魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

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ここ最近、「独自解釈」「捏造設定」「原作改変」などが入ってばかりです。

仕方ありませんよね?
月島さんが(モドキ)になってオサレさが減少しても、『劣等生』世界の常識だけでは収まりきらないんですから……いや、オサレは関係無いか…。


『BLEACH』の最終巻の発売が待ち遠しいのも、月島さんのおかげ。


夏休み編-5:海のそばでのひととき・中

かなり遠くまで泳いでいたレオが砂浜にあがってきたのを確認し、僕は彼用にドリンクを用意して、こちらに来たレオに手渡す。

 

「おう!ありがとな」

 

ドリンクを受け取り、いつもの調子で礼を言ってくるレオ。……だが、その視線が少しだけ僕のほうからずれた。

 

レオが目を向けていたのは、ここからほんの少しだけ離れたエリカ、美月、雫、深雪さんがいる一角。…別に彼女らの水着姿に目を惹かれたわけじゃないだろう。

ならば何故か。その付近からここまで伝わってくるほどの、重く()()()空気が漂っているからだろう。原因はいわずもがな深雪さん。

 

レオはなんとも言えない顔で僕に問いかけてきた。

 

 

「…なあ、何かあったのか?」

 

「ああ、僕も詳しくは知らないけど何かあったみたいだよ。……まぁこの空気は、()()()()じゃなくて()()()()()()が原因みたいなんだけどね」

 

後半はレオだけに聞こえるように小声で言った。

 

 

―――――――――

 

 

剣道で負った怪我で泳いだり運動したりが厳しいことを伝えた後、女子勢は達也を連れて遊ぶという流れになっていたので、僕は一言(ひとこと)言って彼女らと別れた後の事だ。

 

黒沢さんのもとに戻り、再び色々と準備の手伝いをしていたのだが……その途中、遠くから悲鳴のような声が聞こえてきた気がした。少し気になったので六花の椿鬼(つばき)を呼び出し「海にいる皆の様子を見てきて欲しい」と頼んだ。『感覚同調』で椿鬼が見ているものを確認しようかとも思ったけど、「お兄様もいるだろうし、大丈夫だろうな」と考え、僕は僕で作業を続けることに…。

 

少しして椿鬼からきた報告は……

「……よ、よくわからないが、司波達也が光井ほのかを泣かせたようだ」

……というものだった。

 

椿鬼を送ったのが遅かったから、原因がわからなかったのだろうか?…とも思ったが、帰ってきた椿鬼の目が泳いでいるのが気にかかった。

……もしかしたら、何か隠しているのか?

六花たちは、僕の魂から生まれた分身のようなものだが、『BLEACH(げんさく)』と同じく、独立した個々の意思はある。裏切る…とまでのことは無いとは思うが、隠し事ぐらいはしてもさほどおかしくは無い。

 

でもまあ、達也の問題っぽいから僕はスルーでいいだろう…というわけで、特に椿鬼を問い詰めたりはしなかった。

 

 

―――――――――

 

 

その結果が、何かもの凄い面倒な空気の女子4人(主に深雪さん)と……小型のボートに2人で乗って海に出ている達也とほのかだ。

 

 

……僕から言えることは「ほのかは楽しそうだなー」くらいである。間違っても、こっちにいる女子勢に何があったのか聞くなどという愚行を犯すつもりは無い。

 

 

 

僕が、遅れて来た幹比古にドリンクを手渡している間に、レオは海に浮かんでいるボートとその上の2人に気づいたようで、そちらのほうへと目を向けていた。それに釣られるようにして、幹比古もそっちを見ている。そして……

 

「なんだか、いい雰囲気じゃないか」

 

その一言によって、その場の空気が一層冷え込んでしまう。

エリカ辺りは「何言ってんのよ、馬鹿!」って感じでこっちを見てくるし、美月はいつぞやの中条先輩に近いくらいのガクブル状態。

 

僕もこの空気はキツイ。流石にスルーし続けるのは難しいと思いながらも、なんとか別の流れに持っていけないかと思考をめぐらせる。

 

 

 

そんな空気の中で、一番最初に口を開いたのは……まさかの深雪さんだった。

 

「ふふふっ……いい…いい雰囲気ですか」

 

いい笑顔で冷気をふりまく深雪さん。その顔がこっちを向いてくる。

 

 

「ですが、あそこはお兄様ではなく、月島さんが適任なのでは?」

 

 

……どうしてそうなるのかな?

 

「いや、何があったかは知らないけど……僕は関係ないんじゃないかな?」

 

「そんな事無いと思いますよ?ほのかは月島さんによく熱い視線を送ってましたから」

 

その言葉に、周りの皆が反応した。分類するなら3種類の反応だ。

 

「えっ」って感じの単純な驚き、それをレオとエリカが。

「ええっ!?」という初心さが混ざった驚き、それを幹比古と美月が。

「あー…」という何とも言えない反応、それは雫だった。

 

…で、僕はといえば「えっ、なに?僕にほのかを口説き落とさせて、お兄様から離そうって魂胆?」と感じ驚き半分呆れ半分といったところだ。もちろん、口には出さない。

それにしても、お兄様のこととなると凄いこと言い出すものだ。

 

 

僕はため息をついて、「やれやれ」と首を振る。

 

「あの視線がどういったものなのか、それは本人しかわからないだろう?いや、そもそもほのか自身が、(おのれ)の気持ちというのを何処まで理解しているかも解らない。……そうやって、自分の気持ちに悩むのも青春でいいと思うけど」

 

そこでひとつ息をついて、「それに…」と言葉を続ける。

 

「僕は、心から愛しいと思える相手以外と付き合えるほど、無責任な男になる気は無いよ。……他人の恋路を邪魔する趣味もないしね」

 

 

「…視線には気づいてたんだ」

 

そう言う雫に、僕は「まあね」と短く答える。……まあ、あれは恋心なんてものじゃない…と僕は判断してるんだけど。

 

 

 

 

 

「あら、そうでしたか。仲も良さそうでしたからてっきり……。それに『光と闇(ライト アンド ダークネス)』というのも、ふたりが並ぶとより一層ピッタリな気が…」

 

 

()めてくれ、深雪さん。その二つ名は僕に()く」

 

 

本当にやめてほしい。せっかく思い出さないようにしていたのに……!

 

なんなんだ『光と闇(ライト アンド ダークネス)』って!

いや、まあ普通なら別にそこまで気にしないけど、月島さんには似合わない……というか、足りないだろう!色々と!

 

えっ?『ブック・オブ・ジ・エンド』って能力名の時点でダサかった?

何言ってるんだ!スタイリッシュでオサレだったじゃないか!

しかも、そのオサレな『ブック・オブ・ジ・エンド』のおかげで一護は最後まで戦うことが出来たんだろ!

謝れよ!本家の月島さんに謝れよ!(ここまでテンプレ)

 

 

ふう…、心の中で叫ぶことでひとまずは落ち着くことが出来た……。

 

 

……けど、僕は事態を少しばかり軽視していたようだ。

 

皆は、あの重く冷たい空気が嫌なのだ。

そんな中に、ボートの二人から意識をそらす事が出来る話題が投げ込まれたとしよう。

そうなれば当然……

 

「なんだ?その『光と闇(ライト アンド ダークネス)』ってのは?」

 

「あら、あんたはまだ聞いたこと無かったの?」

 

「最近、月島さんに付いた二つ名だよ」

 

「それなら僕も何回か聞いたことがあるよ」

 

「わ、私は今日初めて聞きました…!」

 

レオ、エリカ、雫、幹比古、美月。みんなが食いついてきた。

僕としては二つ名の(こんな)話なんてしたくないけど……こうなっては、この話題を簡単には変えさせてはもらえないだろう。

 

 

「……なんで月島は、死んだ魚みたいな目になってるんだい…?」

 

「あ、あのね。月島君、二つ名のことあんまり好きじゃないみたいで…」

 

幹比古の疑問に美月が小声で答える。

…「あんまり」じゃなくて「かなり」なんだけどね?それに、わかっているなら、これを話の種にしなくても……といっても、美月だからなぁ。他の人たちを止めたり出来そうに無いか。

 

そんな事を思っていると、美月の小声での話を盗み聞きしてたレオが「へー」と少し間の抜けた顔をした。

 

「意外だな。月島ってCADとかも見た目から決めたりするし、格好つけるのが好きそうだから、そういう二つ名とか喜びそうだと思ってたんだが」

 

「あー、確かにそうね」

 

エリカも頷いて「どうして?」といった目をこっちに向けてくる。

 

僕は今日一番のため息をつき、口を開く。

 

「勘違いしているみたいだけど、「二つ名=カッコイイ」じゃないだろう?何でもいいんじゃなくて、その二つ名のセンスが問題なんだよ」

 

「じゃあ、どんなのだったらよかったの?」

 

そうズバッと言ってきたのは雫。

二つ名に不満があるとは言った。いや、だが、いきなり考えろというのは無茶振り過ぎやしないだろうか?

 

答えられたものじゃない。せめて考える時間が欲しい。

だけど、「なにそれ、面白そう!」と目をキラキラさせているエリカをはじめ、他の皆も興味深げに見つめてきている……。

 

 

「……Luz y oscuridad(ルス イ オスクリダド)

 

 

「……何語?ていうか、なんて意味?」

 

「ひ…光と闇……」

 

僕が答えると、何とも言えない空気になり……幹比古が一言。

 

「変わってないじゃないか…」

 

「即興なんて無理だとは思わないのかい?」

 

僕の返しには、美月さんが困ったように「あはははは…」と笑うだけで、皆の反応はロクなものじゃなかった。

 

 

 

 

「……いやさ、もうここまできたんだから愚痴を言っちゃうけど、そもそもなんで『光と闇』なんだろう?もっと何かあったんじゃないかな」

 

正直な気持ち、こんな二つ名は嫌だ。できることなら、別の二つ名にでも変えられればいいんだけど……『九校戦』以上に目立てる場なんてそうそう無いから、どうしようも無い部分もある。

だが、原因を知っておけば何かしら役には立つだろう。

 

 

僕の言葉には、途中から話に入らずにずっと海のある一点を見ていた深雪さんが答えてきた。

 

「やはり『アイス・ピラーズ・ブレイク』での、あの『闇』が原因なのでは?私も観覧した試合の中では『モノリス・コード』を除けば一番印象に残ってますし…」

 

その深雪さんの言葉にエリカも頷く。

 

「アレは凄かったからよく憶えてる。…確かにアレは『闇』であり光って感じだったし……それに、『クラウド・ボール』のほうでも光学系の魔法使ってたからっていうのもあって『光』なんじゃない?」

 

「アレって……一応、ちゃんと名前があるんだけんどなぁ」

 

僕がそう言うと、レオがあの時の光景を思い出したかのように「あー、そういえば」と口を開く。

 

「あの時、何か言いながら使ってたな。ええっと『月牙天衝(げつがてんしょう)』だったか?」

 

「確か……闇を作って、その内側に高密度の想子(サイオン)の層を作って、そのまた内側に振動の震源が沢山設定された領域がある…っていう、「目くらまし」、「相手の魔法式の除去」、「物体の破壊」を同時に行う魔法でしたよね?」

 

美月の言葉に、僕は頷く。

 

 

 

 

 

「ああ、それは皆に話したり魔法として登録した『月牙天衝』で…………あの時使った『月牙天衝』は、()()()()()()()()()()()()

 

「「「「「「えっ?」」」」」」

 

当然だ。あれを純粋に魔法だけでやったとすれば、あそこまでの威力は出せなかっただろう。

 

「達也はそれに気づいているよ。それに……幹比古や美月あたりは、少しくらいは不思議に思ったりしたんじゃない?」

 

「いや、まあ確かに、闇の中に見えた活性化した霊子(プシオン)について何も触れられてないから変だとは思ったけど……」

 

「何か…あるのかい?」と聞いてくる幹比古。他の皆も驚いたように目を見開きながらも、興味深そうにしているのが見て取れる。

 

僕は幹比古の言葉には特に答えずに……皆の興味が「二つ名」から『月牙天衝(こっち)』へと完全に移行しているのを確認して一安心する。そして、ある提案をする。

 

 

 

「前から約束はあったんだけど……ここに来る前に、勉強会…っていうか披露会って感じに今日の夜に見せるって達也と決めてたんだ。皆も一緒にどうだい?」

 

 

―――――――――

 

 

……ひとつ思ったんだけど、『完現術』公表したら即効(そっこう)二つ名変わるんじゃないかな?

しかし……でも……いや……うーん…。


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