魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

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遂に始まる『九校戦』。
月島さん(モドキ)の出場種目のある日以外は基本的に一日分を一話だけで済ませる予定です。


『ブック・オブ・ジ・エンド』を沢山使わせたい。けど、どこでもここでも使っているとストーリーが崩壊し、まとまらなくなってしまうというジレンマ。…活躍できる場所で最大限に活躍をさせる予定です。

それと、報告になりますが、タグを少しばかりいじらせていただきました。


「芸術の秋」があるのも「食欲の秋」があるのも、月島さんのおかげ。


九校戦編-5:九校戦・一日目

 

『九校戦』…正式名称・全国魔法科高校親善魔法競技大会は、男女共通種目である『スピード・シューティング』、『クラウド・ボール』、『バトル・ボード』、『アイス・ピラーズ・ブレイク』に加え、男子には『モノリス・コード』、女子には『ミラージ・バット』という種目が用意されており、全6競技が行われる。

 

また、全ての競技は、一年生のみの「新人戦」と、学年制限無しの「本戦」に分かれており、競技ごとに設定されている順位によって加算されるポイントの合計によって、それぞれ「新人戦優勝」の学校と「本戦優勝」の学校が決定し、さらに二つを合わせた成績によって「総合優勝」の学校が決定する。

 

 

ついでになるが、今年は我らが国立魔法大学付属第一高校が三連覇を成し遂げられるか否かが掛かっている大変大事な大会だそうだ。

今年で三連覇目ということは、現在第一高校の三年生である七草会長や十文字会頭が入学した年からという事になる。……まぁ、『十師族』でありそれに恥じぬ実力の持ち主である二人が同じ学年・学校になったとなれば、当然と言えば当然なのかもしれないが…。

 

 

―――――――――

 

 

…さて、『九校戦』初日となる本日8月3日は、本戦『スピード・シューティング』と、本戦『バトル・ボード』の予選が行われる予定だ。

 

そのふたつの競技には第一高校からも選手が出場するのだけど、その中でも、『スピード・シューティング』女子では七草会長が、『バトル・ボード』女子では渡辺委員長が優勝有力候補として名高い。

…もちろん、『バトル・ボード』男子に生徒会副会長の服部先輩が出場しているように、他の生徒たちも出場している。

 

今日試合の無い生徒たちは、おそらくはそのあたり…特に七草会長や渡辺委員長たちの応援へと、それぞれの会場へと行っているだろう。

 

 

 

 

そして、僕はといえば……

 

「お兄様と愉快な仲間たち」と共に『バトル・ボード』の会場の観客席へと来ていた。

 

 

…軽く『バトル・ボード』の説明をしておくと、サーフボードのようなボードに乗り人工水路で行われるレース競技だ。

主に使用される魔法は加速魔法。他にもルートを制御するために移動魔法なども使用される。また、3kmもの長さの人工水路を3周もしなければならないため、持久力も必要とされるだろう。

 

試合形式だが、まず4人ずつを6レースで予選。予選で1位だった6人で3人ずつ2レースで準決勝。準決勝で2位3位だった計4人で3位決定戦。準決勝で1位だった2人で決勝戦……といった感じだ。

このうち、今日行われるのは予選だ。

 

 

そして、今やっているのは女子予選・第3レース。渡辺委員長がちょうど競技に出ている。

 

 

 

「硬化魔法の応用と、移動魔法の『マルチキャスト』か…」

 

「硬化魔法?何を硬化してるんだ?」

 

レースに出ている渡辺委員長の使っている魔法を解析し呟く達也に、レオが疑問を投げかける。

 

「ボードから落ちないように、自分とボードの相対位置を固定しているんだ。…硬化魔法は物質の強度を高める魔法じゃあない。それは理解しているだろう?」

 

 

……ここからは、原作通りにお兄様による解説が行われていった。

 

つまりはボードと自分自身を一定の形で固定してしまい、バランスを取ったり、バランスを崩さない為に様々な手順を可能な限り省いてしまったのだ。そうしてしまえば、あとはボードごと移動魔法で動かしてしまえばいいだけだ。

他にも、振動魔法で水面とボードとの抵抗を緩和しているとかなんとか…。

 

…何が言いたいのかといえば、お兄様は解説係に最適だということだ。

 

 

ある程度解説した達也は、少し感心したように呟いていた。

 

「…戦術家だな」

 

「性格が悪いだけよ」

 

達也の呟きに悪態をついたのはエリカだった。

詳しい理由は憶えていないけど、確かエリカのお兄さんと渡辺委員長が恋人同士で、それが原因で渡辺委員長のことを嫌っているんだったかな?

 

でも……今のを「性格が悪い」なんて言ったら、新人戦・女子の『バトル・ボード』で使われるであろう()()()()は、一体どうなってしまうんだろうか?

 

 

…そんなこと一人で考えているうちに、渡辺委員長は1位でゴールし無事、明後日の準決勝へと駒を進めることとなった。

 

 

―――――――――

 

 

「…っと、次のレースにも一高の先輩が出るんだったか?」

 

そう言うレオに美月が頷いて肯定する。

 

「はい。第4レースに小早川先輩が出ます。それがこの競技最後の第一高校選手ですね」

 

 

雫が時間を確認し、軽く頷いた。おそらく、他の競技の観戦との兼ね合いを確認したのだろう。

 

「それじゃあ、次のレースまで見てから行こう」

 

「そうですね!」

 

雫の言葉に同意するほのか。そして他のメンバーも同意を示す。

 

 

 

……だが、ここで予想外のことが起きた。

 

達也のほうから、小さめの音で何かコール音のようなものが聞こえてきたのだ。

それを確認した達也の表情が、僅かではあったけれど変化した。

 

 

「…すまない、急用が入ってしまった。俺は少しの間、別行動をする」

 

いきなりのことに驚く皆。特に深雪さんの反応は顕著だった。

 

「お兄様、いったい何が…」

 

詰め寄り、何事かと聞き出そうとする深雪さんに、達也は何かを耳打ちする。

 

「―――――――――。」

 

「…わかりました」

 

おそらく簡単に用事の説明をされたのであろう。深雪さんは、達也がこの場から離れることを了承した。……もの凄く渋々(しぶしぶ)といった様子ではあったが…。

 

 

「じゃあ」と言って立ち上がった達也に、今度はエリカが声をかけた。

 

「ねぇ、午後からある本戦女子の『スピード・シューティング』準決勝くらいには用事終わりそう?」

 

本戦・女子『スピード・シューティング』といえば、七草会長が出場している競技だ。確かに、会長であれば難無く準決勝まで勝ち上がれるだろうから、第一高校の生徒たちは皆観戦するはずだ。

そこに達也が合流できるかどうかを聞きたいのだろう。

 

達也は少しの間…それこそほんの一瞬だけだが考えた後にコクリと頷いた。

 

「ああ、それまでには問題無く終えられるはずだ。…それじゃあ、『スピード・シューティング』の会場で合流でいいか?」

 

「おっけー!」

 

エリカらしい明るい返事を聞いた達也は、最後に「深雪、また後で」と言って他所へと行ってしまった……。

 

 

 

 

「おっ、次のレースの選手が出てきたみたいだぜ」

 

気づかないうちに、先程のレースから十分な時間が経っていたようだ。

 

レオの言葉に、皆の目は水路のスタート地点へと向く。

そこではちょうど選手たちがそれぞれのスタート地点へとボードに乗って移動しているところだった。

 

 

「ええっと、一高の先輩はーっと?」

 

エリカたちは、スタート地点にいる6人の選手たちの、所属を表すウェットスーツの肩あたりについてあるエンブレムを確認し、第一高校の八枚花弁のエンブレムを探し出していた。

 

ただ、僕の場合は小早川先輩とは何度もあっているので、顔は覚えておりすぐに見つけ出せた。こういうところは、さすがに小早川先輩と直接的のないエリカたちよりも早く見つける事が出来る。

 

 

 

「あれ?」

 

「あの人って確か…」

 

第一高校のエンブレムを付けた小早川先輩を見つけたほのかと雫が、何かを思い出すようなリアクションをとった。

……あれ?僕が知らないだけで何か繋がりがあったかな?

 

 

「俺、あの先輩どっかで見たことあるような気がするんだけど…?」

 

「奇遇ね、私も同じこと思ってた。どこだったっけー?」

 

髪をかきながら「うーん」と悩むレオと、腕を組んで考えるエリカ。

……渡辺委員長と違って、小早川先輩は人前に出たりすることは無いから二人が見かけるような機会はそう無いはずだけど…?

 

 

「僕はあの人を学校のカフェで見た気が…」

 

「あっ、わ、私も月島くんと一緒にカフェにいるのを……あっ」

 

小早川先輩を見かけた時のことをいち早く思い出したのは、幹比古だった。それに釣られたように美月も思い出したようで、バッと僕のほうへと顔を向けてきた。

……って、あれ?皆の目が僕に向いてる気がするんだけど…。

 

 

「…そう言えば、以前生徒会室で聞いたカフェでの逢引の相手が…」

 

最後に深雪さんがそんなことを言ったため、メンバーが「ええっ!?」と反応する。

……深雪さんは、あの時(『森崎編-1』参照)のことをどんな覚え方してるんですかねぇ…?

 

 

「何をどう勘違いをしているかはあえて聞かないけど、小早川先輩には恩があって、それで彼女の気分転換のお喋りに付き合ってるだけだよ。……深雪さんは前に聞いていただろう?」

 

「ええ。ですが、あれ以降も何度もお会いになっているようでしたし、今朝も第一高校の仮設本部で仲睦まじく話されていたので、てっきりそのまま恋仲になったのかと…」

 

「…そういう仲じゃないんだけどなぁ」

 

 

そう返しながら、再び視線をスタート地点のほうへと向けた。

すると、スタート地点にいる選手のうちの一人…小早川先輩が何やら観客席のほうをチラチラと見ているのに気がついた。

 

「…何をしているのだろう?」と疑問に思い、ジッとボード上の小早川先輩を見てみたのだが……そこで僕と小早川先輩の視線が重なる。

僕を見た小早川先輩はこころなしか嬉しそうにしてニカッと笑いながらコチラへ軽く手を振ってきた。それに対して、僕も微笑みながら手を振り返す。

 

 

「いやぁ、渡辺委員長のすぐ後のレースだから緊張しないか心配だったけど、杞憂だったみたいだね」

 

「…月島君、やっぱり小早川先輩と付き合ってるでしょ?」

 

エリカの言葉に、深雪さん、ほのか、雫、レオが「うんうん」と頷いている。

幹比古と美月は顔を赤くしてアワアワしていた。…君らは君らで、耐性が無いというか初心すぎるんじゃないかな…?

 

まあ、もちろん僕はしっかりと否定しておいた。

 

 

…あっ、レースのほうは問題無く小早川先輩が1位だった。渡辺委員長のような驚くべき技能なんてものはなかったけれど、これまで一生懸命練習してきたのだろう…とわかる堅実なボードの乗りこなしだった。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

その後、午後からあった『スピード・シューティング』。無事、達也とも合流が出来、しっかりと観戦することが出来た。

 

…けど、我らが第一高校の七草会長が順調に勝ち進んでいたが、毎回全ての(クレー)を打ち抜いてしまう七草会長の試合は、逆に面白みが薄く感じられた…。

…あくまで、個人的な感想だ。


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