いつの間にか中学生とかに好かれている気がする。実は案外ロリコンなのかもしれない。
嵐山準
柊の数少ない友人。高校時代は柊と同じクラスだった。
時枝充
割とスタイルが被っているので柊は好いている。テンプレートなキノコヘッドだが、そもそもたけのこ、きのこ、の問題ではなくブルボンが好き。
木虎藍
柊が素で褒めたり信頼したりするからあっさりとなついたチョロい子。とりまるに淡い恋心を抱いているがまったく気付かれていない。ボーダーの男性隊員は鈍感でないといけないという規則があるのだろうか。
佐鳥賢
ボーダーNo.2土下座マン。なおNo.1は霧島柊であることは言うまでもない。
A級3位風間隊、風間蒼也は苛立ちを隠せなかった。
元々連れてくるはずだった冬島は船酔いに加え、謎の腹痛でトイレに籠ってしまった。
そして嵐山隊という想定外の存在。
忍田本部長派というのは「町の平和が一番」その理念を掲げている。
言わば一番の穏健派と言っても過言ではない。いや、なかった。と言うべきか。
だから忍田が部隊を繰り出してくるのは弟子の太刀川でさえ読めなかった。
その上霧島柊。彼と迅の持つ「風刃」はもはや相性がいいとかそういう問題ではないのだ。
故に最初に狙いを付けたのは霧島柊。
「奈良坂、当真、古寺、お前たちで霧島を抑えろ。最悪倒せなくていい。迅を援護する余裕を与えるな」
「いいんですか?数の有利がなくなりますよ」
聞き返したのはNo.2狙撃手の奈良坂透だ。
確かに今は7対10でこちらの方が数が多いが柊は乱戦でこそ、その真価を発揮する。
「問題ない、どちらにしろ迅に狙撃は当たらん。」
「でも、いなくても大丈夫って訳じゃないからな」
「キリさんを倒しゃいいんだろ?オッケー、オッケー」
「了解」
「相変わらず固いなー、奈良坂。もっと気楽に行こーぜ」
「あんたはもう少し気を張ったほうがいいと思うが」
感覚派の当真と理論派の奈良坂はまったくといっていいほど相容れない。だからこれはいつものことなのだ。仕方ない。
そう言い聞かせながら古寺は冷や汗を拭いた。
***
「みたいなことになってそうだけどどうする?」
迅たちは屋根の上に退避しこれからの作戦を立てていた。
実は彼らが集まるのは今が初めてだったりする。つまり細かい作戦はないのである。
作戦を今立ててそれを実行できるというのは一重に実力の高さだが、それが事前に作戦を立てていた遠征部隊との違いにならなければいいが。
「まぁ、それについては問題ないよ」
「そうだな、俺の方に人数割く以上風間さんはお前のところ行くだろうし」
「そういう点では三輪隊がどう動くかだよなぁ」
「それならウチの足止めに来ると思いますよ。三輪先輩の鉛弾がある」
「でも佐鳥先輩の援護はないですしね」
嵐山隊のオールラウンダー木虎藍はチラリと柊を見た。
「いやぁ、ホントに無理言ってゴメン。でも木虎ちゃんたちだからこんな無茶言えるんだ」
「……そこまで言われたら仕方ないですけど」
顔を背け、素っ気ない言葉を放った。しかし木虎に尻尾が付いていたらちぎれんばかりに振っていただろう。
「おっ、来たぞ。上手くやれよ嵐山」
「そっちもな迅、柊」
言いながら嵐山は拳を向ける。
それを見た柊と迅ははにかみ笑いを浮かべながらコツンと拳をぶつけた。
――きれいだ。
木虎は素直にそう思った。
『仲良きことは美しき哉』
ふと頭にその言葉が浮かんだ。
それはこのことなんだな、とそう思った。
聞けば柊はなんの説明もされずにここに来たという。ただ迅が、親友が助けを求めたから。
たったそれだけで罰則を受けると分かっているのに戦えるものなのか。
無遠慮で見返りを求めない友情。そんな友情があることに驚いて、美しいと思った。
***
嵐山たちが三輪隊を引き付けてくれたお陰で戦局は『迅、霧島VS太刀川、風間、歌川、菊地原、奈良坂、古寺、当真』と変化した。
2対8での戦いだ。普通なら答えなど分かりきったことなのだろう。
そう普通なら。の話だが。
***
あともうほんの少し何かがあれば一気に堰が切れてしまいそうな張り詰めた空気。最初に仕掛けたのはやはりというかなんというか太刀川だ。
弧月のオプショントリガー『旋空』。斬撃を瞬間的に拡張するそのトリガーは太刀川ほどの実力者が使えばその間合いは射手に匹敵する。
しかしここにいるのは太刀川のライバルに、その相棒。挨拶程度の『旋空』に斬られてやるほど弱くも優しくもない。
柊は迅と自分の足元に半透明の板『グラスホッパー』を出現させた。
ちょうど迅が踏み切る位置に配置されたそれを踏みつけ後退した。
「おっ、来るぞ柊。左だ。」
「はいよ」
言いながら柊は自らの左側頭部に一点集中させた『シールド』を展開した。
刹那、鉄板に石をぶつけた時のような反響音。
「こりゃ当真くんだわ。めんどくせぇな」
柊の読みは当たりである。なぜなら弾は家と家のほんの僅かな隙間を縫って霧島に着弾したのだ。
迅がいなければまず間違いなく柊は落ちてしまっていただろうという最高の弾だった。
故に当真は頭を抱えた。
「うっそだろ!?今ので無理なのかよ!くっそ、あのサイドエフェクトずっこいわ〜」
『当たらない弾は撃たない』
それが当真の信条だが今のは迅の予知がなければ確実に当たっていた。
「だからまぁ、ノーカンだな」
あっけらかんと言い放ち当真は動き出した
今度は分かっていても反応できない弾を柊に当てるため。自らの信条を貫くため。
***
風間隊の連携のレベルはボーダートップクラスであることは疑いようのない事実だ。そして霧島柊も連携のスペシャリストであることもまた事実。
どちらが上かなど今まで知るよしもなかったがただひとつ言えるのは風間隊はあくまでなにかを狩るための動きで、柊は誰かを活かす動きであるということ。
それが一体どういう意味を持つのか、風間はまだ知らない。
太刀川が迅に斬りかかり抑えている間に、風間隊はいつも通りの連携攻撃を仕掛けるため、展開した。
風間が迅の側面から突貫した。もちろんそこを防いだのは柊の『レイガスト』。
トリガーの中で屈指の堅さを誇るそれはさすがの風間と言えど一撃では割れない。
風間は両手に持った『スコーピオン』を目にも止まらぬ速さで振るう。五連撃を越えたところで柊は左手に立方体を展開した。
そして風間の退路を立つようにして背後から『変化弾』が襲う。
風間は背中に『シールド』を展開してそれをシャットアウトした。そして軽くバックステップを踏み距離を取って注意を引いた。
次の瞬間、迅の背後に歌川と菊地原が姿を現した。
「気を付けたほうがいいよ。そこ」
柊が呟いたが、彼らは聞く耳も持たずに突っ込む。今更霧島がなにかをしようと関係ない。霧島がなにか仕掛けるより迅の首が離れるほうが早い。
――はずだった。
次の瞬間には菊地原と歌川の視界が反転していた。
斬られたわけではない。飛んだのだ。
柊が展開した『グラスホッパー』で。
空中に投げ出されたせいで身動きが取れない菊地原たちに降り注いだのは『変化弾』の雨。
さすが那須師匠なだけあって軌道がいやらしい。
『シールド』を張っていても足が少し削られてしまった。
それでもなお柊が追撃をするために『変化弾』を展開した瞬間太刀川が『旋空』を放った。
僅かに柊が顔を歪め自らと迅の足元に『グラスホッパー』を展開した。
それを踏みつけ先程より鋭角に飛んだ。
それを見て太刀川が内心舌打ちをひとつ。
さっきのように山なりに飛べば狙撃の餌食。故に柊は『グラスホッパー』の角度を調整したのだろう。
相変わらず変態だ。
そのお陰で彼らは家に隠れながらしかも先程よりも長く太刀川たちより距離を取った。
「風間さん、どうしますか?」
トリオン体に標準装備された通信機能。歌川はそれを使い、風間に話しかけた。
「恐らく白兵戦では敵わないだろうし、狙撃にも対応されたからな」
「そんなことないですよ。ウチの連携なら――」
「だからだ。菊地原」
菊地原は訝しげに首を傾げた。
「あいつに連携は効かないんだ」
連携というのは基本的な動きが決まっているものだ。それの早さや完成度で敵を圧倒し、倒す。それが連携というものである。風間隊の連携はボーダー随一だ。しかし霧島柊もまた連携のスペシャリストである。それもその実力はボーダー随一の連携を誇る風間隊の連携に参加できるほどのもの。
つまりそれがなにを指し示すかと言えば、柊は連携の隙を狙って崩せるということ。
それが緻密な連携であればあるほど柊に読まれやすくなり、一瞬の隙を突かれ崩される。
正直風間隊の相性は最悪と言えた。
だがそれでも負けてやる訳にはいかない。
自分に与えられた任務を全うするために。
***
太刀川たちの動きが止まったことで柊と迅の動きも止まった。
「あちらさんは作戦会議中かね」
「みたいだな、お前なんか見えてないの?」
「今はちょうど別れ道かな。最高から最低まで色々見え――」
「……どうした?」
「不味い!退くぞ!!」
最近になって滅多に聞かなくなった迅の叫び、要するに信号は赤。
念のためグラスホッパー2回分後退し、前を向く。
そこに広がる光景に思わず言葉を失った。
豆腐のように切り裂かれ崩れ行く廃墟。それをやったのは目の前の男太刀川慶。
「あんた……バカじゃねぇのか……?」
今は使われてないにしてもそれは確かに家なのだ。
誰かが生きた証。それをなんの躊躇もなく破壊した。
――それは紛れもなく霧島柊の逆鱗。
戦闘に絶対はない。
しかし、ただひとつ言えることはボーダーで一番怒らせてはいけない人間を怒らせたということだけ。
***
A級2位冬島隊、狙撃手当真勇はスコープを覗きながらチャンスを待っていた。
そして絶好のチャンスが訪れた。
太刀川の『旋空』で辺りを更地にし、射線を通す。
忍田を師に持つ太刀川はそれに最後まで反対していたが、切り札がない状態で迅に挑むわけにもいかず了解した。
それにこの作戦はどちらかと言えば柊に効く作戦なのだ。
ただでさえ、狙撃に対抗する手段がないのに、柊はこれを見れば間違いなく動きを止める。それは恐らく一瞬だが、当真に取っては充分すぎるほどの時間だ。
そしてそれは来た。
柊が崩れ行く廃墟を眺めながらなにか呟く。
話に聞いていたより効いている。隙だらけだ。
当真は迷うことなく引き金を引く。さっきより距離も近い。迅を経由してからでは絶対に間に合わない最高の弾。
撃った瞬間に当たるのが分かる。
柊の方から反響音が響く。それも3発。奈良坂と古寺も撃ったらしい。まぁ確かにあれを見逃したら狙撃手失格だ。
そんなことを考えているとふと、当真は違和感に気がついた。
――反響音……だと?
もう一度スコープを覗けば霧島の体の回りにはひび割れた3枚の半透明な板。
「はぁ!?うっそだろ!」
思わず叫ぶ。
そんな訳がない。それこそ迅のように予知でもしてなければ無理だ。
必死に頭を回すが答えにはたどり着かない。突如頭が回った。比喩ではない本当に宙返りした時のように視界が回転した。そして自分の体がその目に映った時察した。自分は斬られたのだと。
「くっそ、今度は当ててやる」
そんな捨て台詞を吐き当真は緊急脱出した。
***
「悪いね。ウチの相棒がお怒りなんだ。こっちも本気で行かせてもらう」
迅はそう呟いて『風刃』を振るった。
「避けろッ!!!」
太刀川の鋭い叫びもむなしく菊地原の首が飛ぶ。
「ついに抜いたか、風刃」
仲間がひとり斬られているというのに太刀川は心底楽しそうに笑った。
まるで『風刃』と戦えるのが嬉しいと言わんばかりに。
もちろん太刀川もバカではない。『風刃』にひとりくらい落とされるのは織り込み済みだ。なんの問題もない。
ふと柊が口を開いた。
「問題ない。とか思ってる?」
「……さぁな」
「それ間違いだよ」
「なに……?」
刹那、背後から3本の光が弧を描き、ある方向に向かって戻っていった。
「なっ……!」
それを見て誰もが声を失う。
『風刃』は目に届く全ての範囲に斬撃を伝播させるトリガーではなかったのか。
「まさか……」
唸るようにして言ったのは風間だ。
「佐鳥を使って位置を補足したのか……」
「せいかーい。いやぁ嵐山たちには迷惑かけたよ。なんせひとり少ない状態で耐えてもらわなきゃいけなかったんだから」
だとすれば廃墟を破壊し、射線を通したのは下策だったのかもしれない。
柊を怒らせ、狙撃手たちの場所が割れてしまった。そこに畳み掛けるようにして迅の『風刃』が抜かれた。
――いや、違う。
射線を通したのはベストな判断だったのだ。
下策だったのは霧島柊という最大のジョーカーを怒らせたこと。
だが、それでいい。
――そっちのほうが面白い。
迅の力が柊の援護を得て迅がより強くなるというのならその迅を倒してこそ本当の決着だ。
太刀川はニヤリと笑って2本目の弧月を抜いた。
決着の刻は近い。
個人的にグラスホッパーの可能性は無限大だと思ってます。あれってなにに反応して弾いてるんでしょうかね。
利便性も高いし強いと思うんですけどあまり使われていないってことはたぶん扱いが難しいんでしょうね。
新たに5人の方に評価をいただきました。ありがとうございます。
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