魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
「独自解釈」「捏造設定」等が含まれます。ご注意ください。
また、今回は沢山のキャラ名が出てきます。
わかり辛いかもしれませんが、ここまで出てくるのは今回だけの予定ですので、お許しください。
今までもこれからも「月島さんのおかげ」と言えるのは、月島さんのおかげ。
『九校戦』を終えてすぐ、次の計画……正確に言うならば『九校戦』で始めた計画の延長線にあたる計画の為に、僕はてんやわんやしていた。
……で、今現在、計画の流れが一通り決まったので、必要なものを用意するために少々買い出しに出ているのだが……。
―――――――――
街を歩いている僕の周りをヒュンヒュンと飛んで回っている6つの存在。
ご存じ、6人(?)でひとまとまりの『
…まあ、僕自身もあんまりわかっていない。
というのも、僕が彼らを認識できるようになったのは、『九校戦』の新人戦・男子『アイス・ピラーズ・ブレイク』の予選の最中で、あまり期間が経っていないのだ。
それに、僕自身も混乱気味だったりする。いや、だって、これまでなんとなくの意思とイメージで操っていた『盾舜六花』に、いきなり『
事の経緯を軽く説明するとしよう……。
―――――――――
『アイス・ピラーズ・ブレイク』の予選前。中条先輩がデバイスチェクに出してきたCADに軽く霊子を流し込み、その感覚で調べたところ、不自然に霊子が通り難い部分がある事に気づいた。
「『クラウド・ボール』の時と同じで、何か入れられたな……」
そう思った僕は周りに誰もいないことを確認し、『盾舜六花』の「双天帰盾」で異物を「拒絶」しようとし……ふと、手を止めた。
視覚的には認識できていないが、CADのとある箇所に異物が入っていることは認識している。
……これって、異物に
このCADに入れられているであろう異物『電子金蚕』は分類するならば『精霊』の一種、それなりに貴重な
あと、個人的にだが、この世界において
問題になるのは、仮に挟み込むことができたとして、僕自身にどれだけの影響があるかということ。
……僕は、結構どうにかなるものなのではないかと思った。
理由としては、本家の月島さんが、ラスボスに折られた主人公の卍解に「折られなかった過去」を挟み込んだりしていたことからの推測だ。
『ブック・オブ・ジ・エンド』の性質上、自分自身を挟み込むことで過去を分岐したのだろうが、それには「卍解が折られることを阻止できるか否か」という疑問がつきまとう。ラスボスと本家の月島さんが直接ぶつかったことが無いため、「できる」とも「できない」とも言えないのが現状ではないだろうか。
しかし、結果的には阻止ができたことになっている。これは力関係が月島さん>ラスボスということが確定した……というよりは、月島さんの過去改変が微妙なラインも案外何とかできてしまう、と言う方が正しいかもしれない。
とにもかくにも、一抹の不安と希望を織り交ぜた感情を持ちながら、僕はCADの異物を感じた部分に向かって『ブック・オブ・ジ・エンド』を刺し込んだ。
その結果……。
『あっ……』
「……えっ?」
いきなり目の前に、どこかで見たことがあるような小人が現れた。
『やっと目が合ったー!』
―――――――――
……と、そんなことがあったわけだ。
その時は予選の直前だったため、時間が無くあまり調べたり話したりは出来なかったが、それ以降に少しずつだが色々とわかってきた。
まず『盾舜六花』の本体(?)の小人たちは、昔から存在していたらしい。
正確には、僕が初めて『盾舜六花』を発動させた時に生まれたそうだ。それから僕が認識できていなかっただけで、ずっと僕のそばに居たそうだ。
なぜ、これまで認識できなかったのかというのは……よくわからない。
憶測になってしまうが、僕が『盾舜六花』…そして『完現術』のチカラを手に入れた方法がイレギュラーだったため、「認識するための手段を得る」という順序が省かれてしまっていたのではないだろうか…?
続いて、彼らの存在についてだが、原作の『盾舜六花』と同じ点と異なる点があった。
同じ点は、見た目。『ヘアピン』の花弁2枚が元となる形の2枚の羽を有した個性豊かな小さな人。その一人一人は、僕の記憶の中にある六花のメンバーそのものだった。ついでに名前もだ。
異なる点は、彼らが僕の周りを飛び回っていても、僕の保持している『ヘアピン』の花弁には変化は無いこと。『双天帰盾』等のチカラを使う時は、対応した花弁が飛ぶのだが……。
調べたり、話したり、改めてチカラを使ってみたりしたことでわかったことは、飛び回っている彼らは、実体を持っていない『情報体』であること。そして『盾舜六花』のチカラの使用時には花弁に瞬時に宿るということ……つまりは、彼らと花弁自体とは物理的な繋がりはないが、繋がりはある…ということらしい。
また、六花は『情報体』であることなどから、この世界に存在する
それは、彼らが僕から生まれた存在……正確には、僕がヘアピンに霊子を送り込んだ際に、ヘアピンの
…ついでだが、もし仮に何らかの要因で『情報体』である彼らが破壊・消滅されてしまったとしても、ヘアピン本体さえ無事ならば問題無いらしく、再びヘアピンの対応する花弁に霊子を通せば復活できるそうだ。ただ、チカラの使用中は花弁と同化しているため破壊されるとマズイらしい。そこは原作と同じなようだ。
つまり『盾舜六花』たちは「実体の無い状態」と「実体が有る状態」の2パターンがあるわけだ。『
『精霊魔法』の中の一種である『感覚共有』と似たようなことが出来るのも、その一端だろう。
……それにしたって、明確な姿形を持っていたり、喋ったりしている時点で『精霊』とは随分と異なっているわけだが……
飛んで回っている六花たちを見ながら、そんなことを考えていたんだが……ふと、気になることがあったので、一番そばにいる
「ねえ、こうやってキミたちを飛び回らせちゃってるけど……これ、他の人に見えたりしない?」
僕の肩に立った、六花のリーダー的ポジションの舜桜が明るい声で答えてきた。
『たぶん、大丈夫だと思うよ?『精霊』を認識できる人たちでも僕らのことは「普通の精霊」程度にしか認識できないからね。よっぽど目や耳が良かったりしない限り、僕らの姿や声を完璧に認識できる人はキミだけだよ』
「そうなのかい?」
僕は少しだけ集中し、周囲の『精霊』を認識するように意識をかたむける。
六花たち以外にも僕の周りには『精霊』がいるようだが……それらは何かフヨフヨ浮かんでいる存在で、人型には見えなかった。
「……キミらが特別ってことなのかな?」
『かもね。…まあ、僕らもキミから生まれた存在だから、何でも知ってるわけじゃない。もしかしたらこれまでに会った経験が無いだけで、僕らみたいな『情報体』が主な存在はいるかもしれないよ』
「それもそうか…」と思った。
第一、
そう考えると、もっと高位の霊的存在がいたとしても、そこまでおかしくないかもしれない。
『あっ、そうそう。感受性の高い人相手とかなら、その気になれば僕らの姿や声を認識させることができるよ』
「なんだい、それは……」
あれだろうか?
原作の第1話で、一護が不良共に「コイツに謝らねぇとなぁ!」みたいなことを言った時に、不良共が一護の隣にいる血だらけの少女の霊を見て泣いてビビッて謝りながら逃げるような描写があった。
あの不良共に霊感があったとは思えない。それに仮に霊感があったとすれば少女の霊がいることもわかっていたわけで、花が活けられた瓶を倒したりはしないだろう。
つまり、霊的存在を他者に見せる方法が何かあったのかもしれない。……演出を重視した表現とか、設定のブレとかかもしれないが……
ともかく、舜桜曰く、六花たちを他者に見せる方法はあるらしい。
興味をひかれたので聞こうと思ったのだが……
『オイ、いたぜ。……随分と身のこなしが上手い。気づき辛いが、確実にお前狙いの奴だ』
そんな声が僕の耳に入った。声の主は六花の一人、口元をバンダナで隠したガラの悪い青年のような見た目の
その椿鬼の声に、僕に代わって反応したのは僕の肩にいる舜桜。
『相手の数は?』
『2だ。まだかなり離れてはいるが、確実に後ろをツケてきてる』
それに続いて、バイザーのようなゴーグルと扇情的ともとれる露出の多い服装が特徴的な少女のような見た目の、リリィの声が届いた。
『その2人から離れた場所にも、数人いるみたーい』
『おそらくは、本隊か回収・輸送用の部隊かのどちらかではないかと』
リリィに続いて言ったのは、禍々しさがを感じさせる眼帯(?)をつけたボウズ頭の男性の姿をした、
火無菊の声を聞いた舜桜は、「さて、どうしたものか」と頭を捻りだした。
そこに、また別の声が聞こえた。
『20m先に、路地裏入る道、有る。そこに、少し監視の穴、有る』
『誘い込むのが……得策かと……』
顎から鼻のあたりまで囲うカタチの鉄のマスクを着けた巨漢の姿をした、
そして、羽と繋がった衣服が頭をすっぽりと隠すデザインとなっている前髪パッツンの少女、あやめ。彼女の声は少しばかりオドオドとした印象を受けるが、不思議と耳に入ってくる……。
……というか、かなり離れた場所を飛んでた人もいたはずだが……何で聞こえるんだろうか?
そう考えていると、肩にいる舜桜が僕に言ってきた。
『話、聞こえてたよね?その場所に行って、最善のポジションを取るよ』
「それはいいんだけど……皆の声、結構近くに居るように聞こえたんだけど?」
『ああ、それは
……気になるが、確かに僕をツケて来ている奴らのほうが優先事項か。
さて、
―――――――――
僕が裏路地に入ってからそう経たないうちに、裏路地に二人組が入ってきた。
ゴスロリとでもいうべきだろうか……フリルの多い服を身に纏った彼女らはまだ若そうで、僕と同じか…少し下ぐらいのように見えた。
だが、『魔法師』である可能性を考慮すると、歳というものはあまり関係ないかもしれない。気を抜くべきではないだろう。
僕のそばに舜桜、あやめを。
僕と彼女らの間に火無菊、梅厳、リリィを。
そしてその間あたりに椿鬼を『情報体』の状態で待機させる。
それを終えてから恭しく礼をし、追跡者の2人へと挨拶をする。
「こんにちは。お嬢さんがた、本日はどういったご用件でしょうか?」
裏路地に入った時点で追跡がバレていたことは想定していたのであろう。追跡者の2人は特に驚いた様子も無く、言葉を返してきた。
「
「私たちと一緒に来て下さい」
「それは出来ませんね。僕にも予定というものがありますので…………
例え、『四葉』からの使いであっても、その申し出に僕は首を縦には振れません」
「「!?」」
追跡者たちの纏う空気が少し変わった。どうやらビンゴのようだ。
……とは言っても、このままでは少し面倒なので情報を付け足す。
「消去法ですよ。他の『十師族』には
そう言いながら、僕は懐から封筒を取り出し、追跡者にむかって投げ渡した。普通なら届かない距離ではあったが、『完現術』を使えば狙い通りにできる。
「それをお持ち帰り、当主様に読んでいただいてください。話はそれからです」
僕が一方的に伝えると、当然ながら追跡者の2人は良い反応はしなかった。
だが、僕はこれを押し通す。
「その封筒の中身にも書いてありますが、僕は誠意には誠意を。悪意には悪意を返します。力ずくで連れて行こうとしてもかまいませんが……ご覚悟ください」