魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

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※書くべき事、書きたいこと、沢山ありますが本編よりもながくなりそうなので省略させていただきます。……お待たせしました!※


前回投稿から約半年。プロットを本気で考え始めて約4か月。今回のお話を書き始めて約1ッか月。……謎の上に謎を重ね塗りしたような物になりましたが、何とか形になりました。

恥ずかしながら生きてました! 別に、本当に「月島さんのおかげ」な『BLEACH』を書いていたわけじゃありません。……生きるために色々と大変だっただけです。これまでのを読み返して「こんな意味深にしてどうする気なの?」とか「伏線とかフラグとか回収できるか?」とか自分で自分にツッコミを入れてスランプ担っていたのも事実ですけども。


今後の予定ですが、プロットではあと8~9話で完結ということにしました。
誠に勝手な決定ではありますが、今までの伏線・フラグを回収していって終わらせていくというのが、今後の流れになっていくと思います。
……ただ、今回のお話でも伏線・フラグそして謎が容赦なく増えていますので、予定道理になるかは作者自身もわかりません。
何も回収しないまま放置して終わり……なんてことにならないよう頑張りたいと思います。



※注意※
「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
原作と大きく異なる流れがある部分が存在します。


失踪中も、いくつものUAや感想をもらえたのも、間違いなく月島さんのおかげ。


月島代行消失編-4:月と夜

 

 

とある屋敷……四葉の屋敷と呼ばれるこの建物の一室。

その部屋は他の部屋とは多少作りが異なっており、建物から飛び出す形でつくられた空間は、ガラスによって仕切られている。

ガラスの向こうには、この屋敷の庭が広がっていた。

 

 

その部屋にいるのは、二人の人物。

 

一人は、ガラス張りの空間に置かれているティーテーブルそばのイスに腰かけ夕日を浴び、その白い肌が(しゅ)に染まったように見える女性。この屋敷並びにこの部屋の主であり、『十師族』の一角『四葉家』の現当主である四葉(よつば)真夜(まや)

 

そしてもう一人は、ティーテーブルからは離れた位置……差し込む夕日からは外れていて暗くなっているこの部屋の中央付近。そこに向かい合わせに配置されているいくつかのソファのひとつに悠然と座る青年。『横浜事変』後、『十師族』に身を預けていたにも関わらず滞在していた『二木家』から忽然(こつぜん)と姿を消していた月島(つきしま)昊九郎(こうくろう)

 

二人は、特別近寄ったりすることも無く、それぞれその場所で顔のみを少しだけ相手に向けて目を合わせていた。

 

 

四葉真夜と月島昊九郎。この二人、実のところこうして相見(あいまみ)えるのは今回が初めてというわけでは無い。つい四ヶ月ほど前、世間の学生が夏休みだった時期に、月島が『十師族』の面々の家を訪問した出来事。『四葉家』への訪問の際に会ったのが二人の初めての会合、その時も今と同じ部屋で顔を合わせたのだ。

 

ただし、前回と今回では異なっている点がいくつかある。

 

まず時間帯。前回が昼過ぎのお茶の時間だったのに対し、今回は夕日の輝く夕暮れだということ。

次に部屋にいる人数。前回は二人の他に、『四葉家』の筆頭執事であり真夜の世話なども行っている葉山(はやま)と月島を連れてきて案内した『四葉家』の分家である『黒羽家』の双子がいたのだが、今回この部屋にいるのは本当に真夜と月島だけであること。

最後に……前回が両者の都合を合わせた会合であったのに対し、今回は()()()()()()()()()だということ。

 

それ以外は特別変わっている様子は無さそうに見える。そう、()()()()()()

特に殺気立っていたりせず、二人(そろ)って口元()()()うっすらと笑みを浮かべている。二人の事を知る人物……例えば、どこぞの劣等生(お兄様)が今の二人の顔を見たとすれば「いつも通りだな」といった感想をこぼしたことだろう。

 

 

 

互いに自然体でありながら(みょう)な静寂に満たされている室内。そんな空気の中で先に口を切ったのは真夜だった。

 

「紅茶をご用意させましょうか?お好きでしょう?」

 

紅を塗ってある口が()をえがく妖艶(ようえん)とも表現できる笑みをうかべ、真夜は月島へと問いかけた。

対する月島も笑みをうかべたままであった。ただ、その表情で口から出てきたのは拒否であったのだが……。

 

「お気遣(きづか)い無く。……というより、ここに来る前葉山さんに()()()()()()()()()()()()()()、「二人っきりでじっくりと話したいから、紅茶もいらない」ってね。(こころよ)承諾(しょうだく)してくれたよ」

 

軽く首を振りながらそう言った月島。彼はそのまま上体を前に倒し、両肘(りょうひじ)を肩幅ほどに開かれた(ひざ)にそれぞれ乗せ、手では指を組んだ。そして短い溜息を吐くとその体勢のまま首をすくめてみせた。

 

「もちろん、前回()れて貰った紅茶が口に合わなかったとか、そういうわけじゃない。むしろ飲めないのが残念なくらいだよ。仕方の無いことだとわかっていても、ね」

 

「そうでしたか。でも、遠慮はなさらなくて良いのですよ?」

 

(かさ)(がさ)ね、お気遣いをどうも……。ご心配無く。喉を(うるお)しておかずとも、僕は口は回るほうだから」

 

再度(すす)めてきた真夜に、月島も繰り返し断る。

が、口調だけは実に……実に()しそうに思えるものとなっており、「けど……」と言葉を続けた。

 

 

「できることなら、休息として紅茶を飲みながらゆっくりしたいものだね。『大亜連合』との講和条約締結の交渉の場に護衛という建前で『五輪(いつわ)家』の御令嬢に同行したり、それ以降も捕虜(ほりょ)の返還に度々(たびたび)付き合わされたり、それが終わったかと思えば『十師族』の家々をたらい回しされる日々の再開。……精神的にも肉体的にも疲れたよ」

 

心底そう思っているのだろう。月島は「やれやれ」と疲れた様子で首を振っている。

そんな月島をジッと見つめていた真夜だったが、ふいに小首をかしげるように頭をわずかに傾け、その状態でニッコリと微笑んで。

 

「でしたら、本当に休まれては?幸い……と言って良いかはわかりませんが、月島さんは今、雲隠れしている状態でこれまでにないくらい自由な状況です。それに、そもそもアナタが休まれることを()(とが)めることが出来る人物はいないでしょう?」

 

「そういうわけにもいかないさ。僕としては『十師族』の相手は「大事の前の小事」……というより、()()()()()()()()()()()()なんだ。そんなことのためにこれ以上無駄に時間を(つい)やすのは、他でもない月島さん(ぼく)が許せないんだ。これ以上は今後の予定に響いてしまうからね」

 

「あらそう。……この魔法師業界で『十師族』をそのような扱いにする人はそうそういませんよ?流石(さすが)、と言うべきかしら?」

 

月島の『四葉家』を含めた『十師族』を軽視するような発言に対しても、真夜は口元の笑みを()やすこと無く、その表情を月島に向け続けていた。

それを見ようともせず、月島は相変わらずの口元だけの笑みのまま真夜に言葉を返す。

 

「お世辞(せじ)をどうも。けど、そういう人間が()()()()()から僕が苦労しなきゃならなくなるんだよ。本当に嫌になるね…………いや、そうじゃないな」

 

 

途中、不意に言葉を止めた月島。虚空を見つめ眉間に(しわ)を寄せ、左手を自身の(あご)にあて……一度(うなづ)くとその手をソファの背もたれに置いた。そしてその手で支えるように腕を伸ばしてゆき身体を押し上げるようにして立ち上がった。

 

立ち上がった月島は、真夜のいるティーテーブルのほうへと歩いて行き……真夜がいる場所とは対面に当たる場所のイスを()()()()、夕暮れの庭が見えるガラス張りの空間の一角、そのガラスの一面にペタリと右手で触れた。

 

月島の視線は赤く染まった庭に向けられているのだが、真夜の位置からは横顔はおろか側頭部くらいしか見えないため、月島の表情を正確に確認することはかなわなかった。ましてやその行動の意図を察するなど到底できるものではなかった。

ただ……ガラスにわずかにだけ映りこんでいる像から、月島の口元から笑みが消えたことを真夜は知ることができた。

 

「僕が嫌になっているのは特定の個人や団体にじゃない。この世界の在り方や魔法師社会そのものに対してだ。……(かな)うのであれば、昔のように良い意味で馬鹿な連中と面白おかしく日々を過ごしたいものだよ」

 

「無理なお話ね。日本中の魔法師が……いいえ、世界中の魔法師がアナタの能力(ちから)に目をつけてます。それに、仮にその能力を失い魔法師として生きていけなくなったとしても、「才能(さいのう)(あふ)れる血統(けっとう)」として魔法師社会はアナタを逃さないでしょう」

 

 

 

()()()()。その結論を導き出してから何度後悔したかな……自分の思慮の浅さに涙が出そうだよ」

 

真夜の方へと振り返り、自嘲気味に笑う月島。

とはいっても、言葉による追い討ちや(なぐさ)めを期待しているわけでもないようで、月島は真夜の反応を確認することもしていなかった。そして、振り返ったその動きの流れのまま元いたソファまでゆっくりと歩いて行く。

 

「……()()

 

ソファの前まで来てそのまま座るかと思われたが、月島は真夜に背を向けたままピタリと立ち止まった。

そして右足を(じく)にして半回転し、月島は再び真夜の方へと向きなおり、大仰(おおぎょう)な動作で両腕を広げる。

 

「それと同時に、僕は別の答えを得たよ。なに、単純なものさ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

数秒前まで月島の顔にあった自嘲的な笑みは、いつの間にか穏やかなものに変わり、ここで初めて月島の目元にも「笑み」ととれる(ゆが)みが(しょう)じた。

また、その喋りにも変化がみられてきており、わずかにだが段々と口調が早く強くなりだしている。

 

「魔法師の歴史も、今の魔法師社会も、『()()()、知れば知っていくほど嫌になってくる……けど、そこで終らせたらいけなかったんだ。僕に足りなかったのは、ただ『現実』を『理想』に近づける努力をする……そんな人間として当たり前のことをすることをさ」

 

そこまで言って月島は一つ息を吐く。

そして、広げていた両腕を……これまた芝居(しばい)がかった仕草で動かし、左手を自身の胸に、右手を真夜の方へと差し出した。

 

 

 

「四葉真夜。この世界を()()()()()()()にしてみたくはないかい?」

 

 

 

「……アナタの理想が私の理想と同じだとお思いで?」

 

「ああ、もちろん。『四葉家』が『触れてはならない者たち(アンタッチャブル)』と呼ばれるようになった所以(ゆえん)たる()()()()()。それを知る面々の中でも、その中心にいたキミと四葉(よつば)……司波深夜(みや)であれば…」

 

 

月島の言葉が止まった。

 

 

いや、止めざるをえなかったと言ったほうがいいのかもしれない。

魔法師であれば、女性であろうと子供であろうと実力がものを言う……世界に存在する『戦略級魔法師』の中にどういった人物がいるかもわからないのであればなおさらだ。

そう……魔法師社会で、外見だけで判断することは危険である。

 

月島の視線の先にいる四葉真夜も同じだ。

十人中十人が「美人」と答えるであろう、その実年齢とはかけ離れた美貌。だが、忘れることなかれ、()()『四葉』の当主である彼女は「世界最強の魔法師」と呼ばれることもある存在。

 

そんな彼女が、もしその気になれば……。

 

 

とは言っても、月島が自身の言葉を途切れさせたのは、真夜が何かしらの攻撃をしてきたからではない。

ただ、感じ取っただけだった。真夜から漏れ出したわずかな敵意を。そして()()()()()()()()()

 

 

これまで、芝居がかった仕草をしていた両手とその肩を力無くガクンっと落した月島は、これでもかというくらい大きなため息を吐いた。そして……

 

「やめだ。キミは月島さんの隣に立つに値しない……さっきの言葉に、今の反応じゃね」

 

これまでとは打って変わって、月島は表情を消し、真夜に吐き捨てるように言い放った。

対する真夜も、これまでは感じさせなかったプレッシャーを明確に発している。

 

「あら、お話はお止めになるのかしら?それはとても残念なことで……できるなら、もう少しだけでも聞かせていただきたかったのですが」

 

「無茶を言わないでくれるかな?()()()()()()()()と思ったことに時間を()けるほど暇じゃないことはわかってるだろう?……こんなことなら、()()()ここまで来た方法のことでキミを揺さぶって遊んだほうが有意義だったろうね。」

 

その言葉に真夜はわずかに眉を動かした。

それもそのはず。突然の月島の訪問の際から真夜は顔には出さなかったが疑問に思っていたことがある。

そもそも四葉の縁者以外その所在を知る者はほとんどいない……しかも様々な細工があり手順を必要とする「とある地域」の『四葉の本家(ここ)』に来ることなど本来ならばできるはずがないのだ。だというのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もちろん、前回とは違って誰の案内も無しに……。

 

 

 

 

 

「結局、僕には『ブック・オブ・ジ・エンド』しかない……ってことかな?」

 

月島の右手には、いつの間にか『刀』が握られていた。

真夜は目を細めてその『刀』を見つめ……そして、ゆっくりと立ち上がった。

 

「ブック・オブ・ジ・エンド。それが()()()()()()』……」

 

「おや、どこかで見られてたのかい? 『横浜事変』の時かな……? でも、()()言っている時点で……その程度じゃあダメなんだよ。キミたちぐらいは楽しませてくれると思ってたんだけど……どうやら過大評価だったようだ」

 

『ブック・オブ・ジ・エンド』の切っ先を数メートル先の真夜に向けながら月島は言い放ち……そして、思い出したかのように口元だけに笑みをうかべた。

 

 

「……ああ、そうそう。さっき言った「ここまで来た方法」なんだけど……こっちの勝手で急な訪問をしてしまったことへの迷惑料として教えてあげるよ。「()()()()()()()()()()()()()()()()」だ。……この意味、わかるかい?」

 

その月島の問いかけに、真夜が()()で答えることは無かった。

しかし、代わりにと言わんばかりに、真夜の背後から『闇』とその中できらめく『光』の点が、まるで溢れ出すかのように広がった。

 

 

「『流星群(ミーティア・ライン)』。「夜」とも呼ばれる、キミのお得意の魔法だったかな? ……けど、この「夜」には決定的に足りていないものがあると思うんだけど」

 

「あら、そうでもありませんよ? まあ、今から()()()しまいますが」

 

「……ああ、なるほど。中々面白いことを言うね、キミは」

 

口元に笑みを浮かべる真夜。それに答えるように自身の口元も歪める月島。

そして…………

 

 

 

 

 

「星が廻ろうと、月を貫くことは無い。そんな幻想を見るのは、愚かにも喉元をさらし月を見上げ吠える、地に生きる獣だけだ。……そのさらした(くび)を僕が獲ってあげよう」

 

 

流星群(幾線もの光)』が闇を裂き、駆け、その中の一つが月島の持つ『刀』へと吸い込まれるように流れ、刀身へ触れる。

 

 

 

 

 

屋敷の外に見えていた燃えるように赤い空は、いつの間にか藍色のグラデーションに染まっていて、その中で一番星と月が輝きはじめていた。

 


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