切り、休憩時間を境にしてウィルが模擬戦から追い払われてしまった。実力差がありすぎてバランスを取れないため、教師が彼に見学を言い渡したようだった。

 む、とジェシカは眉をひそめた。お気に入りの<渡り鳥>情報誌を見ている時、事務所に客がやって来て邪魔をされた――あの感覚に似ている。

 

(不可解)

 

 あんなに見ていて気持ちがよかったのに、どうしてそんなことをするのだろうか。文句の一つでも言ってやりたい気分だったが、今の状態ではどうしようもなかった。しぶしぶ諦め、演習場の隅で休憩していたウィルの観察を続けることにする。

 そこでふとジェシカは、ウィルの隣に誰かがいることに気づいた。不審に思いながら近くまで飛んでいってみれば、それはジェシカにとっても見覚えのある顔で。

 

(……)

 

 そしてジェシカは、どうしようもないくらいに不機嫌になった。ウィルの活躍を見て晴れ晴れしていた心に、また暗いどんより雲が広がっていくのを感じた。

 短く切り揃えた金髪に、角ばった眼鏡をかけた少女。

 ケイト=ブリュンヒルデ。

 

『お疲れ、ウィル』

『あれ、ケイト? なんでここに』

 

 ウィルの同期である彼女は、なにやら親しげな笑顔をたたえて、ウィルにタオルを手渡していた。

 

『ちょうど隣の演習場で演習してたのよ。で、今は休憩』

『ああ……なるほど』

 

 ありがとう、と礼を言って、ウィルが受け取ったタオルで額の汗を吹く。たったそれだけのことに、ジェシカの心は驚くくらいに苛立った。

 ジェシカは、ケイトが嫌いだ。もともと人間が好きではないし、その中でもケイトは傲慢で、<渡り鳥>として大した実力もないのに、いつもウィルを見下していた。

 確かにウィルは、翼舟の操縦が下手だ。けれど彼はその事実を真摯に受け止め、その上で、『空の最果てに行く』という夢を叶えるために、ジェシカとともに飛ぶことを選んだ。

 それは、とてもまっすぐな感情だ。太陽の光すら跳ね返すほどに、とても眩しい志だ。そしてジェシカにとっては、この大空と同じくらいに大切な約束でもあった。

 だから、これといった夢も持たずにウィルを見下すケイトが、嫌いだった。

 だが最近になって、ウィルとケイトの関係は改善されつつあるようだった。ケイトの物腰がやけに軟化してきたのだと、少し前にウィルから聞かされた覚えがある。前よりもずっと優しくなったし、『空の最果てに行く』という夢も馬鹿にされなくなった。それどころか、たまに「頑張りなさいよ」なんて応援されたりもするんだ、と。

 

(……)

 

 それはジェシカにとって、喜ぶべきことであったはずだ。自分たちの夢を認めてもらえたのだから。背中を押してもらえるようになったのだから。

 なのに。

 

『あいかわらずの腕前ね』

『見てたのか?』

『ええ。まさに地上では敵なしね』

 

 不快だ。

 不愉快だ。

 例え、ウィルを見下すことがなくなったとしても。

 例え、ジェシカとウィルの夢を応援してくれるようになったとしても。

 ジェシカはケイトのことが、やっぱり、嫌いだった。

 どうしてなのかはわからないし、理由を考える気にもなれなかった。ただ、ウィルとケイトが親しげに話をする光景が、決して気持ちのいいものではないということだけは、理解していた。

 

「……ウィルの、ばか」

 

 呟き、ジェシカはそれ以上、ウィルの観察を続けるのをやめた。虹色蝶を消し、己の感覚が体に戻ってきたのを感じて、それから倒れるようにソファの上に横になった。

 気分が悪い。苛々が治まらない。まるで心を焼かれているようだ。

 

「ウィルの馬鹿。愚鈍」

 

 ウィルを罵れば少しは楽になるかと思ったが、言葉はとても空虚に響いて、口にすればするだけ寂しくなるだけだった。

 ――それは一体、なぜ?

 

「おはようございますです! ジェシカはいるですか――って、ひい!?」

 

 その時ちょうど事務所に出勤してきたレンが、ジェシカを見るなり顔を青くして仰け反った。それだけ、不機嫌な表情をしていたのだろう。

 

「……おはよう」

 

 ジェシカは小さくそれだけ返し、顔を隠すように、ソファの背もたれへと寝返りと打つ。

 そして、レンのことなどてんで構わず、まぶたを下ろした。

 へそを曲げた子どもが、不貞寝をするように。

 

 

 

 

 

 2/

 

 

「……どういう状況だ、これ?」

 

 事務所の戸を開けるなり流れ出してきた冷気に、ウィルはやにわに身を震わせた。

 まるで<雲界>の中に降りたかのような、不気味な寒々しさが事務所を支配している。冷気の中心にはソファで横になって眠るジェシカがいて、部屋の隅ではレンが子犬よろしく丸まって震えていた。

 本当にどういう状況だと、ウィルは入ってきたドアを閉めることも忘れて呆然と立ち尽くしてしまう。

 

「ウィ、ウィルー!」

 

 ドアを通して外の暖かい空気と事務所の冷たい空気が入れ替わり、それに気づいたレンが地獄に仏と声を上げた。部屋の隅で縮こまったまま、必死にこちらを手招きする。

 正気に返ったウィルは、空気の入れ替えのためにドアを開けっ放しにしたまま、抜き足忍び足でレンのもとへ。途中、ジェシカに声を掛けたりはしなかった。触らぬ神に祟りなしだろう。

 

「……おい、一体なにがあったんだよ?」

 

 声をひそめて問うてみるが、レンは涙目になった顔をぶんぶん左右に振っただけだった。

 レンは、今から二週間ほど前にこの事務所に加入した<渡り鳥>見習いの少女だ。十歳と少しくらいの幼い容姿で、眩しい夕陽色(キャロットオレンジ)の三つ編みを揺らしている。とある特殊な<霧鍵式(むげんしき)>――雲界の<霧>から物質を精製する技術――を巡る一連の事件により身寄りを失い、ウィルたちの仲間になった経緯がある。

 この事務所に身を置いてからまだ日が浅いレンにとって、不機嫌オーラを撒き散らすジェシカというのは明らかな恐怖の対象であるらしかった。無論それはウィルにとっても同じなのだが、少なくとも、レンのように部屋の隅で丸くなるほどではない。

 ウィルは横目で、ソファの上のジェシカを窺い見た。黄金も欺く美しい金髪をソファ中に広げ、ウィルたちに背中を向けて眠っている。狸寝入りのようだが、ウィルがやって来ても無言を貫くあたり、相当虫の居所が悪いらしい。

 ウィルは猜疑の視線でレンを見下ろした。

 

「……お前、またなんか壊したのか?」

 

 家事のセンスが壊滅的なレンは、よく手伝いと意気込んで事務所の破壊活動を行う。

 レンは一層激しく三つ編みを左右に揺らした。

 

「違います、レンはなにもしてないです! 今日レンが意気揚々とこの事務所にやって来た時には、既にこんな有様だったです!」

「そうなのか?」

「ウィ、ウィルこそなにか変なことしたんじゃないですかっ? 己の罪を認めてさっさと謝罪してくるです!」

 

 そんなこと言われてもな、とウィルは腕を組んだ。心当たりがなかった。今日ジェシカに会うのは今が初めてだし、昨日この事務所で別れた時も、彼女の機嫌は至って普通の状態だった。普段からなにかとミスをしてはジェシカに小言を言われるウィルだが、今回ばかりはなにもしていないと自信を持って言い切ることができる。

 しかしだとすれば、どうしてジェシカはここまで不機嫌になっているのだろうか。

 レンがウィルの袖を何度も引っ張って喚く。

 

「こ、この際そんなの関係ないです、早くジェシカの機嫌を取ってくるです! レンは職場の雰囲気改善を直訴するです!」

「……俺じゃなくてジェシカに直訴してみたらどうだ?」

「レンはまだ死にたくないです」

 

 真顔で返され、ウィルはやれやれと吐息した。わかっている。この状態のジェシカに声を掛けるのはある種の自殺行為だ。せっかくできた新しい仲間を早々に失うわけにはいかない。

 もっとも、レンがジェシカにやられる光景というのは、なかなか想像することができなかったが。

 

「……えーっと」

 

 ともあれ、ジェシカである。彼女のことだから、大好きな空について話題を膨らませていけばすぐに機嫌を直すだろう。故に最大の難関は、『ジェシカに声を掛ける』という最初のワンステップにある。

 ウィルはじりじりとジェシカの眠るソファに近づき、生唾を飲み込んで、しかしできるだけさりげない調子を意識して――

 

「ジェシカ、おはよ――ぎゃあああ!?」

 

 直後、草むらから飛び出す蛇さながら、ジェシカの金髪を掻き分けて茨の鞭が出現した。ウィルが反射的にその場にしゃがみ込むと、一瞬遅れて、振るわれた茨が背筋も凍りつく勢いで頭上を一閃していく。空気が鋭く両断される音に交じって、後ろの方で、レンが「ひいいい!?」と悲鳴を上げたのが聞こえた。

 全身から血の気が落ちた。すっかり放心状態になったウィルはその場で尻餅をついたまま、ゆらゆら鎌首をもたげる茨をしばし無言で見つめていた。

 まるで容赦のない茨の一撃を放った張本人――ジェシカの、不機嫌を塗りたくった声が聞こえる。ウィルに向けられたままの彼女の背中が、極寒の如き不機嫌オーラをまとった。

 

「ウィル。今の私は、機嫌が悪い」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!? そんなのはわかってるけど、なにも“それ”を出す必要なんかないだろ!?」

 

 あの茨は、ジェシカが霧鍵式で作り上げた代物だ。故に野生の茨よりもずっと強靭で、ずっと鋭い切れ味を持つ。今から三週間くらい前には、大の大人を紙くずのように吹き飛ばしたほどだ。

 それがたった今、ウィルの頭上を情け容赦なく一閃していったわけで。

 

「殺す気か!」

「人聞きが悪い。私はただ、愚鈍なウィルに罰を与えようとしただけ」

「ただ挨拶をしようとしただけなんだけどな!?」

 

 マズい、とウィルは焦った。まさか茨の一閃が飛んでくるとは予想していなかった。これは、ウィルが知る中でも最悪級の機嫌の悪さではないか。

 助けを求めて背後を振り返れば、レンは首をぶんぶん横に振って両腕で×印を作っていた。早口言葉を言うように動いた唇はこう語っている。――ムリですムリですダメですムリです巻き込まないでくださいレンはまだ死にたくないですてか早くなんとかしてください骨は拾ってあげますからせめてジェシカの機嫌を直してから死んでください。

 ちくしょう、とウィルは唇を噛んだ。あの薄情者め、俺を見捨てやがった。

 仕方がないので、大分強引ではあるが、一足飛びに話題を空へと持っていくことにする。

 

「ジェ、ジェシカ! そろそろ午後の配達の時間だぞ!」

 

 正確に言えばいつもよりまだ一時間ほど早いが、そんなのは今はどうだっていいはずだ。とにかく空へ――<蒼界>に広がる群青と<雲界>を覆い尽くす白妙を望めば、ジェシカの機嫌だってすぐによくなるはずだと。

 口に出して叫んだその時は、思っていた。

 そして一瞬、ジェシカの肩が震えたようだった。

 だが、それだけ。

 

「……今日は、いい」

「は……?」

 

 返ってきた拒絶の言葉に、ウィルは己の耳を疑った。ジェシカは寝返り一つ打つことなく、ウィルに背を向けたままで、ひどく淡々と言う。

 

「レンを連れて行って、翼舟の操縦を教えてあげて」

「いや、それは……」

 

 ウィルは口ごもった。それはわかる。レンがこの事務所で<渡り鳥>見習いを初めて早二週間、そろそろ空を飛ぶ訓練をしていく必要があるのは事実だ。

 だが、それは、

 

「別に今じゃなくたっていいだろ? 配達が終わったあとでも……」

 

 主に、ここでジェシカを空に連れて行かないと己の身が危ないという保身から、ウィルは茨を警戒しつつ控えめに反論した。ジェシカの機嫌取りとレンの訓練とでは、はっきり言ってまったく優先順位が違う。

 

「配達に行けば、気が紛れるかもしれないし……」

「そ、そうですよジェシカー、気分転換は大事ですよー……」

 

 後ろの方から、レンもかなり腰が引けた声ではあったが援護してくれた。

 しかし、それでも。

 

「……今日は、気分じゃない」

「……!」

 

 変わらない拒絶に、ウィルは少なからず息を呑んだ。

 初めてだった。ジェシカが、空を拒絶したのは。

 八ヶ月前に翼を失い、一人で飛ぶことができなくなっても、ジェシカが空を遠ざけたことはなかった。彼女ほど空に対して強い想いを持っている<渡り鳥>は、この島――いや、この世界中を捜したとしても見つからないだろうと、ウィルは思っていた。

 そんなジェシカが、唐突に口にした拒絶の言葉は。

 ウィルが思っていた以上に、冷たく、ウィルの心に刺さっていた。

 

 ――『約束だ。一緒に飛ぼう。空の最果てまで――』

 

 かつてジェシカと交わしたその約束が、揺らいだ気がして。

 ウィルは口を衝いてなにかを言おうとしたけれど、動揺しとりとめのなくなった頭では、ただ言葉に詰まるばかりだった。

 結局、言葉らしい言葉をなにも言えないまま、冷たいジェシカの声音に切り捨てられる。

 

「私のことは、放っておいて」

「っ……」

 

 茨がジェシカの髪の中に戻っていく。それっきり、ジェシカは一切の意識をウィルから外したようだった。張り詰めた空気は徐々に消えていき、最後には身が裂けるかと思うくらいに無慈悲な沈黙だけが残る。そこでようやく、ウィルはふと思い出したように、弱々しい呼吸を一つだけすることができた。

 ジェシカの拒絶があまりに衝撃的で、息をすることすら、忘れていた。

 

「ウィ、ウィル……」

 

 腫れ物を触るように後ろから名を呼ばれ、ウィルは半ば呆然としたまま立ち上がった。レンは今にも泣き出しそうな顔をして、スカートの裾をきつく握り締めていた。

 本心では、なぜだろう。ウィルも、なんだか無性に泣きたい気持ちに駆られていたけれど。

 それを無理やり浮かべた苦笑で振り払って、ウィルは努めて明るい声音で言った。

 

「ま、まあ、そんな日もあるよな。じゃあ今日の配達は、俺とレンで行ってくるよ」

 

 ジェシカからの返事はなかった。そのことを意識しないようにしながら、ウィルはレンのもとまで戻って、せめてもの景気付けに、彼女の肩を大きな平手で三度、叩いた。

 

「ほら、行くぞ。航空服の着替え方は覚えただろ?」

「ウィ、ウィル、」

 

 レンは、必死に何事か口を動かそうとしていた。けれど、それが音になることは一向にない。

 ウィルはもう一度レンの肩を叩いて、彼女にだけ聞こえるかすかな声で、

 

「……いいから、行こう」

 

 大好きな空すらも拒絶したのだ。今のジェシカをどうにかするなんて、到底できるとは思えなかった。

 レンは髪と同じ色の眉をくしゃりと歪めて、ウィルとジェシカを何度も交互に見つめて――しかし最後には、自分にもまたできることはないのだと、悟ったようで。

 

「……わかりました、です」

 

 掠れた声で、それだけ、呟いた。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 悪いことをした、とは思っていた。先ほどの拒絶が、八つ当たりにも近いまるで子どもの癇癪であったことを、いくらプライドが高いジェシカとはいえ理解していた。

 事務所にウィルたちの人影はない。ここから扉一つを隔てた格納庫からは、ウィルが翼舟を整備する音が響いてきている。ここでの生活を始めてからは既に聞き慣れた、ともすれば子守唄にも近い響きに、気がついたらジェシカはそっと耳をそばだてていた。

 ハッと我に返り、慌てて意識を逸らす。これではまるで、今日の配達を降りたことに未練を感じているようではないか。

 心の中で首を振り――しかし実際はそうなのだろうと、ジェシカは思う。空を飛びたいという気持ちはあった。空を飛べばこの気持ちが楽になるだろうという期待もあった。けれどジェシカは胸の中にある苛々に翻弄されて、その勢いのままに、配達には行かないとウィルたちに言い切ってしまった。今更「やっぱり行く」と言ってのこのこ格納庫の扉を叩くのは、ジェシカのプライドが許してくれそうにない。

 格納庫の方から、<霧鍵機関>の起動する気配が伝わってくる。霧鍵式を組み込み、雲界の<霧>を動力にして動くその機械たちは、翼舟のエンジンとしても利用されている。

 格納庫中を風で軋らせ、翼舟が一機、やがて空へと飛び立っていくのが見えた。

 

「……」

 

 ジェシカは浅く寝返りを打ち、窓から空を望んだ。鳥さながらに翼を広げた翼舟が、緩やかな速度で<蒼界>の彼方へ昇っていく。

 

「…………」

 

 その機体を見えなくなるまで追い続けながら、ジェシカはそっと眉をひそめた。妙だ、と思う。どうしてこんなに不機嫌になっているのか、自分で自分が不思議でたまらない。

 この苛々の原因は、間違いなくウィルだ。それは間違いない。

 けれど一方で、ウィルだけが悪いわけではないようにも思う。

 なら、

 

(なら――)

 

 なら、悪いのは、一体だれ。

 

 

 

 

 

 3/

 

 

 <渡り鳥>たちが空を征く際の相棒となる翼舟は、“舟”という言葉から連想されるほど堅牢な造りではない。人を乗せ空を渡るという用途こそ飛行船と同じであれど、機体は動力以外がすべて剥き出しの装甲で、搭乗者の身を衝撃から守るような備えはなに一つとして存在していない。

 <渡り鳥>は、その翼舟に命綱一つで己のすべてを預け、空を翔けゆく。それは、今こうして配達のために翼舟に乗るウィルとレンとて、例外ではない。

 黒塗りの機体。左右に翼を広げた様は鳥のようでもあるし、まっすぐに長く伸びる体は魚のようでもある。機体名<霞曲(かきょく)>――ウィルたちがレンと出会うよりも少し前に、ジェシカがとある人物より受け継いだ機体だ。

 元来、翼舟は一人乗りを前提として造られるものだが、この<霞曲>には、二人乗りを可能にするだけの広い操縦席が備わっている。まだ翼舟を扱えないレンが操縦の仕方を見て学ぶには、まさに打ってつけの機体というわけだ。

 機体を操るための手綱をウィルが握り、その後ろではレンがウィルの背中にひっつく。そうやって二人は、塔さながらに積み上げられた建物たちの間を抜けて、青空の下を漂うように飛んでいた。

 手綱の操り方を実践しながら、ウィルは口頭でも、翼舟での飛行法を説く。

 

「――翼舟は、動力になってる霧鍵機関が浮力を作ってくれるけど、操縦自体は手動だ。この手綱と……あとは体の重心をずらして、上昇・下降・旋回する」

「むー」

 

 ウィルは決して、翼舟の扱いが上手いとはいえないが、基本的な配達程度ならそこそこはこなすことができる。特に最近は<雲界>を渡って遠くの<島>に行くことも多かったので、以前と比べれば、腕は格段に向上していた。レンに翼舟の基本制御について講釈しながら、配達を同時進行できるくらいには。

 

「で、霧鍵機関で作られるのは浮力だけだから……翼舟で大空を飛び回るためには、やっぱり風を味方につける必要があるわけだ」

「ウィルが苦手なやつですね」

 

 <島>と呼ばれる土地は、どこもかしこも常に強風に晒されている。故にその流れを的確に読み、味方につけなければ、翼舟はたちまち風にさらわれて制御を失ってしまう。

 ウィルは、<渡り鳥>には必要不可欠といっても過言でない、この“風読み”の能力を欠いていた。今でこそある程度乗りこなせるようになったが、手綱を握って間もない頃は本当にひどい目にあったものだった。

 己の情けない記憶を思い出し、ウィルは力なく苦々しく笑う。

 

「そうだな。……で、この風を読む方法なんだが、こればっかりは言葉でどうこう説明できるようなものじゃない……らしい。俺自身、体に叩き込んで覚えたからな」

「習うより慣れろってことですか」

「そういうことだ。――っと、もうすぐ次の家に着くぞ。レン、手紙の準備」

「はいです」

 

 ウィルは手綱を振るって、空高く伸びる塔の一角に翼舟を寄せた。レンが、肩に下げた郵便鞄の中から手紙の束を取り出す。

 寄せた先には塔の外壁に埋め込まれる形で郵便ポストがこしらわれていて、表札は、

 

「バーネットさん」

「バーネット……バーネット……あ、ありましたです!」

 

 嬉々と声を上げたレンが、ポストの口に手紙を一通、投函した。

 

「ごくろうさん」

「ふっふー、レンはもう手紙の配達はマスターしたです! どうですかウィル、レンは優秀ですか?」

「いや、とは言っても、翼舟の操縦は俺がしてるしなあ……」

 

 胸を張るレンに、ウィルは微苦笑とともに頬を掻いた。手紙をポストに入れること自体は誰にだってできるだろう。難しいのは、翼舟の操縦だ。こう見えて体力勝負なところがあるから、体の小さいレンには厳しいものがあるかもしれない。

 だがレンは、ウィルたちの夢をともに追い掛けると誓ってくれた大切な仲間だ。だから辛くても頑張ってほしい、とウィルは思う。

 

「明日あたりから、ぼちぼち翼舟の操縦もしてみるか」

「ふふふ、任せるです! ウィルなんてすぐに追い抜いてやりますからね!」

 

 こちらの背中にひっつき、花が咲くように笑うレンの笑顔を見ると、ウィルの心も安らいだ。レンの底なしに明るい性格が、この場では幸いしていた。お陰でジェシカに拒絶された先の一件を引きずることなく、それなりに楽しく、配達を進められている。

 かすかに口元に笑みをにじませ、ウィルは翼舟の手綱を握り直した。

 

「それじゃ、次のとこ行くぞ」

「了解です!」

 

 翼舟を動かし、再度空へ翻る。空高く伸びた無数の塔たちからは、それぞれの塔をつなぐ橋が架けられている。それらが空の下で折り重なって交差し、翼舟のための航空路を作り出していた。

 その道に従って橋と橋の間をくぐり抜けながら、ウィルはふと、自分の背中にしがみつく小さな手の感触を意識した。

 決して大きくはないジェシカの掌よりも、更に一回り小さな。

 そこから、引き寄せられるようにジェシカのことを思い出す。

 

(……)

 

 空を飛びたくないと、出会ってから初めて、ジェシカが口にした。

 その拒絶は、果たして今日一日限りの気まぐれなのか。

 それとも――

 

 その時。

 前触れなく吹いた強い横風が、翼舟の船体を激しく叩いた。

 

「うわっ!」

「ひゃあ!?」

 

 ジェシカのことに気を取られていたためか、その流れをまったく読み切れなかったウィルは、あっという間に翼舟の制御を失って、天地が逆さまになった空に投げ出される。

 

「レン、しっかり掴まってろ!」

「は、はははっはいですっ!」

 

 レンの華奢な腕が強く体に回されたのを確認し、ウィルは動揺を押し殺して果敢に手綱を振るった。これでも<雲界>の航行を通して数々の死線をくぐり抜けてきた身だ。強風に煽られて翼舟が逆さまになった程度で、今更我を見失ったりはしない。

 いつも背中で聞いてきたジェシカの言葉を思い出せ。吹きつける風に逆らわないように、その勢いを味方にして、くるりと――

 

「ああっ!」

「どうした!?」

 

 翼舟の体勢を戻すや否や、レンの悲鳴に耳朶を打たれる。

 

「大変です、今ので鞄から手紙がっ!」

「ッ……!」

 

 レンが指差した先――翼舟から見下ろす街並みに、白い花びらが数枚、舞い落ちていくのが見えた。

 本物の花びらなどではない。あれは――手紙。

 さっき一回転した時に、レンの郵便鞄の中からこぼれ落ちたのだ。

 

「やばっ……!」

 

 配達物の紛失は、<渡り鳥>の世間体に関わる重大な過失だ。手紙は恐ろしい速度でどんどん落下していき、もう間もなく、そびえ立つ塔たちの根本に消え去ろうとしている。

 今度ばかりは、ウィルは動揺を押し殺すことができなかった。すぐに回収しなければと焦って手綱を振るうが、未だ強烈に吹きつける横風の中、上手く機体を制御することができない。

 

「ウィル、早くしないと手紙が! 手紙がっ!」

「わ、わかってるよ……!」

 

 背中でレンが必死に叫ぶが、そんなことウィルにだってわかっている。わかっていないはずがない。

 だが、肝心の風の流れが、読めない。軽いパニック状態だった。風の吹きつける方向をなんとなく肌で感じてはいるが、それに対してどう機体を操ればいいのかが、一向に頭の中に浮かんでこなかった。

 

「ウィル!」

「ッ……!」

 

 いつも風の流れを教えてくれるジェシカの声は、今はない。聞こえるのは、必死にウィルの名を呼ぶレンの声だけ。だがそれも、吹き荒ぶ風にほとんどかき消されてしまって、ウィルの意識を叩き起こすには至らない。

 風に弄ばれ、手紙と翼舟の距離はただただ広がるばかりだった。

 

「く、くそ、――?」

 

 白熱する焦燥に、いよいよウィルの両腕が震え出した、その時。

 不意にウィルは、レンの腕の感触が自分の体からなくなっていることに気づいた。両腕を離したのだ。風に煽られ、一歩間違えれば翼舟から落下するかもしれないこの状況で。

 どうして。

 

「レン、なにして、」

 

 首だけで背後を振り返ったウィルは、そして見た。

 翼舟を完全に離れ、空に翻ったレンの体。

 重力に引かれ落ちゆく、夕陽色を。

 

「なっ――」

 

 声は、ほとんど出なかった。目の前に広がった光景が無軌道すぎて、悲鳴を上げることすらできなかった。

 落ちゆくレンの体は止まらない。翼舟に繋がれているはずの、彼女の命綱が外されている。

 命綱が不手際で外れることはまずない。搭乗者を落下から守る唯一の生命線であるそれは、翼舟に乗り込む際に再三確認が行われるからだ。

 ということは、レンは落ちてしまったのではなく。

 わざと命綱を外して、自分から、飛び降りた。

 ウィルの思考がその事実まで辿り着いた、直後。

 

「<フェンリル>――――!!」

 

 響くレンの声は鐘。紡がれた名は、<七つの鍵>と呼ばれる世界最古の霧鍵式。

 その叫びに呼応し、レンの体から黒い霧があふれ出す。

 

 ――レンは、人間ではない。十歳前後の少女のなりをしているが、その正体は、<フェンリル>という名の霧鍵式そのもの(・・・・・・・)だ。レンカ=クヨーという少女を原型にして、元あった<フェンリル>の姿から作り変えられた。

 そして<フェンリル>の本来の姿こそが、あの、レンの体から出現した黒い霧。

 黒狼。

 

「――ウィシカ!」

 

 その黒狼を、レンはウィシカと呼んでいた。<雲界>すらも渡り征く驚異的な飛行能力を兼ね備えた、空を駆ける狼だ。

 

「まさか、あいつ――!」

 

 現れたウィシカは素早くレンの真下に回り込み、大の大人も楽に乗れるであろうその大きな背で、彼女の体を抱き止めた。ここまで来ればいくらパニック状態のウィルといえど、自ずとレンが飛び降りた意図を察することができた。

 ウィシカの優れた飛行能力ならば、落ちる手紙にも追いつけるだろう。

 偏に、ウィルに任せていてはダメだと思ったから。

 だから自分から、動いた。

 

「……、」

 

 手紙を追いかけ徐々に小さくなっていくウィシカの姿を見つめながら、ウィルの心にあったのは敗北感だった。レンやウィシカに対しての、ではない。そもそも、自分の飛行技術がウィシカに勝てるなどとはゆめゆめ思っていない。

 だからウィルは、他でもないこの空に対して、負けたのだと思った。

 いつしか風は収まり、翼舟の機体も自然と安定するようになっている。けれどウィルはもはや手綱を振るうことができず、沸き上がる敗北感をただその場で噛み締める。

 ジェシカとともに、幾度となく<雲界>の航行を乗り切って。そして、レンに翼舟の操縦を教える立場になって。

 俺だって少しくらいはと、思っていた。だが自惚れだった。結局今のウィルは、後ろにジェシカの存在がなければ、落とした手紙一つ拾い直すことすらできやしない。

 かつて風の流れを完全に支配し空を征服してみせたジェシカとは、雲泥の差だった。

 

「あー……くそ」

 

 空を見上げ口からこぼれたため息は、思っていた以上に卑屈でなかった。

 現実を叩きつけられた。ウィルの腕前ではまだまだ空には届かない。そう完膚なきまでに思い知らされたのだという、ある種の清々しさがあった。

 だからこそ焦がれる。だからこそ、いつかこの空を自分のものにしてやりたいと思う。

 ジェシカと一緒に、二人で。

 空の最果てに行くという約束を、叶えたいと。

 

「……ジェシカ」

 

 なあ、ジェシカ。

 やっぱり俺は、まだまだだ。まだまだ、お前が後ろにいないとろくに飛べない雛鳥だ。

 だから。

 

「……飛びたくないなんて、言わないでくれよ」

 

 俺は、お前と一緒に、飛びたいよ。

 

 

 

 

 

 ○

 

 

 叱られた。こっぴどく叱られた。

 先の不手際についてこちらの背を叩きながら激しく糾弾するレンに、ウィルはただ平謝りを返すことしかできなかった。

 

「本当に怖かったんですよ!? レンはウィルに、楽しく配達ができるよう安全運転を要求するです!」

「……悪かったよ」

 

 ウィルの油断が原因で迷惑を掛けた上に、レンがいなければ手紙すら紛失していたかもしれないとなっては、ウィルに口答えをする権利はない。

 

「さっきはありがとう。いきなりだったからかなりビビったけど、お陰で助かった」

 

 素直に礼を言うと、背中越しでレンが胸を張ったのがわかった。

 

「ふふん、レンの力があればあんなの当然です。帰ったらウィシカにお礼の餌をあげるです!」

「そうだな」

「レンにもなんか作るです!」

「ああ」

 

 頷く声は、思っていたよりも空返事だった。頭の中で、まだジェシカの姿がチラついている。

 あんなトラブルがあったあとだから気を引き締めないととは思うが、それでも。

 

「……ウィル」

「……ん?」

「あの、その……」

 

 訥々(とつとつ)と言い淀みながら、レンは何事か口を動かしていたようだった。しかしこの空の上では常に風の音が響き渡っているため、小さな声など簡単に掻き消されてしまう。

 

「レン、聞こえないぞ」

「うっ……ええと、その」

 

 ウィルの背中を掴むレンの手に、きゅっと力がこもる。

 それからレンは、なお訥々としていて、それでも意を決したように強く、言った。

 

「あの! そ、そんなに気にしない方がいいと思うですっ……。お、乙女の心は気が変わりやすいので、ジェシカが不機嫌なのも、きっと明日になれば……」

 

 最後の方は、幾分かしぼんでしまっていたけれど。

 彼女の言葉の意味するところを察して、ウィルは力なく苦笑した。

 

「……悪い。気を遣わせてるな」

「そ、そんなことないです。レンだって、ジェシカには早く元に戻ってほしいんです」

 

 小さな両手を、そっと、ウィルの胸元まで回す。

 額をウィルの背中に押しつけて、そうしてレンが紡いだ言葉は、弱く、けれど風の音を越えてはっきりと耳に届いた。

 

「レンは、ウィルのことも、ジェシカのことも、好きです。だから二人には、仲良しでいてほしい……です」

「……」

 

 ウィルは翼舟を停めて、ふと目を細めて、この<島>を包み込む空を果てを望んだ。そびえる塔たちの間を抜け、<島>の縁に築かれた防壁よりも向こう側。天上に広がる<蒼界>と、天下を包む<雲界>の境界線。

 <蒼界>の青の中を、<雲界>の白が太陽の光とともに煌めき流動する光景を、ウィルは海のようだと思った。この世界にかつて存在したという水の世界は、きっとああやって宝石のように煌めく、美しいものだったのだと。

 あの雲の果てに広がる世界へと。

 ジェシカと、そしてレンと、一緒に。

 

「……行きたいな」

「え?」

「いや」

 

 手綱を振るい、再び翼舟を発進させて。

 背後のレンへと、ウィルは笑う。

 

「やっぱり俺は、ジェシカと一緒に飛びたい。……レンじゃあ、俺のパートナーは無理だな」

「んなっ!」

 

 付け加えた一言に、レンが眉を立てて怒り出した。

 背中をポカポカと叩かれる。

 

「いきなりなんてこと言うですか! さっき、レンが華麗に手紙を取り戻したのをもう忘れたですか!?」

「<フェンリル>を使って、だろ。そこに座ってる限りは、ちゃんと風を読んで俺のサポートをしてくれないと」

「そんなの、風が読めないウィルが悪いんじゃないですかっ!」

「そうだな。……だからやっぱり、そこの席はジェシカじゃないと駄目だ」

 

 軽く息を呑んだ音とともに、レンの言葉が止まった。

 ウィルはやっぱり笑って、続けた。

 

「――俺のパートナーは、ジェシカだけだ」

 

 自分自身に確認するように、強く、強く言葉にして。遥か彼方に広がる<蒼界>と<雲界>の境界線の、それよりも彼方の空の果てへと、思いを馳せる。

 思えば、ジェシカとすれ違うことなんで今までに何度もあった。けれど、ともに空を果てを目指すという約束を引き裂かれたことなんて、一度足りともない。

 だから、今回もきっと。

 

「……ウィル、ウィル。この配達が終わったら、せっかくだから街に寄っていくです」

「ん? なんでだ?」

 

 レンの出し抜けの提案に、ウィルは小さく首を傾げ返す。

 レンは「どうしてそんなこともわからないですか」と嘆いてから、バシバシとウィルの背中を叩いた。

 

「こうなったら頼りになるのはお金です! ウィルの財布に物言わせて、甘い物をありったけジェシカにプレゼントするです!」

「……えー」

 

 すこぶる嫌な提案だった。

 

「レン、お前だって知ってるだろ、俺たちの事務所の現状を。そんなことしたら、お前への給金を払えなくなる」

「そんなの男の甲斐性でなんとかするです!」

 

 自分の財布に影響がないのをいいことに、言いたい放題である。

 しかしながら確かに、ジェシカに甘い物をプレゼントするという手は有効かもしれなかった。ここまで来たら、試せる手はすべて試してみるべきなのかもしれない。

 

「ああ、新しい翼舟のパーツを買いたかったんだけどなあ……」

「我慢するです! 翼舟のパーツとジェシカ、どっちが大事なんですかっ!」

「……そうだな」

 

 翼舟のパーツと、ジェシカ。

 そんなの、ジェシカの方が大事に決まってる。

 だからウィルは、苦笑とともに、手綱を握る両手に力を込めた。

 

「じゃあさっさと配達終わらせて行くぞ! 遅くなると売り切れちまうからな!」

「あ、ウィル、だったらついでにレンの分も」

 

 調子のいいレンの言葉は、機体を前傾させ、急降下することで黙らせた。

 

「ぎゃあああ!? ウィル、安全運転、安全運転っ!」

「まあ、大丈夫だろ」

「い、今レンは悟りましたっ! ウィルのパートナーなんて真っ平御免です! 自分で操縦を覚えて自分で飛んだ方がマシですうううううっ!」

「そうか、そいつは残念だ!」

 

 つんざくレンの悲鳴を、背中で聞きながら。

 ウィルは大きく大きく笑って、もう一度、言った。

 

「――やっぱり俺のパートナーは、ジェシカだけだ!」

 

 塔と塔の間をスレスレで抜け、少女の悲鳴を振りまきながら、翼舟<霞曲>は飛んでいく。

 だから、ウィルたちは気づかない。

 配達に出てからというもの一度も後ろを振り返らなかった二人は、気づかない。

 

 <霞曲>が加速する、まさにその寸前まで。

 すぐ後ろを、パタパタと、一匹の虹色蝶(グランツフィー)が飛んでいたことに。

 

 

 

 

 

 4/

 

 

 ジェシカ=シルバーベルは上機嫌だった。ついさっきまであんなに不機嫌だったのが嘘のように、今にも鼻歌でも歌い出しそうなくらいだった。

 あの不機嫌の理由は未だわからないままだが、この上機嫌の理由は、実にはっきりとしている。

 

(私と一緒に飛びたい)

 

 虹色蝶を通して、ウィルの声を聞いた。

 

(ウィルのパートナーは、私だけ)

 

 心の中で反芻するたび、胸が踊るようだった。ソファに深く背中を預け、黄金色の髪を指先でいじくりながら、ふふ、とジェシカは小さく笑う。

 

「愚鈍なウィルにしては、よくわかってる」

 

 そう、ウィルのパートナーはジェシカだけだ。風に遊ばれて手紙を紛失しかけるなんて、<渡り鳥>にあるまじき失態だったから、やはりウィルの後ろにはジェシカが乗らなければ。

 それに、そうでなくともウィルはジェシカのものなのだ。他の誰かをパートナーに選ぶ権利など、端からありはしない。

 例え、レンであっても。

 ウィルの隣は渡さない、と。

 

(明日は、ちゃんと私も配達に行く)

 

 空を飛びたい――というよりは、ウィルと一緒に飛びたくて。

 むくむくと込み上がるその気持ちを抑え込んで、まず先にやらなきゃならないことがあると、ジェシカはテーブルの上に散らばった<渡り鳥>情報誌をまとめ出した。

 テーブルの上が汚いままでは、ウィルが買ってくるであろう甘い物を置くスペースがないから。

 空を飛びたいのは山々だが、せっかくあの愚鈍なウィルがプレゼントしてくれるのだ。

 

「気が利いてる」

 

 プレゼントの内容と量によっては、まあ、ちょっとくらいは褒めてあげてもいいかもしれない。鞭だけでなく、時には飴も必要だから。

 そう思ってジェシカは立ち上がり、一足先に食器の準備をするため、事務所の奥へと小走りで駆けていく。

 

 その準備した食器のせいで、後々、事務所に帰ってきたウィルに「どうして俺たちが甘い物を買ってくるって知ってたんだ」と問い詰められ、虹色蝶で盗み見していたのが危うくバレそうになってしまうのだが。

 

 そんなことまで気が回らないくらいに、この日のジェシカは、打って変わって上機嫌なのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 この原作の魅力的な世界観に手を触れてみたいと、そういう思いから今回の筆を執った次第ですが、こうして書き終わってから考えてみれば、レンが翼舟から飛び降りて<フェンリル>を起動する、あのシーンを書きたかっただけなのかもしれません。
 街中で<フェンリル>を使ってはいかんだろうと思いつつも、やりたくてやりたくてやってしまった、そんなワンシーンなのでした。
 それでは、かく素晴らしき『飛べない蝶と空の鯱』の、ますますの発展を祈りつつ。
 お読みくださり、ありがとうございました。


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