魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
今回のお話は、深雪さん視点でのお話となっております。
…やはり、慣れていないキャラの視点だと安定しませんね…。
雪が降るのも、月島さんのおかげ。(少し気が早い)
お兄様が『全国高校生魔法学論文コンペティション』の代役に選ばれてからというものの、調べ事や実験などでこれまで以上に学校内で一緒にいれる機会が減ってしまいます
そんなとある日の昼休み。久しぶりにお兄様と共にお昼を過ごしていました
ですが……
「お兄様?」
ふと、お兄様が他所へと目を向けていることに気がつき、私もそちらへと目を向けました。
その先に見えたのは、天へと昇る薄い煙。量はそれほどでもありませんでしたが、何かが燃えているのは確実でした。
「校舎裏手の庭のあたり…でしょうか?」
私はお兄様に「どうしますか?」と聞く。
「燃えだしたのは、ついさっきみたいだ。まだ、誰も現場に着いていない……さすがに無視はできないな」
煙が上がっている方向へと駆け出すお兄様。その後を私もついて行きました。
―――――――――
校舎裏手の庭にたどり着いたお兄様と私。お兄様はすでに煙の発生源が何処にあるのかを、確認済みなのでしょう。迷うことなく燃える「何か」が私でも目視できる距離まで来ました。
お兄様と私の到着とほぼ同時に他の生徒が何人かそばに来ていました。あまり憶えの無い顔でしたので、恐らくは風紀委員などではない、煙に気付いて好奇心から寄ってきた…野次馬と呼ぶべき人たちでしょう。
「深雪、消火を頼む」
「わかりました、お兄様」
お兄様に言われた通り、私は魔法で早急に火を消し止める。
火の消えた「何か」は、先程まで吐き出していた煙を止めました。
「よし。現場の調査を始めるぞ」
「はい!…………お兄様?」
先に燃えていた「何か」へと近づいたお兄様が動きを止めました。そして、顔を覗きこむとわずかに眉をしかめていることに気付きます。
どうしたのかと不思議に思い、私もその「何か」へと目を向け、そして……その理由がわかりました。
完全には燃えていないものの、半分以上が黒く炭化し、一部はボロボロと崩れかけていました。
それは「本」でした。
それが「誰のものなのか?」と悩む時間は必要ありません。それに……僅かに燃えずに残っている表紙。それは、今朝教室で挨拶を交わした月島さんが読んでいたものと同じデザインのもの。
そして、決定的な証拠は本の上部のそばに落ちているもの……
燃えていた物が何なのかは、わかりました。
問題は誰が、どうして、こんな所で燃やしたのか。
もちろん、本の事が好きであるとわかっている月島さん本人がこんなことをするとは思えません。
つまり……普通に考える位なら、月島さんに恨みがある人でしょう。
お兄様が燃え残りの本に手を伸ばそうとした、その時……
「ごめんね、道を開けてくれないかな?生徒会ですよ」
少し遠くからそんな声が聞こえてきました。
その声には聞き覚えがありました。…そして、それを肯定するように、最初よりも集まっていた野次馬の生徒たちがざわめきました。
理由は簡単です。『九校戦』の一件もありまして、彼は1年の中でも……全校生徒の中でも有名人。その特徴とも言える本も多くの人が知っているでしょう。
そうなれば野次馬の最前列の人が、燃えていた物がこの時代に珍しい本であるとわかり「月島のだ!」と気づけば、それが周囲に伝染。
そこに話題の本人が来れば……当然、ざわめいてしまうでしょう。
そう、野次馬の間から出てきたのは月島さんでした。
「おや?もう達也たちが来ていたのかい。それじゃあ、あまり僕は……」
そう言いかけた月島さんの言葉が止まり……
音が消えた。
正確には消えたわけではありません。ですが、先程まで聞こえていた野次馬生徒たちのざわめきも静まり、風も無く木の葉の揺れる音すらありません。
本来聞こえるはずがないくらいの音であるはずの、
その原因は、月島さんから溢れ出してきた殺気。
私はこれまでに殺意を向けられたり、殺気を感じたりしたことは何度かありました。しかし、月島さんの
その私の肩に、温かい何かが触れました。それはお兄様の手。
「落ち着け、月島。…深雪が怖がってる」
「……ああ、済まない」
そう言って一度髪をかき上げた後、月島さんはいつものように薄く笑みを浮かべました。それと同時に、周りからは安心したのか大きく息を吸ったり、吐いたりする音が聞こえてきます。
「悪いけど、これ、調査と処理は僕にさせて貰えないかな?」
月島さんはお兄様にそう申し出ました。
お兄様は特に考えるようなことも無く、素直に頷きました。
「ああ、わかった。なら、生徒会と風紀委員には俺たちから現段階での報告をしておく。……協力はいらないか?」
「うん、必要ないよ。…でも、ありがとう」
「気にするな」
そう言葉を交わした、お兄様と月島さん。
お兄様は「それじゃあ行こうか、深雪」と私に言い、歩き出します。
なので、私は周囲の野次馬に対して口を開きます。
「原因がわからない以上、生徒一人一人の防犯意識が大切になります。皆さん、そう大きな荷物は無いかと思いますが、教室にある自分の持ち物の確認をお勧めします」
私の言葉の内容で……というわけでは無いでしょうが、これがきっかけに野次馬の生徒たちは
お兄様と私も、お兄様が風紀委員の誰かと連絡を取りながら移動を始めました。
その途中に振り向くと、焼け焦げてしまった本と栞を手に取る月島さんの背中が見えました……
―――――――――
その日の放課後。生徒会室では……
「……以上が調査結果です。付け加えることとしては、
月島さんはいつも通りの調子で、他のメンバーの方々に報告しました。その傍らには、透明の袋に入れられた本があります。
「わかりました。調査内容も含め、十分な内容です。それではそれを風紀委員へと回しましょう」
中条あずさ会長がそう締めくくり、月島さんは一つ礼をする。
「…では、これから僕が風紀委員に持っていきますね。その後はそのまま、今日の昼にお話しした通り、不登校の平河先輩の家を訪ねに行こうと思っているので、ここには戻らないと思いますが……何かありますか?」
月島さんがそう言うと、会長が「あっ、待ってください」と制止をかけました。
「風紀委員へは私が行きます!だから、月島君は今からそのままお宅訪問へ行っていいですよ!」
「そうだね、こっちのことは後は僕たちに任せて。…それと、花音から聞いてきてたんだけど、「調査が十分なら、証拠品の本は持ってこなくてかまわない」って」
会長に続いて、五十里啓先輩も月島さんに言いました。それは本が好きな月島さんへの配慮の様でした。
そんな二人に月島さんはもう一度頭を下げ「ありがとうございます」と言ってから生徒会室を出て行きました。
月島さんが出て行った後の生徒会室に、ボソリと会長の呟きがこぼれてきた。
「月島君、大丈夫かな……?」
「本当に大事なものの様でしたから、ショックは大きいと思います。……実際、発見した際にはとても怒っていたようでしたし…」
私がそう言うと、会長は「そう、ですよね…」とションボリとしてしまいます。
「……月島君が気にしているのはコンペのほうばかりの様だったね。犯人探しよりも他人の事…ていうのは、月島君らしいけど……何かしてあげられればな」
五十里先輩もそう言って何か考え出してしまいました。
私もある事を考えます。あの本、お兄様の『再成』であれば、今なら燃える前に戻せるでしょう。ですが、大勢が燃えたのを確認している……というのは何とかできなくもありませんが、持ち主である月島さんには恐らくバレかねません。そう考えると本のほうは諦めるほかないでしょう。
しかし、犯人捜しのほうは出来なくもないのでは?
そう思いましたが、お兄様にその程度の考えが浮かばないはずがありません。私が知らないだけで、もうしている?…それとも、しない理由が何かあるのでしょうか?
そう考えていると、会長が突然「そうだ!」と声をあげました。
「本があるお店で月島君が好きそうな本を探して、それを月島君にプレゼントするのはどうでしょう!?」
「それは月島君も喜ぶんじゃないかな」
そう言って会長のアイデアを称賛する五十里先輩でしたが、「でも……」と言葉が続きました。
「本って希少価値が高かったりするから、下手なCADの何十倍も値段がするって聞いたことがあるんだけど……」
「ええっ!?」
「それに、会長は本を売っている店舗をご存知なのですか?」
「…し、知りません……」
私からの質問もあって、涙目で落ち込んでしまった会長。
結局、「とりあえず、風紀委員会へ報告に行こうか」と五十里先輩が切り出すまで会長は落ち込んだままでした……。