主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師   作:理想の人形師

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Act:12 理想の枷

「そんじゃあ、邪魔したな」

 

「ああ……今日は助かった。」

 

あの交渉の後、また少し他愛もない話や、ドール達の平和な時間を見ていたらもう日が落ちてきていた。流石にそろそろ帰らなくてはまずいのでこれから帰るところ。

今日は様々なことがなかったとはいえ、重要な事があった日ではあった。

 

ジュンを媒介、及びマスターとした二人のドールとの接触、そして情報はあれど未だに出てこない隠れたドール…そして、未だに姉妹たちでも正体のわからない第7ドール…

まだ時間はかかりそうだ。ただ…真紅のあの言葉は、俺に深く刺さった。

 

『……私は、アリスゲームを制する事は放棄しない。あくまで、私の方法で制するのが私の目的。』

 

……この言葉が何度も、俺の頭の中で再生される。…やはり、俺も思うところがあるようだ。

 

「…マスター?行かないのかい?」

 

「ぼさっとしてると置いてくですよ!」

 

「ああはいはい、そんじゃあまたな?」

 

「ああ…」

 

「今度は遊びに来るといいの!雛たちは歓迎してるの!」

「今回は巻き込むような形だったから、今度は普通にくるといいのだわ」

 

「何勝手に決めてるんだよ真紅!ここは僕の家だぞ!」

 

2人はぎゃんぎゃん騒いでいる。雛苺は真紅側について言い合っている…こういうのがいつまでも、なんて言うのが俺の理想だったり…なんてな。自然と頬が緩んでしまう。

隣で見ている蒼星石も、俺の方に顔を向けて微笑んでいた。翠星石もうるさいと言っているが、その表情はどこか優しかった。

 

願い。その感情を持つ事は、きっと悪いことではない。だが…どうしても。どうしても俺は何かが引っかかって…心苦しいと言うのだろうか?どうしても、何かが晴れない。

 

「…マスター?本当に大丈夫なのかい?」

 

「……大丈夫。」

 

また心配をかけてしまった。

本人はなんて思っているか…随分と心配をかけさせてしまうだなんて、情けない。それに、嘘をついてしまっている…そこの部分を含めて…申し訳ないと思う。

 

「ほら、行くぞ。」

 

綺麗に染まった夕空の道へと足を踏み出した。

 

 

「……リント、何か隠してたですね」

 

「……」

 

コイツという奴は…隠してるってことをわざと言いやがった。俺が隠し事をするって事は、理由があってのことだとは思ってくれないのだろうか…?そう思ってしまった。

隠してる相手が目の前にいるところで…いや。でもこの疑問をぶつけるには、丁度いいタイミングを作ってくれたのかもしれない。

 

「………俺は………」

 

「……」

 

「俺は、自らの願いでお前達を縛り付けていないか…そう思ったんだ。」

 

あの言葉で、ようやく気付けた。

本来であれば、彼女達が選ぶ選択肢の一つにしかならない…いや、なってはいけないこの願いが、彼女達を縛り付けているのではないか…そう思っていたんだ。

彼女達は、選ぶ側。俺は、その選択肢を増やすことしか…だが、それが枷になっている…そう考えてしまった。

俺の考える事は、俺自身では間違っていないと思っている。だが…それを強制させてしまっているのではないか。俺の無意識のうちに…。だから俺はこう聞いた。

 

「…何を言っているんだい」

 

「何言ってるですぅ?」

 

「だから…!」

 

双子からのダブルパンチだ。

流石にこれは堪えるものが有るな…

でも、俺はふざけたことを言っているだろうか?

 

「…さっきも言ったよね。僕自身が、マスターの考えに賛同しているって。だから、僕は大丈夫。」

 

「…お前の考えは、全く持って私と同じです。だから私もこうして協力してやるって言ったですぅ。」

 

……そうじゃ、無いんだ…

俺は……

 

「俺のこの答えで、本当のお前達の願いを、潰しているんじゃないかって…そう思った…」

 

顔を伏せて。

暗い声でそれを呟いた。

 

時に人が正しいと言う言葉は、無意識のうちに他人が持つ願いをかき消す。俺自身は、自分勝手な答えだと思っている。でも、そうしなければ…そう思った。彼女達はそれを正しいと言った。今の俺は、誰も勝たせない、誰も負けさせない。それが俺の願いだ…

でも、ドールたちからしてみたらどうだ?

アリスになること…それだけが願いのようなものだ。俺の願いとは背反する。誰も殺させない…つまり、誰もアリスにはなることができない。

それを、彼女達から見て枷という他ないんじゃないのか?

 

「……ばっかですねぇ、お前は」

 

「…うん、僕も…そう思ったよ、翠星石。」

 

「…馬鹿……?」

 

馬鹿と言われた。

…あの時と同じ感情がこみ上げてくるが、必死に耐える。何なんだ、俺の心を、蔑ろにして…

 

「私は、私の意思で動くんです!それこそ、お前ごときに私の思想の邪魔をされたらたまったもんじゃねぇーです!これが私の中で一番の方法だと思ったから、お前について行くことにしてるんですぅ!」

 

「……僕は君に嘘はつかない。…あの時言ったよね、対等だって。だから、僕は僕の考えを君に話す事だって出来るんだ。主従という上下でなく、契約者という平行な立場なんだから。だからこれは、僕の紛れもない本心なんだ」

 

……帰ってきたのは、真っ直ぐな本心。

彼女達も…確かな『心』を持っている。

俺は…いつも強気でも、本当は臆病だったんだ。自分の事を言うだけ強く言っておいて、後から他人の顔色を伺うなんて…馬鹿らしい。双子の言ったとおりじゃないか。

 

「……本心、か。……人形たちの方が、余程しっかりしてんじゃないか…馬鹿らしい。俺としたことが…本当、馬鹿らしいな」

 

「…でも、その理想を生み出したのは君自身…だから、僕達が気付けたのは君のお陰だよ…」

 

「だから、こうして協力してやれる事になったじゃないですか」

 

…慰めのつもりなんだろうな。

本当、粋な真似をしてくれるよ。

……やるんだ。ここまでの後押しがあったなら、もう止まる事は許されない。

 

「蒼星石。翠星石。……俺の幻想…俺達の理想のために、その力を貸してくれるな?」

 

「勿論。僕の力は、マスターの為に。」

 

「仕方が無いですねぇ……まだ契約はしてないですけど、やってやろーじゃないですか!」

 

「………ありがとう。」

 

情けないマスターだが……

よろしく頼む、蒼星石、翠星石……

 

この心の答えを、改めて現にする為に。

遠い道のりをまた往こうじゃないか。




今回は短くなってしまいました。
そして、遅れながら評価がつきました!
★1と★9と両極端ですが、まだ自分の文は抜けているところが非常に多いと思っています。この評価を参考にしてこれからも頑張ろうと思います!



『私達は、私達の意思で動くんです』


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