霧島柊。
柿崎、嵐山、月見さんに迅なんかと同い年のピッチピチの19歳組。ただしまだ誕生日を迎えてないので18歳。社畜。
来馬辰也
血液の代わりに優しさが流れ、思いやりという皮膚で包まれた菩薩。
村上鋼
厳しい自己鍛練を重ね者だけが出来る髪形、デコだしの正当後継者。強い。
別役太一
悪意がない悪という邪悪の権化。近い内に『ハイウェイ・トゥ・ヘル』という能力に目覚める可能性が濃厚。
今結花
太一が起こすトラブルのせいでお菓子を貪り、柊が持ってくる和菓子を貪って他のオペレーターより寸胴というシルエット的特徴を手に入れた。オペレーターの中では一番好きなキャラ。
※来馬さんの年齢を間違っていたので修正しました。
どうも社畜です。今日は現場から天気をお届けしたいと思います。
本日の天気は晴れ時々境界民、さらに背後から銃弾が飛んでくるでしょう。
ほら今まさに私の耳のすぐ横を弾が掠めました。だんだん精度が高くなっていきます。
「って、太一ィィィィ! 狙ってんだろ!」
「すいませぇぇぇぇん!」
訂正です。
本日の天気は晴れ時々凶弾の雨。さらに悲鳴が鳴り響くでしょう。
***
「はぁ……ネイバーに殺される前に太一に殺されるところだった」
「ハハ……確かにすごかったね……」
「撃つ弾撃つ弾キリさんに向かってましたからね」
「違うんですよ!俺が撃ったタイミングでちょうどキリさんが射線に入るんですよ!」
俺は鈴鳴第一の、いや、この世の悪の権化別役太一隊員のこめかみを掴み持ち上げた。
「別役隊員……アレは来馬さんに場所空けてたんだ……そうしないと俺が来馬さんに蜂の巣にされるだろうが……」
「あぁぁ! 痛いっす! キリさん! 砕けちゃいます!」
「なぁに大丈夫だよ、死にはしない、ただちょーっと浮遊感に襲われるだけだ」
「それ
「……」
「無言は止めてほしいっす! 助けて下さい! 来馬せんぱぁぁぁい!」
「柊くん、本人も反省してるみたいだしそろそろ……ね?」
来馬さんは弱小支部のリーダーでしかも太一くんのやらかしたことに謝りまくるというなかなかの苦労人だ。それに俺の死事を手伝ってくれるまさしく菩薩の如きお方だ、しかたない。パッと手を離す。太一くんがぐえ、とか言いながら地面に倒れこむ。
「うぅ〜いって〜」
「いってー、はこっちのセリフだ、足削られてんだぞこっちはよ」
言いながら太一くんを小突く。
最初の一発は流石に予想が出来ずにギリギリ当たってしまった。ホントに勘弁してくれよ、俺のトリガー
緊急脱出いじってぶっ壊しちゃったから鬼怒田さんにもなかなか言い出せず、寺島さんにこっそり直してもらおうにもいかんせん死事が多過ぎてまとまった時間が取れないのである。社畜は辛いよ。
「しかし村上くんは強いね。ボーダー入って1年ちょっとだとは思えないよ」
「いえ、そんな俺なんてまだまだですよ、それにすごいのは荒船ですしね」
「そっか、そういや荒船くんに剣を教わったんだっけか」
「はい、実験台って言ったほうが正しいのかもしれませんけど」
村上くんはそう言って薄く笑った。ホントにそう思ってないのは誰でも分かる。
まぁ俺はあんまり荒船くんとは接点ないんだよな、荒船くんが攻撃手ならともかく今の荒船隊とはちょっと相性が悪いからなぁ。
「おっ、話をすれば荒船隊っすよ」
見れば黒のジャージに白ラインのアクセント、そしてトレードマークの帽子。
隊員全員狙撃手というとがりまくった戦法でB級10位までのしあがった。とがった戦い方は割りと好きなので個人的に応援している部隊のひとつである。
「あ、キリさん。今日は鈴鳴と一緒なんですね。」
「たまには組みましょうよ、ウチとも」
「いや、そうしたいのは山々なんだけど君たちと組むと俺役立たずだからさ」
「そりゃそうっすね」
「半崎くん、そこはフォローしような?」
どうして俺の後輩というものは遠慮というものをしないのだろうか。狙撃してきたり、タメ口だったり、ナメてたり……はぁ、鬱になってきたから止めよう。
「村上くん、君だけだよ、最初から俺に敬語使ってくれたのは」
「キリさんは強いですからね」
「いやいや、んなことないよ村上くんの方が10倍くらい強いでしょ」
「まさか」
村上くんは首をすくめて小さく笑った。
空気が弛緩してきたその時耳をつんざくような警戒音。ネイバーである。
「俺ら……っていうか俺のせいで荒船くんたちがセットアップできてないから俺は手伝っていくよ。時間稼ぎくらいならできるしな」
「それなら俺も手を貸しますよ、荒船に恩を売っておくのも悪くないですしね」
「ハッ、やられないように気をつけろよ」
「そっちこそ」
『座標誤差0.82! ゲート開きます!』
鈴鳴第一のオペレーター今結花ちゃんの声が脳内に響く。そういや今日はやけに静かだったな。そんなことを思いながら俺はレイガストを構えた。
***
今日も今日とて甘ったるいマッカンを啜りながらの残業である。
なぜか俺の机に山積みになっている他の隊の報告書の山を切り崩しているんだが一向に減る気配がない。理由は分かっている。だいたい太刀川隊ってとこと影浦隊ってところが悪い。
まぁ、報告書を書くのは百歩譲ってよしとしてやるよ。
でもね、なんで毎回毎回貯めてから渡すの?月末はマジで死にそうなんだからね?
これは一応特別手当てが出るからあんま文句も言えないしなぁ……。でも死事が多過ぎて使う暇がないんですけどどうなってんの?これブラック企業ってやつなんじゃないの?
しかしそれを誰に言えばいいんだろうな……。直属の上司?忍田さんもあの人苦労人だしな...鬼怒田さん……も働きすぎだし……あれ?ボーダー、ブラック企業じゃね?あぁでも、そういや林藤さんがいたわ。あの人大抵暇そうだもんなぁ。いいなぁ玉狛、俺も転属したいなぁ。
そんな下らないことを考えている内に手元にあった書類が全て終わっていた。
おぉ……ついに無意識の内に死事をしてしまうとは……もうダメかも分からんね。
そんな時ふと扉の開閉音がした。見ればそこにいたのは意外な人物だった。
***
鈴鳴第一オペレーター今結花はランク戦以外ではあまり訪れないボーダー本部の廊下を足早に歩いていた。
今日は本当に心臓に悪かった。太一が放った弾丸で柊が被弾したのである。
それは太一のミスであり、自分が気付けなかったせいでもある。それだけは絶対に防がなければいけなかったのに。
柊のトリガーに緊急脱出の機能がついてないのは有名なうわさだ。
曰く、
―――霧島柊は死ぬためにわざとベイルアウトを外している。
確かにそう考えればあれだけ多くの防衛任務に参加していることにも合点がいく。
しかしあの柊がそんなことをするだろうか、戦闘中彼はほとんど攻撃をせずに味方を生かすことだけに全ての力注いでいる。
本当に死にたいのならば攻撃手にでもなって特攻するのではないだろうか。
だから今日はそれを確かめる目的が4割謝りたいという気持ちが6割である。
普段柊が仕事をしている部屋のドアを開ける。
そこにはやはり机に山積みになった書類の間から驚いたように目を丸くする柊の姿があった。
「どうしたの今ちゃん、こんなとこまできて」
「ちょっと謝りたくて……」
「今ちゃん俺になにかしたっけ?」
「太一の弾をキリさんに知らせるのが遅くなっちゃって……そのせいで……」
今日の戦闘で柊は今までにないくらいの傷を負っていた。少なくとも鈴鳴第一と組んでの防衛任務での話だが。
「アレは今ちゃんせいじゃないでしょ。太一くんのせいもあるけど、ちゃんと打ち合わせてない俺も悪いしね」
柊はそう言ってゆるりと笑った。
ズルい、結花は内心そう呟いた。こうやって全部ひとりで背負い込もうとするところもそれがまったく苦に見えないところも。
「……でもキリさんのトリガーって緊急脱出がついてないんじゃ……」
「……まぁね、てかなんで今ちゃんが知ってんの?」
「それは……人づてに聞いて......」
「……迅か……あのやろうぺらぺら喋りやがって……」
罪を擦り付けてしまった今ここにいない実力派エリートに手を合わせながら結花は言葉を次いだ。
「それは、どうしてなんですか?」
「うーん、どうして、か」
柊は困ったように頭を掻きながら笑った。
そしてしばしの時間をかけてポツリと呟いた。
「壊れちゃったから。かな」
これ以上はもう聞けないと思った。この話はここで終わりだとそう柊の目が語りかけていた。
それを見てしまった瞬間無理矢理笑顔を作り明るく装った。
「そうなんですか、あ! すいませんお邪魔ですよね私もう帰りますね!」
「え、いやこんな時間だし送るよ」
柊の言葉も聞かずに部屋を飛び出した。これ以上ここにいたらなにかが溢れて止まらなくなってしまいそうだった。
***
ボーダーの資料で1度だけ見たことがある。四年前の第一次近界民侵攻まで柊はチームを組んでいた。
そのメンバーのひとり、如月楓。同時に彼の彼女であり幼馴染でもあった彼女はその第一次侵攻で亡くなったという。その場に残っていたトリガーを解析して分かったことだが死因は緊急脱出が作動しなかったことにより生身でネイバーと相対することになったことだという。
柊のトリガーホルダーはなぜかボロボロだった記憶がある。
そして今まで聞いた柊の言葉を足した結果結花の中にひとつの仮説が生まれた。
―――霧島柊は死のうとしている。しかも彼女のトリガーを使って彼女と同じように。
そう考えれば全て説明がつく。だって如月楓のポジションは射手だったのだから。
だがそれをどうしても認めようとしない自分がいるのも確かだ。
あの笑顔が、優しさが、死を望んで戦場に立つ人間のものだとは思えない。
そこまで考えて結花はベッドに倒れこんだ。
これではどこまで行っても堂々巡りだ。結論がどこまでもでない。
本人に聞く勇気なんてない。だって怖いじゃないか、この仮説が当たっていたら。それはもう自分には振り向いてもらえないということの証左だから。
そんな考えを振り払うようにして結花は枕に顔を埋めて小さく呟いた。
「私もあなたみたいに見れたらいいのに……」
結構急いで書いたのでそのうち書き直すこともあるかもしれません。
来週からはまとまった時間がとれるようになるのであと2、3話くらいやって原作突入するのではないかと思われます。どうか気長にお待ち下さい。