主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師 作:理想の人形師
「……マスター、もう寝たかな…」
辺りに光は無く、有るとしたら遠くの燐光程度の光が指す。あたりは静まり返り、聞こえてくるのは彼のすーすーという寝息程度。全員が眠りにつき、深い夢の世界に行く時間帯に僕は起きた。
僕は心の庭師。
人なら誰もが持っている心の木を育ててあげるのが僕達の仕事。僕は雑草を取り払って、心の木の成長を促してあげる。そのためにこの鋏があるのだから。
幸い、彼の心の木へ行くための扉は開いている。
「お邪魔するね、マスター」
同じく寝ている翠星石も起こさないように、その扉へと入った。
人の夢に入るのは、これが初めてじゃない。
「………ここが、マスターの心の木がある場所…」
そこには背景と言える背景はない。
あの時、nのフィールドに来た時のような…
ただ白だけが支配するその世界。…
立つ所にただ波紋が広がるだけ。
正面に目をやれば、そこには普通の大きさの木が立っていた。
でも、それはあまりにも不自然で、角張った葉、細すぎる枝、何かが集まったかのような幹…
それはもう木ではなく、正確に言えば
『木の形をしたスクラップの塊』
とでも言えばいいのか…
本来であれば、本物の木がここにある筈だ。
でも、ここにあるのはタダのオブジェのようなもの。
……これは、何を示唆しているのか…
スクラップ……金属……
連想していくと僕の頭の中には、一つのことが浮かんだ。
「……マスター、君は……」
マスターに同じ感じがしたのは、この事なのか。
君と僕は、こんな形で同じだったのか。
……いいや、こんな考え方はあまり良いとは言えない。
でも、示唆しているものは確かにそうだとしか考えようがない。
マスター……
「……僕は…………」
それでも僕は、彼に事実を伝えなければならないのかもしれない。
マスターが、『■■■■モノ』である事を……
僕は、マスターの夢に入っている夢を見ているだけなのだろうか?
これが、もし本当だとしたら……
いや、それでも僕は……
彼に付いていく。
人の理想を持つ、素晴らしきその思考の元に。
僕は付いていくと決めたんだ。
あまり長居しても疲れてしまいそうだ。
スクラップに絡みついた蔦を見て、少し、何かを考えた。
この雑草は、彼自身の心の成長を妨げるもの。
本当に考えた通りなら、こんなものは出てこないはずだ。
少し安堵した。
「……レンピカ。」
人工精霊の名を呼ぶと、大きな金の鋏になる。
鋏で蔦を断ち、せめてもの手入れをした。
「……無言で入ってごめんね、マスター。」
そう一言言い、彼の夢から出ていった。
非常に遅れた挙句、ここまで拙く短い文ですみません。
今回はリントの何かを示唆する回でした。
そろそろシリアスの合間になにか入れていきたいなと思います。
次回もまた見てください。
『人の理想を持つ、素晴らしきその思考の元に』