魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
それは謎の空間での出来事。
謎の老人に3つの箱を選ばされ、僕は向かって左にあった箱を選んだ。
中に入っていたのは一枚の『
「おまけにコレもやろう」
そう言って老人は僕に『ヘアピン』を手渡してきた。
そして、僕の視界は
次に僕が目覚めた時、僕は赤子になっていた。
何が何だかわからない。だが、自分が生きているのであれば、その
「死ぬのが怖い」といった考えもなく、ただ「生きる目的などなくても、生きているのだから生きる」というだけのこと。
鮮明な意識とは裏腹に思うように動かない身体や、言葉を話せない口にいくらかイライラしたものの、じきに成長するのを理解していたため、我慢してそのときを待つ。
立てるようになり、いくらか声を発せるようになったある日のこと。いつの間にか僕の手元に見覚えのある『
その『栞』と『ヘアピン』を見た瞬間、僕はあの謎の空間で老人から貰ったものだと確信し、この時初めて自分の置かれた状況を
これが転生か…と。
謎の空間は、生と死の
そして選ばされた箱は、転生する僕を形成するための
だが、これで色々納得できた。
僕が選んだ『栞』、老人から貰った『ヘアピン』、そして僕の名前…
頭の中に浮かんだのは『
彼は『BLEACH』の物語で、迷エピソード(「名」にあらず)と言われることのある「死神代行消失編」の中で、良くも悪くも輝いていたキャラクターだ。
その能力を駆使して月島秀九郎は、主人公の敵という立場でありながらもいろんな意味で活躍した。
その彼の
その能力は『ブック・オブ・ジ・エンド』、対象の過去に自分を
…っと、話しを戻そう。
今の僕の名前は
おそらく僕が選んだ『栞』は、僕が意識し使えば『ブック・オブ・ジ・エンド』として扱えるのだろう。
名前の一文字、「
これも『
彼女の持つ『
その『ヘアピン』は織姫の兄・
『
……声を大にして言わせてもらうが、この能力は『ブック・オブ・ジ・エンド』とはまた違った反則気味の能力で、こんなのを「おまけ」とか言って渡してきた老人は感覚がどうかしている。
そんな『
『サイオン』『CAD』『大亜細亜連合』『十師族』、そして『魔法』。
そう、僕が転生した世界は『魔法科高校の劣等生』という作品で書かれていた、『魔法』が伝説や御伽噺の産物ではなく 現実の技術となった世界だった。
……あれだ、「さすおに」ってやつだ。
それの何が問題なのか。
問題だらけだ。テロあり戦争あり…と、かなり危険な出来事が普通に起こりうる世界なのだ。
それに、『魔法』が技術として確立された世界といっても、決して異能の
『魔法』を扱う『魔法師』たちはいくつかの勢力にわかれており、もし何かしらの力の持ち主が現れれば自分の勢力に取り込もうとする……良くてその対応だ。
悪ければ実験モルモットになるかもしれないし、「よその手にまわるくらいなら」と消されてしまってもおかしくなかったりする。
嫌な考えばかり頭に浮かび、それらを振り払おうと思っても上手くいかず……。
……ここでふと「僕は何を恐れているのか」と思った。
『ブック・オブ・ジ・エンド』と『盾舜六花』があっても、自衛するだけのチカラは足りていないのか…と。
答えは「わからない」だった。
そう、この世界の一番の脅威であり特異点とも言える『魔法』について、僕はあまりにも知らなかった。
突出して凶悪だとすぐにわかる『魔法』はともかく、一般の魔法師が使う『魔法』すらわからない。
『魔法科高校の劣等生』のアニメを見て、その中での説明・描写でしか『魔法』を知らず、詳しい原理や理論も理解していなかった。故に、どこまで恐ろしいのかもわからない。
僕は何を勘違いしていたのだろう。
わからないなら、わからないまま怯える必要はない。
学べばいいじゃないか。その上で 恐ろしいか否か判断すればいい。
……恐ろしいなら対策も考えればいい。
限界はあるだろうが、ある程度は独学で学ぶことも出来るだろう。
幸い、母親のほうが名のある家ではないが魔法師と関わりがあったという話をこの前耳にした。何かしらのアプローチは出来るはずだ。
そうだ、魔法科高校を目指すのも悪くないかもしれない。
蛇の道は蛇とも言うじゃないか。
未知の恐怖に怯えるくらいなら、自分から足を突っ込んでしまっても大した差ではない。
自身の
そう誓ったのは、僕が2歳の頃だった。
―――――――――
そして現在、僕は自身の行く末を考えたあの時以来の大きな節目に立っていた。
それは中学卒業。
そして進学先は『国立魔法大学付属第一高等学校』。
僕、
どうやら僕は魔法師としての適性がそれなり以上にあったらしい。それも、魔法師と関わりがあった…ではなく、元魔法師の母親が驚くほどのものだったらしい。
その適性をどういかすか……それ以前に生かすか殺すか決めるのは 僕自身だ。『魔法』を学んだ後どうするかも考えていかなければならないだろう。
そんなことを考えながら卒業式を終えた僕を会場の外で待っていたのは、ガラの悪い後輩たち。
涙を溜めていたり、鼻をすすっていたり、目元を真っ赤にしていたりと様子はそれぞれ異なっていたが、その視線は一様に僕を向いていた。
そして、彼らは姿勢を正しそろって礼をしてきた。
「「「「「月島さん、卒業おめでとうございます!!」」」」」
「…ああ。祝いの言葉、ありがとう」
彼らの勢いに若干引きそうになりながらも僕は返事をする。
「月島さん、これまで本当にありがとうございましたぁ!!」
「オレらがこうやってちゃんと学生としてやっていけてるのは、月島さんのおかげッス!」
「この恩、忘れません!」
「月島さん!高校でも頑張ってくだせぇ!!」
「俺、魔法師のこと、よくわかんねぇ気味悪いヤツだと思ってます……でも、月島さん!アンタのことは何があっても信じ続けます!」
……今の僕の気持ちを表すなら「どうしてこうなった」だろう。
一応言っておくが、『ブック・オブ・ジ・エンド』で都合の良いように彼らの中に僕を挟み込んだりはしていない。というか『ブック・オブ・ジ・エンド』を人に使ったことはこれまで一度も無い。
ただ、普通に中学生活をしていたら2年の時に「ヒョロ長いから」とか言ってヤンチャボウズが絡んできて、それを撃退し説教して他人に迷惑かけないくらいに矯正してたら、別のヤツがヤンチャボウズに「キバ抜かれちまって、この腰抜けが」と絡んでいるときに偶然僕が通りかかっちゃって、ソイツも矯正……と、大体その繰り返しだった。
そしたら、いつの間にか僕を囲むようにガラの悪い連中が集まってしまっていたってわけだ。おかげで2年になってからはマトモな奴は近寄って来ないわ、教師の方々の眼が怖いわで……色々と苦労した。
だが、そんな生活ともおさらば。
僕は親元を離れ、『国立魔法大学付属第一高等学校』に入学し、ひとり暮らしの高校生活だ。
僕のこの人生はどう転んでいくのか、少しばかり気分が高揚してきた。
月島さん(モドキ)の活躍は これからだ!(放り投げ