主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師 作:理想の人形師
「……うぉっ!?」
外の光を浴びた。
しかし、俺の目の前に入ってきたのはもう一つの光。ピンク…桃色の淡い光がこちらへ向かって飛んできたのだ。
その光は、俺は確かに見たことがある。
蒼星石にも、翠星石にもある、あの光…
人工精霊だ。
「ベリーベル?何で君がこんなところに…」
そいつの名をベリーベルといった。
確かそれを持っていた人物は……
ローゼンメイデン第6ドール、雛苺。時々話に出ていたはずだ。一番幼いであろうドールのはずだ。
「まさか、ちび苺に何かあったです?」
「……何とも言えねぇな、蒼星石…頼むな」
「うん……でも、人工精霊が自分から来るのはほとんどないはずなんだけど…」
蒼星石は人口精霊と対話している…
どうも、嫌な予感がするんだ。
ローザミスティカと同義である人口精霊が、どうしてただ一つここに来ている?
「…マスター、まずいよ。雛苺はいま、第5ドールの真紅のマスターと契約してるみたいなんだけど、襲われてるらしいんだ。」
「…だろうと思った。場所はわかるか?」
「うん、ベリーベルから教えてもらうよ。」
……どうも、休める時間は無いようだ。
昨日と同じ相手とやり合うのは、御免だな…
「…マスター、結構遠いみたいだよ……あと、相手はまた水銀燈らしいんだ」
「あいつも懲りないもんだ、分かった…とことん邪魔してやるとするか」
そういうと聞こえが悪いのだが。
それに追加してもう一つ、言われた。
「あともう一つ…もう1人、様子見をしてるドールがいるようだね」
………今までより、乱闘になりそうだ。
良いだろう、倒さなければいいんだ。
場外に吹っ飛ばすなら負けたことにはならないだろう。
「となると残ってるのは第2ドールの奴だけか。」
第1ドールの水銀燈は襲撃者。第3ドールの翠星石と第4ドールの蒼星石は今ここに。第5ドールの真紅と第6ドールの雛苺は被害者……さらに様子見しているものがいるとするならば、第2ドールの奴だけなのだが…
「待ってくださいです!それだと、姉妹全員が揃うことになって…余計に危ないですぅ!」
……そうだ。翠星石が、鋭いところを付いてきた。
全員が集まってしまうという事は、一度にすべてのローザミスティカを奪われる可能性が少なからずあるわけだ。
さらに言えば、その真紅と雛苺という奴が味方とも限らない。相当なリスクがありすぎるが…わざわざ人工精霊をこちらに寄越すという事は、不味い状態である事は明らかだ。だが…
「だが、俺は行く。理由なんてわかるな?蒼星石は。」
「うん。『誰も負けさせない』為だよね」
「その通りだ、理解が早くて助かる…来てくれるな?」
「もちろん。翠星石も来るよね」
「…分かったです。そこまで聞いて、この翠星石が黙ってるわけがないですぅ!それに、私だって、姉妹が争うのはいやですから。」
『誰も負けさせない』為に。
その
双子はどちらも手伝ってくれるそうだ。
…済まない、二人共。この我侭に、少し振り回されてくれ。Nのフィールドを使うことの提案があったが、入り口がない。なら現実世界で行くしかないだろう。家に止めてあるバイクのエンジンを掛ける。
「早めに行きたいからコイツで行く。スピード全開で行くから飛ばされないように注意しろよ」
「えっ、それは危ねぇですぅ!」
「でも、その方が早く付けるから我慢して!」
少し危ない方法だが、鞄を少しだけ開けて視界を確保できるようにして、背負い込み、バイクに跨る。
そのエンジンの出力を最大にして。
「飛ばしていくぞ!」
全速力で、救援に向かった。
ここまででも相当辛いのを、ここでパァにされてたまるか。
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「ここなんだね?ベリーベル。マスター、止めて。」
「了解、この家だな。」
とある家の前に走らせていたバイクを止める。この家の内部でまたゴタゴタが起きてるようだから、俺が止めなければ。
「来たという知らせは?」
「大丈夫ですぅ。今しがた行ったです。」
気づいたらベリーベルが居なくなっている。
二階に上がって知らせに行ったのか?
「ごめん!お前が蒼星石のマスター?」
「ああ。ベリーベルに呼ばれてここに来た」
「とにかく上がって!奴が来ていてこっちもマズいんだ!」
中からは中学生ぐらいと見える少年がいた。
その少年もきっとローゼンメイデンのマスターなのだろう。中で戦いが起きているのは確かなようだ。
俺が行けば少しはましになるだろう。
急かされてそのまま靴をさっさと脱いで駆け上がった。
「真紅!呼んだ奴がなんとか来てくれた!」
「ええ、これで私達が勝てるわ」
「真紅、よそ見しちゃだめなの!」
駆け上がった先では赤を基調とした服装のドール…ローゼンメイデン第5ドール真紅と、水銀燈、そして怯えながらも戦っているローゼンメイデン第6ドール雛苺がいた。
当たりには赤い花びらと、あの時に見た黒い羽が散乱している。撃ち合った後のようだ。
危ないところを雛苺の力でなんとか切り抜けたようだが、これはあまりにもまずい。
「げっ、あの時の…!」
「1日ぶりか。お前も懲りないもんだな」
真紅と雛苺とジュンという少年は全く何のことかさっぱりだろう。いや、少しは知ってるはずだ。そうでなければ俺達を呼べるはずがない。
「……一番面倒なのが来たわね…どうせまた、私を止めるなんていうんでしょぉ?」
「その通りだ、話が早くて助かる」
昨日も言ったはずだ。
俺は勝たせはしなければ負けさせもしない。
それが俺の弾き出した
「面倒ね……興が削がれたわぁ。今日のところは帰ってあげる…ああ、そうだ…蒼星石のマスター、リント。昨日だか一昨日だかの発言、忘れないでよぉ?それじゃあねぇ〜…」
「………つくづく覚えてる奴だな、アイツも」
張り詰めた空気は俺が駆けつけた瞬間に緩んだ。
まぁ、昨日やり合って面倒だという事は分かったからこそ引いてくれたのだろう。それだけでも戦った意味があるというものだ。
内心でそう思っていたのだが、赤いアイツはこちらへ疑惑の視線を向けてきた。
「…貴方、何者?水銀燈が何もせず帰っていくのは普通ならありえないはずだわ。」
「真紅…助けてくれたお兄さんに失礼なの。」
真紅の言う事は最もだろう。一番警戒すべき者が人1人来た程度でこちらは手を出してなどいない。それで何もせず引き返すほどと言うならば確かに何者かという疑問も出てくるだろう。雛苺も、実際には疑念があるだろうが…そういう言葉をかけてくれたのは嬉しかった。
「俺は蒼星石のマスター。それ以下でも、それ以上でもない」
「…つまり、そういう事ね」
俺はヤツと2度やり合った程度だ。
だから俺が特別なわけでもない。
ただの1人の『人間』に過ぎない。
「…でも貴方は、私たちと似た気がするのだわ」
「うーん…雛も、むずかしい事はわからないけど何となくそんな気はするの!」
「さぁな、蒼星石も似たようなことを言ってた。どんな意味かは未だに分かってなくてね」
似た気がする、か。
その意味がどうなるかによっても全てが変わる。
同じ考えを持つものか、それとも…
同じ『モノ』なのか。
今俺が考えたところでその答えは出やしない。
まだ奴とはここで目を合わせたばかりだ。
「はぁ……蒼星石のマスター、助かったよ」
ジュンという少年がこちらへ礼の言葉をくれる。
「礼を言われる事はしてないさ…それに、自分でやりたくてやったことだ」
そう、『俺』の為に動いたに過ぎないんだ。
他のローゼンメイデンのドールたちからしたら、要らない介入でしかない。完璧になる為に動いているのだから、俺は寧ろ邪魔でしかないんだ。
自分勝手だという事はわかっている。
でも、それでもその先にあるものを見据えて。
最後に
「…ヤツが呟いてたとおりだ。自分の理想を追い求めるが為に、自分の意思で動くマスターだと。お前の視る理想はきっと…僕も共感できるものだから」
「ふ……随分とお前といいあいつと言い、口達者なもんだな。…どうせならここで言っていてやる。俺がどういう形であろうが、お前達のアリスゲームに介入している間はこのゲームを終わらせはしない。」
お決まりとも取れるだろうが、俺の言う言葉は一つだ。
『誰も勝たせないし、誰も負けさせない』
今回はJUM君、真紅、雛苺との邂逅でした。
次の話で本格的に話すらしいです(適当((おいィ
日常を書くとか言っておきながらそこまで日常でもない…と思いながら書いてました。
次の話もお楽しみに待っていてください!
『お前の視る理想はきっと…僕も共感出来るものだから』