魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
※注意※
タグにある通り、「原作改変」「ご都合主義」などの要素が含まれています
これまでと違う目線、違う書き方のため、キャラの呼称などの問題があると思います
また、今作の月島さんはあくまで(モドキ)です。原作『BLEACH』の月島さんのイメージとはかけ離れている可能性があります
ご注意ください
参ったな…。
「どうしたものか」と俺、司波達也はひとり考えをめぐらせていた。
その問題というのが、学校が終わったから深雪と…あとクラスメイトのエリカ、レオ、美月たちと下校しようとした時のこと。
一科生の生徒たちが「司波さんに聞きたいことがある」等のテキトウな理由を並べたて、「
もちろん深雪は深雪自身の意思で俺たちと帰ろうとしている。
昼にも似たようなことがあったのだが……それにしても、本当に一科生と二科生という違いだけでここまでのことになるとは。…面倒だ。
しかし、少しまずいな…。
つっかかってきた一科生はもちろん、エリカやレオ……さらには美月まで、かなり空気が張りつめてきてしまっている。このまま続けば遠くないうちに…。
一科生の二科生を見下すような物言いに対する美月の言葉が引き金となり、俺の予感は的中する。
「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点で一体どれだけ優れているというんですかっ?」
その言葉に一科生のリーダー格であろう男子生徒が言葉を返してきた。
「……どれだけ優れているのか、知りたいなら教えてやるぞ」
「ハッ、おもしれえ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか」
レオの挑発。まさに売り言葉に買い言葉だ。一科生の男子生徒とレオのそばから皆が少し離れる。
「だったら教えてやる!」
そう言うと、男子生徒は腰近くに収めていた銃型のCAD(術式補助演算機)を引き抜き、レオに向かって突きつけようとする。それとほぼ同時にレオは男子生徒に向かって突進していった。
……その一瞬で、一科生の男子生徒とレオの他に俺に
気になったのは、最後の男子生徒だった。
よくよく
ならば、女子生徒を後ろにさげるための行動なのかとも思った。だが、後ろの女子生徒が驚いている顔をしていたので、男子生徒の行動は女子生徒にとっても予想外のことのように感じられる。
…それにあの男、さっきまで一科生の集団の中にいたか?
2メートル近くありそうな高身長の男を、今の今まで気づかなかったとは思えない。
この一瞬で俺の頭の中に浮かんだ謎が解決しない間にも事態は動く。
レオにCADを向け終えた一科生の男子生徒。しかし、そのすぐそばまでエリカは
さらに、一科生の女子生徒に制止をかけていた男……その足元が一瞬淡く光ったかと思えば、男は消えそして…。
「「「「「!?」」」」」
驚愕した。
CADを構えた男子生徒と、そのCADを弾くべく警棒を振おうとしたエリカ。その間に割って入る形で、例の男が一瞬で現れた。
それも男子生徒のCADを持つ手を若干ひねりあげるように掴みあげ、エリカの警棒を持つ手首を握り抑え込んでいる。
その光景に、誰もが驚いていた。もちろん、男子生徒もエリカもだ。
それにしても、あの光はなんだったんだ?魔法式は見えなかった気がしたが……見逃した?まさか…。
目の前に人が現れたことで体勢を崩しながらも突進をなんとか止めるレオをよそに、最初に口を開いたのは二人を抑えた男だった。
「森崎くん、一度だけしか会ったことの無い仲だけど、お
「
腕を軽くひねりあげられている一科生の男子生徒が、男に対して睨みつけるような目を向けていた。どうやら彼らは顔見知りのようだ。
月島と呼ばれた男は鋭い睨みを涼しい顔で受け流し、自身の言葉を続けた。
「1つ目、人に対してCADを向けるのは人に対して攻撃魔法を発動するのとほぼ同意義だ。はたから見た人に通報され罰せられても当然だと思ったほうがいい」
男は左右それぞれに掴んだ腕を離さずに言った。
「2つ目、何処でどういった友人関係を築き、どうしていくかは本人次第だ。家族ならまだしも、ただのクラスメイトが口を出すべきことじゃない。そして、誘いを断られたのなら素直に引き下がるべきだ」
淡々と、それでいて重く響くその声に、抑えられている二人も他の人たちも動けず声も出せずにいる。
「3つ目、「一科生の自分は二科生より優れている」…他人との優劣なんていう
そこまで言うと、月島と呼ばれた男は掴んでいた二人の腕を離した。
一科生の男子生徒とエリカはそれぞれ掴まれていた手の感覚を確かめるように軽く動かしていたが、その目は月島と呼ばれた男から離していなかった。
その視線を向けられている男は、先程までの喋り方とは異なる…まるで
「様々な方面で活躍する有名な先輩がたがいらっしゃるこの『国立魔法大学付属第一高校』に入学できて気分が舞い上がるのもわからなくはない。けど、だからといって自分から泥をかぶりに行くようなことはやめたほうが良い」
その言葉は、その場にいる複数の人に向けて放たれたようにも思える。
その物言いに何か言いたげにしていた一科生の男子生徒だったが、その男子生徒が口を開く前に、月島と呼ばれた男は
「……と、それぞれが反省し騒ぎは一応
「…正直、素直に頷けない提案だな、それは」
月島の言葉への返答が聞こえ、その場にいた全員がそちらへと目を向けた。
そこにいたのは二人の女性。
返答をした短髪の女性は見覚えは無いが、その隣の女性は知っている。たまたま入学式前に出会ったこの学校の生徒会長
「…風紀委員長・
そう告げたのは短髪の女性だった。
「風紀委員長」と聞いて何人かの表情が固まった。…騒ぎを起こしたとなれば、何かしらのペナルティがあると思ったのだろう。
だが、渡辺風紀委員長の様子はどこか迷っている…いや「毒気を抜かれてしまった」と言うところか。
その様子を見かねたのか、七草会長が口を挟んだ。
「人に対して魔法が使われなかったわけだし、彼の提案の通りでいいんじゃないかしら」
「とは言ってもな……」
「説教は彼がしてくれたみたいですし……それに、面白いものも見れましたから」
そう言って七草会長は一歩踏み出して、月島を見た。
「君が
「ん?彼の事を知っているのか?」
渡辺風紀委員長の問いに「ええ」と七草会長が頷く。
「筆記は七教科平均、100点満点中95点。難関問題こそ落としているものの、どの教科も高得点。実技も処理速度こそ並だったけど、それ以外…特に干渉力はトップレベル。そして……あとどこかで2点取れていたら入試トップになれたほどの人物よ」
つまりそれは、主席の深雪と総合で1点しか差がなかったということだ。
それを聞いて俺は驚いた。いや当然俺以外も驚いていた。
「ハアッ!?」
なお、特に驚いていたのは月島と面識があるようだった一科生の男子生徒…森崎だった。
「それじゃあ、騒ぎは
「はぁ…会長が言うなら…。次は無いんだからな」
七草会長と渡辺風紀委員長が校舎のほうへと行き、見えなくなったころに、やっと俺たち門近くの一年生たちの気が緩んだ。
「………う…とだ……」
俺の耳に届いた、絞り出されるような声の発信源は森崎だった。
他にもその声が聞こえたヤツはいたみたいで、森崎のほうへと幾人もの視線が集まる。もちろん、一番近くにいた月島にも聞こえていたようだ。
「どういうことだ!?月島ぁ!なんでカスみたいだったお前が…!中学じゃあ不良とつるんでたんだろうが!なんで……!!」
森崎は、もの凄い形相で月島を睨みながら叫んでいる。
…話の流れからすると、どうやら森崎が前に会った時の月島は、魔法に関する能力や学力は低かったようだ。
掴みかからんばかりに
「さっき言っただろう?」
周りにいたやつらは一様に「何を?」と首をかしげていただろう。
しかし、そんなことも、森崎の反応もお構い無しに月島は言葉を続ける。
「何処でどういった友人関係を築き、どうしていくかは本人次第。それに、他人との優劣なんていう
そこまで言われて、森崎は月島の言わんとすることを理解したのだろう。
森崎は顔を真っ赤にし握り拳を作った……が、つい先ほど風紀委員から命拾いしたばかりだったことを思い出したのか、握り拳をほどき、月島に背を向けて走り出した。
そして、ある程度離れたところで振り向き…。
「認めないぞ、月島!次の試験、お前を負かしてやる!おぼえとけ!!」
「頑張って
「ふん!」
月島の返しを聞いた森崎が、肩を怒らせながら行ってしまった。
すると、残りの一科生たちもバラバラにこの場を離れだす。
残ったのは俺と深雪の周りに集まったエリカ、美月、レオ。それに月島……それと、二人の一科生の女子生徒…月島が手で制止していた女子生徒だった。
俺たちが何かしらのアクションを起こす前に、森崎の背中を見ていた月島がこちらに向きなおった。
そして、月島は頭を下げてきた。
「司波深雪さん。そしてその学友の皆さん。すみませんでした」
「えっ、あ、いえ…」
いきなりの予想外の謝罪に戸惑う深雪。それをフォローするようにエリカとレオが頭を下げている月島に言う。
「そんな、あん…アナタが謝ることじゃないって!」
「頭あげろよ!むしろ俺らが礼言うくらいだぜ!?」
エリカとレオは互いに「こいつ、先に(後に)同じようなことを…!」と睨みあうが、美月の仲裁と…
そんな2人の言葉を受けても、月島は頭をあげなかった。
「いや、キミ達に嫌な思いをさせながら一言も謝罪もなかった森崎…彼らに
その言葉につられたのだろうか。
この場に残っていた二人の一科生の女子生徒が月島の隣まで来て、同じく頭を下げてきた。
「すみませんでした!」
「ごめんなさい!」
月島ひとりだけでも
俺はため息をついて首を振り、気持ちを切り替えてから頭を下げる三人に声をかけた。
「頭をあげてくれ。深雪が困っている……謝る相手を困らせるのは本意じゃないだろう?」
オズオズと…それでいて申し訳なさそうに顔を上げる女子二人。対して、月島のほうは微動だにしなかった。
「頑固なやつだな…」と思いながらも、半分予想していたので、次の言葉を月島に言う。
「あいつに発破をかけたのは、深雪やその周りに矛先が向かないようにするためだろ?事実、最後はお前にしか目が行ってなかった。…そこまでしてくれたヤツに求めるものなんてない」
「……はい、お兄様の言う通りです。私は感謝さえしています。あなたが
深雪の言葉が決め手となったのだろう。月島はゆっくりと顔を上げ、小さく「…ありがとう」と言った。
さて……ついでにではあるが、一応女子二人のほうにもフォローをいれておくか…。
「そっちの二人も、途中、熱くなってきたあたりで「止めに入ろうかどうか」目を泳がせていたのは見えていた。そう深く思いつめたりしないでくれ」
「「…はい」」
……この時、少し寒気が走った気がしたのは気のせいだろう。
その後、それぞれ自己紹介をし、一科生の女子生徒…
月島の高速移動…あの謎の淡い光については機会が無く、聞くことは出来なかったが……まあ、また機会があるだろう。