社畜に恋は難しい   作:小林 陽

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霧島柊
綾辻の絵の唯一の理解者。たまに絵を描きあって見せあったりしているらしい。らしいというのもそれを見た人間の記憶が定かではないためである。社畜。

迅悠一
セクハラ、無職、実力派エリート(自称)と並べるとわりとダメ人間。

綾辻遥
柊に絵をべた褒めされたせいでボーダー屈指の破壊力をもつに至った美人オペレーター。一時期柊との合作を作戦室に飾っていたが城戸司令の命により撤去された。
ちなみにステルスを使ってそれを回収した風間隊は順位を10位ほど落としたとか。



4話 戦う社畜

 あ...ありのまま今起こったことを話すぜ!『死事が減ったと思ったらいつのまにか増えていた』

 な...なにを言っているかわからねーt(以下略

 太刀川隊、風間隊、冬島隊が遠征に出掛けて早一週間俺の防衛任務に入る回数はほとんど倍になっていた。

 死事が減ると言ったな、あれは嘘だ。

 ボーダー内でも結構防衛任務を入れている太刀川隊が遠征に行ってしまったためその穴を俺が埋める羽目になったというわけだ。

 しかし、俺ひとりでは防衛任務はできない。

 つまり俺が誰と組むことになったかというと

 

「ふぃ〜疲れた〜。ぼんち揚食う?」

 

 俺にぼんち揚を差し出してくる軽薄そうな男、迅悠一である。こう見えてひとりで一部隊に換算されるほどの戦闘力をもっている。

 

「あぁ、もういっそ一袋くれ」

「帰ったらいくらでもやるよ」

「じゃあ一箱な」

 

 テキトーな会話をしながらぼんち揚をかじる。

 カリッと香ばしく、ほんのり甘い淡口醤油味の後引くおいしさ、ほど良い大きさに軽い食感とのバランスの良さ、やはりぼんち株式会社様から発売されているぼんち揚はうまい。

 ちなみに俺は雪の宿の方が好きだ。

 そんなことを考えていると迅がパッと顔を上げた。

 

「お、来るぞ」

「もう来んの?なんか今日早くないか?」

「イレギュラーゲートってやつだろ、ほらおでましだ」

 

 目の前の空間が割れ、そこから蠍のような形をしたネイバー、モールモッドが6匹。それに続いてまだまだ出るらしい。

 

「はぁ……勘弁してほしいぜまったく……」

 

 切実な願いをひとつもらし俺はレイガストを起動させた。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 眼前にはモールモッドが6体、バムスターが10体、バンダーが3体がそれぞれ威嚇するかのように柊たちをじっと見ていた。

 

「迅、行くぞ」

「オッケー相棒」

 

 柊はそう声をかけ迅の足元に掌大の大きさの台を展開した。

 迅はそれを足場にまるで宙でも駆けるかの如くバンダーへ向かっていきビームを放つためにチャージされた目を切り裂いた。

 風刃を振り切ったまま落下する迅の足元に再び台―グラスホッパーが展開されていた。そこに着地しバンダーの目の高さまで飛び上がった。

 自分の腰元にあるグラスホッパーを踏んで勢いそのままに横一閃。残り2体のバンダーを沈めた。

 

「ナーイスアシスト柊」

「知ってる、いいから終わらせるぞ」

 

 言いながら柊は左手から立方体を出現させた。それがほろほろと崩れそれぞれ十分の一ほど大きさの立方体になった。銃手用トリガー『変化弾(バイパー)』である。

 それをモールモッドの関節に放つ。弾はまるで吸い込まれるようにして関節部分に着弾し破壊していった。

 迅がほとんど身動きがとれなくなったモールモッドを狩るのを尻目に柊はバムスターの前に躍り出る。

 いくら柊が弱いとはいえ流石に正隊員だ。バムスターくらいはひとりで倒せる。

 手始めに、バイパーをバムスターの目に向けて発射した。もちろん弾数が少ないため倒れたのは一番近くにいた一体だけ。

 隣にいたバムスターの足元に入り込み四肢を斬りつけて機動力を削ぐ。もちろんバイパーを使うことも忘れない。

 戦闘というのは基本的に数が多い方が有利だ。もしもの時のために出来るだけ数は減らしておくに限る。

 バムスターの足元から転がり出ると迅がほとんどバムスターを倒してしまっていた。

 残るは2匹。

 柊は迅と自分の足元にグラスホッパーを起動し飛び上がった。しかしバムスターも学習してきているのかガチンと口を閉じ急所を守った。

 まぁだからなんだという話なのだが。

 

 ――くらえ、レイジさん直伝。

 

 ぎゅっと拳を握りしめた。

 

 衝撃のぉぉファーストブリットォォォ!!!

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 嵐山隊オペレーター綾辻遥は画面の前で言葉を失った。

 

 一体これはなんだ?

 

 遥が所属する嵐山隊は隊長の人柄のせいか連携を重視する隊風だ。

 しかしそれでもこのような連携はみたことがない。いやそもそもこれは連携と言えるのだろうか。お互いに言葉も交わさず淡々とネイバーを屠るその姿は正しく異常であった。

 柊の援護能力が高いのは知っていた。それこそボーダーの中でも一、二を争うほどなのだから。だがこれほどなのか、先程の戦闘にかかった時間は1分と少し。2体を除いて全て迅が討伐しているというのにこの早さはいくらなんでも早すぎる。

 だがこれは紛れもない現実……のはずだ。遥はぐにー、と頬を引っ張った。

 痛い。

 どう考えても現実だ。

 だが現実というにはあまりにも……。

 思考が堂々巡りしていた遥の耳に聞き慣れた声が聞こえた。

 

「綾辻ちゃん?回収班に連絡してくれる?」

「え、あ!はっはい!今すぐ!」

「……大丈夫?」

「大丈夫です!全然大丈夫!」

 

 そう言って遥は通信を切り回収班に連絡をした。回収班の人にも「……大丈夫?」と同じ反応を返されたのは秘密だ。

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 なんか綾辻ちゃんにしてはやたらハイテンションだった気がするが死事のしすぎだろうか、華のJKまで死事付けにするとかボーダーマジブラック。

 でも俺もその一端を担っちゃった訳だからなぁ。今日は普段俺たちのオペレーターをやってくれる宇佐美ちゃんが休みのためどうしようかと悩んでいたところ丁度通りかかった綾辻ちゃんが

 

『私でよければやりましょうか?』

 

 と言ってくれたのである。マジ女神。まぁそんな女神の休みを潰して死事をさせてしまっているわけだが。どら焼き買っていくか……。

 そんなことを考えていると迅が伸びをしながら呟いた。

 

「いやー、やっぱ柊とだと楽だわー」

「……まぁそうだな」

 

 それについては同感だ、ボーダーの中じゃこいつが断トツに合わせやすい、いちいち説明することもないし。絶対言わないけど。

 

「やっぱ玉狛にこない?みんな歓迎するぜ?」

「遠慮しとくよ、色々と面倒なことが起きるでしょ」

「そこだよなー、いっそB級になればいいんじゃない?」

「バカ言うなお前。俺を殺す気か」

 

 ボーダーの給与システムは

 A級:固定給、出来高払い

 B級出来高払い

 となっている。ぶっちゃけ俺の戦闘スタイルだと出来高ではとてもやっていけない給料になってしまうのだ。

 

「まぁいいだろ、そんなことは。それよりこれってあとどれくらい来るんだよ」

 

 言いながら俺は足元に転がるトリオン兵の残骸を指差す。正直この規模で数多く来られると俺のトリオンがヤバい。どれくらいヤバいかというと国近ちゃんの成績くらいヤバい。

 

「うーん、まぁ言ってもあと三回って感じかな?規模はさっきのより小さいから大丈夫じゃないかな?」

「……そうか」

 

 読むな、読むな心を読むな。

 

「にしても、あのイレギュラーゲートってなにが原因なんだ?お前なんか見えてないの」

「まだ見えてないけど、たぶんそう遠くない内に解決すると思う」

「サイドエフェクトがそう言ってんのか?」

 

 俺がそう聞くと迅はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「おれの勘がそう言ってる」

 

 はぁ……。これが自分の元チームメイトだと思うと……。そのせいで未だにセクハラされたって俺に言ってくる沢村さんが何人いることか。

 

「そういえばお前熊谷ちゃんにセクハラすんのやめろよ?」

 

 あの子迅さんにセクハラされたって言いながら俺に飯を要求してくるんだぞ。そのせいで毎回俺が那須隊の飯代を俺が払わねばならないのである。解せぬ。

 

「……あぁそりゃ悪かった。弟子大好きな師匠的には許せないよなー」

「……うるせぇよ」

 

 俺は言いながら迅の尻に蹴りをいれた。

 沢村さん敵はとった。

 だからどうか俺の死事を減らしてくれないだろうか。

 

 

 




さんざん引っ張った主人公の戦闘スタイルは援護特化という。まぁだからこそいっぱい防衛任務に入ってる訳なのですが。

評価をくださった四人の方本当にありがとうございます。嬉しくて軽く小躍りしていたら家族に見つかって死にたくなった作者です。
感想、ご意見、評価お待ちしてます。
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