社畜に恋は難しい   作:小林 陽

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今回からちゃんとサブタイ考えます。どう見たってちゃんとしてないとか言ってはいけない。
あと原作突入です。


※8月5日加筆修正しました。


7話 いっけな〜い、遅刻遅刻〜☆

 イレギュラーゲートの原因は『ラッド』と呼ばれるトリオン兵だった。当然ボーダーとしては駆除を即断したのだがいかんせんラッドは量は多くとても当直のチームだけでは対処できない量だった。

 そのためC級隊員まで動員した大規模作戦となった。

 ご多分に漏れず俺も参加しここで一徹。

 その後それの事後処理と期限がきた死事の片付けで二徹。

「さすがにこれ以上働いたら死んじゃいます」と忍田さんに泣きついたら休みをもらえた。泣いた。そりゃあもう忍田さんがドン引きするほど泣いた。

 泣きつけば休みがもらえるのか。じゃあこれからは人目も憚らずわんわん泣こう。かっこわるすぎる。

 そんな下らないことを考えながら玉狛支部へと戻り、そのまま自分の部屋へ。

 着替えもせずにベッドにダイブした俺は一瞬にして眠りに落ちた。

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 朝、それは世界で一番憂鬱な時間であり辛い時間だ。

 この「はぁ……今日も死事かぁ……」と考えた時の辛さは異常。それが明日もなんだよなぁ……とたどり着いてしまった日にはもうダメだ。休みたくて仕方なくなってしまう。

 まぁ休みなんてもらえないんだが。

 寝ぼけた頭でそんなことを考えながら扉を開ける。

 

「おはよー」

「おはよ、柊」

「おはよー、柊さん」

 

 宇佐美ちゃんと迅はなにやら小学生くらいの子どもを接客中だったのでボソッと呟く程度だったのに律儀に返してきた。二人そろって地獄耳だな。

 やっぱ寝足りないなぁ……。コーヒーで目が覚めるか怪しいレベルで眠たい。

 パンをトースターに入れてから、至って普通のインスタントコーヒーに砂糖と牛乳をたっぷり入れる。そして隠し味に練乳をたーっぷりと。

 これで完成マッカン風コーヒー。練乳を入れるのはマッカンの特徴である。むしろ練乳にコーヒー入れたらマッカンになるレベル。

 あらかじめ焼いておいたトーストをとってテーブルに座りマーガリンを塗り一口かじり、コーヒーとともに流し込む。

 ふぅ、と一息。

 うん、うまい。

 

「で、その子たちはどなた?」

「それを聞くまでにコーヒーとトーストが必要なんだな」

「当たり前だろ。俺の血管にはマッカンが流れてるんだぞ。あとちなみにマッカンな」

「マッカンとコーヒーは別物なんだな」

 

 当たり前だ、マッカンをコーヒーだなんて言ったら各所から苦情が来るぞ。特に千葉と茨城から。

 

「話が逸れてるよ。迅さん、柊さん」

「おぉ、そうだね。ありがとう宇佐美ちゃん。で、どういうこと?」

 

 俺がそう言うと迅はなにやらかしこまって白い髪の子の頭に手を置いた。

 

「実はこいつは……」

「それは小南にだけでいいから。本題。」

「せめて最後まで……」

「本題」

「はい分かりました」

 

 迅は喉の調子を整えるようにンンッと咳払いした。

 

「こいつらはウチの有望な新人たちだ」

「……まさかまだC級か?」

「まぁメガネくんは違うけどね。こっちの遊真と千佳ちゃんはこれから入隊するんだ」

「……そうか」

 

 一瞬考え込みそうになってしまったがメガネくんや小さな少女の訝しげな目線を向けられているのに気がつき慌てて口を開いた。

 

「あぁごめんね。俺は霧島柊。本部所属の社畜だ。」

「これはどうも。空閑遊真です。よろしくシュウさん」

 

 小柄で髪が真っ白な少年が軽く手を上げて挨拶をしてきた。割りとフランクなやつらしい。

 

「あ、あの僕は三雲修です。こっちが雨取千佳」

 

 メガネくんは小さな少女の方へ手を向けてそう言った。

 少女――雨取ちゃんはペコリと頭を下げる。

 ……なんか……こう癒されるな……黒江ちゃんと同い年ぐらいなんだろうけどまた違うかわいさがあるね。

 

「って、やっば!もうこんな時間じゃねぇか!」

 

 慌ててトーストを口に入れてマッカン風コーヒーで流し込んだ。そしてバタバタと用意をして支部を出る。

 

「そんじゃ、行ってきます!」

 

  俺はしゅたっと手を上げてそう言うと返事も聞かずに飛び出した。

 まさかこの年になってリアル「いっけな〜い、遅刻遅刻〜☆」をやるとは思ってもみなかった。

 それなりに体は鍛えている方なので本気で走ればそこそこ早い。このまま行けばギリギリだが間に合うはずだ。

 しかし運命というものは余程俺のことが嫌いらしい。こういう時に限ってフラグを、それはもうものすごい早さで回収しておくのである。

 曲がり角を曲がった瞬間俺の目の前には女の子にしては大柄な女子高生の姿。

 ドンっと割とシャレにならない勢いでぶつかってしまったためお互いに転んでしまった。

 

「ッ〜、いった〜って柊さん?」

「熊谷ちゃん?……そんなことより!大丈夫?結構な勢いでぶつかったけど」

「あー、いえいえ大丈夫ですよ。ほら私デカいですし」

「でも女の子なんだから。ホントに大丈夫?頭打ったりしてない?」

「……大丈夫です」

「なんか顔赤いけど、痛いの我慢してない?」

「ホントに大丈夫ですッ!学校遅刻しちゃうので行きますね!」

 

 そう言って熊谷ちゃんはどこぞのジャガーのようにピューと走っていってしまった。

 ホントに大丈夫なんだろうか……後で那須ちゃんに探り入れとくか……。

 そう思ったのも束の間、俺は走り出していた。理由は簡単メールを送ろうとケータイを開いたら時計を直視してしまったからだ。

 まぁどんな時間だったかはあの様子を見ていた人間なた簡単に推測できるだろう。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ばっかもん!!!」

「痛い!!」

 

 鬼怒田さんの怒号とともに垂直にチョップが頭に刺さる。

 

「いくら遅刻しそうだからってトリオン体になって走るやつがいるか!このバカもんが!」

「面目次第もございません……」

 

 あの後間に合わないと察した俺はトリガーオンして全力ダッシュなんとか間に合ったもののトリガー使ったところを見られていたらしく鬼怒田さんにバレて雷が落ちた、というわけである。

 

「……もういい。仕事だ」

「……死事かぁ……。なにするんでしたっけ?」

「この前のトリオン兵の解析だ。昨日話しただろう」

「あーそうっすよねー」

 

 正直まったく覚えていない。昨日はホントにただの死事マシーンだったからな。

 だがまぁ解析といっても大層なことをするわけではない。このトリオン兵がどこの国のものかを過去のデータと照らし合わせて調べるという誰にでもできる雑用だ。

 昔新トリガーの開発に積極的に関わっていたことから俺はこうして雑用に呼ばれる。

 俺はなぜかある俺の席に座りパソコンを立ち上げた。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 ボーダー本部会議室。月に二、三度ほどしか使われないそこでは連日会議が行われている。

 議題はもちろん――

 

「玉狛のブラックトリガーの件だが」

 

 そう口火をきったのはボーダー本部司令。城戸正宗だ。

 

「遠征部隊が帰ってくるまで3日を切った。それまで霧島を拘束しておきたい」

 

 黒トリガーに三輪隊が敗北した時点で城戸はすでに遠征組と連絡を取っていた。

 状況を説明し作戦が決まり次第連絡を寄越せと伝えておいたのだ。

 そしてこれが始まる少し前太刀川から連絡があったのだ。

 さしあたって襲撃日時だけだったものの約3日間あるのだ。それなりに作戦も煮詰めることができるだろう。

 柊がいることも含めて作戦を立てるとのことだが出来るだけ不安要素を消しておきたいのだ。

 

「だがあいつの仕事の早さは異常だぞ。今日はとりあえずウチで木っ端仕事をさせたが全部片付けおったわ」

 

 柊のあの仕事の早さはおそらくサイドエフェクトに裏打ちされたものだと鬼怒田は考える。

『過去視』の能力的なものではなくもっと副産物的な。いわばサイドエフェクトのサイドエフェクトというべきもの。

 柊の過去視は自分の脳に人の過去が流れ込んでくる感覚なのだという。

 つまり自分のものではない体験を直接見せられるということである。

 人が感じた数分。あるいは数時間かもしれないがそれを一瞬で受け止めるのにはそれ相応の器が必要なのだ。

 それ故脳が進化していき、処理速度が上がったのだろう。

 それが柊の仕事が出来る所以であり、警戒する所以でもあるのだが。

 

「ですが、今はちょうど月の真ん中ですからねぇ。3日間も彼を縛るような仕事もありませんし」

 

 悩ましげに言ったのはメディア対策室長根付栄蔵だ。

 

「防衛任務を入れればいいだろう。幸い霧島はどこに入ってもある程度こなせるわけだし」

「ですがそれを命令するのは忍田本部長ですからねぇ」

「じゃあどうするというのだね!」

 

 正に一触即発……というか鬼怒田が根付に噛みついているだけのような気がするがそんな空気の中外務・営業部長唐沢克己はふーっと煙を燻らせた。

 

「唐沢くん、君はどう思う」

「そうですね……私なら何らかの理由をつけてトリガーを没収しますかね」

 

 全員がほう、と息を吐いた。なるほど、その手があったか。と。

 

「理由はなにかでっち上げればよかろう。それこそメンテナンスとでも言えばいい」

「……いいだろう、霧島の動きはそれで止めることにする」

 

 城戸のその言葉でその日の会議は解散となった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 一方その頃那須邸にて。

 

「キャー、くまちゃん愛されてるぅ」

「玲……お願いだからやめて……」

「えー、だって送られてきたんだもん」

「もん。とかかわいく言ってもダメなものはダメなの!」

 

 まったく、この幼馴染はおとなしそうな見た目のくせに人の恋愛事情になるとすぐこうやって人をからかい始めるのだ。

 ずいぶんニッコリとした笑顔を浮かべた那須がケータイを熊谷の方へ向けた。

 そこには柊から送られてきたメールの文面が開かれていた。

 

 《to那須ちゃん:今日熊谷ちゃんとぶつかって転ばしてしまったのでどっか怪我してないか見てやってください。君も知ってると思うけどあの子は隠しちゃうので。お願いします。》

 

「くまちゃんこれ……いる?」

「…………ください」

 

 

 

 

 ***

 

 

 

「うわー、霧島愛されてるぅ」

「テラさん……お願いだからやめてください……」

「いやー、だってこの光景を見たらそうとしか思えないもんな」

「死事が恋人ダメ絶対。」

 

 だろうなぁ、とテラさんことチーフオペレーター寺島雷蔵さんは呟いた。

 まぁ確かに今の俺の状況を見れば仕方がないのかもしれない。

 俺のデスクの右側にはやりおえた富士山が。左側にはなんと東京タワーが。

 鬼怒田さんにもらった死事を全部片付けたため帰ろうとしたところを鬼怒田さんに見つかり

 

「じゃあ……これでもやっておけ」

 

 と、自分のデスクにあった死事を俺にぶん投げてきた。なんだよじゃあって完全に今考えたことじゃねぇか。

 思い出しても腹が立つ……あんのクソタヌキ……

 俺が憎悪の炎に身を焼かれているとピロンと軽い電子音が響いた。

 どうやらテラさんにメールが届いたらしい。

 それを開いてしばし。テラさんは訝しげな顔をしてケータイを俺に向けた。

 えーとなになに。

 

 《to雷蔵:まだ霧島が残っとったら伝えろ。メンテナンスをするからトリガーを置いていけ。と》

 

「お前なに、トリガー壊したの?」

「いえ、そんなことないですけど……」

 

 まぁ……壊してないし!壊れたんだし!

 それを差し引いても、なんかおかしい気がするんだよなぁ……。まぁ理由の見当はついてるが。

 

「テラさん、お願いなんすけど俺はもう帰ったことにしてくれませんか?」

「確かにこの命令も変だしな……。いいけど鬼怒田さんに言うんじゃねぇぞ」

「了解です」

 

 はてさて、これまた面倒な予感がするぜ。

 

 

 

 

 




原作突入しながらもことごとく原作イベントを回避して昭和のラブコメを始めた社畜。なにしてんだこいつ。
三回くらい書き直したんですがこのパターンが一番しっくりきました。

新たに16人の方に評価を頂きました。ご意見、感想、評価お待ちしております。



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