魔法科高校の月島さん(モドキ) 作:すしがわら
「独自解釈」「捏造設定」「ご都合主義」「原作改変」等が多々含まれています!
原作と大きく異なる流れがある部分が存在します。細かい点や話の流れも、諸々の事情により変更されている部分があります。ご了承ください。
不定期更新です。
今回は達也視点です。
BLEACHのイベントが決定したのも、月島さんのおかげ。
それは、雫の誘いによって友人一同が北山家の別荘に集まった数日間の夏の思い出。
そのうちの初日の真夜中のことだった。
―――――――――
「…けど、僕は思う。
「それこそ魔法みたいに体系化したり……もっと言うなれば全人類が使えるようにするのが僕の理想…というか、妄想かな? 皆が異能になってしまえば、それが普通になって特別な人なんていなくなるわけだからね」
『
そう月島が名付けたソレが、もし本当に世界に広がるとしたら――
仮に、月島ほどの扱いができなかったとしても、
月島本人は、魔法師への偏見や差別を失くすための一つの手段として考えているのだろうが、実際は全く異なる事態を引き起こすだろうことは想像に容易い。
魔法師を毛嫌いする者達の先兵として魔法師と対立させられたり、今の地位を脅かされるor不都合があると考え魔法師側からも敵視されたり……むしろ、争いの種となってしまうだろう。
そんなことを想像できないほど、月島は夢見がちな馬鹿ではないと……少なくとも、俺はそう思っていた。
月島による『
さきの集まりの内容が内容なだけあり――特に月島のいる男子のほうは――皆の間で会話は自然と少なくなっていた。
そんな中でも、時間が経つにつれて一人、また一人と眠りに落ちていく。
『眼』を用いて深雪のいる女子部屋の方にも異常が無いことを確認しながら、俺は寝たふりをしながら月島を注視していた。
寝ずに一晩監視することも考えた。だが、このタイミングで急に動きだすとは思えないのも事実。
最低限の休憩は取りながらも、少なくとも深雪と自分は被害を受けないように立ち回れるようにしよう……その程度の考えだった。
自分以外、完全に寝静まった真夜中。
そう、思っていた。
だが、不意に寝ていたはずの月島が、音も無く立ち上がり部屋を出た。まるで幽霊のような、あまりの静けさに寝入っているレオや幹比古は全く察していない。
俺はと言えば、月島の動き出した時、すぐに動けるように横になっていながらも身体をわずかに動かし、身構えていた。だが、コチラから動くことは現時点では無い。当然のことではあるが、ただの単なる排泄の可能性もあるからだ。
『眼』でもって、扉や壁を越えた先にいる月島の動きを追跡する。
深雪のいる女子たちの寝室方面には行っていないことは、扉から出てすぐの歩き出した方向から分かっていた。だが、月島が向かって行ったのはトイレのある方でもなかった。
単純明快。
別荘から出てすぐに見える、波が静かに打寄せる砂浜。日中俺たちが遊び回った海へと、迷いも無く静かな足取りで向かって行っていたのだ。
何故? 夜の砂浜を散歩したかった? 夢遊病?
あるいは、外部の誰かとの連絡のため? 家族とかならいいが、何者かを引き入れるための工作の可能性も……流石に考え過ぎか?
そんな考えが頭をよぎりながらも、歩く月島とその周囲に異常や部外者が居ないか
そんな最中――――
ずっと注視していたはずだった。
にも関わらず、月島の姿が消えた――急に疾走したり、飛び跳ねたりして眼で追えなかったなどというわけでも無く、
驚きながらも『眼』で月島が消えた地点の周囲を注視する。
砂浜に残された足跡も特別踏み込んだ様子も、強い衝撃で砂が散った様子も無い。ならば、と魔法を使った残滓が無いかと視てみたが、やはりと言うべきか何も残されていない。
もちろん、深雪の方に異常が無いことは既に確認済みで、ついでに俺のいる男子部屋でも変わった様子は見られない。
内心で舌打ちをし、俺は動き出す。
月島と同じように、音を立てずに、誰にも悟られないように部屋を――別荘を出て砂浜へ。
身を隠すことも考えたが、月島が消えた地点は砂浜の中央。別荘近くは建物やその一部で隠れることはできるが、別荘から離れてしまえば隠れようが無い。
だからこそ月島が姿を消したことが不可解であり、それを少しでも探るためにも『眼』だけでなく直にその場へと足を運んだのだ。
それこそ、『
「来てくれて良かったよ」
何も無い。
そう思っていた、月島の足跡が消えたその一歩先。
俺の視線の先から聞こえた、月島の声。
星と月の光が照らし出す、砂浜と海、水平線と夜空が混ざる宵闇。
その空間が
虚空から出てきた指が、五指が、手が、腕が――横に振るわれて空間が裂ける。
その裂けた部分が広がり、虚空に存在しないはずの無の空間から月島が現れた。
「あんな話の後なら警戒して当然。探らないわけにはいかないから姿を消せば
だから、来てくれてよかった。
そう呟いた月島は、いつもの微笑を浮かべる。
CADを持ってすらいない。
『
纏う空気も至って穏やかで、敵意は無く、イタズラに成功した程度に感じる。
だが、
なんとなくではなく、確信を持ってのような発言。『
「達也、取引の提案だ」
「どういうことだ?」
「前々から考えてはいたんだけどね、今が一番いいだろうって思ってさ」
何故今が良いのか。
時期か、場所か、あるいは俺の知らない何かか。
俺が問い質す前に、月島が口を開いた。
「達也と深雪は、四葉でどういう立場でいるのが理想なのかな?」
俺たちが四葉の家の者である。
「何を言ってるんだ、月島?」
俺と深雪の平穏を崩す『精霊の眼』以上のシークレットを言い放った月島に、一瞬の間で考えを巡らせる。
そのことを知っている人物がいないわけではない。限られてはいるが、何処からか
そんな俺の思考をよそに、月島は普段と変わらない飄々とした態度で言葉を返してきた。
「そんな嘘はつかなくていいよ。そうだなぁ……腹の探り合いなんて非効率的なことをする気も無いから、素直に話すだけでいいから」
確信めいて言って月島は「あぁそうだ」と、今思いついたかのような呟きをして自身のポケットから何かを取り出してくる。
もちろん俺はわずかに身構え、警戒をするのだが……月島が取り出したのは、ヤツがいつも使っている
「さっき話した「
まるで栞を見せびらかすように、こちらに示し出す月島。
次の瞬間。
その月島の手の中で、栞が
「!?」
いや! 間違いなく栞なのだと俺の眼は言っている。だが、どう見ても月島の握るソレは栞ではなく刀なのだ。
「『
月島の語るソレが、目の前で栞が刀に変わった理由なんだろう。
ということは、固有の能力というのもソレには存在するのか……!?
俺の思考を肯定するように、月島が頷き言葉を続けた。
「そう、そしてこれが僕の『ブック・オブ・ジ・エンド』。斬った対象の過去に僕を挟み込む――そして、それは現在に還元される」
そう言った月島がその手に持つ刀で自身の足元を斬りつける。
すると、砂の城が
つまり、これは――――
「ここまで言えば、頭の良い達也なら解るだろう? 嘘で事実を隠そうとしても、意味が無いって。なぜなら、達也が隠そうとしたところで僕はすでに知っているんだから」
――――過去で
そして、おそらく月島自身はそのどちらも認識している。
つまり、月島は……斬った対象の過去を知ると同時に、その過去を変えてしまうことができるわけだ。
……規格外、というほかない。
そして、そんな規格外個の存在として不確かな砂浜というモノにも挟むことが出来る程度には融通の利く能力なのだ。とすると、物に出来て、人に出来ない理由が見当たらない。
つまり、月島が俺の『精霊の眼』や四葉の事を知っていたのは――
「そのことを知っている人物や、知ることが出来る場所にお前が挟まれたからか」
「流石は達也、そこまで理解してくれるか」
満足げな月島だが、実のところ俺は理解が及んでいない部分がある。
何故、そんな重要で秘匿すべき能力を語るのか? どう考えても、危険視されるし、警戒度を跳ね上げるに決まっているというのに……しかも、その能力を知れば、そのほとんどが月島に対して疑心を抱くことになり、立場も危ぶまれるだろう。
そして、それが先ほど言っていた取引にどう関わってくるのか?
「……それで? お前の言う取引というのは何の事なんだ?」
「さっき言った通りだよ。僕から提供できるのは、君や深雪の望む地位や立ち位置。逆に、僕が望むのは達也が僕と敵対しないこと。もちろん僕の方から二人に手を出すことは絶対にしないよ」
「何?」
「そのためなら、こっちからの情報提供だっていくらでも協力するさ」
月島の発言に俺は眉を顰める。
月島の言う取引の提供するモノが実現可能なのか疑問視しているわけではない。そもそもの月島の実力に加え、『
それにしても、事前に『
……いや、待て。
月島が自身の持つ異能について相談してきたきっかけは、自分の事を探っている俺に対して「知りたいことがあるなら聞いてくれ、何でも答えるから」なんてこと言い出したあの時だ。
コイツ、取引とか言いながら、ノーガードで正面からくることしかしないのか……?
だが、俺からしては好都合ではある。
取引を受けるかは置いといて、ここまで来たのなら遠慮すること無く根掘り葉掘り聞いてしまうだけだ。
「まず答えてもらう」
「うん、なんだい?」
「お前の目的はなんだ?」
「魔法界の変革かな。日本だけじゃなく、ゆくゆくは世界規模で。本当はそこまでするつもりは無かったんだけど……十師族に挟んでいく中で色々と知ったからね。放っておくわけにもいかなくてさ」
「色々」というものに思うところが無いわけじゃあない。だが、それとは別に分かったこともあった。
四葉家は月島の手に堕ちている。俺のあれこれを知ったのは、そこで過去を知ったためだろう。おそらく、他の十師族も同様に月島の手が入っている。
思っていた以上に、もう済んでいるんだろうな。
となると……
「さっき言った「挟む」というのは、解除ができるのか?」
「もちろん出来るよ。方法は二つ……もう一度斬るか、僕が死ぬかだ」
核心であろう部分への問い、しかし月島は気にした様子も無く答えてきた。
そして、月島は刀を砂の城へ刺してみせた。
すると、砂の城はたちまち形を保てなくなり崩れ――俺の眼では、『
この現象には見覚えがある。
ブランシュ事件にて、月島が侵襲者を撃退した図書館や倒れた侵入者にも同様のノイズがみられた。ということは、彼らにも何かを挟み、解除したということか。
……だが、それはそれとして、先ほどの発言にはどうにも腑に落ちない点もある。
「死ぬと解除? 何故そんなことが分かる?」
魔法での偽装のように発動させ続けているなら使用者が死ぬと解除されるのも理解できる。
だが、対象の過去の改変が発動させ続けているものだとしたら、魔法と『
だというのに、使用者が死ぬと解除されると言い切れるのか。
他でもない、月島は今ここに生きているというのに。
おぼろげながらに
「いたからだよ、僕以外に『ブック・オブ・ジ・エンド』の担い手である月島さんが。最も、正確に言うと『
俺が考えていた
だが、新たな疑問も。
月島が知れて、何故他の誰もが『完現術』やその使い手を知らないのか? もし、そんな奴がいたなら何かしら記録でも残って……いや、それも消える範囲にあったのか? はたまた、ごく狭い範囲でしか活動していなかったのか……。
あるいは、『
そして、どうやらその人物も「月島さん」と言うらしい……なおのこと、家系か何かの遺伝の可能性が高くなったな。
もうひとつ、分かったことがある。
「月島、もう一つ聞いても良いか?」
「もちろん、いくらでもいいよ」
「
「――ああ、そうだよ」
月島は、後の桐原先輩との試合で光学魔法を用いた幻影と取り入れた剣術で勝利しており、それと同様の戦闘法で壬生先輩にも勝っていたと聞いていた。
だが、俺はそれにはどうにも疑問があった。
というのも、その数日前にエリカと試合をしているのを見ていたため、どう見積もっても月島が剣道では有数の実力者であった壬生先輩に勝つのは厳しいと感じていたからだ。もちろん、魔法の扱いに関しても干渉力は高かったものの実戦経験は無く素人に毛が生えた程度であり、魔法で上回ったのも無理だろうと思っていた。事実として勝ったようではあったが、どう考えても数日で鍛え力を付けたとも思えなかった。
しかし、そもそも前提が違っていたのだ。
月島には『
だから、月島は壬生先輩に勝て、勝てるほどの実力も持てていて、後の試験で筆記だけでなく実技においても他を圧倒する実力を見せることができたのだ。
それだけじゃない。
それ以上に重要なのは、言い淀んだり、言い訳したり、隠そうとせずに一瞬の間をおいて月島が返答したこと。そして、そのわずかな表情の変化だ。
おそらく、月島は
同時に、
全員に対してでは無い。敵は敵だろうし、挟むことを忌避するならそもそも壬生先輩は挟まれていないだろう。
だが、それまで縁も関わりもほとんど無い壬生先輩に対して、ブランシュ事件以降は友好的であった。それに、剣道部に入部した理由が壬生先輩以外には無いのだ。
おそらくは、挟み込んだ内容、その過去の時間の長さが関係している。
当然と言えば、当然か。
月島に対して友好的な印象を覚えるような過去を挟まれた壬生先輩。それと同様の過去が月島自身の中にも存在するようになったのだ、影響が無い方が難しいだろう。それ以上に重要なのが、月島は挟んだ分だけ過去を持ってしまうこと。挟む前はもちろん、それ以外の挟んだ過去も解除するまでは過去として有り続けているはず、下手をすれば混同してしまうのかもしれない。いや、
仮にも友人関係とはいえ、今まで以上に月島が俺に対して無警戒で馴れ馴れしさを感じる気がするのも、おそらく俺の事を色々と知る過程で挟んだ過去によって、俺の中の認識以上に月島にとって司波達也という存在が近い存在となってしまっているんだろう。
月島は、挟み込みの現状への反映を「過去から情報を知ることができる」といった便利機能のように語っていたが、そんな単純でもなくリスクも存在するようだ。
それでも自分を保てているのは、月島の精神的な強さか、あるいは何かしらの芯があるのか……はたまた、俺が知らない何かがまだあるのか……。
「今日、
「いいや、いないよ」
だろうな。
挟んだことに後ろめたさを感じ、情に厚くなる月島のことだ。友人関係を築いた相手に挟めるはずがない。
第一、挟むことに躊躇が無いなら、こんなリスクの高い取引なんてせずに俺に挟み込もうとしてくる。その方が、何倍も効率的で的確なんだからな。
「他に何か聞きたいことはあるかい?」
「そうだな――――」
その後、他にもいくつかの質問を繰り返し行った。月島自身のことや、過去の「月島さん」とやらのこと、そして月島が目指している世界の構想について。
そのどれに対しても、月島は即座に返答し、情報を出し渋ったりすることも誤魔化しも無く実直な対応だった。
正直に言うと、疑ってかかることが馬鹿らしくなるほどだった。
信用はできる。そして、俺や深雪の将来にとって――魔法師にとって有益な存在であることも改めてわかった。
だが、逆に心配になったのは、悪人に挟み込んだ結果影響を受けてしまわないかという点。まぁ、そう言った意味でも監視を離すわけにはいかないのは今までと変わらないだろう。必要とあれば、
だから――――
「月島」
「ん?」
「お前の取引を受ける――が、まだ保留だ」
俺の答えに、月島は小さく首をかしげる。
「お前の理想やその実現に疑問を持っているわけじゃあない。だが、深雪の将来は今ここで俺が決定するわけにもいかない」
「じゃあ、深雪も交えてこのことを話すかい?」
それは無い。
特異性があるとはいえ、月島とは間違いなく真っ当に友人関係を築いてきた。そんな相手を理由があったとしても消すことを深雪に背負わせるつもりは無い。やるとすれば、深雪の知らないところで察されること無く、別の理由で姿を消したことになるようにして、だ。
もちろん、そんな内心を月島にも率直に言ってしまうつもりは無い。
「まだ深雪は自分のしたいことや四葉のことも決めきれるほどには学びも経験も詰めていない。こちらから道を示すことも出来なくはないが、できれば自分で選んで欲しい。だから――俺とお前との間だけ。お前が深雪を害さない限り、俺もお前には手を出さない」
俺の言葉に、「十分だよ」と満足げにする月島。
「それと、改革はするにしてももう少し時間をかけてやっていけ。急だとおのずと反発も大きくなる。代わりにと言ってはなんだが、可能な範囲ではお前に協力してやる。害があるなら、迷いなく切り捨てるがな」
「――いいよ。そうじゃなきゃ、達也らしくもない。これで僕らは協力者だ」
俺も嘘を言ったわけじゃない、だましていないわけでも無い。
だが、それでいい。深雪のために利用できるなら利用して、危険ならば俺が対処する。そう、ある意味でこれまで通りなだけだ。
それはそれとして、思い返してみれば月島はやはりと言うか、
俺の注意を引き、説得材料と取引のためとはいえ、『
月島本人は何も気にした様子は無いが……まずはそこをフォローしてやるとするか。
―――――――――
「そもそも今回の件は不可解な点が多い。故に、月島が何処までが本心なのかが不明瞭だ」
「それに一番の謎は、「なんであんな「目的」まで俺たちに話したのか?」なんだ」
「……俺たちがこうして月島と距離を取ること自体が、月島の狙いなのかもしれない」