魔法科高校の月島さん(モドキ)   作:すしがわら

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今回で入学編は終了、謎を残しつつも一区切りがつきます。

これまでの投稿している分の修正等が必要となったため、これから次の投稿までこれまでより期間が空いてしまうと思います。
申し訳ありませんが、ご了承ください。



入学編を無事終えることができたのも、月島さんのおかげ。


入学編-8:後日談

…さて、僕が図書館でテロリストたちを『ブック・オブ・ジ・エンド』の実験台とした後の事を少し話そうか。

 

 

テロリストたちを縛り上げた後、待ち伏せ組三人の中にいた男子生徒と壬生先輩を保健室まで運ぼうとしたちょうどその時に、達也と深雪さんとエリカが図書館にやってきた。女子二人は驚いていたが、達也は「なるほど、お前だったのか」と何やら納得した様子だった。

彼らが来た時間的に考えて、おそらくは『精霊の眼(エレメンタル・サイト)』で縛り上げているのが見えていたのだろう。

 

色々と聞きたそうにしていたがそれを半ば無理矢理抑えこんだ後、達也たちに手伝って貰い、壬生先輩たちを保健室まで運びこんだ。

そして僕は「さっき図書館に置いてきた奴らが気になるから」と保健室を抜け出した。それによって僕は、利点の少ないブランシュ日本支部拠点への突入メンバーに参加することを避けた。

 

 

その後だが、何の問題も無く達也たちがブランシュ日本支部を壊滅させたようで、僕はそのことを無事に帰ってきた達也本人から聞いた。

 

他に、その日のうちにあったことといえば、風紀委員としての持ち場を離れていたことを渡辺委員長に怒られたことぐらいだろうか。なお、その件に関しては、テロリストたちの目的であった図書館での活動を阻止した功績で一応許してはもらえた。

どうして図書館に行ったのかと聞かれたりもしたが、「討論会の立役者の一人である壬生先輩がいないのを不審に思い、探したら図書館に向かっているのを見かけたから」と言い訳しておいた。…それで信用されたかは微妙だったけどね。

 

 

 

 

『ブランシュ事件』と呼ばれるようになるであろう事件の翌日。その頃になってようやく情報もまとまってきていた。

 

まず、事件の事後処理についてだが『十師族』である『十文字家』が関わった。学校外からの侵入者の引き渡しこそ警察に対して行われたが、それ以外のほとんどは『十文字家』の手が入ったらしい。おそらくは部活連会頭の十文字(じゅうもんじ)克人(かつと)先輩が手を回したのだろう。

…まあ、学校側からしてみても、マインドコントロールがあったとはいえ生徒の中からテロリストに加担したものがいたり、ブランシュ日本支部へ突撃した生徒たちによる傷害・殺人未遂の数々は隠したいものがあったのだろう。

 

次に、先程少し触れた事件の全容の隠ぺいに関わることなのだけど、壬生先輩を含む有志同盟に参加していた生徒たちは今回の件についてはお(とが)め無しだそうだ。やはりこれにも学校側の事情が絡んできているのだろう。

けれど、現在はマインドコントロールのことも考えて、その多くが入院しているというのも事実ではある。

 

他にも色々と決まったりしたこともあるそうだが、僕の耳に入ってきためぼしい情報はそのくらいだった。

 

 

…ああ、あとブランシュ事件の翌日である4月24日は達也の誕生日だったらしく、「お兄様と愉快な仲間たち」による誕生日会が街のとあるカフェにて少しだけ行われた。…意外なのが、僕もそれにお呼ばれされてしまったことだ。

誕生日会はなんともいえない感じだった。というのも、司波兄妹以外のメンバーが達也の誕生日の詳しい日付を知らなかったそうで、前日の事件もあってプレゼントなんて用意できるはずもなかったからだ。

まあ、何もプレゼントを渡すだけが誕生日を祝うことではないだろう……とは、空気からして言い辛かった…が何とか持ち直すことができ、それなりには祝えていたと思う。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

そんな達也の誕生日から二週間ほど経ったころ、入院していた生徒たちも退院しあるべき姿へと戻ってきた学校…そして生徒たちは再び本来の学校生活を歩みだした。

 

 

……のだが、僕には少し面倒事が降りかかってくるようになった。

それは何かというと…。

 

 

「ねえ、剣道部に入部しない?ちょっと中途半端な時期だけど、月島君なら元の素質も良いしすぐに上達するよ!」

 

そう、壬生先輩が僕を見つけるたびに部活への勧誘をしてくるのだ。

原因はいわずもがな、事件の際に『完現術』の性能を実験と称して行った時間に上書きするように壬生先輩に挟み込んだ「魔法と剣技で接戦の末、壬生先輩に勝利する僕」のせいだろう。僕の魔法と剣技の上達のためにしたことがこんなことになるとは……。

いやまあ、その経験は今後に役立つわけだからある意味仕方のない代償ではある。だけど、なんというか少なからず罪悪感が…。

 

 

「いや、壬生から聞いた話からすると月島は剣道部より剣術部のほうが向いてるんじゃないか?剣術部(ウチ)に入部しろよ。な?」

 

そう言ってくるのは剣術部二年の桐原(きりはら)武明(たけあき)。以前、勧誘週間の時に達也にしょっぴかれた人で、壬生先輩の剣を好き・綺麗とか言って彼女に惚れている先輩だ。

原作通りなら、壬生先輩の入院中にお見舞いに毎日(かよ)い、いい雰囲気になってお付き合いするようになっているはずだ。

 

…で、桐原先輩も口では僕のことを剣術部に普通に勧誘しているだけに見えるが、顔を見ればそうではないことがわかる。

いやだって、顔に思いっきり書いているもの「どこかの道場出でもない、剣関連の部活もしていない何処の馬の骨とも知れんヤツが、なに壬生に気に入られてんだよ。ああん?しごいてやるから入部しろや!」って。…あくまで僕の想像だけど、あながち間違ってはいないだろうって自負はある。

恋は人を変えるって言うけど、怖いものだね…。

 

 

「えっ?月島君には剣道のほうが合ってると思うんだけど?」

 

「…そうか?決まった型のある剣道よりも剣術のほうが月島の体格が活かせるだろ?」

 

「ホントにそれだけ?」

 

「べ、別に他に何があるっていうんだよ!そっちこそ、何かあるんじゃ…!」

 

「私は、まっすぐで綺麗な月島君の剣は他の人にも見せる場があるべきだって思ってるだけ。だって、私が今こうしていられるのも、あの時あの剣で私と向き合ってくれた、月島君のおかげだもの」 

 

「だから、ね?」と僕に笑いかけてくる壬生先輩。やめてくださいよ、桐原先輩から溢れ出てくる殺気が先程から倍増してきてるんです。

…というか、今の会話の感じからするともしかしてこの二人、原作と違って付き合いだしていない?あっ、桐原先輩が僕に向けてくる目って「恋敵に対するもの」なんですね、理解しました。

 

 

―――――――――

 

 

そして、面倒なのは壬生先輩と桐原先輩の二人だけでは無かった。

 

「前にも言ったけど、やっぱり月島君、あの時手抜いてたんでしょー?そうじゃなきゃ、壬生先輩に勝てるとは思えないもん」

 

「そう言ってやるな、エリカ。月島が言ってただろう?エリカに負けたからこそ自分の非力さに気づいて懸命に特訓した、って」

 

「でも、お兄様。一日だけでそれほど上達できるのでしょうか?」

 

「出来たから勝てたんだろうさ」

 

…いや、そんな会話を本人(ぼく)の目の前でして、僕にどうしろって言うんだい?

エリカと深雪さんは疑問に思っている感じで、達也はフォローしてくれてるけど…あれ、内心では「何かありそうだな」って絶対思っているだろう。

 

そして他の「お兄様と愉快な仲間たち」メンバーはといえば…。

 

レオは「頑張ったんだな!月島!」

ほのかは「月島さんって凄いんですね!」

雫は「へぇ、そうだったんだ」

美月は「怪我がなくて良かったです」

 

…と、比較的優しいと思える反応だった。

まあこれは、比較対象が「もう一回勝負しよう!」とか言ってくるエリカである時点で、大抵が僕にとって優しいと思える反応になってしまうわけだが……。

 

 

 

「…それで、これまで聞きそびれたが結局どうやって勝ったんだ?」

 

そう切り込んできたのは達也だった。この積極的な感じ…やはり裏を探ろうとしている部分があるのだろう。

 

でもこれは別に答えられない質問な訳でも無い。むしろ、壬生先輩に挟み込んだことで学習したものを自分自身で確かめることにもつながるので、変に隠さずに答えてしまうべきだろう。

 

 

「エリカの時と同じで、光の屈折に干渉する幻影魔法を使ったんだよ。ただ、使い方をちょっと工夫したけどね」

 

「工夫ですか?」

 

美月の言葉に僕は頷き、壬生先輩に挟み込んだ内容を思い返しながら説明する。

 

「光の屈折を操作して像をずらしたりするだけでも、攻撃のタイミングや距離感を狂わせることができる。ずらしたり、ずらさなかったり。どれくらいずらすかっていう緩急をつけて()すりをかけ続ければ、おのずと相手はペースを乱しコッチが優位に立てる。それなら付け焼刃の僕の剣技でも何とかなるからね」

 

「…なるほど。エリカと試合したときの月島とそのCADから考えると、確かにそれが最善の戦い方だろうな」

 

「うーん、それなら何とか壬生先輩に勝てなくもないかな?多分それ初見じゃあ対処し辛い部類だろうし」

 

僕の説明に首をかしげる人もいたけど、肝心の達也とエリカはある程度は納得してくれたようで、軽く頷いてくれていた。これでとりあえずは大丈夫だろう……たぶん。

 

 

 

……まあ、それはともかくとして。

 

 

「そういえば月島は剣術部じゃなくて剣道部に入るんだろう?」

 

「いや、僕にはそういう気は無いんだけど。達也、どうしてそんな話を…?」

 

「それは壬生先輩がお兄様に「月島君に入部するように言って」とお願いしにきたからですよ」

 

「なんだいそれは。怖いなぁ…」

 

「えっ!なになにー?月島君、剣道部入るの?」

 

何気ない会話ができる…普通の日々が戻ってきたのだった。

 

 

――――――――

 

 

そんなこんなで色々ありながら様々な結果を残し、僕は『ブランシュ事件』を乗り越えた。

今回の経験がこの先どれだけ役に立つかは未知数ではある……しかし、『魔法』や『完現術』のこともわかってきたから、とりあえずはなんとかなっていきそうな気がしてきた。

 

これから僕がどうなるかは当然わからないが、これからも自分なりに頑張って生き残るすべを身につけて精一杯生きていくつもりだ…。

 

 

 

 

……何か忘れているような気がするが、気のせいだろう。うん、そうに違いない。

別にチャドとか断風(たちかぜ)さんみたいに霊圧消えちゃった人とかいないし……。

 

えっ?森崎君?森崎君ならいつも教室で僕を睨みつけてきてるよ。ワスレルワケナイジャナイカー。

他に忘れたことは……ないよね?

 


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