魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

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※注意※
「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!


またもや説明回。すべりこみなこともあって、加筆修正が今後あるでしょう。
でも、これで能力の設定の部分は一段落した……と思います、はい。


「トリック・オア・トリート!」とハロウィンを楽しめるのも、月島さんのおかげ。


夏休み編-6:海のそばでのひととき・下

もうすでに陽が沈み、外は星と月明かりだけが照らすだけの世界となっている。

 

 

夕食や風呂を終えた僕らは、別荘の一室…大きな窓で外と仕切られ、そこから海が見える部屋に集まっていた。

 

その部屋にある四角いテーブルの海の見える窓方向を除いた三方には大型のソファーが並べられており、ちょうどコの字型になっている。

 

そこに僕らは一方ごとに3人ずつ腰かけている。

海側から見て左のほう…コの字でいうと書きはじめの部分から…雫、エリカ、美月……幹比古、僕、レオ……ほのか、達也、深雪さん…という順。今回の話の中心になっている僕が中央に座り、両サイドに4・4で座っているわけだ。

 

……元々の男女の人数の差的に、男女が交ざる列ができることはわかっていたが、真っ先に達也を挟み込むように深雪さんとほのかが動いたのには驚かされたものだ

 

 

 

「…さて、それじゃあ披露会を始めようか」

 

テーブルの上に、飲み物(ジュース)が注がれたグラスが各々(おのおの)の前に一人一つずつ置かれたのを確認したところで、僕はそう宣言する。

……が、ここで状況を飲み込めていない人が二人ほどいた。

 

()()()を話すとは聞いていたが、こうなるとはな……」

 

「ええっと……私、そのまま流れでいるんですけど…これはどういう?」

 

『アイス・ピラーズ・ブレイク』で使った『月牙天衝(げつがてんしょう)』が、魔法として申請したものとは別物である…という話などをした時にボートで海に出ていた達也とほのか。…特にほのかは本当に何もわからない状態だろう。

 

「ほのかは、これから僕が話したり実際にしてみたりする事に対して、驚いたり疑問に思った事を言ってくれたらいいよ。……まあ、余興みたいなものだと思って」

 

「あっ、わかりました」

 

とりあえずではあるけど、ほのかには本当に簡単にだけ今回の事を伝えた。今から一から色々と言わなければならなくなるだろうから、二度三度説明するより、勢いに任せてそのまま話に進んで行ったほうが良いだろうと考えたからだ。

 

 

「……いいのか?月島。ここにいる全員にも話して」

 

「どうせ、寝る時一緒の部屋の幹比古やレオには聞かれるだろうし……それに、ここにいる皆なら、他の人に言ったりしないって信じているからね。…というか、一番心配なのは達也なんだけど?一段落するまで、苦手魔法やCADのことみたいに他の人に教えたりしないでくれないかい?」

 

「わかった。約束する」

 

 

達也が頷くのを確認した僕は、改めて始めようとする……んだけど、その前に「あの~」と美月がオズオズと手を挙げてきた。

 

「どうかしたかい?」

 

「その…今の話を聞いていると、あの魔法が秘密にしないといけないとても重要なものの様だと思えたんですけど……もしかして、実は『月島家』の『秘術』とかだったり…?」

 

「いや、別に『一条』の『爆裂』みたいに、『秘術』とかってわけじゃないよ?そもそも、ウチは母方と父方全部合わせても魔法師は僕の母親しかいないし……。ただ、これから見せるものが、誰にもちゃんと見せたことは無くて、僕の知る限りでは『固有魔法』のように思えるから、少なくとも色々と(わか)るまでは隠すというだけさ」

 

僕がそう言うと、美月だけでなく他の面々も大小多少の差はあれど、みな驚いたような顔をした。

バス前で話した時の達也も似たような反応だったのを思い出して達也のほうを見てみると、呆れたような顔をしてため息をついていた。…ついでに、「当然だ…」と小声で呟いてもいた。

 

 

「お兄様、その『固有魔法』とは…?」

 

僕ではなく、隣にいる達也に聞くあたり深雪さんらしいけど……うん。

 

「持っている…とは月島から聞いてはいたが、まだ俺もちゃんとは見ていない。だから何とも言えないな」

 

そう深雪さんに返した達也は「…で」と再び僕のほうへと顔を向けてくる。

 

「それについては、今から教えてもらえるんだろう?」

 

「ああ。…とはいっても、まずは見せてからだ。「論より証拠」ってわけじゃないけど、実際に見てからのほうが話も理解しやすいだろうからね」

 

「「えっ…」」

 

僕の言葉にレオとエリカがそう声をあげた。他の何人かも眉をひそめたりしている。

…まあ、おそらくはあの時の『月牙天衝』…もしくはそれに類するものを僕が使うと思っているのだろう。だから「演習室とかでもない一般の室内(こんなところ)で何するつもりだ?」とでも思って、こんな反応を示している…のだと思う。

 

「安心していいよ、別に『アイス・ピラーズ・ブレイク』の時の『月牙天衝』を使うってわけじゃないから。第一、何かが壊れたりするようなことは無いよ」

 

達也に話した頃から、どう見せるかはすでに決めていた。

…そのうえで、今の状況はとても良い。

 

 

 

 

 

僕は、目の前のテーブルに置かれている僕の分のジュースが入ったグラスに手をのばす。

 

皆、特別意識したりはしないだろう。飲み物を飲んで喉を潤すべくグラスを手にしようとしているだけに見えるだけ。

現に、レオや幹比古、雫あたりはもうすでに自分の分に口をつけているし、エリカは今まさにストローを使って飲んでいるところだ。

 

 

 

僕の右手の指先がグラスに触れる。

そこで僕は手を止め、()()()()()()()()()()()()()……()()()

 

 

「へっ……?」

 

何気ない呟きのように、小さく誰かの間の抜けた声が聞こえた。

 

 

僕が触れたグラスの中から小さく発せられた(あわ)い光。

 

グラスの中の液体(ジュース)は、グラスごと()らされたかの(ごと)くグワン…グワン…と波うつように暴れ。

そして、ついに……

 

 

(ちゅう)に舞った。

 

 

宙へ舞ったジュースは重力によって落ちていき、テーブルやソファー、床といったものを濡らす…………()()()()()、重力に逆らい、蛇行(だこう)するようにしながら空中を進みだす。

 

途中、幾筋(いくすじ)かに分かれたりしながらも、フワフワと、ヌルヌルと、ジュースはまるで何かの生き物のように空中を進んで行き……

 

小さく開けておいた僕の口へと流れ込んできた。

 

 

 

 

 

ジュースが全て口の中に入ったところで、僕は氷だけが残ったグラスから手を離し、体勢をなおし改めてソファーの背もたれに体重を預ける。

 

口をポカンとあけたり、ぽけーっとしたり、目をまたたかせたりしている人ばかりで、静まりかえる部屋。

その中で、僕は気にかかるものがあった。

 

 

「エリカ、口からジュースが垂れてる。そのままじゃあ服に落ちてしまうよ?」

 

「うぇっ!?…っと、コッチかしら!?」

 

運悪くジュースを飲んでいる途中に停止してしまったエリカは、ジュースが少しだけ口から漏れてしまい、あごあたりまで垂れだしていた。

慌てて拭うエリカ。……まあ、吹き出したりしなかっただけでもマシだろう。

 

 

そんなエリカの慌てる様子もあってか、他の皆も引き戻されたかのように動き出した。

……まあ、どう考えても僕のほうへと矛先は向かってくるわけだけど。

 

 

「月島……今のがお前が言っていた『固有魔法』みたいなものか?」

 

「ああ、そうだよ」

 

そう答えると達也は僕をジッっと見た後、先程まで僕が触れていたグラスを手に取って、それをじっくりと見だした。

 

 

「おいおい!何だったんだ、今の!?」

 

「そうよ!それに何かするならするで、事前に言ってよね!?心の準備ができないじゃない」

 

達也を入れ替わるようにして、レオと…顔を拭き終わったエリカが言ってきた。

 

「まあ待ちなって。せっかく達也が何だったのかを推理しだしてるんだから、ネタばらしはその後でもいいんじゃないかい?」

 

僕がそう言うと、「ぐむむむ…」と少し食い下がろうとしながらもわかってくれたようで、2人は考え込んでいる達也のほうに視線を移した。

 

 

…と、その達也とは別に、雫が小声で呟き出した。

 

「単純に移動魔法だけだと……けど、あんな不規則な流れは……重力制御…?でも……」

 

「その考え方じゃああまり意味が無いと思うぞ、雫」

 

そう言ったのは達也だった。どうやら考察は一段落したらしく、僕の前にグラスを戻していた。

…まあ、もちろんのことだが否定された雫は納得していないようで、少しばかり不機嫌そうに見える。

 

「そう簡単には、さっきのジュースの動きは再現できないだろう。…一応、魔法にも液体を自在に操ることを目的とした魔法も無くは無いが……今回はそれも関係無いな」

 

「関係無いとは……一体どういうことですか?お兄様」

 

深雪さんに対して軽く頷いた達也。

 

 

「グラスやその周辺にも個別情報体(エイドス)を改変した形跡は無かった。つまり、さっきの月島は()()()()()使()()()()()()()()()

 

 

達也の言葉に、それぞれ反応を示す。まあ、どれも驚きで、信じられないと言った表情がほとんどだ。

 

「いやいやいや!?魔法を使わないで、どうやってあんなこと出来るんだよ!?」

 

「レオの疑問も最もだが、出来てしまっているんだから仕方ないだろう。文句なら月島に言え」

 

そう達也に言われてしまえば、当然矛先は僕のほうに向いてくるわけだが……

それよりも先に、ほのかが僕に問いかけてきた。

 

「月島さん。あの……、これがどういったものなのかは私にはわからないんですけど……あの試合の時、これでどうやって氷柱を壊したんですか?」

 

「ああっ、それかい?……まあ、見せたほうが早いかな?じっくり見てくれ…」

 

そう言って僕は再びグラスへと手をのばす。

先程は不意打ちだったが、今回は「何かする」とわかっているので、みんな食い入るように僕の手とグラスを見ている。

 

 

 

今回はグラスに残っていた氷の内部から淡い光が発せられた。

 

そしてすぐに氷がカタカタと震えだし……ほどなくしてバラバラに砕けた。

 

 

「……と、まあ、これに似たことがあの闇の中で起こっていたと考えるといいよ」

 

「何か軽く言ってるけど、結局何したのよ!?」

 

エリカにそうツッコミを入れられたが、それはあえてスルーして僕は達也へと目を向けた。

 

 

「達也。何か解ったことはあったかい?」

 

「その前に……幹比古はどう感じた?」

 

達也に話を振られた幹比古は、顎に手を当て、眉間にシワを寄せながら口を開く。

 

「最初見た時は精霊から何かしら力を貸してもらっているのかと思った……だけど、今、改めて確認してみたんだけど、そんな様子は無い。…でも、あの発光……霊子(プシオン)が活性化した際に見えるソレとよく似ている……でも、そこに霊子(プシオン)を核に持つ精霊は存在しなかった……」

 

まだ、頭の中で整理しきれていないようで、途中からしどろもどろとした感じにはなっていたが、その内容でも達也は満足したようだ。頷いて「なるほどな」と一言こぼし、改めて僕の方を見てきた。

 

 

「月島、お前の能力は魔法とは完全に別種の…『自身の霊子(プシオン)を使って物を操る』といった異能じゃないか?」

 

「おおよそ正解……かな?」

 

 

達也と僕の言葉に、目を見開いて驚くメンバー。

それも当然だろう。ほぼ間違いなく、世界で初めて明かされた、明確に霊子(プシオン)を元として使用されるチカラなのだから。

 

「正確には『霊子(プシオン)でパスを繋ぎ、使役する』って感じなんだろうけど、達也の言葉でも特に間違ってはいないよ」

 

 

 

BLEACH(げんさく)』での…本来の『完現術(フルブリング)』と、この世界での『完現術』はやれることは同じでも、微妙に違う部分がある。

 

そうなってしまう理由が、『完現術』の根本的なチカラ「物質に宿る魂を使役する能力」というのがそのままでは適用できないからだ。

 

『BLEACH』では、動植物以外にも濃い・薄いの差はあれど万物に「魂」があるとされている。

対して、『劣等生』の世界ではそういった概念は薄く、以前にも言ったが、この世界の全てのモノに精神体…魂があるわけではなかった。

 

これまで『BLEACH』での『霊子(れいし)』『霊力(れいりょく)』などといったものが、この世界ではアバウトに『霊子(プシオン)』に置き換えられているわけだが、それでも存在しないものは存在しない。……なら作ってしまえばいい、とういわけだ。

 

 

この『劣等生』の世界では『完現術』は以下のプロセスにより発動すると考えられる。

 

1,物質の固有情報体(エイドス)と術者の霊子(プシオン)を元にして、物質の情報体次元(イデア)の奥に、期間限定の幽体及び精神体(モドキ)を作成する。

 

2,その精神体(モドキ)に霊子(プシオン)での指令を送る。

 

3,精神体(モドキ)から実体の物質へと指令が伝わり、反映され結果となる。

 

……というわけだ。おそらく、本家の『完現術』よりもほんのワンテンポ発生が遅いだろう。

まあ、ここまでを説明すると大変なので、達也たちには話すつもりは無い。

 

ついでになるが、以前の『ブック・オブ・ジ・エンド』の考察の際に話した「精神体の存在しないモノに対しては、精神体(モドキ)を無理矢理作り出す」というのも、根源はこのあたりにある。

物質のエイドスと術者の霊子(プシオン)を元にして精神体(モドキ)を作成する際に、精神体(モドキ)にエイドスから記録が記憶として再編成されるようで、精神体(モドキ)内に作られたその記憶を『ブック・オブ・ジ・エンド』は改変するようだ。

 

あと、この精神体(モドキ)が対象物とほぼ完全に分離し、半永久的に存在できるうえに個々の意思やらを持って「精霊っぽいもの」にまでなったのが、舜桜や椿といった『盾舜六花』の六花たちだったりする。

 

 

 

 

 

『ブック・オブ・ジ・エンド』や『盾舜六花』を含めた、達也たちに話せないこともあるが、それ以外についてはこの場ではそこまで隠す気は無い。あるのであれば、そもそもこんな場を(もう)けたりはしないだろう。

 

……とはいっても、ヒマがあるかどうかは置いておくとしても、まともに質問をしてきそうなのは達也くらいだろう。

というのも他のメンバーたちは、予想外過ぎたのか完全にはついてこれずにいる。

 

 

達也の次にまともに質問できそうなのは、幹比古なんだろうが……こっちはこっちで大変だ。

というのも、これまで精霊と接してきているだけに、霊子(プシオン)で物体を使役して結果を生み出す…なんてことを言われては混乱しないはずは無いだろう。

 

 

霊子(プシオン)を自分の中から意図的に引っ張り出してきて、それを使用するなんて出来るのかい!?一般的に霊子を一定以上失うと意識を失ったりするはずなんだけど……。いや、そもそも霊子にそんなことをするチカラが……それが本当なら、未解明の非物質粒子である霊子の解明に…」

 

案の定、ヒートアップしてしまっている幹比古。

そこに水を差したのは一番冷静な達也だった。

 

「重要な研究材料になるだろうが、その場合、月島がどう扱われるかはわかったものじゃないな。……確かに、月島が言っていた通り、他言はしないほうがいいだろう」

 

その言葉の意味がわかったのだろう。ヒートアップしていた幹比古を含め、皆が少しばかり落ち着いた……というか、暗くなった。

まあ、好待遇であればいいけれど、下手をすれば文字通り実験モルモットだろうからね……。

 

 

とはいえ、こんな空気のままいるつもりは無い。

僕はパンッと手を叩き、注意をひきつける。

 

「さて、ここからが本題だけど……こいつに関する僕の目標についてだ」

 

「目標……ですか?」

 

ほのかの声に僕は頷く。

 

 

「こいつは達也も言っていたように、魔法とは別の異能だろう。…けど、僕は思う。霊子(プシオン)なんて誰にでもあるものだ。もしかすると、ひねり出し方を知らないだけで、他の人でも使える可能性があるんじゃないか…ってね」

 

僕は右手の人差し指だけを立てながら言う。別に上に何かある訳でも無い。この語りと同じで、ただの雰囲気づくりだ。

 

「それこそ魔法みたいに体系化したり……もっと言うなれば全人類が使えるようにするのが僕の理想…というか、妄想かな?皆が異能になってしまえば、それが普通になって特別な人なんていなくなるわけだからね」

 

その後に「まあ、あくまでも夢物語なんだけど」と付け足して、僕は口を閉ざした。

 

 

僕の言葉から何を思ったのだろうか。

少し間を開けてから、達也は口を開こうとし……それを()めた。

 

 

 

「…さて。僕からは最後に、このチカラをなんて呼んでいるか……その名称を言おうと思う」

 

「能力の名称?もう考えてたのか」

 

達也の言葉に僕は苦笑いを返す。…「考えていた」というのが正しいかは微妙だからね。

 

 

「『完現術(フルブリング)』…。意味については……そう深く考えなくていいさ」

 

「フル、ブリング……」

 

何か確かめる様に復唱する雫。他のメンバーも多少の違いはあれど、その名をおぼえようとしているようだった。

 

 

……さて、これから先、『完現術』については達也をはじめ、他の皆にも色々聞かれるだろう。……が、まあ()()()()どうにも無いくらいじゃないと、この先は厳しいだろうな。


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