魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
「原作改変」等が含まれます。ご注意ください。
最近、書いている時に考えていたのは「(モドキ)じゃない、『ブック・オブ・ジ・エンド』を容赦無く使いまくる月島さんだったら、この話どうなってただろう?」ということです。
こんな何十話まで長くならずに、スパッと全部の問題を解決してしまいそう…。いや、それは物語として成立するのだろうか?
……そんなのじゃなくてもいいから誰か書かないかなぁ、本家の月島さん物語(言い出しっぺの法則…
月島さんが手助けした人の功績は、月島さんのおかげ。
今年の『九校戦』では、三連覇を狙う『第一高校』と、それを阻止し自校が優勝をもぎ取らんとする『第三高校』の二校が特に注目を集めている。
その『第三高校』が強気に出れるのには当然理由がある。
そもそも、第三高校が戦闘系の魔法実技を重視しているので『九校戦』に向いているというのも一因だろう。だがもう一つ、今年新しく入学してきた一年生が粒ぞろいで「新人戦」の優勝が堅いと考えていたのも大きかった。
その新入生たちの中でも、ある二人が内外共に注目される有力な人物だった。
「クリムゾン・プリンス」
「カーディナル・ジョージ」
『十師族』の一角を担う『一条家』の次期当主であり、3年前、佐渡島に新ソビエト連邦が侵攻してきた『佐渡侵攻事件』において、義勇兵として戦闘に参加し多くの敵を屠った「クリムゾン・プリンス」一条将輝。
そして、弱冠13歳でありながら仮説でしかなかった「
「基本コード」というのは……まあ、あれだ。4系統8種に分類される系統魔法の魔法式の基礎ともいえるもので……と、説明すると長くなってしまうので省略させてもらう。
……まあ、幼くして重要なものを発見した天才だということだ。
―――――――――
前置きが長くなってしまったが、『九校戦』四日目の本日8月6日は新人戦『スピード・シューティング』と、新人戦『バトル・ボード』の予選が行われる。
『バトル・ボード』のルールについては以前に説明したことがあるので省くが、今回は前に省いた『スピード・シューティング』について説明しておこう。
『スピード・シューティング』は、5分間で機械から射出される
また、予選では各個人で行い、破壊した数を競うのだが、準決勝以降はクレーを赤と白に分けて二人の選手が自分の色のクレーを破壊するという対戦型になるのだ。
でもって、さっき話した「カーディナル・ジョージ」こと吉祥寺真紅郎なんだけど、新人戦・男子『スピード・シューティング』に出場している。
彼は前情報通り、研究者としてだけではなく魔法師としての腕も十二分にあるようで、難なく決勝まで勝ち上がっていた。
そして今、新人戦・男子『スピード・シューティング』決勝戦の
『WINNER 森崎駿 PERFECT』
なんということをしてくれたのでしょう。僕というイレギュラーよりも先に、原作キャラが原作を壊してくれました。
いや、まあ、女子のほうは
……え?『ブック・オブ・ジ・エンド』?
使うには使ったけど、それはあくまで聞き分けを少し良くしたりするだけの性格矯正だ。彼と修行した日々を挟み込んで、彼自身の強化をしたわけでは無い。おそらくは彼自身の努力のたまものだろう。方向性を与えただけでこうなるとは……。
ついでだが、今の森崎君はいうなれば「きれいな森崎君」。例えるならば青狸が出てくる某アニメのガキ大将の「泉に落ち、きれいになったガキ大将」……ではなく、「映画でのガキ大将」くらいの綺麗さだ。
「…本当に何もしてないのか?」だって?
……シテナイヨ?
まあ、何はともあれ新人戦・男子『スピード・シューティング』の優勝者は森崎君だ。会場からは、大きな歓声と「森崎」コール。女子のほうに生徒の半数近くが行っているはずなのに随分と大きなものである。
その歓声に応えるように森崎君は拳をあげてみせていた。
…その少し隣ではジョージくんが膝をついて放心しているが、大丈夫なのだろうか?
それにしても、どうしたものだろうか?
昨日小早川先輩に言ったように、僕自身も競技で普通に点をとるつもりだったので、森崎君が1位になったことによる点数の増加はそこまで問題ではない。
むしろ、これから先の事を考えると、目立ってくれれば僕に向く視線が少しは減るだろうし、嬉しいくらいかもしれない。
だが、
というのも、原作よりも第一高校の得点が高くなったということは、第一高校を優勝させたくない『無頭竜』による工作・妨害が原作よりも早く・多くなる可能性が非常に高まるのだ。
それをある程度はなんとかしなければ、最悪の場合、原作では出なかった死者等が出てしまうかもしれない。僕も、それは流石に避けたい。
「仕方ない、予定を繰り上げるか」
フィールドから出ていく森崎君の後ろ姿を確認した後、僕は観客席から立ち上がり、他校の生徒の集団に交ざりながら移動を開始する。
「『バトル・ボード』の予選を観に行けないかもしれない」ことを謝罪と共に伝えるために、左手で携帯端末を取り出て操作し……右手では、
―――――――――
「ふぅ、とりあえずは一段落か。…お疲れ様」
僕は自分の胸元に向かって
……まあ、そんな僕の個人的な感情は後に置いておこう。今は、事が順調に運んだことと
そんなことを考えながらも、僕は早足で『バトル・ボード』の会場へと向かっていた。
…というのも、新人戦・女子『バトル・ボード』に出場するほのかのレースは第6レース…つまりは予選最後のレースで、僕の予定が早く片付けられたのでギリギリ観戦ができそうなのだ。
スタートの合図の一歩手前、最後のアナウンスが流れたのとほぼ同じタイミングで、僕は通路から観客席へと出ることが出来た。達也たちや他の第一高校メンバーと合流するのは無理そうだが、レースそのものは観戦できそうだ。
僕は適当な席に座ってスタート地点のほうへと目を向ける。
それからすぐにスタートの合図のカウントダウンが始まり……
スタートとほぼ同時に、スタート地点を中心に会場が閃光に包まれた。
あまりのまぶしさに
そんな中で、唯一水路を走行していたのは、選手の中でただ一人遮光ゴーグルをかけていたほのかだった。
……まあ、そもそも最初の閃光を仕掛けたのもほのかであるのだから、閃光への対策は万全なのは当然なのだが…。
他の学校の選手たちは、やっとのことで体勢を持ち直し、先を走るほのかを必死に追いかけだす。…が、その差は歴然だった。
「さすがは達也だ。あんな作戦、普通の人じゃあ思いつきもしないだろう」
そう、ほのかが実行している作戦は達也から授かったものなのだ。
それがどういったものかは、簡単に言えば「スタートと同時に水面に干渉して閃光を放ち、目くらましをしちゃおう!」という単純明快な内容。
だが、それが周囲から見たらどう取られるかは……僕の周りにいる観客の反応を見れば一目瞭然だ。
「おいおい、あんなのありかよ」
「他の選手への妨害って、反則じゃなかったの?」
「ズリィ…」
おおよそこんな感じだ。
一応言っておくけれど、アレは全然反則ではない。
あくまで禁止されているのは
…本戦・女子『バトル・ボード』予選の際に、エリカが渡辺委員長の戦術に対し「性格が悪いだけよ」なんて言っていたが、こっちのほうがよっぽど性格が悪いだろう。
「まあ、
その呟きは歓声によってかき消される。
当然のように後方集団に追い付かれることも無く、ほのかはそのまま1位でゴールをした。これで予選は通過、8日にある準決勝~に駒を進めることが出来たのだった。
遂に次回から月島さん(モドキ)が競技に出場!
さて、どうなることでしょう?
……今回も含め、これまで