魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

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※注意※
「残酷な描写」「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
ちょっと時間の上下があったり……。


今回は第三者視点です。

そして、場面の転換がいつもよりも多めです。
できる限りわかりやすいようにと意識しているつもりですが、何かありましたらご連絡ください。


沢山のUA、お気に入り、評価をいただけたりしたのは、読者の皆様と月島さんのおかげ。(定期)


横浜騒乱編-15:終息へと向かう戦局

 

横浜中華街にほど近い区画。

そこでは、義勇軍に参加した「クリムゾン・プリンス」こと一条(いちじょう)将輝(まさき)が、他の義勇兵と共に大亜連合兵士と交戦していた。

 

 

大亜連合側の戦力は直立戦車、銃火器を装備した兵士、そして中華風の鎧武者を模した『化成体』。

 

一条将輝にとって最も面倒なのは、鎧武者の『化成体』の存在。

人間や戦車であれば内部に液体が存在するのだが、幻影がもとであるため一条の秘術である『爆裂』は効果は無い。それに加え、何とか倒しても、放っておいても、どんどん湧いてくるため義勇軍側の戦力が削られてしまう。

 

こういう場合は、『化成体』を生み出している魔法師を叩くのが最善な選択なのだろうが……当然ながら、敵の目の前で『化成体』を生成するほど大亜連合の魔法師も馬鹿ではないようで、根源から断つことも難しい状態だった。

手段が無いわけでもないが、周囲への被害を考えるとあまり気の進まない選択ではあった。

 

 

「うわぁ!?」

 

一条将輝がそんなことを考えているうちに、義勇兵の一人に鎧武者の『化成体』が剣を振り被った。

 

鎧武者の『化成体』と、何処からか現れた獣の『化成体』が義勇兵の一人に跳びかかるその光景を視界端に(とら)えた一条将輝は、「これ以上、被害を出す前に」と、考えていた手段を決行しようとしだした……。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

それとほぼ同時刻の横浜市街地の某所のとある表通り。

そこでは十文字(じゅうもんじ)克人(かつと)が義勇兵と共に、大亜連合との戦闘を繰り広げていた。

 

大亜連合兵士、そして戦車による銃撃。そして、黒い獣や赤い鳥などを模した『化成体』が次々と現れ、義勇兵たちに次々と襲いかかっている。

 

 

「撤退だ!」

 

「後退して防衛ラインを立て直す!」

 

その猛烈とも言える大亜連合の勢いに押されている現状からか、義勇兵がそう声をあげた。それはそこにいる義勇兵たちの多くの声を代弁していたかもしれない。そこにいる義勇兵の幾人かはすでに後退し始めていた。

 

その後退を止めるべく声をあげようとした十文字克人だったが、そんな彼の耳に後方から「うわぁ!?な…なんでコッチにも!?」と驚く義勇兵の声が聞こえ、振り返る。

 

「なっ……!?」

 

見えたのは、()()()()()()()。獣のそのわずかに感じられる()らめきから『化成体』であると判断できる。

10を超えるかというの数の青白い獣は、大亜連合の兵たちがいる方向とは反対から……つまり、義勇軍を挟み撃ちにするかのように、義勇兵たちへと向かって駆けて来ていた。

 

 

後退をしようとしていた義勇兵たちも足を止めてしまい、十文字克人もとっさに『ファランクス』を展開しようとしたが……それよりも早く青白い獣の群れが義勇兵たちのもとへと到達してしまい…………

 

 

 

 

 

…………()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……は?」

 

それは十文字克人を含め、義勇兵全員の気持ちだっただろう。……もしかすると、大亜連合側の兵士たちも似たような気持だったかもしれない。

 

 

その青白い獣の群れは、そのままの勢いで大亜連合側へと突っ込んで行き…………()()()

 

 

いきなりの現象に、敵・味方も無くその場にいた全ての人が驚き……そして、目を見開いた。

 

青白い獣が()ぜた場所の地面は、その爆発により(えぐ)れていたりは()()()()()綺麗なままだった。

ただし、そこにいたはずの黒い獣や赤い鳥などを模した『化成体』たちは、キレイサッパリいなくなっていた。

 

 

全ての人間が困惑する中……

 

『何、ボーっとしてるんですか、十文字先輩?』

 

そんな声が、十文字克人の耳に入ってきた。

発信源……十文字自身の足元近くに目を向けると、そこには青白い獣が、十文字克人の足に寄り添うようにして「お座り」をしていた。

 

 

その存在に驚く義勇兵たちだったが、十文字克人には今しがた聞こえた声に聞き覚えがあった。

 

「その声……月島か?」

 

『ご名答です、先輩!…なんて悠長に話しているヒマはありませんね。…この術では『化成体』にしか明確なダメージは与えられませんので、先輩と義勇兵で兵士と戦車は倒していただけませんか?』

 

「わかった。……助太刀、感謝する」

 

そう自身の足元にいる青白い獣に言った十文字克人は、大きく息を吸った後、声をあげた。

 

 

「「青き獣」は我らが友軍によるもの。彼らの力により敵の幻影は消え去り、恐れることは無くなる!奮い立て、魔法を手にする者たちよ!卑劣な侵略者から祖国を守るのだ!!」

 

その言葉に、先程まで後退しようとしていた義勇兵たちが雄叫びをあげる。

それと呼応するように、十文字克人のそばにいた青白い狼が遠吠えをあげた。すると、その体から人魂のようなものがいくつも飛び出し、それが狼の姿となって大亜連合の兵たちの方へと駆け出した。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

場面は再び戻って、横浜中華街にほど近い区画。

ここでも戦況が変わった。

 

きっかけは、義勇兵の一人に襲いかかっていた鎧武者の『化成体』。そこに跳びかかっていった獣の『化成体』が爆ぜて、鎧武者の『化成体』が消え去ったことだった。

 

 

『一条将輝。駐車場の時も思ったけど、キミはもう少し周りの人間のことも気にかけたほうが良いと思うよ』

 

「なっ!…いや、今の声は月島か?何故この獣から奴の声が……」

 

自身の足元近くにいた青白い獣から聞こえた声に、一条将輝は困惑する。

…が、そんな事は知らんとばかりに、青白い狼から月島の声が発せられる。

 

『言いたいことは色々とあるだろうけど、そんなのは後だよ。この術で『化成体』たちは一掃してあげるから、早く片をつけなよ一条将輝。……それとも、僕が来ないといけないかな?』

 

「……っ!必要無い!『一条』を甘く見るなよ……!!」

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

横浜の戦場で、大亜連合の戦力である『化成体』を次々と消滅させていく青白い獣。その正体は……

 

 

群狼(ロス・ロボス)(モドキ)』。

 

 

本家の『群狼』には、(ホロウ)の技である虚閃(セロ)の塊である狼を多数出現させる能力がある。

それを今日月島が(しゅう)公瑾(こうきん)に挟み込んだことによって得た『哮天犬(シャオビェンチェン)』の知識を元に再現したものだ。

 

ただし、これは本家とは大きく性能が異なっている。

 

その原因はひとえに「虚閃の威力を再現できなかった」ことにある。

故に、『群狼(モドキ)』はほとんど「ただの想子(サイオン)霊子(プシオン)の塊」となってしまい、それが破裂するように解放されるだけになったのだ。

 

これにより、大きな欠点ができた。物体への干渉ができない……つまり、物理的な破壊力が皆無なのである。

それとは別に月島ならではの利点もある。月島と密接な存在である『盾舜六花』の六花たちとの『感覚同調』や霊子を使った通信を上手い具合に併用することによって、狼を発生させられ、会話等も行える…いわば、司令塔のような固体の狼を生み出せることだ。

 

なお、想子も霊子もかなり消費する。特に狼を発生させる機能を持っている固体は、なおさら多くの想子・霊子が必要となる。そのため、かなりの消耗となる。

 

 

「ただの想子(サイオン)霊子(プシオン)の塊」となってしまった……といったが、今回のように『化成体』は吹き飛ばせたりするし、全く使えないわけでは無い。

それに……モノは言いようである。

 

 

群狼(ロス・ロボス)(モドキ)』。

 

それをこの世界に合わせた魔法的な呼び方をするならば、こうなるだろう。

 

 

 

自律行動(じりつこうどう)術式解体(グラム・デモリッション)』。

 

想子と霊子の破裂は、魔法式を消し飛ばすのである。……まあ、大亜連合には魔法師が少ないためその性能を発揮することはないだろう。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

そんな『群狼』の一体が、とある建物の屋上に降り立った。

 

 

その屋上にいたのは、頭の先から足の先までを包む黒いスーツ…ムーバル・スーツで身を包んでいる集団……日本の国防軍の国防陸軍第101旅団、独立魔装大隊(どくりつまそうだいたい)の一団。

彼らはそも建物の下にある道を進む大亜連合の兵たちを、ちょうど殲滅し終えたところだった。

 

 

突如屋上に現れた青白い獣に何人かがその存在に気づき、手に持つライフルで攻撃を加えようとする……が、その前に青白い獣が喋った。

 

『僕は敵ではありません。国防軍の皆様にお伝えしたいことがあり、ここに来ました』

 

そう言う青白い獣。ムーバル・スーツの一団は、その言葉…ではなく単純な驚きによって一瞬動きが止まった。そして、その中の一人がその一瞬の間に口を開く。

 

「その声は月島か。どうした?何かあったか?」

 

『おや、僕を知っている人がいて助かります。…連絡と言いますか忠告です。魔法協会支部のある「横浜ベイヒルズタワー」へと進む大亜連合の集団を殲滅しますので、タワーから見て南西の通りには近づかないでください。そして、近づいた際には安全の保障は出来ませんので、ご了承を』

 

「随分と派手にやる気だな。わかっているとは思うが、一般人は巻き込まないようにしてくれ」

 

『もちろんですとも。……では、失礼します』

 

そう言って、屋上から空へと飛び何処かへと駆けていく青白い獣。

 

 

 

その姿を見ながら、獣と話していた人物に対し、別の一人が話しかけた。

 

大黒(おおぐろ)竜也(りゅうや)特尉。今のは一体?」

 

「第一高校1-Aの月島(つきしま)昊九郎(こうくろう)…その使い魔のような存在です」

 

「月島、か。あの『九校戦』の時の……」

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

『横浜ベイヒルズタワー』へと続く通りを進むトレーラー。

その荷台部分の中にいるのは、魔法協会支部への襲撃のための兵士たち。その中には大亜連合軍特殊工作部隊隊長である(チェン)祥山(シャンシェン)や、護送車から逃走した(ルゥ)剛虎(ガンフゥ)の姿もあった。

兵士たちも含め左右に分かれて座って、自分たちの任務を遂行する時を待っていた。

 

そのトレーラーの周りには装甲車や直立戦車が、護衛のようについて走っている。

 

 

 

そんなトレーラーの進む先に、男が一人立つ。

 

 

その男は(ひたい)に傷を負っているのか、顔の一部が血に濡れており、手には刀を持っていた。

 

 

トレーラーはその男を避けることなどしなかった。

何故なら、すでにその存在には気づいていた直立戦車がその男をハチの巣にすべく、トレーラーのサイドから回り込むように移動して狙いを定めていたから。

 

 

 

しかし、直立戦車は道のわき…ビルの隙間から出てきた()()()()()()()()()()

 

それを見たトレーラーを運転する大亜連合の兵士は何事かと驚いた。

しかし、そちらの結末を見る前に…………道の先にいる男が100メートルにも満たない距離にまで迫ってきており、そちらへと意識がゆく。

 

トレーラーもただのトレーラーではない。

周囲からの攻撃に備えて対策はある。銃撃・剣撃・魔法、どれも並のものでは傷もつかない装甲を持っているのだ。

 

 

このまま引き潰してやる……!

 

 

そう言わんばかりに、トレーラーは速度を上げていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『孤天斬盾(こてんざんしゅん)』……僕は「拒絶」する」

 

 

 

 

 

 

縦一線。

 

何かが通り過ぎたと思った次の瞬間にトレーラーは縦に真っ二つに割れ……左右に倒れながら、慣性のまま突き進んでいく。

 

そう。ちょうど、路上に立っていた男の左右を通り過ぎるようにして…。

通りすぎる瞬間に、男は()()刀を振るう。

 

 

そして、それとほぼ同時に、トレーラーの荷台から二つの人影が飛び出し……その片方の人影は男へと跳びかかった…!

 

 

突き進みながら倒れ、地面に側面をガリガリと擦り付けながら止まったトレーラーは、すぐさま火に包まれる。運転手を含め、何があったかもわかっていない荷台にいた兵士たちは必死になって燃えるトレーラーから這い出していた。

 

そんな彼らの目に真っ先に写ったものは、相対する二人。

 

 

一人は、知った顔である(ルゥ)剛虎(ガンフゥ)

対人接近戦においては大亜連合軍特殊工作部隊の中ではもちろん、世界的に見ても有数の実力者である「人喰い虎」の異名を持つ魔法師。

今の彼は呪法具・白虎甲(バイフウジア)と呼ばれる、その名の通り白虎(びゃっこ)らしいデザインをした(よろい)を身に纏っており、『鋼気功(ガンシゴン)』と呼ばれる術で自身を強化していた。

 

 

そんな呂剛虎と相対するは、顔半分を血で濡らした…トレーラーを真っ二つにした男。

 

「挨拶も無しに殴りかかってくるかい、呂剛虎?……まあ、そっちの車を壊した僕が言えたことじゃないか…」

 

その男が薄い笑みを浮かべて、呂剛虎に言う。

 

 

 

「はじめまして、呂剛虎。そして憶えておくと良い……『完現術者(フルブリンガー)月島(つきしま)昊九郎(こうくろう)…………キミを倒す、男の名だ」


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