世界平和と己の幸せが俺の夢   作: 黒兎

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FGOの福袋召喚で見事に狙いを外してブルーの『 黒兎』です。

そんなに時間を掛けるつもりは無かったけど………うん、時間掛かったね。このペースだと12話終えた頃に6話くらいじゃないの、多分(筆者が元気なら)




………まぁ、前書きで多く書くのもウンザリとすると思うので、どうぞ本編へッ‼︎ 今話は………主人公に関して色々分かるかもよ?











紺碧のカリカチュア Part1

 ………どうして

 

 

 ………俺は

 

 

 ………ここに

 

 

 ………居るのだろう

 

 

 

 時々、 九重 黒乃の脳裏を掠める途切れ途切れの問い。

 ソレは生まれた時––––いや、防衛都市に来たから、ズッと語り掛けてくる煩わしい音だ。

 だが、同時にこの問いを忘れてはならないのも分かっていた。

 何故ならば––––

 

「(––––俺には似合わない。普通なら………居てはならないのにな)」

 

 そう言えるだけの理由はある。

 出生も歪であれば––––本来は、神奈川陣営の所属でも無いのだから。

 まぁ、でも、今、神奈川陣営に力を捧げているのは確かだ。うん。

 

 

「––––そろそろ、時間か……」

 

 

 今日、朝凪に呼び出しをくらっていたなぁと思い出す。しかも、場所は東京の大会議場。つまり、各陣営の首席、次席が集まっていると言っても過言では無いに違いない。

 そんな所に大した役職が無い––––事は無いのだが、場違いな黒乃が行くのはちょっと肩身が狭い。

 とはいえ、海ほたるの一件もあるのだから無断欠席はおろか、遅刻も厳禁だ。

 八方塞がりとは、まさしくこの事。

 ただ溜息を吐くが–––––嗚呼、虚しきやこの人生。

 

「………行くか。早めに行って、とやかく言われる可能性を減らす方向で進めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

「遅いぞ、黒乃」

 

 東京にある大会議場の扉を開くや否や、飛んでくる批判。

 それは、前の《アンノウン》戦闘で色々と会話した東京陣営の首席、朱雀 壱弥の物だ。

 

「仕方無いだろ………列車が故障で一時間ちょっと遅れたんだから。別線とか、故障してなかったら、余裕で間に合ってたし。つーか、絶対最初に来れたし」

 

 反論するも、言い訳感は拭えない。現に言い訳だから仕方無い。

 視界に映るは三日月状の卓に座する六人。

 扉から見て左から、東京、神奈川、千葉陣営と並んでいる。

 そして、扉側に備え付けられているスクリーンの近くに立つ、もう良い歳になるであろう男女。身に纏う軍服からは、幾重の戦場を越えてきた風に見える––––指揮官として、だが。

 男の方は、前にこっ酷く怒っていた朝凪 求得。そして、女の方は––––

 

「あら、黒乃。ようやく到着ね。遅れてきた事はどうかと思うけど………まぁ、座ったら?」

「愛離さん………。座るのは遠慮しますよ。まず、俺はこの三勢力に本当に所属しているっては言い難いですし」

 

 ––––夕浪 愛離。朝凪と同じく、南関東三都市防衛機構から派遣されている前線指揮官だ。

 

「確かに一理あるな」

 

 その会話に割り込んでくる神奈川次席の凛堂 ほたる。そして、言葉を続ける。

 

「貴様の所属は元々、私の居た『物品管理四課』の執行者なのだからな」

 

 物品管理四課とは、この三竦みの防衛都市で起き、手に負えない様な事件を時には非合法な手段で無理矢理解決させるとされる特殊部隊だ。

 本来は門外不出の内容なのだが、眼前にいる凛堂も元々はそこに属していたので知っていたのだ。

 

「でも、手は切ってあるさ。で、今の俺は神奈川陣営って訳。アーユーオーケー?」

「––––って、割には若干違うんだけど」

 

 いつも通り、ケータイポチポチしている千葉陣営首席の千種 明日葉。

 普段なら、こういう会話には割り込まず、興味無しを貫く彼女が会話に混じる。

 そう、それはこの件に関しては仕方が無い事なのだ。

 

 

「クロォはさ、千葉(ウチ)からの亡命(・・)で神奈川っしょ? 今の言い方だとさ、ちょっとムカつく」

 

 

 色々と含む言い方の明日葉に神奈川陣営首席の天河 舞姫がガタッと立ち上がり、

 

「ちょっと、明日葉ちゃんッ‼︎ その話は………」

「でも、事実は事実っしょ。何をどう言っても変わんないんだし」

「で、でも………」

「明日葉、ちょっと黙ってろ」

 

 険悪な雰囲気になりかけている所を黒乃は静止を掛ける。

 確かに明日葉の言ってる事に偽りは無い。現に黒乃は半年前までは千葉陣営として、職務を全うしていたのだから。

 だが、今は神奈川陣営として、九重 黒乃という人物は存在している。だからこそ、首席である舞姫が困っている時には助ける。………もっとも、黒乃よりも適任な奴がここには居るのだが。

 しかし、その適任の奴––––凛堂はただジッと見詰めていた。尋常ならざる殺意を纏って。

 これぞ一触即発。少しでも刺激したら、即爆破のダイナマイトを抱えている気分。

 

「あー、お前ら。そろそろ本題に入りたいんだが……」

 

 そんな中、朝凪が声を掛ける。

 解釈のしようによれば、良いタイミングでの助け舟だ。本当にありがたい。

 そして、それは個人個人でも思っていた事であったらしく、全員が耳を傾ける。

 

「––––お前らに頼みたいのはアクアラインの工事の護衛だ」

「忙しいと思って、本人じゃなくても良かったから、連絡入れて、臨時護衛者を選んでもらおうかと思ったけど、誰も連絡が繋がらなかったのよね。私からの連絡、履歴に無かったかしら?」

 

 夕浪の言葉に舞姫と千葉陣営の次席、千種 霞と朱雀は声を上げる。

 

「私の端末、よく何処か行って………」

「あっ、電源切れてる………」

「連絡は見た。だが、重要性の高い用事ならば、繋がるまで掛け直すのが筋だろう。俺らがどうこう言われる謂れは無い」

 

 その朱雀の大人を省みないトンデモ理論に東京陣営次席、宇多良 カナリアがすかさず頭を下げ、

 

「翻訳しますと、面目次第も御座いません………」

 

 その光景にカナリアも苦労しているんだなぁと思ってしまう。まぁ、朱雀 壱弥という人物自体が、付き合うに大変な部類の人間だ。仕方無い。

 

「ガハハハッ‼︎ まぁ、気にしてないし、まずお前らに拒否権が無いんだから、別に問題無いさ」

 

 豪胆に笑い、朝凪は言うが、サラッとブラックである事を認めてません? 拒否権無し=強制的に働かせるって事でしょう。いや、ブラック企業、恐ろしい。

 

 

「だから––––やってくれるな?」

 

 

 結論、朝凪は一度、礼儀や頼み方を知るべき。以上。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 任務の詳細を知らされ、全員が部屋の外へ、現場へ向かおうとする中、黒乃も続こうとするが、部屋を出る寸前で朝凪と夕浪に止められた。

 

「………何すか? 俺も護衛任務とやらに行かないとダメだろ」

「いや、お前。さっきのギスギスした雰囲気でよく混じろうと思ったな。実は馬鹿だろ」

「実を付けなくても、充分に馬鹿ですよ、俺は。ついでに任務に私情を挟む事自体が未熟者のよくある事だ。俺に限っては有り得ない」

 

 キッパリと言い切る黒乃。

 もう黒乃は、私情を挟むなんて事は無い。少なくとも、本人はそう自覚している。

 そうでも無ければ、特殊部隊の執行者なんて務まる筈も無い。

 

「でも、アイツらはまだうら若き学生だ。そうやって、割り切れないから、あーやってぶつかり合うんだよ」

「何、その俺若くないみたくな言い方」

「だからね、ちょっと別の任務をお願いしようかと思って」

「はぁ………ま、面倒ですが良いですよ。で、何を御所望ですかね?」

「えっと………百聞は一見に如かずって事で、この座標に行ってくれないかしら?」

 

 夕浪の手から渡されるマップデータ。そして、そこにマーカーされている赤い一点。きっと、そこが目的地なのだろう。随分と離れた所にある。

 

「えっと、ここは何処っすか?」

「あの子達が護衛任務を終わった先に着く所よ。そこで今、神奈川の女の子たちが労いの意を込めて、料理を作っているんだけど……貴方、料理上手だし、助太刀に行ってあげてくれないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 

「––––で、来たのは良いんだが………」

 

「きゃー、黒乃様ァッ‼︎」

「こっち向いてぇーーーッ‼︎」

 

 指定された場所––––まぁまぁの大きさのレストランが、そこには有り、ここで調理の助っ人として参加しろというのは理解出来た。

 で、面倒だが厨房に入るや否や––––こういう状況だ。

 材料を運んでいた者、資材を運んでいた者、調理をしていた者………まぁ、全員は事前に知らされていた通り、神奈川陣営の女子生徒。………というか、包丁とか危ない物持ったままに騒がないで。下手したら、流血大惨事だから。

 

「はぁ………やっぱ、こうなるのか……………」

 

 盛大な溜め息を吐く黒乃。

 

 ………別に自慢する訳じゃない。本当に自慢する訳じゃない、のだが………………

 

 

 

 

 

 

 –––––九重 黒乃という人物は案外、好かれる。

 

 その証拠に、本人非公認のファンクラブが有ったり無かったりする様な噂が………

 

 

「––––ほらほら、早く準備に戻れ戻れ。今日の工事は各陣営の首次席が関わってるんだから、早く準備しないと遅れるだろうが。効率良くスピーディーに行こうぜ」

 

 

 ………と、余計な事を考えるのは後々。今は作業優先だ。

 黒乃の一言の影響力は意外にも凄まじく、全員が蜘蛛の子を散らす様に持ち位置に戻っていく。………普段は面倒くさがり屋の黒乃の影響力とは思えなさ過ぎる。

 

「あ、九重さん」

 

 周りの人が粗方離れた時に声を掛けてきた聴き覚えのある声。

 神奈川陣営の四天王の一人、《姫を導く者(プリンセスロード)》八重垣 青生だ。

 四天王とは神奈川陣営首席の舞姫に損得感情の一切を無く、ただただ忠誠を誓っている四人の盲信者––––もとい実力者の異名だ。全員が類い稀なる《世界》を持っていて、強い。特に四天王にして、神奈川陣営次席の凛堂とかは可笑しいレベル。色んな意味で。

 そして、眼前の青髪っ娘も強い––––というよりかは、集団戦において、有用過ぎる《世界》の持ち主なのだ。

 

「お、青生。お前もこっち側か」

「私は力作業には向いてませんからね。しかも、愛離さんに頼まれたら……断れません」

「そうなんだよなぁ……ああいう人の『やってくれる?』って、ほぼほぼ強制に聞こえるんだよな。優しさの裏に潜む何かって奴かな?」

「え……いえ、そういう訳じゃないんですが…………」

 

 やっぱり、黒乃の思考は面倒回避に偏っているのだと嫌でも理解出来た。

 まぁ、それでもやる事はきっちりとやる人だとは青生も理解している様で、特に動揺も見せずに黙々と作業に戻る。

 どうやらサンドイッチを組み立てている様で………実に手慣れている。

 

「あー………んじゃあ、テキトーに焼くか」

 

 結局、料理は一人でするものだ。別に他人を気にする必要は無い。

 運ばれていた肉塊––––元々、何の肉なのかは分からないが、それを包丁でテキトーに捌く。正直、テキトー。本気でテキトー。これをテキトーと言わずして、何というッ‼︎ と言われるくらいにテキトー。

 それを乱雑に鍋に突っ込み、手に取った香辛料をテキトーにぶっ込み、煮るか焼くかをする。

 ………黒乃は何時も、こんな感じで料理している。が、そのテキトーさで何故か謎に美味く出来るのはある意味奇跡で、錬金術の類では無いかと噂されるレベル。

 

「さてと………後は待っとけば良いだろ。素材量から判断するに、作業中の全員分の料理は賄える筈だ」

 

 ………もう包み隠さずに告発してしまうが、黒乃に料理の知識は一分たりとも無い。しかし、それでも美味くなってしまうのは、他に類を見ない天賦の才能(センス)らしい。

 

「まぁ、悪いが……盛り付けとか面倒な事は他の奴らに任せよう。きっと誰かがやってくれる筈だ」

 

 うん、誰かがやってくれる筈だ。

 

 心の中でもう一度復唱し、自己正当化。とは言え、仕事場で仕事をしないのはかえって迷惑。

 

「(じゃあ、どっかで時間を潰すか……このレストランの屋上で良いか。絶対に誰も来ないし)」

 

 わざわざ疲れて、そんな辺境紛いの所に脚を運ぶ奇行者は居ないだろう。だからと言って、防衛+工事を行ってる方の奴らが帰ってきた所に料理を取りに戻るのも嫌だ。混むし。

 

 そう思い至った黒乃は作り終わっていたサンドイッチを三つばかりスッと抜き取り、厨房を抜け、全く人気の無い屋上へと向かうにだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 屋上に到着した黒乃は本能のままに寝転がった。

 燦々と照らす日光は暑く、夏なんだと嫌でも理解させられる。

 拝借した紙皿の上に並べてあるサンドイッチ×3も同じ様に日を当てられていた。長時間の放置は身体に良くない食物へと変化させるが、短時間なら問題無い。寧ろ、熱で良い感じの温度が保てるのだから、良いのかもしれない事も無いのかもしれない……

 

 そんな事を思いながら、黒乃は眼を瞑る。すると、ほんの少し前の言葉が脳裏を過ぎった。

 

 

『クロォはさ、千葉からの亡命で神奈川っしょ。今の言い方だとさ、ちょっとムカつく』

 

 

「––––はぁ………嫌われてる、んだよなぁ、多分」

 

 ボヤきながら、サンドイッチを一つ摘み、口に運ぶ。

 明日葉の言葉に裏も嘘も無い。全ては事実で、廻り廻った結果の言葉だ。

 だからこそ、反論しなかったし、まず反論出来る資格も無い。

 でも––––訂正はしたかった。

 

 

 俺は亡命したくて亡命したのでは無い、と。

 お前の為を思って、亡命したんだ、と。

 

 

 だが、それを言った所であいつには意味が無い。

 

 

 ––––そんな言い訳聞きたくない。

 

 ––––何、勝手に亡命しといて、善人ぶってんのよ、この偽善者。

 

 

 そう言うに違いないのだから。

 

「せめて、舞姫とは仲直りしてて欲しいモンだ………」

「呼んだ?」

「–––––––––––––へ?」

 

 何時に無く、素っ頓狂な声を出す黒乃の顔には影が差していた。

 それはつまり、照らしていた太陽を遮る何かが突如に現れたということで、原因を見る。

 逆光で見辛いが––––色素の薄い髪にその声音から、誰かは瞬時に分かった。

 即座に平常に戻し、何時も通りの気怠げな声で返す。

 

「––––舞姫か。もう工事の護衛は済んだのか?」

 

 すると、舞姫は華が咲く様な笑みを浮かべ、

 

「うんッ‼︎ 私もね、色々頑張ったんだよ〜」

 

 と言いながら、寝転がっている黒乃の横に座った。

 手にしていたサンドイッチ––––というか、それは紛れも無い黒乃の物だが、遠慮無く口に運んでいた。

 心底、美味しそうに食べる姿は、ある種の癒しを感じる。………そうか、これが四天王が言っていたヒメニウムなのか。恐ろしい。確かに中毒性を持っていても頷ける。

 

「鉄骨を運んだりね」

「お前なら2桁までなら片手で行けるしな」

「あと、道路を塞いでた邪魔な物も撤去したりしたんだよ」

 

 ………あれ、お前ら工事の護衛じゃなかったの? 何か真面目に工事に駆り出されているような………

 

「まぁ、お前の馬鹿力なら基本は大丈夫だろ、うん」

「クロノんはさ………まず、普通の女の子に対する付き合い方をしっかり覚えよ? 流石に女の子に腕力云々は如何かと思うなー」

「ほう………お前の何処が普通の女の子だよ。普通の女の子は10年間も三都市間のランキングの首位に座り続けねぇっての」

 

 舞姫からの説教というか、小言というかをテキトーに聞き流しながら、黒乃は思う。

 

 

 これは––––IF(もし)、の話だ。

 

 もし––––今までに攻め込んできた《アンノウン》とは比較にならない位の強さを誇る個体が攻めて来たら。

 

 もし––––前線が殆ど壊滅したら。

 

 もし––––明日葉と舞姫が倒れたら。

 

 そして………もし、どちらかしかを助けれないとしたら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(舞姫の笑顔を見る度に思う空想––––でも、有り得ない話じゃない。だが、俺は––––––)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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