社畜。志岐小夜子を讃えようの会会長。
那須玲
かわいい、枕投げしたい。
熊谷友子
大きい、とにかく大きい。胸枕してほしい。
日浦茜
太刀川、二宮と並ぶ剛の者。なんとなく太一と同じ匂いがする。
志岐小夜子
那須隊の隊服をデザインしたすごい人。男性とは話せないが柊とは2文節以下であれば問題なく会話できる。
溜まりに溜まった死事を全て片付け心地よい解放感包まれながら俺はスキップでもしそうな勢いで廊下を歩いていた。
太刀川隊も遠征に行ったしもうしばらくは太刀川隊の死事はしなくていい!やったねたえちゃん死事が減るよ!
そんなことを考えているとふと背後から声をかけられた。
「こんにちは。柊さん」
「おぉ、那須ちゃんに熊谷ちゃん。今からランク戦?」
「はい、柊さんもどうですか?」
「そうだなー。しばらくランク戦してなかったし、行こうかな」
「久々に指導してくださいよ」
「うーん、俺から二人に教えられることはもうないんだけどなぁ」
俺には弟子が3人いる。その内の二人がこの那須ちゃんと熊谷ちゃんだ。どちらも優秀なかわいいかわいい弟子だ。
そんな会話をしながらランク戦ブースに入るとなにやら集まってわいわいとやっている集団を見つけた。その内のひとり小柄な少年が駆け寄ってきた。
「柊さーん! ねね、一緒に模擬戦やろうよ!人数足りないんだー」
「悪いね緑川くん、俺この二人とランク戦やるって約束してるからさ」
「えー、じゃあ那須せんぱいとくませんぱいもやろうよ。それでいいでしょ?」
「二人がいいならそれでいいけどさ」
視線をスライドさせ二人を見る。二人はお互いの顔を見合わせてこくりと頷いた。
「だって! やろう柊さん!」
「はいはい、分かったから引っ張んないでね緑川くん」
俺の言うことをこれでもかというくらい聞かない緑川くんに引っ張られるまま連れていかれた先には毎度お馴染みのメンバーがそろっていた。
「こんちわー」
「なんだなんだ女の子二人も侍らせて、この女ったらしがよ!」
「諏訪さんがこの前のランク戦で蜂の巣にされた那須ちゃんは俺の弟子です。ちなみに、その一個前のランク戦で諏訪さんをぶった斬った熊谷ちゃんも俺の弟子です。」
「う、うるせぇバカやろう! てかなんでそんなに俺のランク戦に詳しいんだ!」
「……それはこういう時に諏訪さんに言い返せるからですよ」
俺がそう言うとなぜか堤さんと荒船くんニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「なんすか……」
「いやぁそれは……ねぇ? 荒船くん」
「そうっすよねぇ? 堤さん」
「なんだい、はっきり言ってくれよ」
「弟子の活躍が嬉しくない師匠なんていないよねぇ?」
「柊さんは自分の弟子大好きだしねぇ?」
「……ノーコメントで」
いや、そういうのは本人には言わずにいるのが暗黙の了承な訳で、決して言ってはいけないブラックボックスで、それになんか恥ずかしいし、とにかく!絶対ダメなものなのだ。どれくらいダメかっていうと太刀川さんの成績くらいダメ。
あんまりこの話を続けられると一方的に俺が恥ずかしいだけなので話を元に戻すことにする。
「よし! みんな模擬戦やろうか! チーム分けしましょ! チーム分け!」
***
「ひっでえ戦いだったな」
「そうですね、作戦とかほとんど関係なくなってましたし」
「でもおれは楽しかったですよ」
「そりゃあお前が好き勝手やれたからだろ米屋!俺らは那須に潰されたんだっての!」
「確かに那須せんぱい強かったねー。今度おれとランク戦しよーよ!」
「それはいいけど私が活躍できたのは柊さんのおかげだからあんまり期待しないでほしいな……」
なぜか視線が俺に集まる。え...なに?なんかしたっけ俺。
「だいたいお前もお前だ柊! こっちの手全部潰してくれやがって!」
「痛い痛い! 暴力反対!」
「あー、もう腹立つ! 今からランク戦だ、行くぞ!柊!」
「パワハラだ!熊谷ちゃん助けてくれ!」
一番近くにいた熊谷ちゃんに助けを求めるも熊谷ちゃんは困ったように笑ってすっと目をそらした。
「あー、いいなおれも柊さんとランク戦したい。よねやんせんぱい行こーよ」
「おう、いいぜ」
お前らじゃない!お前らは俺を殺しに来るだろ!
「ダレカタスケテー!」
***
「ふー、取った取った」
諏訪さんはランク戦を終えてストレスを発散できたらしいなんだか肌がつやつやしている気がする。米屋くんと緑川くんに至ってはすごい楽しそうにランク戦を振り返っている。
その反面俺はといえばポイントも精神もがっつり削られてお家にベイルアウトしたい所存である。
「おい、いつまで気にしてんだよ。たかが2:8で負けたくらいで」
「落ち込んでないっすよ! ただ……ただなんで俺今日休みなのにこんな戦ってんだろうなとなんだろうなと思って……」
「……なんか悪いな」
俺の社畜っぷりを知っている諏訪さんは申し訳なさそな顔をして呟いた。
「謝らないでください……余計辛くなります」
「あぁ……わりぃな、なんだ……その……メシでも行くか?今日はおごってやるから」
「よっしゃー! 米屋くん! 緑川くん! 諏訪さんがメシおごってくれるってよ!!」
「「マジで!?」」
「なっ! 柊てめぇ!」
フーハハハハ、やられっぱなしは性に合わないのでねぇ。やられたら3倍で返さなきゃ。
「はい! おれ焼き肉!」
「俺ラーメン!」
「すし!」
「好き勝手言うんじゃねぇ!てかおごるなんて一言も言ってねぇぞ!」
「いーや、確かに諏訪さんは言ってましたよ!」
「それはお前と行くってことだ! バカ!」
「後輩にご飯もおごれない経済状況なんですか? 緑川くんこんな大人になっちゃダメだよ?」
「あー! もう分かった! 分かった! おごってやるよ!」
計画通り、と某月君のようにほくそえむ。
ここまで来ればもう若者に任せてしまって大丈夫だろう。
「ラーメンでいいな?」
「えー」
「えー」
「YES! YES! YES!」
「よし、賛成多数。ラーメン行くぞー」
諏訪さんの呼び掛けに俺は親アヒルに付いていく子アヒルの如くついていく。米屋くんたちはぶーぶー言いながらなんだかんだついてきている。
そんな時正面から不機嫌そうな顔をした青年が歩いてきた。
「陽介、今日は防衛任務だろう」
A級7位三輪隊隊長、三輪秀次くんである。ちなみに俺はなぜか嫌われている。
「あ、やっべー。かんっぜんに忘れてた。悪い!秀次。つーことなんで諏訪さんおれ今日はパスです」
「おー、がんばってこいよー」
諏訪さんはテキトーに手を振りながらそう言った。俺も諏訪さんと同じく手をひらひらと振っていたのだがいかんせんボーッとしていたようで三輪くんとすれ違う時に肩が軽くぶつかってしまった。
刹那、頭の中に熱湯でもぶちこまれたような感覚を覚えた。
―――雨が降っていた。いつまでも降り続ける土砂降りの雨が彼の体を濡らしていた。
「キリさん? 大丈夫ですか?」
「……あぁ大丈夫だよ、気にしないでいいから防衛任務行っといで」
「そうですか……じゃあお言葉に甘えて行ってきまーす」
「おー」
「いってらー」
ふぅ、とひとつため息をつく。いつ見てもこれはしんどい。見たくないのに、見てしまっていつも後悔するのに俺は見てしまう。
「おい! お前ホントに大丈夫か? 具合悪いなら解散するか?」
「大丈夫です……と言いたいところなんですが今回ばかりはお言葉に甘えさせてもらいます」
「そうか、送るぜ。本部の宿舎でいいな?」
俺は首を横に振った。それだけで諏訪さんは分かってくれたらしく俺を死事部屋まで連れていってくれた。
扉を開けて着替えることもなくベッドに泥のように倒れこんだ。
***
那須隊攻撃手、熊谷友子は那須とのランク戦を終えた帰り際ロビーから出ていく柊たちを見つけた。
声をかけようとしたのだがなにやら柊の様子がおかしかったのでそれは憚られた。
だがなんだか気になってしまったのでこっそりと柊と彼を介抱しているらしい諏訪の後を追いかけた。
ふたりが向かった先は作戦室を改造して作ったという柊の仕事部屋だ。諏訪は柊を部屋の前まで送ると手をひらひらと振りながらその場を離れた。
熊谷はそこに導かれるように歩み寄った。そしてノックをふたつ。
しばし、間延びした声がドア越しに聞こえた。
「……どうぞー」
熊谷が扉を開ければそこにはにベッドに深く腰かけた見慣れた青年の姿。しかしいつも見ている青年より少し疲れているように見えた。
「あれ、てっきり諏訪さんかと思ったんだけど。なに師匠にデートのお誘いかい?にしても寝床まで来るなんてアグレッシブだね」
「そんな訳ないじゃないですか!」
むしろなにかあったのはそっちの方ではないのか。
この人はくだらないことでは騒ぐくせに本当に大変な時にはひとりで抱え込んでしまうから困る。
「……もしかしてサイドエフェクト……ですか?」
柊の目がすっと深くなった気がした。
「……ただ明日の死事のこと考えてたら具合悪くなっちゃっただけだよ。サ○エさん見てしまって憂鬱になっちゃう人いるでしょ、あれと一緒」
「じゃあ……なんでそんなに傷ついた顔してるんですか」
「だから……」
「柊さん」
熊谷は揺らぎのない目で柊を見つめた。
対した柊はおどけたように手を上げて「降参」と小さく呟いた。
「そうだよ、サイドエフェクトの問題だよ。三輪くんのを視ちゃったんだ」
吐き捨てるように柊はそう言った。
柊のサイドエフェクト『過去視』
発動条件は不明。体に触れることで発動するということしか分かっておらず、それも完全にランダムで、発動する時もあれば発動しないときもある。
それに視えるものも本人にはコントロールできない。ただ間違いなく言えるのは
「人の視られたくないものばっか視てさホント最低だよな」
人の一番視られくないものしか見えない。ということ。
柊は自身のサイドエフェクトを嫌っている。その大きな理由がこれだ。人の心の傷を無遠慮に視てしまうという特性故に。
だがそれを違うのだと熊谷はそう思う。しかしそれをうまく言葉にできない。ただ漠然とした感情が自分の中に渦巻いている。
「……あたしは……」
「やさしいね熊谷ちゃんは、いいよ無理に庇おうとしなくて」
やめてくれ。彼女は切に願った。そんな顔をさせたくて言った訳じゃないのに。むしろ見たかったのはその逆だったのに。いつだって自分の伝えたいことは伝わらなくて、伝わってほしくないことばっかり伝わってしまう。
「すいません柊さん、あたし帰りますね」
「あ、それなら送っていくよ」
「ありがとうございます、でも大丈夫です」
「そうかい、それなら気をつけて帰りなよ」
熊谷はこくりと頷いて扉に手をかけた。
「それじゃあ、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
***
星が綺麗な夜だ。と思った。
冬が近づいてくるとこうやって星が綺麗な日が増える気がする。
でも冬は嫌いだ。
星が残酷なまでに遠くなってしまうから。
今回飛ばした模擬戦は要望があれば別の機会に書こうかと思ってます。
...そろそろサブタイ考えるか...