空井「……」
???「……(カタカタカタ)」
空井「……」
???「……ん」
空井「あ、えっと……リンゴジュース?」
???「……」
空井「……オレンジ?」
???「……」
空井「……トマト?」
???「ん」
空井「……はい、どうぞ」
???「……ぷはっ……(カタカタカタ)」
空井「……」
どうもみなさん、空井です。何故か幼女が何やらパソコンで作業している傍らでたまに飲み物を要求してくるので渡してる空井です。いやね、何この子、というか何この状況。
数時間前
空井「(コンコン)、失礼します」
出張命令を出されたので僕はこの未発達課の扉に手をかけた。何か月島さんからは気おつけろとか言われたけど、そんなに何を気おつけることがあるんだろうか。たかが子どもじゃないか。ちなみに黒崎さんからは憎悪の目線をぶつけられました。
空井「トラウマ課所属空井圭一です、出張で来まし――」
そんなことを考えながら扉を開け、入ると頭に少しの痛みを感じたあと、僕の視界は真っ白になった。
空井「え、ちょ何!?」
???「わーい! 引っかかった引っかかった! あはははは!」
???「もー彩ちゃんそんなに笑っちゃったらこの人が可哀想だよー?……クスクス、ダサーイ」
???「こんな単純ないたずらに引っかかるなんて、邪魔になるだけじゃないか?」
???「私は止めましたからね! 止めましたからね!」
部屋を開けて待っていたのは、四人のクソガ……子供達でした。どうやら俺の頭上から落ちてきたのは黒板消しのようで、そのせいで僕の視界は真っ白になってしまったらしい。
空井「……え、えっと。これはどういうことかな?」
???「いたずら!」
空井「そう……」
なるほど、月島さんが言っていた意味がようやく分かった、確かにこれは……大変そうだ。とりあえずタオルなどをもらって頭を拭いてから改めてこの子たちの話を聞くことにした。
空井「えーっと、まず君たちの名前を教えてくれないかな?」
???「何で教えなきゃならないんだ?」
空井「い、いや教えてもらえないと仕事が……」
???「どうせ教えても教えなくても同じだろう? あんたが何の役にたたないことには変わらない」
空井「……」
???「もーじゅん君ったら! そんな態度しないの! あ! 私は海道 彩って言うんだ! この未発達課のリーダーだよ! よろしくね空井お兄さん!」
???「……山口 潤」
???「西宮 喜楽理でーす!」
???「お、音無 沙良です……よろしくお願いします」
空井「よ、よろしくね。僕は空井圭一、トラウマ課所属の研究員です……まあまだそんな大した仕事はしたことないけど」
山口「だろうな」
空井「あはは……それで、今回の僕の仕事は何かな?」
海道「えっとねー、私たちと遊ぶこと!」
空井「え?」
西宮「もー、違うでしょ彩ちゃん。乃々ちゃんのお手伝いをさせるために呼び出したんでしょ?……それにこんな人と遊んでも楽しくなさそうだし」
海道「そうだったそうだった! 彩ちゃんったらうっかり屋さん! てへっ」
山口「……なあ、今からでも他の奴に任せないか。なんなら僕が――」
音無「で、でも他の人と言っても基本的に空井さん以外の人の出張は許されてないし。それで黒崎さんとか来ても怖いし……」
西宮「えー、あの人いい人だよー?……いいカモだからね」
山口「……っち」
音無「ご、ごめんなさい!」
海道「そういうわけで、ちょっとよろしくね! 私たちは響君回収しに行かなきゃだから!」
山口「あのバカ現在地が表示される地図とコンパスも持たせてやったのにどうやったら迷子になれるんだよ……」
海道「じゃあばいばーい空井お兄さん! また今度遊ぼうねー。あ、ちなみに乃々ちゃんはあっちの扉で寝てるから起こしてあげてね!」
空井「う、うん」
そう言い残して子供たちは元気よく出て行ってしまった……疲れた、せめて乃々ちゃんとやらはちゃんとした子ならいいなあ。
空井「まあいいや、仕事仕事っと……」
僕が彩ちゃんから教えてもらった扉を開けようとすると、僕が開ける前に扉が開かれる。扉の先にはぬいぐるみを抱えた小学生低学年ぐらいの小さな女の子がいた。
???「……」
空井「あ、君が乃々ちゃんかな? 僕は出張をしてきた空井で――」
僕が自己紹介をしようとすると。
???「(ピピピピピピピピ!)」
何故だか即座に防犯ブザーを鳴らされてしまった。
空井「ちょ!? まってまって! ブザー止めて! 怪しい人じゃないから!」
???「……知らない人と会ったら、防犯ブザーを鳴らせって言われた」
空井「僕は出張で来た空井圭一って言ってね? 怪しい人じゃ全然ないからブザー止めて!」
???「……出張……ああ、うん……木原 乃々」
空井「へ?」
木原「……名前」
空井「あ、よ、よろしくね乃々ちゃん」
木原「……」
僕がまるで見えていないかのように乃々ちゃんは僕の横を通り過ぎていく。
空井「え、えっと……あ、そうだそうだ。乃々ちゃん僕は一体何をすれば」
木原「……ジュース」
空井「ん?」
木原「注いで、それだけでいい」
空井「べ、別にいいけど……他には?」
木原「いらない、邪魔」
空井「……そう」
もうやだこの部隊。
現在
空井「……」
木原「……」
空井「……」
この子、大人しいと言えば大人しいんだけどなんというか、大人びてるよなあ……さっきの子達はしらないけど、この子は何となくここに所属された理由が分かる気がする。
空井「え、えっとさ。本当に何もすることはない?」
木原「……暇?」
空井「ま、まあ……」
木原「……じゃあこれ」
空井「えっと……これは?」
木原「読み終わったら教えて」
空井「分かったよ……」
欲を言えばもうちょっと会話らしい会話をしていたかったが、まあ暇だったのは確かだし僕は言うとおりに渡された資料を読む。
空井「……」
どうやらこれはSCP-1301-JPについて資料らしい。簡単に説明すれば。エージェント・与四田が思考したことを多少の脚色を加えfacebookに投稿する異常現象らしい。そしてこの資料によればエージェント・与四田は記憶処理を受け財団フロント企業の下請け会社に就職させていたらしいが記憶処理の影響により既に部屋で首を吊って死んでしまっているらしい。
空井「こっちは……補遺か。内容は投稿した内容についてか」
内容は最初は近況について、だが投稿されたものが財団に発見され尋問、収容され、そして自分を女手一人で育ててくれた母が死んでしまったことにより恐らくここで壊れてしまったのだろう、だから記憶処理をし下請け会社に就職させたんだろう……そして、ユーザーネームが吉田 良香に変わる、そこには自分の記憶があやふやなことに対しての嘆き、そして自殺までの流れが書かれていた。
空井「……読み終わったよ」
木原「……そう、何か気付いた?」
空井「気付いたって言われても……ん、あれ? そういやこれが一般人に見られないようにされたのは20██年8月14日なんだよね?」
木原「……うん」
空井「……何でこれのあとにコメントとかいいねがついてるの?」
木原「……」
空井「……」
木原「そう」
良かった……どうやらこれが乃々ちゃんが望んでた答えらしい。だけど何でついてるんだろう?
木原「勿論職員もいいねを付けた覚えがない、だから私は今この隔離後にも尚コメントできた人物を探してる……けど、見つからない」
空井「もしかしてその人が……」
木原「……何故かこのコメントを見ることができない、恐らく6月2日のこの投稿についたコメント、このコメントを読んで対象は自殺を試みたと考えられる」
空井「……」
木原「……私は」
空井「ん?」
木原「私は、だから言ったのに。最初から、彼女が取り返しのつかないところまで行く前に記憶処理を施して下請け会社に移すべきだって、だけど。子供の言い分だって聞いてくれなかった、理不尽。自分たちがこんな部隊を作って、私たちを所属させたくせに。その結果がこれ、結局この人は死んでしまった、もしかすると未然に防げたかもしれないのに……」
空井「……」
木原「……変なこと言った、ごめんなさい」
空井「乃々ちゃん、ちょっと休憩しよっか」
木原「でも仕事……」
空井「いいからいいから」
木原「……」
僕が乃々ちゃんの手を引くと、大人しくついてきれくれる。
そうだよな、この子は、まだ子ども何だよな。だから人の死について責任を感じるし何とかしてそれを防ごうとする、それはとても大切な価値観だ。
空井「じゃ、ここに座っててね」
木原「……何をするの?」
空井「まあ見ててよえーっと……意外と冷蔵庫の中身種類豊富だな……これとこれと……あとこれかな」
だけど、この財団ではその価値観は毒となってしまう。彼女はきっと正しいんだろう、僕はもうそこらへんの感覚は麻痺してしまっているけど本来なら記憶処理なんて、そんな非人道的なことすべきではない。僕たちが誰かの一日をミーム汚染に侵されてしまった、だから処理してしまおう、だけどもしその日がその人にとって大切な一日だったら、僕たちはその一日を奪う事になる。だが、それを違和感だと思ってはいけない。
空井「ふんふふんふふ~ん」
木原「……」
だけど、だけど。
空井「はい完成!」
木原「うわぁ……! くまさん!」
空井「一応メインはパンケーキなんだけどな……」
その価値観は、この純粋な少女にはできれば失って欲しくない。きっとそれは残酷なことなんだろう、この財団でその価値観を持ったままでは恐らく生きていけない、だけど、せめてその価値観を捨て去るその日までは。
空井「というわけで、ま。召し上がれ」
木原「いただきます……!」
この笑顔を大切にしてほしいな。
黒崎「おーい、空井ー迎えに来たぞー……って」
空井「あ、こんにちは黒崎さん」
黒崎「お前何やってんの!?」
空井「何って……膝枕ですが」
黒崎「なにそれうらやまけしからん!」
空井「黒崎さんそんなに騒いだら……」
木原「……ん」
空井「ほら起きちゃった……」
黒崎「っぐ、俺としたことが……でもその寝顔もプリチーと感じてしまう……」
空井「クソ野郎ですね」
黒崎「最近お前俺に対してのあたりがどんどん強くなってない? まあそれはともかく、さっさと帰るぞ。月島さんがお呼びだ」
空井「分かりました、じゃあ乃々ちゃん。またね」
木原「いっちゃうの……?」
空井「多分また呼ばれるだろうし、その時にまたね」
木原「うん……!」
黒崎「何だろう、今なら空井。お前といい酒を飲めそうな気がする」
空井「あなたと一緒にしないでください、じゃ、バイバイ乃々ちゃ――」
僕が立ち上がり、彼女に別れの言葉を告げようとする、だがそんな彼女の後ろには。
木原「?」
黒い靄のようなものが彼女を取り囲んでいるのが見える、よくわからないが少なくともいいものじゃないだろう。
空井「……」
だから、僕は彼女に近付いて
それを払った。
木原「?……どうかした?」
空井「ううん、どうやら気のせいだったみたい」
木原「そう……」
空井「それじゃ、またね」
木原「うん、またね」
黒崎「羨ましいなあ……俺も西宮ちゃんとかと仲良くしたいなあ!」
空井「黒崎さん趣味悪いですね」
黒崎「んだとこら! 西宮ちゃん可愛いだろ!」
空井「でも僕あの子が一番怖いんですけど」
黒崎「そりゃあ……あれだよ、綺麗なバラにはトゲがあるってな!」
空井「トゲってレベルじゃないと思うんですけどねえ」
僕たちは廊下を歩きながら、そんな下らない話をして自分たちの部隊に帰る、一日をまた刻み込みながら。
後日談だが、SCP-1301を研究していた職員が一人、自室で謎の自殺を遂げたいたらしい。
どうも、粒餡です。幼女可愛いよ幼女、ヌッ(心臓麻痺)
ようやくダイスの神様が微笑んで未発達課の子達が書けました。
紹介(という名のSCPを題材にした小話)もランダム、相方キャラもランダム、この小説の明日はどっちだ。
使用SCP
SCP-1301-JP 時過ぎたりて来たるもの http://ja.scp-wiki.net/scp-1301-jp
SCPの紹介リクエストは随時活動報告にてお待ちしております、もちろん、本家、J、他の支部のSCP、未翻訳のSCP、taleでも構いません。
それでは皆さん、また次のお話で会いましょう、それでは、ノシ