魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
なぜ彼なのかは……最後の部分のためですかね。
過去最短!そして、月島さん成分が足りない!
でも、流れを書くにはそれなりに必要な場面なんですよね……。
次回からは月島さんが活躍(?)する予定です。
えっ?出場競技が終わってるのに?
……終わってもするんです。
第一高校の新人戦の優勝が確定したのも、月島さんのおかげ。
エンジニアの達也に割り当てられた部屋にいるのは、僕と達也とレオ、それとエリカと柴田さん……つまりは1-Eのメンバーだ。
「なあ、達也……マジ?」
そのレオの反応はもっともだと思う。いきなり『モノリス・コード』に参加するように言われたのだから。
「もう諦めろ。決まった事を愚痴っていても仕方がない」
達也はいつもの調子でこう言うのだから、取り付く島もない。
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今日あった新人戦『モノリス・コード』の予選……その中の第一高校メンバーにとっての2試合目で起きた出来事。対戦相手である第四高校の選手が試合開始直後に発動した加重系の魔法『
『破城槌』というのは「面」に対して加重をかける魔法。それの何が問題になるのかといえば、建物の床に発動した場合、その床から崩れ、連鎖的に下の階も潰れるという非常に危険な事態になることだ。故に、屋内に人がいる場合に限り、殺傷性ランクはAとなる。
2試合目のフィールドは「市街地」。そして『破城槌』が使用されたのは第一高校選手たちがいた建物だった。
レギュレーション違反を犯したとして第四高校は失格。
第一高校の選手3人は、重傷
殺傷性ランクAの魔法を使用されて、重傷というだけでも運が良いと言えるだろうけど、軽傷で済むというのは本来ならば有りえない。
…ならば、何故そうなったか。そこには、ある選手の活躍があった。
軽傷の2人の選手による証言の又聞きなのでどこまで正確かはわからないが、崩れる建物内での一瞬の出来事の内容はこうだ。
開始直後、スタート地点のとある一室で窓やドアからそれそれが別方向を確認していた時に頭上から音が聞こえた。見上げると、そこにはちょうど割れ崩れ降りてくる天井が。突然の予想外の出来事に唖然としていると、その降り注がんとする瓦礫が
2人は反射的に瓦礫が吹き飛んだ方向とは反対の方向を見た。
2人が見たのは、両手に拳銃型のCADを持ちそれぞれ2人の頭上へと向けている
結果、2人は床が連鎖的に崩れたことにより落下し、軽傷を負った。しかし、頭上からの瓦礫が無かった分、マシだっただろう。全て受けた森崎駿は重傷で3日はベッドの上で絶対安静となっている。
―――――――――
そんなことがあって、第一高校は一度『モノリス・コード』を棄権せざるを得ない状況になってしまっていた。だが、相手の明確な違反行為によるものであることなどから特例として新たに代役を出すことが許可された。
そこで選ばれたのが達也とレオ、そして僕だそうだ。
「手を抜いていいわけじゃないが、そこまで気負いする必要は無い。今日の午後の『ミラージ・バット』で
「とは言っても、総合優勝に無関係じゃないだろ?意味があるから代役が出るわけだしさ」
達也の言葉にレオがそう言っているけど、そのレオの顔は特に緊張とかをしている様子は無かった。
「…でもなんで僕なんだい?僕なんかよりも月島のほうが良かったんじゃないかな」
僕の言葉に達也は特に反応を示さなかったが、レオのほうが不思議そうな顔をして首をかしげてきた。
「何言ってるんだ?もし仮に月島と入れ替えられるなら、俺と入れ替えるだろ。アイツも俺と同じで接近がメインなことを考えると……いや?そもそもなんでこのメンバーに月島が入ってないんだ?」
より一層首をかしげるレオは「なんでなんだ、達也?」と達也に問いかける。
対して、達也はひとつため息をついた後、口を開いた。
「俺も『モノリス・コード』に出場することを言われた時に、先輩たちに似たようなことを言った。「何故、代役に月島を選ばなかったのか」ってな」
「彼なら実力的に選ばれても何もおかしくないからね」
僕がそう言うと、レオもうんうんと頷いて同意を示している。
「十文字先輩から返ってきた言葉は「すでに2種目出場しているから」。そしてそれは
「建前ぇ?」
「つまりはそれ以外の理由があるってことなのかい?」
「「あまり大きな声では言えないが、上が三度目の正直ならぬ二度目の正直を恐れている」と十文字先輩は言っていた」
……つまりはどういうことだろう?「三度」が「二度」……いったい何なんだ?
「おそらくは、魔法協会側が月島が一条と再び当たることを危惧しているんだろう。『一条』はもちろん、魔法協会的にも『十師族』の強大な力が疑われるのはよろしくないだろうからな」
「けど、疑惑を
「一条の代名詞とも言える『爆裂』が使用できる『アイス・ピラーズ・ブレイク』で引き分けた相手を、チーム戦とはいえレギュレーションの問題で『爆裂』が使用できない『モノリス・コード』でぶつけられるほど神経が太くないんだろう。月島の底が見えないならなおさらだ」
確かに、達也の言うことは納得がいく。
第一、あの『アイス・ピラーズ・ブレイク』での引き分けも月島の魔法が強すぎたために起きた自爆のようなものだった。その上、魔法の発動速度は月島のほうが勝っていた。
それ故に、結果は「引き分け」であっても観ていた人たちへの印象は、結果とは少し違ったものである可能性が高い。
そう考えると、もしもう一度月島と一条がぶつかり、一条が負けたりでもしたら大変なことだろう。それも『十師族』や『二十八家』、『百家』でもない……それどころか無名である『月島』。そんなことがあっては『一条』そして『十師族』そのものの力が本当に疑われかねない。
「……ということは、運営に何かしらの圧力があって、それが代役を出すための条件としてつけられたってことかな」
僕の言葉に、達也は頷いてくれた。
「だろうな。運営からしてみれば、月島が一番の問題だ。それ以外であれば大した問題では無いと思っているわけだ」
「なんだよ?第一高校が舐められてるのか?」
ムスッとして言うレオ。
……まあ、今の話を聞いていればそうとも取れなくはないか…。
でも、達也の考えはそうではなかったようで、達也は首を振った。
「微妙に違う。新人戦の優勝は確定しているが、そのポイントの半分以上は女子のものだ。男子は森崎が『スピード・シューティング』で、月島が『クラウド・ボール』と『アイス・ピラーズ・ブレイク』で1位をとった分だけで、他は予選落ち…」
「その森崎が負傷。そして残りの月島さえ抑えてしまえば、一条率いる第三高校選手たちを脅かせる選手を第一高校が『モノリス・コード』に出すことは出来ない…ってことか」
「……結局、舐められてるじゃねぇか」
レオは不満そうにするが、「舐められる」というのは裏を返せば相手にスキができることになる。
気分のいいものではないけど、『九校戦』という大会内に関しては決して悪い事だけではないだろう。
「そろそろ話を戻すぞ。明日からの作戦についてだが……」
そこからは達也による作戦説明が行われた。
僕にどれだけの事ができるかはわからないけど、やれるだけやってやるさ…!
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……それにしても、達也が言ってたけど「月島の底が見えない」か……。
その通りだと思う。月島が『アイス・ピラーズ・ブレイク』で使った『闇』、あれからは活性化した
ならば彼が使ったのは『精霊魔法』だったのか?
……それはわからない。あの闇そのものが包み隠していたし、発動の際には霧で月島本人が隠れていたから、どうやって発動させたのかもみることが出来なかった。
ただ、確かなのは試合終了後に彼の周囲を確認したところ、精霊が周囲を舞っていたこと。
けど、彼の家は魔法師の家系じゃなくて、魔法師なのは母親だけでその母親も才能はあまり無かったとか、そんなことを言っていた気が……『精霊魔法』を扱うような家系であれば、歴史は長いはずなんだけど……
それに、もしそういう家なら
彼は一体……?