魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

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またやってしまった、の一言です。投稿時間的な意味で。
大変申し訳ありませんでした。


※注意※
「残酷な描写」「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!



今回も前回に引き続き第三者視点でのお話です。
その場にいるキャラが多いと、色々と書き辛いことが最近分かりました。




そんな感じに、この作品を書いていくうちに色々と経験し学習できるのも、月島さんのおかげ。


横浜騒乱編-16:Intonation

避難ヘリの中で行われる会話。それはある出来事に関するものだった。

 

 

「お兄様が使った魔法は治癒魔法ではありません。魔法の固有名称は『再成(さいせい)』。損傷を受ける前の個別情報体(エイドス)を最大で24時間(さかのぼ)ってフルコピーし、それを魔法式として現在の個別情報体(エイドス)に上書きすることで損傷を受ける前に復元します」

 

 

そう説明をするのは、司波深雪。

 

 

ヘリでの避難途中……ヘリの発着地点の死守のために、そこへと繋がる大通りを防衛していた生徒たちを回収していた時のこと。

一瞬の気の緩み、そして不注意によって大亜連合の兵たちによる反撃を受けてしまい、五十里(いそり)(けい)桐原(きりはら)武明(たけあき)の二人が大きな損傷を受けたのだが、その場に現れた司波達也が二人の傷を跡形も無く消してしまった。

 

 

「この特別な魔法のせいでお兄様は、他の魔法を自由に使うことが出来ません。魔法演算領域をこの神の(ごと)き魔法に占有されているために他の魔法を使う余裕がないのです」

 

「それで達也君はあんなにアンバランスなのね…」

 

深雪の言葉に、七草(さえぐさ)真由美(まゆみ)が納得したように頷いていた。

 

 

非現実的な……そして命の危険もあった体験に、怪我を負っていた二人はもちろん他の生徒たちにも何とも言えない重い空気が漂っている。

 

 

 

 

 

……が、そんな流れについていけずに、ひとり目を白黒させている人物がいた。

つい先程まで頬を膨らませて、持ち主がこの場にいない携帯電話に向かって文句を言っていた中条(なかじょう)あずさである。

 

というのも、中条あずさがヘリのメンバーに合流したのは、本当にヘリに乗るギリギリ直前。

そのためあずさは、五十里や桐原が『再成』によってすでに修復された後に合流したので、ふたりが怪我をしていたこと自体、ここで初めて知ったのだ。

 

 

それを察したのか、真由美が……少し悩みながらも、声を抑えながらあずさに言った。

 

「あーちゃん、大丈夫?」

 

「えっ、あ、いえ!だいたい何があったのかは把握しました!……たぶん」

 

元気良く返事をしてしまったあずさに、全員の視線が集まる。

その視線にワタワタしたあずさだったが、何とか落ち着いて……そして、深雪のほうを見た。

 

 

 

「あの……その魔法って、他の人が使えたりはしないんですか?」

 

 

あずさの言葉への深雪の返答は、絶対零度といえる冷たい視線だった。

その視線にあずさは「ぴぃ!?」と悲鳴をあげつつ……首を思いっきり振る。

 

「ち、違いますよ!?疑ってるとか、信じてないとか、そういうことじゃなくって!その!あの……!!」

 

首を振るのを止めたあずさは、おずおずと呟くように言った……。

 

 

 

「もし、他に使える人がいないなら、私もお礼を言わなきゃって思って…!」

 

 

その瞬間、その場にいた全員が驚き目を見開き……その中の真由美が声を荒げた。

 

「それってどういうことなの、あーちゃん!?」

 

「ふぇ!?そ、その……」

 

そこからあずさによる、月島昊九郎と合流するまでの経緯の説明が始まる。

 

『地下シェルター』への避難途中、月島がいなくなったことに気がついて、探しに行こうとしたこと。

通路が崩れ落ちて来て、分断されてしまったこと。

そこから月島が敵を撃退していたとされる通路へと逆走したこと。

そのまま外まで出てしまったこと。

そして…………。

 

 

「そこで、他所の戦闘からの流れ弾なのか何なのかわからないけど、爆発の音がしたと思ったら瓦礫が落ちてきてて……。そこからはどうなったか憶えてないんですけど、気付いたら月島君に抱っこされてて…」

 

その時のことを思い出してか、少し身震いをするあずさ。

しかし、口は止めずにそのまま続きを話した。

 

「月島君が「陰になっているからって、あんなところで寝ていたら…」って言ってたから、もしかしたらその『再成』の後に瓦礫の(かげ)に寝かせてくれたのかなー…と思って……」

 

「そんなことがあったのね……」

 

「無事を喜ぶべきか、それとも…」

 

あずさの話を聞いていた真由美と摩利がそう呟いた。

 

「お兄様に直接聞いてみなければわかりませんが……おそらくは」

 

深雪はそうあずさの考えを肯定していた。

 

 

 

「…でも、なんで月島は瓦礫の陰にいた会長を見つけたんだ?」

 

「は?何言ってんの?それは……なんで?」

 

西城(さいじょう)レオンハルトの疑問に千葉(ちば)エリカが答えようとし……エリカ自身も首をかしげる。

それを聞いた他の面々も「確かに…」と首をかしげた。

 

 

……そんな中で、一緒になって首をかしげていたあずさだったが、ある事に思い当たった。

それは、『盾舜六花(しゅんしゅんりっか)』と言うらしい、月島の周りにいる小人たち。あずさと一緒にいる時にも周囲の見回りをしているようだったので、その見回りで見つけ出したのではないかと思ったのだ。

 

ただし、月島から六花たちのことは秘密にしておくように言われていたため、あずさはそのまま口を閉じていた。

 

 

 

「あっ!?」

 

そう声をあげたのは、柴田(しばた)美月(みづき)。その声に反応し、皆の視線が集まる。

その美月に、摩利が問いかけた。

 

「どうした?」

 

「えっと、あっちのほうで一瞬、何か獣のようなオーラが見えたような気がして…」

 

「あっちっていうと……ベイヒルズタワーのほうかな?」

 

「タワーじゃなくて、少し離れた通り…あの煙が上がってるあたりです。でも、なんだかあの辺りは見え辛くて……まるで他の光に邪魔されてるような…」

 

吉田(よしだ)幹比古(みきひこ)の質問にも、美月は答え、そして今現在はどう見えているかを伝える。

そして、オーラを見え辛くしている光に、美月は少しだけ既視感を覚えており「何処かで似たような感じのものを見たことがあるような…」と一人考えていた。

 

 

 

「押されているのか…?戦況はここからではわからないが……もし、そうなのであれば手を貸した方が良いかもしれないな」

 

摩利のその言葉に、「出番か?」と反応を示すレオとエリカ。

そして、真由美が何やら言ったかと思うと、ヘリの進路が変わった……。

 

「一度、ベイヒルズタワーのヘリポートに降りようと思います。皆さん、すみませんが……」

 

 

 

 

 

『その必要はありませんよ』

 

 

真由美の言葉を(さえぎ)るようにして、声がヘリ内に響き渡った。

当然、皆がその声がした方へと目を向ける。

 

 

そこにいたのは、青白い獣。いつの間にか、ヘリの内部へと侵入していたのだ。

 

『七草先輩。ヘリを元の進路へと戻してください。ベイヒルズタワー前を含め、こちらには増援は必要ありません』

 

再び獣から聞こえたその声に、真由美は驚きながらもその声の主を言い当てた。

 

「その声、月島君…なの?」

 

『はい、月島です。ちょっと色々として、声だけをこの個体に飛ばしています』

 

そう言う獣に皆驚き、まじまじと見る……が、そんな中、壬生(みぶ)紗耶香(さやか)がその獣に問いかけた。

 

「今さっき「こちらには増援はいりません」って言ってたけど……もしかして、月島君はあそこで戦ってるの!?」

 

『……今、(ルゥ)剛虎(ガンフゥ)と彼が率いる部隊と交戦中です』

 

「もしや、さっきの「獣のようなオーラ」というのは、呂剛虎のことだったのか…!」

 

呂剛虎と交戦したことがある摩利が、その時の感覚と月島の言葉からそう断定し……そして再び青白い獣のほうを向いた。

 

 

「アイツは相当な実力者だ。…大丈夫なのか?」

 

『大丈夫ですよ。何事も問題無く()()()出来ています。なので心配なさらずに元の進路に戻ってください。……僕には()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう言った獣はその顔を真由美のほうへと向け、そして……

 

『七草先輩なら、この言葉の意味、わかっていただけますよね?』

 

 

 

その言葉を聞いた真由美の行動は早かった。

 

「名倉さん!進路を元に戻して、ベイヒルズタワーから離れる様にして!」

 

ヘリの前部分のほうへと向けられたその言葉への返答は単純明快で短く「わかりました」の一言であったが、その名倉という人物の声からは何やら焦りのようなものが感じられた。

 

『話が早くて助かります。……余波がおよぶであろう範囲に一般人がいないことを確認し終えたと思ったら、皆さんが来たんで、ちょっと困っていたんですよ』

 

「……月島君。本当に大丈夫なのよね?」

 

『もちろんですよ、七草先輩。『十師族(あなたがた)』に言った「僕の手の届く範囲であればこの国の平和は守る」という言葉に嘘はありません。それを今、実行しますよ』

 

 

真由美にそう言った青白い獣は『では…』と言いながらヘリの側面の壁へと向かった……が、

 

 

 

「待ってください!」

 

それを呼び止める者がいた。

それはちょっと前まで月島への文句をもらしていたあずさ。そのあずさが青白い獣を呼び止めて……

 

 

「ケガ、しないでくださいね……」

 

 

そう言った。「いっつもからかってきて!」とか「勝手な行動ばっかり!」と言っていたハズなのだが、いざ……となると、何故かそんな言葉が出てきた。それはあずさ自身にも驚きだった。

そして、その言葉に青白い獣は……

 

 

 

 

 

『無理です』

 

「えっ!?」

 

『もう怪我してしまってるんで』

 

「ええっ!?」

 

これには他のメンバーも驚いた。

摩利をはじめ、「本当に加勢に行かないで大丈夫なのか?」という疑問も湧きあがってきたことだろう。

 

『とは言っても、敵から受けた傷ではないんですがね。左眉の端あたりを、こう……自分でザクッと』

 

「ななな、なんでそんなことをっ!?」

 

『気合を入れたんですよ。自分が月島である事をちゃんと自覚するための…ね』

 

 

そう言い残すと青白い獣は駆け出し、ヘリの側面を()()()()()行ってしまった。

 

 

 

 

「……人の気も知らないで、いつも勝手なこと…」

 

あずさがもうここにはいない月島へと呟いたり、他の面々も状況を理解できていなかったりと何とも言えない空気になった中、摩利が真由美に問いかける。

 

「真由美……月島が何をしようとしているか察していたり、何かを前に話したようなことを言っていたが……」

 

「ええ、そうね……一体どこから話したらいいものかしら……」

 

そう真由美が言うと、自然と他のメンバーもそちらへと意識が向く。

 

 

 

…………が、真由美が話を始めるよりも先に、別の声が聞こえた。

 

それは、先程まで青白い獣が発していたものとよく似た月島の声。

ただし……それは何かこれまでとは違ったものの様に耳に入ってきた……。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

少しだけ時間を(さかのぼ)り……

 

 

『横浜ベイヒルズタワー』へと続く通りでは、月島と呂剛虎が刀と拳を打ちあっていた。

 

その周囲には大亜連合の兵、そして直立戦車や装甲車。

 

しかし、直立戦車や装甲車は皆煙をあげており、使い物にはならないだろう。

兵のほうも、青白い獣や桜吹雪がベイヒルズタワーへの行く手を阻んでおり、大亜連合の兵士たちは邪魔をされ続けて進むことが出来ずにいた。

 

 

 

呂剛虎は、目の前にいる「月島昊九郎」と名乗った人物を見据える。

 

彼から感じられる闘気は大したものではない。故に、呂剛虎は早急に片付けられるとふんでいたのだが……呂剛虎の攻撃は月島にはいまだ届かずにいた。

だからといって月島に呂剛虎が押されているのかといえば、別段そういうわけでもなかった。白虎甲(バイフウジア)、そしてその上から纏っている『鋼気功(ガンシゴン)』は月島の刀をはじいている。

時折、呂剛虎が月島から離れた際に、大亜連合の兵が死角から月島に発砲したりはしていたが、月島はそれすら避けてみせていた。

 

呂剛虎(こちら)は拳を脚を(もち)いて攻撃をくりだしている。月島(むこう)も刀を用いて呂剛虎に噛みついてきている。

にもかかわらず、事態は一向に変わらない。

 

 

そんな状況を呂剛虎はただただ不可解に思っていた。

 

 

呂剛虎は、以前、平河千秋という少女を消すために病院に行き……そこで千葉(ちば)修次(なおつぐ)という、自分と同じく対人接近戦を得意とする人物と交戦したことがある。

その時は大小あれど互いに損傷し…そして途中に邪魔が入ったため撤退したのだが……。

今も、力が拮抗しているのだろうか……?

 

 

そしてそれとは別に「増援があるのか?」という考えも浮かんだが、呂剛虎は何かしっくりとしなかった。

 

というのも、周囲にある直立戦車や装甲車を破壊したのは桜吹雪…その桜の花弁だ。そしてそれは、今はまばらになっているうえに大亜連合兵たちへとはそこまで襲いかかっていない。もちろん、呂剛虎にも襲いかかってこなかった。

 

だが、普通に考えれば、月島とその桜の花弁とが連携をとれば呂剛虎もたちまち追いつめられるだろう。それは呂剛虎自身も感じてはいた。

なのに、そうはならない。何故だ?

 

 

 

そんな考えが入り交じりながらも、呂剛虎は目の前の月島から目を離すこと無く攻撃をくりだしていく。

 

 

 

 

……が、突如、呂剛虎はかつてない圧に襲われた。

そしてそれは、これまで闘気も感じられなかった月島から溢れ出しているものだと理解する。

 

「すまない、呂剛虎。キミとの遊びはここまでだ」

 

そう悠然と言う月島。だが、呂剛虎はそんな事は知ったことでは無いと言わんばかりに、感じる圧に動じることも無く急接近し、これまで以上の速度で拳を突きたてる。

 

 

 

 

 

その拳は、月島の身体に触れる寸前で止まった。

正確には、呂剛虎の身体自体が何かに縛りつけられたかのように止まってしまったのだ。

 

 

「ぐぅ…!?」

 

呂剛虎は見た。自分の身体に突き刺さるように生えた数枚の()()()のようなものを。

彼の知識からすると、それは『障壁魔法』のように感じられた。ただし、何かを防ぐ壁というよりは、対象をその場に固定するかのようなものであり、『障壁魔法』とは異なるものだとすぐにわかった。

 

 

そして、呂剛虎はすぐに理解した。これは自身の身体をこの場に固定してはいるが、全く動かせなくなるわけでは無いと。

呂剛虎は瞬時に重く感じる腕を動かし、光の板のひとつを掴み、握り潰すように力をこめる。すると「パキリッ」と音を立て、光の板にヒビが入った。さらに力を込めて一歩踏み出そうとすると、また「パキリッ」と音が聞こえた。

 

 

「いける…!」と感じた呂剛虎だったが、その耳に声が聞こえた。

そしてその声から呂剛虎は、ほんの数秒、月島から目を離してしまったことに気がつく。

 

身を捩りながらも眼前を見て…………獣も桜もいつの間にか無くなったこの通りで、大亜連合の兵よりも先……この通りの先にまで月島が行ってしまっていることに気付く。

それと同時に、何故あそこまで離れているのに()()()()()しっかりと聞こえるのか、疑問を……

 

 

 

(にじ)み出す混濁(こんだく)の紋章

 

 

 不遜(ふそん)なる狂気の器

 

 

 ()きあがり・否定し 痺れ・(またた)き 眠りを(さまた)げる

 

 

 爬行(はこう)する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形

 

 

 結合せよ 反発せよ 地に()(おのれ)の無力を知れ

 

 

 破道(はどう)の九十、『黒棺(くろひつぎ)』!』

 

 

 

 

呂剛虎は。

 

大亜連合の兵たちは。

 

その通り一帯は。

 

『黒』に染まった。




月島さん……?
うん、月島さん(モドキ)だと思う。
月島さん(モドキ)だったらいいな…。



『黒棺(モドキ)』のこと、それがどういったものか、周囲の反応等については、次話に詳しく……。
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