魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
「原作改変」等が多々含まれています!
ついに『横浜騒乱編』に突入しました!
とはいっても、まだ前置き段階です。コンペの話まではまだ数話あるでしょう。
そして!このたび、お気に入り数が1万を突破しました!!
あらすじと感想欄が一番のネタである今作。自分なりにですがこれからも頑張っていきますので、よろしければお付き合いください!
沢山のUA、お気に入り、評価をいただけたり、ランキング上位をとれたりしたのは、読者の皆様と月島さんのおかげ。(定期)
『九校戦』、『十師族』へのご挨拶、そして北山家のプライベートビーチへのご招待…と、いろんなことがあった夏休み。
だが、それも終わり、二学期が始まった。
変わったところは、そう言うほど無かった。
何故か『お兄様と愉快な仲間たち』の「仲間たち」との距離が若干近づいたりはしたが、想定範囲内なうえにただ楽しいだけなので問題は無い。
達也からの観察するような視線も相変わらずなので、望んでいた通りの、おおよそいつも通りの日常である。
……そう思っていたんだけど、それは予想外の方向から崩された。
――――――――――
それは、ある日の朝。1-A教室でのこと。
「なぁ、月島。お前が生徒会長に立候補するって本当か?」
「……何を言ってるんだい?森崎君?」
9月末に新生徒会の生徒会長を決めるための演説や投票と言ったものが予定されているというのは知っている。
だけど、僕としては「風紀委員は警備とかするんだろうな」程度の関心だ。ましてや、自分が立候補するなどと行ったことは一度も考えたことは無い。
「落ち着いて考えたらわかるだろう?「生徒会長に立候補する!」なんて言う人間が、今、こんな所でのんびりと本を読んでいると思うかい?」
「ああ…確かに月島なら事前の準備から怠らずに、全力で用意してるよな。……なるほど。噂は噂か」
「邪魔して悪かったな」と言った後、森崎君は自分の席へと戻っていった。
…はて、どうしたことだろうか?
僕が意識を向けたのは周りの生徒。先程、森崎君が僕に問いかけた時、皆の意識がこちらを向いたのがわかった。
森崎君が「噂」と言っていたが、おそらくは
それにしても「噂」か……。
思い出すのは、『ブランシュ事件』からいくらか後の桐原先輩が広げた噂だろう。
あれは、桐原先輩が僕を勝負の場に引きずり出すためのものだったが、今回の噂も誰かの陰謀だったりするのだろうか?…いや、自然発生の可能性も捨てきれないかな?
でもまあ、桐原先輩の時とは違って、僕から動かないといけないなんてことは無いだろう。
―――――――――
「桐原先輩の時もあったけど、月島君ってこういうことに縁があるのかしらねー?」
昼の食堂で、朝に僕が考えていたようなことを言ったのは、エリカだった。
その周りには、達也と深雪さん以外のいつものメンバーが揃っている。
「それなら困ったものだよ。今回だって全然身に覚えが無いし……それに、僕が生徒会長に立候補だなんておかしな話だよ」
「そんな事無いと思いますけど…?」
そう言ったのはほのか。どうやら本当にそう思っているようで、純粋なキラキラした眼差しを向けてきている。
「試験の成績もトップクラスで、『九校戦』で活躍して実績もあります。人気のほうも、学年・一科生・二科生関係無く一目置かれてますから、きっと大丈夫ですよ!」
「けど、それ以前に1年生がいきなりなるっていう時点で、反感は間違いなく出てくる」
ほのかにピシャリと言ったのは雫。
確かに、言うことはもっともなことである。有能か無能か
……まぁ『十師族』への挨拶回りでは、そのあたりは全然配慮せずに僕は僕自身の意思を押し通していったんだけど…。
「それに、僕が生徒会長になって活動する姿なんて想像できないだろう?」
僕は皆にそう聞いてみた。
すると、何人かは首をかしげ、もう何人かは軽く目を瞑り、考えるような仕草を取った。そして……
「特に問題無く想像できるけど?」
…と雫。
「……むしろ違和感が無くて怖いわね」
…とエリカ。
「風紀委員よりも似合うんじゃないかな?」
…と幹比古。
「なんか型にはまらない生徒会になりそうで、いいんじゃないか」
…とレオ。
「はい!月島さんが皆を導ける、良い生徒会だと思います!」
…とほのか。……うん、もう君はそのままなのかい?
「えっと……想像は出来たんですけど、その…」
そんな中で一人、何故か顔を赤くし、目を泳がせて言葉を詰まらせていたのが美月だった。
皆が「どうかしたのか?」と目を向ける中でオズオズと……それでいてハッキリと、美月は言葉の続きを口にした。
「ど、どうしても生徒会メンバーが、月島君の後輩の不良さんたちになっちゃいます……!!」
「「「ぷふぅ!?」」」
美月の言葉にエリカと幹比古、レオが吹き出した。あの雫さえも、吹き出しはしなかったものの、テーブルに顔を伏せて腕で腹を抱える様な状態で小刻みで震えている。
ほのかだけは「わ、笑ったら失礼だよ」と言っている…が、本人も顔では笑ってしまっている。
「や、やめてよ、美月ぃ…!!ふふっぅ…!もうそれしか思い浮かばなくなったじゃない!」
「もう…!もう、それ、生徒会じゃない…だろう……こほっ!こほっ!」
「月島の!髪型だけが…!異常に浮いちまってる!」
「…………ッッ!!」
エリカ、幹比古、レオ、雫が笑い転げるほど(当然、実際には転がってはいないけど)になっているが、発端となった当の美月は……
「ごめんなさいぃ…!どうしてもあの印象が強くて……」
と言いながら、真っ赤になった顔を両手で覆い隠すようにしていた。
「つ、月島さん!みんな、悪気があるわけじゃないんですよっ!?ただ、あの人たちのインパクトが凄すぎたというか……あっ、でも、あの人たちが悪いってわけじゃなくて、その…!」
「ああ…大丈夫だよ、ほのか。……うん、こういうのは慣れてるから」
…というか、皆の気持ちもわからなくもない。
いや、だってさぁ?
中央に一人座ってて、その左右に「モヒカン」や「アフロ」、「ドレッド」、「オールバック」に加えて「リーゼント」なんて面子がいたら、誰であっても笑ってしまうだろう。
無論、僕だって笑ってしまう。……ただし、その中央にいるのが僕なので、苦笑いになってしまうのだが…。
笑い続ける4人を見てため息をつきつつ、僕はほのかと美月のほうを見て口を開く。
「なんにせよ、僕らには直接は関係無いことだ。…今頃、現生徒会が何か話し合ったりしてるんじゃないかな?深雪さんに付いて行ってる達也も交えてさ」
「そうですよね!きっと心配ありませんよ」
「はいぃ……ごめんなさい」
未だに顔を赤くして謝ってくる美月に「もういいんだよ?」と言いながら、僕はこの生徒会選挙で何事も起きなければいいなと、ひとり思っていた。
――――――――――
そんな生徒会長の選挙だが、何とか無事に終わった。
…とはいっても、演説の途中に一悶着あったのだけど、それは深雪さんによって何とかなった。
新生徒会長は、この前まで生徒会書記だった中条先輩。
後から聞いた話だと、中条先輩が立候補するまでにも色々とあったそうだ。
副会長だった服部先輩が十文字会頭の後任として部活連の会頭になることになり、次に七草会長から話が回ってきた中条先輩が立候補を嫌がったり……と。
さらには、僕だけでなく「司波達也が立候補する」なんて噂も少なからず流れたそうで、早く正式な立候補者を出さないと「一科生VS二科生」の構図になってしまう…なんて状況にもなっていたそうだ。
……そこまでなったら、僕も当事者に含まれてしまって生徒会から招集されるのではないかとも思ったのだが、達也
達也は「俺は協力させられたのにな」と呟いていたのだが、まぁそれはもう仕方ない。深雪さんに付いて行ったんだから。
…というよりも、どう考えても僕が七草先輩に避けられ気味なだけだ。
原因はどう考えてもお宅に訪問した時に『霊圧(モドキ)』で怖がらせ過ぎたからだろう。
…いや、もしかすると不注意で巻き込んでしまった七草会長の妹さんたちが、僕のせいでトラウマを抱えてしまったり?……いやでも、それなら『七草』そのものが何かしてくるか…?
そんなこんなで、新学期最初の行事が無事に終わった……
―――――――――
「終わった」と、いつから錯覚していた?
僕はそう自分自身に問いかけていた。
「なん……だと……」
「で・す・か・ら!月島君に新生徒会の書記をやってほしいんです!」
「なん……だと……」
「もうっ!さっきから同じことばっかり言って……はっ!?もしかして、また私をからかってるんですか!!」
目の前にいるのは、頬を膨らませた中条先輩…新生徒会長様である。
「…僕、風紀委員なんですけど?」
「大丈夫です!反対もありましたけど、風紀委員からはちゃんと許可を取ってます!」
おおう…、まさかそこまで事前に手を回しているとは……
「これまで以上にからかわれる機会が増えますけど……いいんですか?本当にいいんですか?」
「ううぅ!?……で、でもそれ以外は月島君は真面目ですし、仕事もちゃんとできるそうですし…」
「『九校戦』の時みたいに勝手なことするかもしれませんよ?」
僕が真顔でそう言うと、中条先輩は「い……一日だけ、考えさせてくださいぃ…」と言って、どこかへ行ってしまった。…普通、そのセリフは誘われた僕が言うセリフなんじゃないだろうか?
翌日、中条先輩から改めて勧誘された。