魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
今回のお話は達也視点でのお話となっております。
……といいますか、月島さんの行動を知っていない周囲が置いてけぼり気味なっていて、その穴を埋めるためのお話となっていて、作者の中では結構大事な話だったりします。
…本当に今後に関わる大事な話になるかは不明ですが……。
そして、穴が真実で埋まるとは限らない。
正直な話、今回のお話は「何か変なこと言ってらぁ」と感じていただければ十分です。
あることないこと勝手に考えられるのも、月島さんのおかげ。
月島が『フルブリング』というチカラを披露し、己の目的を語った翌日。
俺たちは昨日に引き続き、北山家のプライベートビーチで遊んでいた。
月島は昨日と同じく、相変わらず別荘で黒沢さんの手伝いにいそしんでいる。
一応、
対して、こっちは昨日とは違って
集まっている俺たちが話す内容は決まっている。昨日の月島の話だ。
メンバーの意見は大きく分けて3つに分かれていた。
1つは「未知数でありながらも『十師族』に拮抗するに至る『フルブリング』、それを広めようとする思想を持つ月島は魔法師…ひいては魔法界の敵になりうる」という意見。
「消す」なんて物騒な言葉までは出てこなかったが、広めようとすることは何とか止めたほうがいいんじゃないか?…といったスタンスの様だった。
もう1つは「月島さんは、魔法師を兵器のように扱う風潮を嫌い、それの解消の手段のひとつとして『フルブリング』を広めようとしてるのでは?」という意見。
こちらは月島の言っていた「目標」に対して、比較的肯定的な意見だ。
それに月島が昨日言っていた「皆が異能になってしまえば、それが普通になって特別な人なんていなくなる」という言葉を考えると、そう言う考えがあるのかもしれない…と思える。
最後の意見は「わからない」。言葉、そのままだ。
『フルブリング』というものが凄そうだとは感じても、結局のところ月島が何を考えているのかがわからない……そういう意見だ。
1番目の意見が多く、それに比べ2番目の意見は少ない。
そして、3番目の意見は
深雪も含め、皆が俺の意見に首をかしげていた。
このまま話を放置しておいて、変にメンバーの間に溝ができても面倒であるため、俺は自分の考えについて1から話すことにした。
月島はちゃんと目的も明言していたのに「わからない」というのは何故なのか。
俺はそれについて、皆へと話しだす……。
―――――――――
「そもそも今回の件は不可解な点が多い。故に、月島が何処までが本心なのかが不明瞭だ」
「不可解…ですか?」
深雪の問いに俺は頷き、言葉を続ける。
「俺が月島から話を聞いた時、月島は「自身のチカラについて調べている。けど、お手上げ状態に近いから今度見て意見をくれないか?」と言っていた。…だが、今回の話の中では、月島は自身のチカラ…『フルブリング』を、もう完璧に理解しているように見えた」
「確かに…。彼は僕らに色々と教えても、何かを聞いて来ようとする素振りは無かった。……まるで、自分の中では完結しているように」
「じゃあ、月島と達也との間にあったっていう約束ってのは、もう意味が無かったのか?」
幹比古の言葉を聞いたレオが眉間にシワを寄せて首をかしげた。
「少なくとも、月島自身には何の得も無くなっただろうな。むしろ手の内をさらすから損になるくらいだろう。……それに、あれは『九校戦』の懇親会の日だった。もし仮に月島の言葉がすべて本当ならば、大会期間が間にあるとはいえ、昨日までの短期間で自分自身のチカラを解明したことになる」
「時間としては一ヶ月も無い。……月島さんの言葉の何処かに嘘がある?」
「嘘って……わかっているか・いないかで嘘ついて何か得になるのかしら?」
雫が考え込もうとしたところで、エリカが横槍を入れる。
…とはいえ、エリカの言うことももっともではある。どっちにしろチカラそのものを明かしてしまっているのだから、大した意味が無いはずなのだ。
「それに一番の謎は、「なんであんな「目的」まで俺たちに話したのか?」なんだ」
「なんでって……ええっと…?」
俺の言葉に悩みだす美月。
対して、ほのかは何を思ったのか「あっ…!」と小さく声をあげた。
「確かにおかしいです!「強いチカラを持つ者を増やす」なんて話をしたら魔法師が敵対しかねないこと、月島さんが気づかないはず無いです!」
ほのかがそう言うと、他の皆も「確かに…」といった顔になる。
だが、そのすぐ後に「でも、なんで?」と誰かが呟いた。ここでようやく俺と同じ場所まで来たわけだ。
「ほのかの言う通りだ。少し変わったこだわりがあったり、飄々としていたりする部分はあるが、月島は頭が回らないわけじゃない。…いや、むしろ頭は良い部類だろう。なのに何故、遠回し気味とはいえ「敵になるかもしれない」と示唆させるようなことを言うのか?それも、自分の秘密を他に漏らされる危険まで冒して」
「……戦力が足りないから、仲間に引き入れたい…とかではないでしょうか?」
「それは無いだろうな。戦力にしろ、『フルブリング』の研究や他者の使用の実験にしろ、俺たちのようないち生徒に話を持ってくることにメリットは無い。…もしするのであれば、『ブランシュ』のような反魔法団体か…もしくは他の犯罪組織にでも「『十師族』に勝るとも劣らない力を全員が得られる」と言って秘密裏に協力させた方が手っ取り早いだろう」
そう、月島が俺たちに『フルブリング』などを教えることは、考えれば考えるほどメリットの検討がつかないのだ。
月島が馬鹿真面目な部分があるから、俺との約束を守るために『フルブリング』について話した……というのは、十歩譲って納得したとしても、「目的」のほうは本当に何で言ったのかがわからない。
「ここで一旦考えるべきは、月島が言った「目的」が本心だったのか…だろうな」
「本心…?どういうこと?」
雫が不思議そうに言ってくる。みたところ、他の皆も同じように疑問に思ったようだ。
「さっきも言ったがあの「目的」を言うことはメリットが無い。…なら、何故
「いや、確かに訳わからないけど……でも、じゃあなんでわざわざ敵を作るような嘘を言うのよ?」
「……俺たちがこうして月島と距離を取ること自体が、月島の狙いなのかもしれない」
その言葉に、メンバーの何人かは目を見開いた。
「距離を取る?でも、それなら今回の…私からの誘い自体を断ればよかったんじゃ…」
「ああ、だが月島はそうしなかった。それは月島からじゃなく、俺たちのほうから距離を取って欲しかったから……いや、そもそも誘いを断る程度じゃあ「何か用事があったかな?」くらいで終ってしまうだろう。もっと早く確実に距離を取らせたかったのかもしれない」
「でも、何で……何で月島さんはそんなことをしようと…?」
ほのかの心配そうな声が聞こえてきた。
見てみると、その目尻にはわずかながらだが涙が溜まっている。まだ仮説ではあるが、友人だと思っていた相手に距離を取られるとなれば少なからずショックがあるのだろう。
「理由はわからない、まだ仮説の段階だからな。……だが、一つだけ確かなことがある。月島が隠していた怪我のことだ」
俺がそう言うと、皆の視線がこちらへと集まって来る。その視線の中で、俺はある事実を告げる。
「電話で壬生先輩に確認をとったんだが……確かに月島は剣道の試合に団体戦の代打で出ていた。だが、決勝の試合でも勝っていて、肩は痛めたのは骨にヒビが僅かに入ったくらい、経過した日にちや行った魔法の処置的に考えても安静にしておけばすでに治っていないとおかしいんだ」
そう、月島は
だが、そうとは誰も気づかなかった。怪我をしたのがほんの最近で治りきって無いだとか、魔法での処置を行っていなかったと思いこみ、勝手に納得してしまっていたからだろう。
「それはおかしいけど、それが今回の件とどういう繋がりが……」
「そうだな……例えば、誰か…敵か何かに狙われている、なんて考えれば少し無理矢理ではあるが、スジは通らなくもない」
俺がそう言うと、皆の顔つきが変わった。
「…剣道の大会のような公共の場では手は出せないだろうが、それ以外は別だ。その追っ手を何とかすることは出来たが怪我が悪化。だが、その追跡者を何とか始末し時間ができた時に雫の誘いがきて、休息…それと俺たちと距離を取るための話のために今回参加した…なんて考え方も出来なくはない」
「もちろん、さっきも言ったが無理矢理な推測だ」と付け足して、一旦話をしめる。
しかし、この仮説には穴がある。それは剣道部員と俺たちだ。
剣道部員は現状では放置されてるわけだが、そちらは大丈夫なのか?それともそちらは無視しても、俺たちのほうは無視できない理由……例えば、剣道部のほうには何かしらの対策をすでに済ませている。もしくは、剣道部には無い、俺たちのほうが被害を受ける理由があるのか?
さらに、今、こうして北山家の別荘やプライベートビーチにいるわけだが、今現在は安全なのか?「迷惑をかけたくないから距離を取りたい」というのであれば、ここに来ること自体しないのではないか?…という、ふりだしに戻ってしまう疑念もある。
「だが、しかし…あの月島だ。考え無しにあんなことを言う奴じゃない。あの「目的」の話には何か裏が有るのは間違いないだろう」
「なあ、達也。もし……もし仮に、本当に月島が何か危ない事に巻き込まれそうになってるとしたら、俺たちのほうから何かやれることってねぇかな?」
俯き気味になりながらアゴに手を当てて何かを考えていたレオが、顔を上げて俺のほうへと視線を向けてきてそう言った。その目は真剣そのもので、生半可な気持ちでは無いことが見て取れる。
他のメンバーも、どうやら「この先、月島を避けよう」と思っているやつはいないようで、レオの言葉に驚いたりしつつも、俺の言葉を真剣な眼差しで待っていた。
「そうだな。…これまで通り、月島と付き合って行けばいいと思うぞ」
俺がそう言うと「はぁ?」といった様子で口をポカンと開けた。
その疑問の言葉が出てくるよりも先に、俺のほうから口を開く。
「直接、月島本人から「何かあったのか?」と聞き出すのもありかもしれないが、月島が嘘をついてまで隠すことがあるなら、簡単には喋らないはずだ。……しかし、もし本当に月島に手出ししようとする奴がいて、その被害が飛び火しないようにと月島が周囲の人間に距離を取らせようとしているのであれば、月島のそばにいるだけで敵にあえるだろう?」
「なるほどな!」とニカリと笑うレオ。
そして、当初の目的は達成できたようだ。
昨日の月島の一件で気分が落ち込み気味であったメンバーの気持ちが、リセットされたようで、普段通りの笑顔が見えてきた。
それを見ながら、俺自身もどうしたものかと考える。
今言った仮説通りで無いにしろ、月島が何かを隠していて、その裏では何かをしているというのは、ほぼ確実だ。
……それを知るためにも、俺もこれまで通り月島には目を付けておくべきだろう。