主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師 作:理想の人形師
『やるだけ、やってやるさ』
「マスター、起きて。もう明るい時間だよ」
「さっさと起きるです!じゃなきゃ一発ぶちかますです!」
「はいはい…わかったよ……って言うか、なんでぶちかますんだよ…」
アリスゲームの幕は上がってしまった。
現に水銀燈との2度も対峙をしたからだ。
昨日のところは戦う力を根こそぎ削いで何とかなった。ただ……
「目を覚ますのならぶちかますのが一番だからですぅ!」
……騒がしいのが増えたなぁ、と思った。
信じられるだろうか?あの常識のあって静かな蒼星石の姉が、こんなにも活発と言うかなんと言うか、暴力的?だとは…
「今、失礼な想像した気がしたですよ!」
「してない!してないって!」
昨日のセリフが嘘のようだ。
体をポカポカ叩かれる。
力入ってる様で、結構痛い。
それが恩人に対する態度かお前は!
「ご、ごめんねマスター…翠星石は感情表現がちょっと荒々しいなだけだから。」
「余計なことを言うなですぅ!」
…ローゼンメイデン第3ドール、翠星石。
それがさっきから俺の体を叩く彼女の名前だ。
昨日いろいろとあり、結果として俺の所に潜伏することになった。流石に俺が2人のマスターをするのはきつい物があるだろう。
他のマスターを見つける間、ここを居城にすればいいという提案をして、それが承諾された。
マスターがいない状態で、外を出歩くなど自殺行為も甚だしいだろう。それを見かねて、ここに潜伏しろと言ったわけだ。と言っても、あまり効果はないかもしれない。現に水銀燈にここを襲撃されたわけで、完全に隠れている場所がバレているわけだ。
「ふぁーぁ……全く、今日はそんな急ぎの用でもあったのか?俺まだ眠いんだけど……」
「寝てばかりいると体がなまるですよ!」
「でも、昨日と一昨日と、戦いの連続で疲れてるって言うのは僕もわかるかな」
…自分でも気づいてなかったな。
そう言えば、荒事の連続だったんだな…
道理で妙にだるかったりするわけだ。
ただ、呑気に休息を取れるほど事態は余裕ではない。俺のすべき事は、全ての戦いをどちらも勝たせず、どちらも負けさせない。いわば、俺が介入して力ずくでも止めるという事だ。その為、俺の目の届く範囲ならまだしも…他のドール同士で争いが始まったらが一番危ない。
一番警戒すべきは水銀燈だろう。好戦的な彼女なら誰彼構わず襲い掛かりかねない。
そして問題は、俺はまだ7人の内3人しか見ていないのだ。第2、第5、第6、第7ドールを俺は見ていない。この中で始まってしまえば、俺が救援に向かうには辛い。
…俺の身体が持つかどうか、わからない。
まぁ、やるだけやってやるさ。
「……うぁー、まぁ翠星石の言ってることも間違えじゃないしな。心配してくれてありがとな、蒼星石。」
「う…うん。」
「翠星石も、注意ありがとう。」
「えっ?そ、そーです!お前の為を思って言ったんです!感謝して欲しいです!」
おだてればすぐに乗ってしまうから不安になるな、翠星石は。でも俺の一番は蒼星石…って、俺は何を思っているんだ。
…今日くらいは何も起きない気がする。一時の平穏が訪れて欲しいものだ。だからと言って、戦いが起きて欲しいという訳では無い。あくまでも…いや、もうしつこいな。俺自身でも思う。
なんか気分転換になるものでもないかと思うのだが、ゲームはあまり無いし、何か出来るものもない。となると…出かける程度しかできない。かと言ってふたりを置いていくわけにも行かない。むぅ……
「ねぇ、マスター。」
「ん?どうした。」
「僕、まだ外を見たことがないから外を見てみたいんだ。」
まさかの言葉だ。
確かに、外をあまり見たことがないだろう。
とは言え、彼女達は人形だ。流石に外に出す事は出来ないのだが…どうやって連れ出したものか。
「って言ってもなぁ…どうやって外に連れ出せば良いか分からないしな…」
「あれとかはどうかな?」
そう言って指差されるのはリュックサック。
洗ってはいるが、あまり使っていない。
…もしかして、あの中に入るってことなのか?
「あれなら僕がちょっと見えるところにいれば大丈夫だよ。」
リュックの留め具を外しておけと申すか。
まぁ、いいんだが。
取り敢え準備をする。立っていると危なさそうだから、適当に本を土台として詰め込み、タオルを敷いてで座れるようにする。これなら別に大丈夫だろう。
「翠星石は来ないのか?」
「えっ、私は…」
「一緒に行こう?」
「う……分かったです、行きますよ!」
俺はただ聞いただけなんだが、蒼星石が完全に強要してしまった気がしてならない…いや、行こうと言っただけで付いてきたのは翠星石なんだが。そんな事はどうでもいい。
一応暑くて熱中症にならないように水も入れて、準備はオーケー。
「ほら、入れ入れ。」
2人はリュックの中に入ってちょこんと座る。
見たことのない外の景色は、どんな物なのかと楽しみだろうな。俺も見せてやりたいと思ってたし、俺自身外に出たいと思っていたので、ちょうど良かったし、いいだろう。
行く場所は特に決まっていないが、その扉を開け、外の光を浴びた。
久々だ、陽光を浴びるのは。
だが、また別の光が俺の目に差し込む。
その光は…
「…!?」
ごめんなさい更新遅れた挙句こんなひどいクオリティでごめんなさい!今回は8.5話としてと思ったのですが、悩んだ結果9話として投稿しました。
話の最後に気づいたものとは何か、お楽しみに!
『やるだけ、やってやるさ』