魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
日々精進して行きますので、お許しください!!
※注意※
「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
原作と大きく異なる流れがある部分が存在します。
今回は基本的にあずさ視点でのお話で、最後に少しだけ別視点が入ります。
月島さん(モドキ)が恋しくなるのも、月島さんのおかげ。
放課後。
足早に駆けて校門近くまで行くと、そこには小早川先輩と紗耶香ちゃんが待っていた。
「ご、ごめんなさい!ちょっと遅れちゃいました!」
私がそう謝ると、紗耶香ちゃんは微笑みかけ、小早川先輩は首を振った。
「ううん、気にしなくていいよ。あずさちゃんは調べるための時間が必要だったんからね」
「そうさ、それにそこまで待っていない。気にするほどのことじゃないさ。……それで、ちゃんとわかったかい?」
小早川先輩の問いかけに頷く。先輩が言っているのは、当然、月島君の家の場所についてだ。
…ただ、紗耶香ちゃんは少しだけ困ったような顔をしていた。
「……でも、個人情報を手に入れて大丈夫なの?」
「生徒会権限です!……たぶん」
正直なところ、良い事か悪い事かで言うと微妙なところだけど……でも、仕方のないことだと思うし、今更、引く気はありません。
「あっ、その出発する前に、ちょっと二人に聞かないといけないことがあるんですけど……」
私がそう言うと、2人は「何?」と不思議そうに軽く首をかしげてきた。
「調べたところ、登録されていたのは都内の賃貸マンションと、実家の二つだったんですけど……どっちに行きます?」
「それは賃貸マンションのほうじゃないかな?
「……そういえば、『九校戦』の時に会った月島君の後輩の人たちが言ってたけど、月島君って実家には全然帰って無いらしいわ。それに、結構離れてるんでしょう?今から行くのは、難しいんじゃない?」
「そうですね。……それなら、こっちの住所に行きましょう!」
書き留めていた住所を小早川先輩と紗耶香ちゃんに見せると、ふたりはそれに目を通して頷いた。学校からは小一時間ほどでたどり着くだろう。
―――――――――
「ここ……ですか?」
首をかしげて、住所を確かめながら建物へと目を向ける。
「ああ、住所通りならここだろう」
「間違いないと思うわ」
小早川先輩も紗耶香ちゃんも頷いて、その建物を見上げる。
「でも……なんていうか、普通、ですね」
そう、何の変哲も無いマンション。別段、高層建築なわけでもなく、10階にも満たない建物。
あえて特徴を挙げるなら……ちょっと古い……かな?
マンションに対しての私の感想。それを聞いていた小早川先輩はため息交じりに……それでいて苦笑いをしながら私に言ってきた。
「おいおい、あずさちゃん。なんだかんだ言っても彼だって一人の高校生だよ?……というか、一体どういった所に住んでいると想像してたんだい?」
「ええっと、もっとこう……最新鋭って感じの、オシャレなところを」
ああっ、でもよくよく考えると、月島君はいつも本ばっかり読んでるから、その辺りの事を考えると……モダンというか、レトロな建物に住んでそうかも……。
けど、それってどっちにしても、目の前にあるマンションとは随分とイメージが違うわけで……。なんというか、どっちつかずの中途半端な感じな気がする。
「ねぇ、建物の話もいいけど……いい加減、中に入らない?月島君が借りてる部屋って何階にあるんだっけ?」
紗耶香ちゃんにそう言われて、ここに来た目的を改めて思い出す。
そして、月島君が住んでいるはずの……5階へと向かった。
―――――――――
マンションは一昔前のつくりということもあってか、セキュリティはそこまで厳しくなくて、監視カメラなどはあっても誰でも中へと入っていけるようになっていた。
……とは言っても、管理者側もセキュリティに関心が無いわけではないみたいで、途中で換えたのか各部屋の鍵自体はそれなりに新しいそれなりに厳重なものだった。
月島君の借りている部屋の玄関までたどり着いた私達は、そのドアのそばにあるインターホンを押した。
「「「…………」」」
少しの間待ってみたけど、いっこうに内部からの反応は無かった。
……半分予想はしていたけど、ここにはいないのかもしれない。
「どうしようか?中に入って何か手がかりが無いか探るか……それか、今度は休日に実家のほうを訪ねてみるのもありだね」
「鍵を無理矢理こじ開ける……ってわけにもいかないし、ここの管理者の人に事情を話してマスターキーで開けてもらえないか、交渉してみるのはどうかしら?」
小早川先輩に続いて、紗耶香ちゃんがそう提案した。
確かに、管理者の人ならここを開けられるかもしれないし、妥当な選択だろう。
「それじゃあ、1階まで降りて管理人室に行ってみましょう!」
そうして再びエレベーターに乗って1階まで降りた。
「ええっと、管理人室は……」
「何処だろう…?」と、辺りを見渡しながら言おうとしたところで、何か違和感を感じた。
匂い…?
あれ?なんだか立ちくらみが……?
何とか壁に手をついて倒れそうになるのを防いだけど、それでも、まだ何か……
そこで気がついた。立ちくらみなんかじゃなくて、何かによって意識が薄れそうになっているということに。
「これは…?……だい、じょうぶ……か……」
「くっ、いけない……なんだか力、が……」
私だけでなく、小早川先輩と紗耶香ちゃんも同じような症状におちいっているみたいで、なんとか立っているのがやっとの状態みたいだった。それに、今でもどんどん体に力が入らなくなってきてて…………
ついには壁に寄りかかるようになりながら、その場にへたり込んでしまう。
そして、そのまま床に倒れ込んでしまい…………何か音が……あし、おと?
それも一つや二つじゃなくて……もっと…………
―――――――――
……ろ……起きろ、中条。
「はいっ!居眠りなんてしてましぇ……あれ?」
教室じゃない?
ここ、どこだっけ?
そう考えて、辺りを見渡す……その前に、地面に座っている私のそばにいる人に気がついた。
「ひゃぁ!?」
「……状況が状況だけに、仕方ないかもしれないが……顔を見て悲鳴をあげられるのはいささか良い気分はしないのだが」
「す、すすす、すみません!十文字先輩」
そう、そこにいたのは第一高校の先輩であり部活連の前会頭だった十文字克人先輩。
……って、あれ?ここは……マンションの前?
そうだ、月島君の住んでいるところに行って……それで……そうだ!二人は!?
小早川先輩と紗耶香ちゃんを探すために辺りを見渡し……そしてあることに、気がついた。
二人の他に、見覚えの無い人が周りに何人か転がっていたのだ。
そして、その他にも人がいた。その人たちは転がっている人たちを運んでいる。
私がその様子を見ていることに気がついたのか、十文字先輩が口を開いた。
「お前たちをさらおうとした奴らだ。……こいつらについては、こっちで処理する。数少ない情報源だからな」
「さらう……?」
「ああ。……我々もそうだが奴らもここを張っていたようだ。そして、お前たちを月島と繋がりのある人物だと判断して連れ去ろうとしたわけだ」
十文字先輩が話す内容に寒気を感じながらも、私はとっさに問いかけた。
「あ、あの!月島君のこと、何か知ってるんですか!?七草先輩から聞いた話では『十師族』のところにいて……最近、いなくなったって」
それを聞いた十文字先輩は少し目を見開いた後……「何をしているんだ、アイツは…」と呟いてため息をついたかと思うと……
「……このまま帰してもまたうろついて巻き込まれるに決まっている、か。なら、簡単にでも現状を説明すべきか」
そう言った十文字先輩は、チラリと倒れていた小早川先輩と紗耶香ちゃんのほうに目を向けていた。どうやら、二人もちょうど起きたみたいだった。
「全員捕らえたとは思うが……また同じようなことがあっても困るからな。今日は家まで送り届ける。その最中に月島の置かれている状況について説明するとしよう」
―――――――――
結局その後に来た車に、三人まとめて乗せられた私たち。
そして揺れる車の前方部分から十文字先輩の声が聞こえてきた。
「月島の現状については、お前たちが知っている通り「行方不明」という表現で合っている。それ故に教えてやれることは経緯だけだ。……わかっていると思うが、当然他言しないようにしてくれ」
私たちが頷くと、それを確認してか十文字先輩が語りだした。
「まず、月島は多方面から狙われているということから話そう。目を付けられていたのは前々からだろうが……『横浜事変』でそれは明確になった。特に、日本では失われた魔法である『化成体』、そして「詠唱」による魔法の行使。魔法そのものの威力も含め、月島の持つ能力は古式魔法を扱う者たちの目にとまった」
そう言われて思い出す。
話によれば、青白い獣は横浜の各地に複数体発生したそうだ。その数を離れたところから一人で制御していたとすれば凄いことだと思う。
それにあの『黒棺』という魔法。離れていても感じられた圧は、他の魔法とは違う凄いものだとはなんとなくだったけどわかっていた。……その少し後に海の先で見えた光も凄いものだったけど……それとは根本的に何かが違うように感じられた。
「他にも、桜の花弁のようなものを扱う魔法に関して言えば、『群体制御魔法』を使う、師補十八家の一角『
「どういう、ことでしょうか?」
「月島本人、そしてその周りを探って周る者が大量に出た。これに一役買ってしまったのが『灼熱のハロウィン』だ。周りから『戦略級魔法』と推測されたアレも月島によるものではないかと考えた組織もいるようだ。……実際は、あの時すでに月島は『十師族』のもとにいたから、違うのだがな」
「『十師族』のもとにいた…?それって、どの勢力よりも先に『十師族』が月島君を確保したってことかい?」
「半分正解といったところだ。月島と『十師族』とには『九校戦』後すぐに薄くではあるが繋がりがあったからな……というよりも、実際にはその繋がりを使って月島が「少し協力をしてくれないか?」と『十師族』全体に伝えたことが始まりだ」
小早川先輩の質問にそう答える十文字先輩。
月島君が『九校戦』の後に『十師族』と繋がりを持ったことに私は少し驚いたけど……そういえばコンペティションの時に七草先輩の妹の一人がやけに月島君になついていたことを思い出して、なんとなくだけど納得することが出来た。
「「協力」の内容は単純で、月島の実家の両親および周辺の関係者の身の安全を守ってやってほしいというものだ。月島を狙った組織の中には月島の家系そのものに何かあると踏んで手を出してくるものもいたから、その判断は正しかったわけだが……その「協力」の見返りとして月島は『十師族』のもとに身を預けた」
そして、十文字先輩は「ただ……」と付け加えた。
「『十師族』と一纏めにはしているが、他勢力に月島を盗られないためと一応は協力関係にあるとはいえ、もちろん一枚岩ではない。
『十師族』が魔法師の中でも強い家系であることを知っているため、私も、他の二人も、月島君がそこまでの存在であることに驚く。
「そしてその途中……月島は忽然と姿を消した。『二木家』の屋敷でな。『二木家』は「月島を消しにかかったのではないか」などと非難されはしたが、屋敷を調べても何も出てこないことから月島の行方は、三つの可能性にわかれた」
一度、息をためるかのように間を開けた十文字先輩が、改めて声を出す。
「ひとつ目は、これまでに挙げた勢力による拉致。ふたつ目は、それらとは別の組織による拉致……これは、これまで補足出来ていた勢力が未だに月島を探しているような動きをしていたために挙がった可能性だ」
「そして最後は……」と十文字先輩は言葉を続けようとしたけど……なんとなくわかった気がした。
「月島による単独行動。これは、『二木家』の屋敷に襲撃・戦闘の痕跡が全く無かったことから考えられる可能性だ。……ただ、月島が姿を消してから幾らか時間が経っても尻尾もつかめないことを考えると……もしかしたら、外部に月島の協力者がいるのかもしれないな」
―――――――――
同時刻。
月島はとある邸宅にいた。
相対するのは、一人の人物。
その人物に対して月島はいつもの調子で言葉を投げかけた。
「久しぶり……。今日はあの双子はいないのかな?」
「あの子たちなら、アナタの捜索の手伝いとして出ているわ。ご存知でなくて?」
「初耳だよ……そうかい、それは少し残念だけど……そうだね、
そう言って月島はニッコリと笑った。
「ねぇ?