世界平和と己の幸せが俺の夢   作: 黒兎

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最近のこの作品の流れが凄過ぎて、感涙咽び泣くレベルの『 黒兎』です。

凄い! こんなに多くの人に見てもらえてるッ! そう思うだけで私は胸が一杯です。ありがとうございますm(_ _)m




今回でアニメ二話の紺碧のカリカチュア終了ですが……読んでる最中に落胆されても困る(?)ので、最初に言っときますが––––


–––ストーリー上、今回のカスミんの見せ場は完全に無くなった。割と本気で









紺碧のカリカチュア Part3

 人間が潜っていられる時間とは一体何秒なのだろう。

 30秒。それとも60秒––––1分。もしくはそれ以上。

 戦前に公表されていた世界記録でも、確か数分間が限界だった筈だ。

 

 普通、そんなに潜っていられる訳がない。酸素が尽きて、死ぬのだから。

 それでも潜っていられるという事は、上手に酸素を運用出来ているという訳で––––まぁ、凄いのだろう。

 ただ––––

 

「あなた達は何分間潜っていられるのかしら?」

「15分程です」

「なら、俺は16分だ」

「ただし、ヒメなら無呼吸で3時間は行ける」

「なん、だと……」

 

 ––––––––それはあくまで、戦前の話(・・・・)だ。

 

 夕浪の質問に即答するほたるに対抗する朱雀という構図だが、内容は戦前ではあり得ない。時間的にあり得ない。

 十数分なら、死を覚悟すれば行けるかもしれないが、3時間は––––うん、それは生きてない。きっと、水死体の類いだろう。

 

命気(オーラ)って、存在の無い世界だったら、白目剥いて倒れる案件の話だな、これ」

 

 黒乃は溜息交じりにそう呟く。

 

 そう––––何も、素のままで十数分潜る訳では無い。流石にそこに関しては戦前と変わらない。だって、人間(・・)だもの。

 ただ、《世界》を発現し、意のままに実体化させる為に使う命気を身体強化に転用すれば、中々に無茶な事もやり遂げれたりする。普通ではあり得ない位の跳躍だって、怪力だってお手の物だろう。……ただ、舞姫の3時間潜水は可笑しい。長過ぎる。

 

 どうやら、夕浪の話によると例の索敵不能の《アンノウン》は海中を漂う様で、差し当り潜れなければならない。……となれば、カナヅチであるカナリアは必然的に陸上からのサポート(お留守番)になる。

 加え、命気強化出来ない––––訳では無いが、強度が乏しい霞も同じだった。

 つまり、水中で探索出来るのは朱雀、舞姫、ほたる、明日葉、黒乃の5人なのだ。

 

「じゃあ、行ってくる」

「ちょっと待て、黒乃!」

 

 聞く事はもう無いと悟った黒乃は早く仕事を済ませようとするが朝凪に静止される。……いや、静止というかは諸注意、か。

 

「––––絶対に侵入不可領域には入るなよ。絶対にだ!」

「はいはい、分かってますよー……つーか」

 

 黒乃は勢い良く、海岸を飛び出すと同時に続きの言葉を吐いた。

 

侵入不可領域(あそこ)の恐ろしさは誰よりも俺が知ってる。準備が整ってない時に入る程にバカじゃないよ、俺」

 

 返事は聞かない。聞く暇は無い。

 不可視の重力に引かれ、黒乃は––––海に落ちた。

 

 

―――*―――*―――

 

 

「あのバカ黒乃! 時と場合によっては朱雀よりも独断専行するとかあり得ないだろ!」

「まぁまぁ、求得さん。それがクロノんなんだし、気にしても仕方無いって。しかも、クロノんは管理局でも手綱を操れないんでしょ?」

「……あいつに心理的でも物理的でも枷は無意味だからな。もう何しても無駄だ」

 

 求得と舞姫の会話を聞くその他大勢。

 その中––––霞だけが、何か形容し難い違和感に苛まれていた。

 

「(管理局(あいつら)––––何か隠してるのか?)」

 

 先程の舞姫の問いに一瞬の淀み。それらしき物を感じた。

 そして、それは––––何か途轍も無い秘密な気がする。

 しかも––––黒乃の亡命理由、とは全く筋違いの。

 妹の明日葉には話してないが––––千葉陣営の次席、千種 霞は実の所、黒乃の亡命理由については知っている(・・・・・)

 何故ならば、黒乃の亡命に関しての相談を受けたのは、紛れも無い霞本人だったからだ。

 しかし、明日葉には教えてない。教えてしまえば––––きっと、黒乃は怒り、明日葉も怒り、千葉が中から崩壊するから。今の千葉の姿を支えているのは、黒乃の亡命なのだから。

 だが––––

 

「(––––それ以上に重大な何か……一体何なんだ?)」

 

 ……そこで霞は考える事を止める。

 今の段階では手掛かりが余りにも少ない。予測しようにも証拠が無い。

 ならば、そんな大それた事を考える前に目下の敵、《アンノウン》について考えるのが先決だろう。

 と顔を上げると––––

 

「行こ、ほたるちゃん!」

「心得た」

 

 と神奈川陣営の二人が海中へとダイヴし、それに続く様に朱雀も潜る。

 残るは明日葉だけ。

 

「じゃ、お兄ぃ。行ってくる」

「おう……あんま無茶すんなよ」

 

 霞は応答と一緒に注意した。すると、明日葉は若干、霞の方を見てから、海へと進んだ。

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 その頃––––より、若干時が過ぎた後、黒乃は歩いていた。そう、泳ぐのでは無く––––歩いていたのだ。

 何処をと問われれば、答えるのは簡単だ。海底を、だ。よくある海面歩行とかでは無く、純粋に物理的に海底を歩いていた。

 一歩進む度に前方の水は押し退けられ、背後の水は空いた穴を埋める様に元通りになっていく。

 全ては黒乃の《世界》を利用したが結果の事象。

 斥力を見に纏い、襲い来る海水を跳ね除けて、進んでいるのだ。

 

 本来、《世界》による異能を世の中に発現させるのは不可能に近く、出来ても低影響しかない。

 その為、《アンノウン》と《世界》を使って、戦う為に命気(オーラ)の発現効率を高める鉱石––––命鉄を用いて、武器たる出力兵装を作り、対抗している。

 しかし、それでも黒乃は周りの海水を全て跳ね除けるという行動を取れている。普通ならば、低影響なのに、だ。

 原因は黒乃の身に纏っている黒地の水着––––スウェットスーツにあった。

 実は、この水着にも命鉄が組み込まれている。所謂、装着型の出力兵装なのだ。だから、常時身に纏っていたりする。……まぁ、理由は他にもあるが。

 

「––––にしても、海底を歩くなんて久し振りだ。戦闘中なら、斥力で空中を翔けた方が速いし、わざわざ歩かないんだよなぁ……」

 

 今回の任務は《アンノウン》の捜索。それも、探知に掛からない奴の。

 ならば、高速で翔けるよりもゆっくりとしらみ潰しに探す方が良いに決まっている。

 

「……やっぱ、良いモンだよ。ゆっくり出来るって」

 

 自分のペースで、自分の仕事をする。

 それが出来れば、きっと幸せで、現に黒乃は幸せだ。

 普通ならば、この世の何処にも居場所の無い存在である黒乃を受け入れてくれる場所がある。その恩を返す為に戦っている。それこそ、需要と供給の関係に近いだろう。

 しかし、

 

「それでも俺は全てを明かせてない」

 

 全てを明かす訳には行かない。明かせば、この南関東三都市防衛機構の秘匿している情報の大半が流れ出で、混乱を齎すから。

 何より––––

 

 

「––––好きな奴を死なせてしまうかもしれないから」

 

 

 改めて、己の存在の危険性を確認した黒乃は思考と身体をガッチリと繋ぎ、任務を再開する。

 

 やはり、何も無い。

《アンノウン》は勿論の事、魚1匹も居ない。

 戦前と戦後では、この海付近は大きく変化した。

 地形は《アンノウン》の攻撃によって、抉られ、削られ、破壊された。

 それに伴い、海洋生物の分布なども著しい変化を見せている。戦前まではいた魚がいなくなったり、逆のパターンも有り得たりするのだ。

 ただ……

 

「……それにしても静か過ぎる………」

 

 ……ここまでに何も無いのは初めてだ。最低でも、何か動くものがいて然るべき。これでは南関東の海産漁業が成り立たない。

 

「別に武術を修めてる訳じゃないからなぁ……氣とか探れないから、やっぱり地道に探すしか––––」

 

 結局、時間のかかる方法しかないのだと悟り、無思考の作業を始めようとする黒乃だが––––耳に繋いであるイヤホンからピピッと通信の繋がる音がし、対応する。

 

「こちら、九重 黒乃」

『––––黒乃か。お前、今斥力で水中に球体作ってるな?』

 

 相手は霞。妙に声音が焦って聞こえる。

 

「そうだけど……どうかしたか?」

『そこから北西に300メートル位先に《アンノウン》を発見した。向かってくれ』

「お前の武装を考えれば、俺が出なくても良くね? 聞こえたんなら、狙撃出来るだろ」

 

 黒乃の言う通り、霞の武装––––狙撃銃(スナイパーライフル)を使えば、大抵は狙撃で仕留めれる。

 だが––––

 

『射程距離には入ってるんだが、水抵抗とかの要因を考慮すると若干足らない。だから、お前に任せてやるよ』

「……はぁ、面倒くせ––––」

 

 黒乃の言葉が言い切られる寸前、通信が変わったのか朱雀の声がする。……というか、犬猿の仲の二人がよくも一緒に居たものだ。

 

『ただ、その《アンノウン》は今、千葉首席––––つまり、213位の妹と接触する寸前らしい。しかも、あいつは《アンノウン》の存在にまだ気付いていない』

「––––ッ‼︎」

 

 ––––と、そこまで聞こえた瞬間、黒乃の耳には通信というものは無いも同然の様に聞いていなかった。

 ただ、それは不味いとだけは察せ、脇目も振らずに北西へと走る。

 走るという行動は泳ぐという行動よりも速い。

 加え、《世界》を持った黒乃は足裏で斥力を生じさせれば、常人よりも数倍速く移動が可能。

 実秒にして、約数秒。体感にして––––数時間。それ程に長く感じるまで、黒乃の心には焦りを生じていた。

 

「(間に合え––––––––––––いや、間に合わせるッ‼︎)」

 

 斥力によって、擬似的に黒乃の周りを取り巻く海水を通し、照らす日光が揺らぐ。

 普段ならば、軽く思える筈の足取りも今では囚人が身に付ける拘束具が纏わり付いている様に重い。

 

「(––––クソッ‼︎ 焦れったいッ‼︎)」

 

 間に合え––––間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え間に合え………………………

 

 焦りが生じさせる言葉の洪水。

 きっと、黒乃の脳内をリアルタイムで垣間見る手段があるのなら、大抵の人は気持ち悪くなる位に焦っている。

 

「––––アレかッ‼︎」

 

 目視出来る距離に見えた影。あれは明日葉と《アンノウン》。

《アンノウン》は陸の生物で例えるならば––––蛹に近い。………まぁ、実物とは違い、非常に硬質そうだが。

 そして、明日葉の方も《アンノウン》に気付き、脚に巻きつけてあるホルスターから拳銃を抜き撃ちしようとするが––––きっと、背後を取られた動揺を隠せていないのだろう。拳銃のグリップを掴もうとする手が滑り、取り損ねていた。

 戦闘中に発生した隙は時に致命なミスへと繋がる。最悪は––––死に至る時も。

 そして、相手は一般情報では詳細不明の《アンノウン》。ならば、最悪の可能性も十二分に有り得る。

 

「明日葉ッ‼︎」

 

 叫ぶと同時に黒乃は命気(オーラ)で身体強化。常人ならざる速度と距離を一気に跳ぶ。

 見据えるは倒すべき《アンノウン》。助けるべき明日葉を一瞥もしない。何故なら、《アンノウン》を倒せば問題無いのだから。

 

 

 その瞬間、明日葉は見た。––––黒乃の瞳の奥に介在する憤怒の色を。

 まるで、何かが気に障った様な。そんな感じがする。

 

「(クロォが助けに………何で)」

 

 だが、分からない。黒乃が怒っている理由も、何で助けに来たかも。

 しかし、一つ。そう………たった一つだけは理解出来ているのだ。

 

「(––––助けられるだけの価値はある………って事だよね)」

 

 全が分からなくても、今はそれだけで良い。何故か、その事実だけで落ち着ける。

 それは明日葉が知っているから。彼、黒乃は––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ––––《アンノウン》に負けない、と。

 

 

「消えろ、クズが。お前らが居るから、俺は………‼︎」

 

 黒乃は得物であるブレードライフルを《アンノウン》の体躯へと突き刺し、容赦無く引鉄を引く。

 無数の銃声と共に放たれる銃弾の数々は《アンノウン》の身体に穴を穿ち、絶命と追い込むが––––それだけじゃ終わらない。黒乃の殺気がそれを終わらせない。塵も、何も少したりとも残さない様に撃ちまくる。加え、斬撃も見舞う。その姿はさしずめ、“暴君”。

 ………きっと、討伐し終えたのだろう。フゥっと一息吐いた黒乃。先程に放っていた殺気は消え失せていた。

 形成された斥力領域の中に入った明日葉は気不味そうに黒乃の方を見る。肩で息をしている黒乃は何処と無く、疲れていて––––普段の彼とは似て似つかない。

 と、思う中、黒乃は明日葉の両肩をガッチリ掴む。

 

「明日葉。お前––––途中、気抜けてただろ」

「………いや、そんな事は––––」

「無かったら、お前があの程度のミスをする筈がないだろ。一体、どういうつもりだ」

 

 黒乃の眼は完全に本気だ。

 流石に明日葉もこの状況で何時もの口調を保てる訳では無かった。

 

「………ちょっと考え事してて………………」

「任務中にか?」

「で、でも………任務に関係する事だったし………」

「それでミスったらダメだろ。お前––––そんなんだったら死ぬぞ」

 

 ……知っていた。黒乃に生半可な言い訳が通用しない事は。

 

「お前が死んだら––––霞が、千葉のみんなが悲しむの位、想像付くだろッ‼︎ 千葉首席 千種 明日葉。今のお前はお前だけのモンじゃない。今は––––千葉を背負ってるんだ。少しは自覚を持て」

「ッ…………ごめん」

 

 黒乃の言葉に明日葉は流れに従い謝る事にする。このまま、言い争いに発展しても勝ち目が無いから。

 

 ––––と、至って冷静な判断をした明日葉に黒乃は、

 

「(……しまった…………。何勝手に説教じみた事してんだ…………ああぁッ‼︎ 少しは素直になれ、この馬鹿俺ッ‼︎)」

 

 ––––こんな感じに後悔している。

 黒乃としては、開口一番に「助けれて良かった」と言えば良かった。

 だが、言えなかった。

 理由としては、その場面は冷静で無かったし、何より––––気恥ずかしいから。

 こういう所で素直になれないという事は、黒乃も十分に少年だという事なのかも知れない。

 

「……まぁ、任務中に気は抜くなよ。………じゃ、俺は先戻るから」

 

 心の中が気恥ずかしさで満腹な黒乃は早く立ち去ろうとする。これ以上に恥ずかしさを重ねられると……少なくとも、良い気はしない。

 だが、明日葉はチョンチョンと黒乃の腕を突く。

 

「……何だよ」

「あの……その……ありがと。助けに来てくれて…………それだけ」

 

 ボソッと呟かれた言葉に黒乃と明日葉は互いに別の意味で顔を紅潮させたとか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、次からは大波乱のシリアスティック回! やったね、シリアスだよ!←シリアス好き

アニメ本編では非常に不味い状況の悲劇のヒロイン(なお、この作品においてはヒロインでは無い)は一体、この作品ではどうなってしまうのか。乞うご期待下さい!…………いや、あんまり期待されると……困るんですけど………………まぁ、気長に待っていただけると……





……黒坊のオリイベ何処で挿し込もうかな…………?
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