魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
今回は、これまでにも度々セリフ等の出番はあった原作キャラ「光井ほのか」視点での、これまでのお話となっています。
箇条書き…ほどではありませんが、結構駆け足気味になっている感じです。
猛暑を無事過ごすことが出来たのも、月島さんのおかげ。
国立魔法大学付属第一高校に入学して、もう数ヶ月が経ち一学期の終わりが近づいている。
私はこの学校に入学してから、沢山新しいお友達ができたりもした。
その中には、入試の時に見かけた、無駄の無い綺麗な魔法を使う司波達也さんもいる。私はあの時一目惚れをし、達也さんはその頃から私の中で大きな存在となっていっていた。
そしてもう一人、私の中で大きくなりつつある人がいる。
月島さんを最初に見かけたのは入学式の時。その時、なんとなく目に付いた。
同じA組の中にいて、その身長の高さで目立っていたからふと見てしまった…という程度だった。ただ、周りの他の人よりも大人びていて、本当に私と同学年なのか確認もしたけど…。
翌日の朝、私が教室に入った時に月島さんはもうすでに自身の机についていた。
そして、その時私の目にとまったのは、月島さんが手に持ち目を向けている『本』。今の時代、「読書」といえば「電子書籍」であるように紙の媒体はとても珍しい。『本』が主流だった時代は、それこそ1世紀ほど前になってしまうかもしれない。
…とは言っても、その時はそばにいた雫と「珍しい」「変わってる」と話した程度で、それ以上は特に無かった。
けれど、その日の放課後。校門そばで起きた騒動の最中、エスカレートしていき一人の生徒がCADを抜こうとした時の事。
私も色々と迷いながらも魔法を使ってしまおうかという考えがよぎり、手を自分の前に突きだそうとした。
その瞬間、私の目の前に誰かが現れた。
その細く長いプロポーション、やや見上げるようにしなければ顔を確認できない身長差。私は驚きながらも、その人が月島さんだとすぐに気づく。
魔法を使おうとしていた私に制止をかけるように腕の横に伸ばし、こっちに背をむけてたたずむ月島さん。そして、足元に淡い光を残して、月島さんが私の目の前から消えた。
そして……。
「森崎くん、一度だけしか会ったことの無い仲だけど、お
いつの間にか、月島さんは騒動の中心に立っていた。
月島さんは、CADを抜いた男子生徒とその生徒に攻撃しようとしていた女子生徒の腕を掴みあげて、諭すように説教をしはじめた。その淡々としながらも力強い言葉に、その場にいた人たちは皆、声一つ出さずにいた。
私もそうだった。月島さんの言葉はCADを抜いた生徒だけでなく、魔法を使用しようとした私にも言い聞かせているように聞こえていた。そしていつの間にか私は、その月島さんの言葉一言一句を忘れないようにと胸に刻みつけていた。
それからというもの、私は月島さんのほうへと目がいくことが多くなった。
同じクラスだったから必然的に同じ空間にいる時が多かった、というのもあるとは思うけど、なんだかふと「月島さん、何してるかな?」と気になってしまうのだ。
クラスの中での月島さんは、最初のころは下校騒動の時のイメージがあって皆から避けられ気味…。
だけど、それはすぐに変る。
授業が本格的に始まってきた頃から、月島さんは魔法実技の際のペアの相手にアドバイスをするように。ペアの人も最初は戸惑っていたり意地を張ったりしていたけど、月島さんのアドバイス通りにやると記録が良くなったので、そのうち素直に聞くようになっていた。
他にも、理論の方面の勉強に関しても、聞けば丁寧に教えてくれたりもする。さらには、勉強以外の活動も率先して行動していた。
そんな普段の行動からクラスの皆の信用を勝ち取り、「クラスの中心」とまではいかないけど「何か困った時は頼れる人」として月島さんは受け入れられた。
けれど、あの下校騒動の時の中心にいた森崎君だけは月島さんをずっと敵視し続けてた。
月島さんに突っかかっていったり、逆に無視したりって、私から見たら凄く迷惑なんじゃないかと思えるくらいだ。
けど月島さんは、
「僕だけしか被害は受けてないし、別にいいかな。…まあ、他の人にまで迷惑かけるようだったら、一回本格的に指導しなきゃいけないけどね」
と、至って穏やかに言ってた。…なんだか月島さんは、森崎君には少し甘い気がする……。
少し時間は前後するけど、月島さんは風紀委員に所属することになったりもした。
『新入部員勧誘週間』の時に、私は上級生が話していたある噂を耳にする。
それは「新入生の月島っていう風紀委員は、中学の時は地元の不良をまとめるボスだった危険なヤツ。見かけたら大人しくしていないとなにされるかわからない」といった感じで、事実、月島さんが見回りをしている時はほとんどの人が大人しくしていた。
…だけど、その噂と実際の月島さんとは結びつかない。もし、その噂が事実だとしても、それはきっと何か深い理由があったんだと思う。
そして、一学期の中で一番大きな出来事だった『ブランシュ事件』と呼ばれるようになった騒ぎでも、私の見ていないところで月島さんは活躍していた。
それは、襲撃犯たちの目的だった図書館の特別閲覧室をひとりで防衛したという話。
そのつい先日…エリカちゃんと試合した時は失敗していた魔法と剣技を掛け合わせた戦術で襲撃犯たちを撃退したそうだ。
私は驚きもしたけど、それ以上に頑張ったんだなって思った。なぜなら、技術の上達はもちろん、話で聞く限りその魔法の活用の仕方が、同じ光関係の魔法が得意な私でも感心してしまうようなものだったから。
月島さんの活躍には、私の周りの皆も、雫も、驚きながらも称賛していた。
でも……。
「少し聞きたいんだが、月島は普段どんな奴なんだ?」
「月島さんですか?勘違いする人もいますけど、月島さんは優しい人なんですよ?魔法実技の授業のペアの相手の人に丁寧で的確なアドバイスをしてあげてたりもするんです。頼み事も断ったりしません。あと、少しキツイ事を言ったりもしますけど、それは相手の事を考えてのことで…!」
「ああ、大体わかった。…他に、そうだな……何か変だったり、不自然な事をしたりは?」
「そんなところは見たことありませんけど…?」
「そうか」
……その頃から達也さんは月島さんの素行を監視するようになり、まるで疑ってかかるような目で見るようになった。そして、その目は深雪にもうつった。
私はそれが信じられなかった。
一緒に下校したり、食事や談笑したり、風紀委員の活動をともにしたり、誕生日を祝ったりしてきた友達なのに、なんであんな目で月島さんを見るのかがわからない。
…でも、そうしているのは達也さんだ……。
達也さんにそのことについて直接言おうかどうか迷った。
でも、その前に
実技の授業で月島さんとペアになったのだ。そして私たちふたりは早々にノルマを達成して、ふたりで話せる時間が出来た。
その時、私は話した。達也さんが月島さんの事を聞き回っていることを。疑うような目で観察していることを。
すると、月島さんは……
―――――――――
「別にいいんじゃないかな?気にするほどのことじゃないよ」
あっけからんとした様子で、私にそう言ってきた。
「
「当然のことだから気にしなくていい」と言葉を続けた月島さんの顔は、普段と同じで穏やかだった。
でも違う。達也さんは月島さん
けれど、月島さんは気にする様子はなかった。
月島さんは本当に気にしていないのかもしれなかったけれど、私の心の中にはモヤモヤが残ったままで何だか落ち着かずにいた。
そんな私を見かねたように、月島さんが動き……私は頭の上に、髪越しに僅かな温かさを感じた。
「
その言葉と微笑み、撫でる手…それら全てが私を落ち着かせてくれ、安心したからなのかわからないけど月島さんにつられるように私も微笑みがもれてしまっていた。
…その数秒後に、私が達也さんに一目惚れしていることがバレているのに気がついて、顔から火が出るほど恥ずかしかったけど……!
そして、このころから私は
―――――――――
その後、本当に月島さんが言った通りになった。それも、月島さんの行動によって。
学校中でも注目されるくらいの出来事だった月島さんと桐原武明先輩の試合。そこで月島さんは魔法と剣技を掛け合わせた戦術を上手く扱い、桐原武明先輩に見事勝利した。
中には「あんな相手を
その試合があった頃から、達也さんが月島さんに向けていた疑いの目がドンドン薄れていくように感じられた。
そして、試合に勝った時の月島さんの姿を見た時、私の中の「気づき」は「確信」に変わっていた。
私が月島さんに抱いている感情。
それは達也さんに抱く感情とは違っていて……むしろ、深雪に対して抱いていた感情に近かったかもしれない。
『憧れ』
常に冷静で、物事の核心を捉えるのが上手いこと。
他人に優しくありながらも、時に厳しく正すこと。
相手とちゃんと向き合い、接し、導くこと。
例え失敗しても諦めず、成功するまで努力すること。
その大人びた容姿もあってか、私から見て月島さんは「理想の大人」像になっていた。
これからも月島さんは、私たちの前に立って輝き導く存在だと思う。
きっと……
※個人の感想であり、実際の(以下略
『ブック・オブ・ジ・エンド』で挟み込まれているわけでもないのにこの有様!
それでも一応まだ達也>月島ではあるようです。……もしかしたら「>」ではなく「≧」かもしれませんが…。
でもまぁこれは、ほのかちゃんが月島教に入信する姿がピッタリなのが悪いんだと思います。はい。