魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

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「(笑)」が付くだけで大した事では無いというのがすぐわかる不思議。

明日発売のジャンプで遂にBLEACHが最終回ですね。…色々と寂しくなります。


…前回の更新後、「森崎編」への反応についてなのですが、皆さんが察しが良すぎやしませんかね…?(活躍しないとは言っていない…が、活躍するとも言っていない)

どれもこれも、月島さんのおかげ。



※最後のほうを少し変更しました。


森崎編-2:蠢く陰謀(笑)

……今日は何かがおかしい。僕は途中からそう感じ始めていた。

 

 

―――――――――

 

 

最初は登校時。

新入部員勧誘週間の時に見かけたかな?…程度の第一高校の上級生。

 

「よっ、頑張れよ!」

 

そう言ってその人は僕を追い越していった。

もう一学期の終わりに近づいている頃で新入生への激励にしてはおかしな時期であり、先程の言葉は不自然であると思い、僕は「きっと人違いだったんだろう」と自分の中で結論付けた。

 

 

 

次は校門から校舎まで。

多数の生徒から先程の上級生から言われたことと同じようなことを、複数人の生徒から一方的に言われた。

 

これには流石の僕も首を傾げてしまう。

 

 

 

そのまた次は1-Aの教室までの校舎内の道中。

ここでも複数人生徒から激励の言葉を受けた。その中でも、隣のクラス…1-Bの明智(あけち)英美(えいみ)(通称・エイミィ)からの一言で、僕の中で出ていた結論が崩壊する。

 

「頑張れ、月島くん!やるからには勝っちゃいなよ!」

 

完全に僕を名指しして激励、これで「人違い」という線は消えた。さらに、これは勝ち負けが関係ある話らしい。

いったい何なんだろう?剣道部の試合なんて無いし、そもそも僕がレギュラーになれるかなんてわからない。

 

 

 

教室に()いたら着いたで、次が来た。

雫、ほのか、それに深雪さんだ。

 

「度胸があるというか…怖いもの知らず?」

 

「大丈夫です!月島さんが負けるはずがありません!」

 

「私も、お兄様と一緒に観に行きますね」

 

…本当に何の事なのか聞きたかったけど、僕が教室に入れたのが授業開始直前だったこともあって、聞くタイミングを逃してしまう。

 

 

 

最後に、席についた時。

ここでは少しばかり予想外の人物だが、森崎君が声をかけてきた。

 

「はっ!期末試験が近いってのに上級生に試合ふっかけるなんて、ずいぶん余裕みたいだな!だが、宣言通り俺はお前に試験の成績で勝つぞ!「試合があったから試験で実力出せませんでしたー」なんて醜い言い訳するなよ」

 

言いたいことを言った後、僕の反応も確認せずに自分の席へと戻ってしまう森崎君。

「そういえば「次の試験、お前を負かしてやる!」とか言ってたっけ」などと過去の事を思い出しながらも、新たに手に入れた情報を頭で整理する。

 

…けど、思いつかないね。どうしたものか…。

 

 

―――――――――

 

 

「で、達也は僕が何か試合するっていうことの詳細と情報源を知らないかい?」

 

「今、一科生は普通に授業のはずだったが…。なんで1-E(うち)の教室にいるんだ」

 

そう、僕はこの学校に入学して初めて授業をサボりました。そして、教員がおらず、自習に近い形をとっている1-E(二科生)の教室に侵入して現在にいたるわけだ。

 

「それだけ僕にとって重要なんだ。だって、自分の知らないうちに何か知らない計画が進んでるんだ。焦りもするよ」

 

「…おい待て。月島は桐原先輩に試合を申し込んだんじゃないのか?」

 

少しだけとはいえ珍しく驚きを表した達也の口から出てきたのは、僕にとっては初耳の内容だった。

 

「エリカとかからの申し出も断る僕が、なんで自分から試合をしなきゃならないんだい?」

 

「呼んだ?」

 

自分の名前が聞こえたからだろう。エリカが立ち上がってこちらへと歩み寄ってくる。ついでと言っては何だが、達也の席と隣接した席であるレオと美月も「なんだなんだ?」とこちらへと顔を向けてくる。

そして達也はというと横目でエリカを見た後、再び僕へと目をむけて口を開いた。

 

「いや、剣道部に入ってから好戦的になったのかと思ってな」

 

「変わってないよ。僕は剣道部の練習場に突入してきた桐原先輩を見て、一目散に逃げる程度には非好戦的だ。おかげで何度練習を途中から抜け出さざるをえなくなったか…」

 

「…確かに、どちらかといえば桐原先輩のほうが月島を敵視している感じがあったな」

 

僕の言葉を聞いた達也は何かを思い出したかのように言った。それを聞いたエリカ、レオ、美月は「そういえば…」と(そろ)って達也の言葉に頷く。どうやら思い当たることがあったらしい。

 

 

 

「あの、三日後の放課後に桐原先輩と試合するっていうは、ウソの話だったんですか?」

 

少し首をかしげながら問いかけてくる美月に、僕は首を振りながら言葉を返す。

 

「ああ、デマだよ。少なくとも、僕は今初めて聞いた。……これって()()なんだろうなぁ…」

 

「なるほど。桐原先輩は、逃げる月島を引っ張り出すために()()()()()()()()()()()わけか」

 

おそらくは達也の予想通り。

桐原先輩は試合の日時や「月島から仕掛けた」等の噂を事前に学校中に流すことで、僕の耳に入ってくるころには手遅れになるようにしてきたのだ。これで僕が行かずに逃げれば、「腰抜け」などと呼ばれることとなるだろう。

しかも、今日からかぞえて三日っていうのがまた何とも言えない。

 

正直、そこまでして僕と勝負したいのか疑問なのだが……実際にしてきたということは、そういうことなのだろう。

 

 

同じようなことを思ったのか、レオが疑問を口にした。

 

「そこまでして月島を勝負の場に引きずり出したいのか……桐原先輩って月島に何か恨みでもあるのかよ?」

 

「…思い当たるのは、勧誘のあった剣道部と剣術部のうち、剣道部に入ったってことくらいかな」

 

間違っても「あの人、壬生先輩に惚れてるから壬生先輩に気に入られている僕が気に食わないんだよ」とは言えない。僕にはあまり実害は無いが、言ってしまうのは桐原先輩がかわいそ過ぎる。

 

…なお、ブランシュ日本支部突入時の桐原先輩の雄姿(笑)を見たのであろう達也と、桐原先輩が毎日壬生先輩のお見舞いに行っていたことを知っているエリカは、それぞれ反応を示していた。

軽い苦笑いを浮かべた程度の達也と比べ、エリカは口端が微妙に上がりプルプルと震えて笑いをこらえていたのが目に見えてわかった。

 

 

 

「ふ、ふふっ…!ねぇ、これって言っちゃったほうが良いの…!?」

 

「やめとけ、エリカ。月島にはそういう気はないらしい。…それに桐原先輩がかわいそうになるだろう」

 

「でもさぁ」

 

笑いをこらえながら小声で達也に話しかけるエリカ。対する達也も小声で淡々と答えていた。ふたりの小声での会話が断片的に聞こえたのだろうか。美月とレオが「なに?」「どうした?」とエリカのそばへと近づいていく。

 

「えっと、実はさ…」

 

そう話しを切りだしたエリカが、さっきよりも小声でゴニョゴニョと話しだす。

 

なんか「三角関係」とか聞こえた気がするのだが、僕は聞こえていない()()をしておくことしか出来そうにない。有ること無いこと言われているかもしれないが、ここで噛みついて下手に話を広げてしまうのも良くないと思ったからだ。

…だが、美月が「ウソ…!?」と、レオが「マジでか!?」と抑えた声で驚きながら「で?で?」とエリカに聞いているところを見ていると、色々と心配になってくるなぁ…。

 

 

 

ゴニョゴニョとした三人の内緒話に加わらなかった達也が、一度ため息をついた後、僕のほうへと向きなおる。

 

「事情は大体わかった。それで、月島はどうするつもりだ」

 

「保留…かな?この(デマ)、消そうにも一年だけじゃなく上級生にも回っているみたいでね、達也たちに手伝ってもらうにしても骨が折れそうなんだ。……二・三年にも協力してくれる人がいればいいんだけど…」

 

そういえば、今日の放課後は部活が無いので()()()と約束をしていた。その時に話をしてみるのもいいかもしれない。……というか、むこうからこの話題を振ってくるだろうな…。

 

「どうした?」

 

「あっ、いや。今日の放課後にカフェで上級生と会う約束していたから、その時に少し相談してみようかと思ってね」

 

「そうか。…まあ、必要があれば俺も少しは手を貸せるぞ」

 

達也の申し出に「達也に借りをつくるのは怖いよ」と言いたかったけど流石に言えないので飲み込み、とりあえず無難に「ああ、その時はよろしく」と返した。

 

 

 

…はぁ、面倒なことになったなぁ……。

 

 

―――――――――

 

 

そして放課後、校内のカフェの一角。

テーブルを挟んで僕の反対側にいたのは小早川先輩。あれから度々(たびたび)このカフェに呼び出されるのだ。…今回は「テスト期間に入る前の最後の気分転換だー」とのこと。

 

予想通り、話し始めてすぐに桐原先輩との試合の話をされたので、さっそく事情を説明した。

 

 

「へぇ、アレってやっぱりウソの話だったんだねー」

 

「やっぱり?」

 

「いやさ、私の中のキミの印象(イメージ)とは少し違う気がしてたんだ。ほら、キミって頑固なところもあるけど、基本は律儀で真面目じゃないか。そんなキミがケンカ腰で勝負をふっかけるようには思えなくてさ」

 

飲み物の中の氷をストローでかカランコロンとかき回す小早川先輩。

僕は「そんなふうに思われていたのか」と少し驚いた。…いや、だってこれまで上級生からは「ヤンキーのボス」とかの噂からきたイメージを持たれてばかりだったから、素直に嬉しく思ってしまったんだよ。

 

 

「でも、デマだというのを皆に納得させ鎮めるのは難しいかもしれないな。本当に全校生徒が注目しているような状況だからね」

 

「…薄々感じてはいましたけれど、そんなに注目されてるんですか?」

 

「ああ。桐原武明が剣術部の次期エースと呼ばれているのもあるけど、キミの知名度の高さも大きいぞ。入試好成績で高身長、それで風紀委員の仕事で見回りをしていたのだから大抵の生徒がキミを知っているさ」

 

小早川先輩の言葉に「なるほど」と頷きながらも、僕はどうしたものかと頭を悩ませる。

 

 

 

「いた!」

 

そんな声がカフェの出入り口のほうから聞こえてきた。

その声には聞き覚えがあり、そちらへと目を向けてみると思った通り壬生先輩がいた。

 

「どうしたんですか、壬生先輩。そんな大声を出して」

 

僕はイスから立ち上がりながらそう言ったのだけれど、壬生先輩はといえばそんなのお構いなしに僕へと駆け寄って来て、腕をつかんできたのだ。

 

「ちょっと月島君!?なんでこんなところにいるの!桐原君と試合するなら、ちゃんと練習と対策をしないと!」

 

「いや、ちょ、待ってください。話を…!」

 

「知りません!月島君だって、私に相談も無しに桐原君に勝負を仕掛けたじゃない!」

 

僕の腕を引っ張って力づくで連れて行こうとする壬生先輩。流石に乱暴に振り(ほど)くわけにもいかず、その場に留まるように踏ん張ることしか出来なかった。

 

 

「落ち着きなって、壬生ちゃん…だったか?」

 

いつの間にか立ち上がって、掴まれた僕の腕と掴んだ壬生先輩の腕に手を置いて止めに入ってくれたのは小早川先輩。

 

「月島くんが試合について知ったのは、つい先程らしい。…どうやら、今回の話には裏があるそうなんだ」

 

「えっ…?それ、本当なの?」

 

ピタリと動きを止め、壬生先輩は僕に問いかけてくる。

僕は壬生先輩にむかって頷く。

 

「ええ。何故か僕の知らないうちに学校内に広まったみたいで……根も葉もありません」

 

「そう、だったの……」

 

どうやら落ち着いてくれたようで、壬生先輩の僕の腕を引く力も掴む力も弱まった。

 

 

 

いきなりのことで少し焦った気持ちを落ちつけるため、僕は一度大きく息を吐いた。

…と、カフェの出入り口あたりに誰かがいることに気がつく。

 

「…渡辺委員長?」

 

「ん?あっ本当、摩利だ。おーい」

 

僕の声につられるようにして小早川先輩が渡辺委員長に気づき手を振る。すると、渡辺委員長はオズオズとこちらへ歩み寄ってきた。

 

「どうしたんだ、摩利?」

 

「いや、司波から例の試合の裏事情を聞いたから、月島の相談にでも乗ってやろうかと思って来てみたんだが…」

 

言葉を止め、僕らを一瞥した後に渡辺委員長はポツリと小さな声で呟く。

 

 

 

 

「……三角関係か」

 

「違います」

 

 

―――――――――

 

 

あの後、とりあえず一旦皆でテーブルにつくことにし、そこでもう一度今回の件について(主に壬生先輩のために)説明した。

 

「……というわけです」

 

「もう、何なの桐原君は!このあいだも練習中に乱入してきて月島君を追いかけ回して、練習の邪魔してきて!それも何回も!」

 

説明を終えた時、壬生先輩はプルプルと肩を震わせて怒っていた。

 

 

「もう怒ったわ!月島君!!この試合、正面から受けてたとう!それでコテンパンに倒してしまって、黙らせましょう!!」

 

壬生先輩がここまで声を荒げているのを見るのはブランシュ事件以来。それに、そこまで怒りを露わにするというのも予想外だ。

 

 

そんな壬生先輩を「まあまあ」となだめる小早川先輩。そんな様子を見て苦笑いをしていた渡辺委員長が口を開く。

 

「壬生の気持ちもわからなくはないが、本人の意思が大事だろう」

 

そう言った渡辺委員長は僕のほうへと向きなおった。

 

「さて、月島。今回の一件、私は風紀委員会が動くには十分な案件だと思っている。それは、達也から事情を聞いた生徒会メンバーの大半も同じ考えだ。だが、それと同じくらい「暴力沙汰にならないまっとうな試合形式なのであれば、一度正面からぶつかったほうが後腐れが無いのでは」という意見もあがった」

 

渡辺委員長はそこでいったん息をつき、そして言葉を続けた。

 

「私は月島、お前の意思を尊重しようと思う。お前が試合を受けるというのであれば、まっとうな試合になるように手を尽くそう。だが、お前が桐原の迷惑行為に耐えられないというなら、私は風紀委員長として行動を起こそう。…どうする、月島?」

 

 

 

そう言われた僕は悩んだ。

 

正直なところ、微妙な線だ。

というのも、これまで桐原先輩からの申し出から逃げてきたのは、桐原先輩との試合は利点も欠点も少なく、時間を使うだけで面倒だったから。それは今回もあまり変わらない。

 

ふと目に入ったのは壬生先輩。そして、頭の中で浮かんだのは桐原先輩。

壬生先輩の怒りもわかる。僕だって楽しいと思える部活の時間を邪魔されるのはうれしくなかった。

しかし、僕は桐原先輩に対して別に嫌悪感を特別抱いていたりはしていなかった。確かに面倒な人だとは思ったりはしたが、壬生先輩に一途なあたりはむしろ好感を持てるし、そういう熱いところも個人的には嫌いではない。

今回の件だって壬生先輩に直接アプローチをかければいいものを、何故か僕に向けてきたので面倒事になってしまっただけで、その一点以外は別段気にならないのだ。

 

そう考えると、もう受けちゃったほうがいいかなぁ…

 

もし仮に、桐原先輩がなにかしら処罰を受けることになったとしよう。すると、彼は新入生勧誘期間に達也に捕らえられた一件の前科があるため、かなり大きなペナルティを科されるだろう。

先程も言った通り、面倒とは感じても僕は別段桐原先輩のことが嫌いなわけではないのだ。わざわざ彼にペナルティを与えたいとは思わない。

 

 

 

「はぁ…少し面倒ではありますが、試合は受けることにします。剣術部である桐原先輩が相手だからこそ試せる事もありますから、そこで得られることもあるでしょうからね」

 

僕の返答に渡辺委員長は頷いてくれた。

 

「そうか。…他にも何か考えがあるようにも思えるが……まあいい。それこそお前の自由だな」

 

 

―――――――――

 

 

だが、こんなことが何度もあっても困るな…。

試合が終わった後にでも桐原先輩と話す機会でもつくるとしようか。話を聞きそうにない時は……しかたないが、()()()使()になるだろう。


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