主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師   作:理想の人形師

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この回はAct:2のリメイクとなります。
大半は変わっていませんが、変更点がところどころあります。気をつけて下さい。


Re.Act:2 幽玄の魔術と契約の指輪

彼女がそう言い始め、少し目をそらした瞬間…

 

外に黒い翼ははためいた。

 

「あれは……」

 

目を凝らしてみれば、幾つもの鋭い黒い羽はこちらへ向かって飛んできていた。それはまるでナイフが飛んでくるかのように。このままでは、彼女が危ない……

 

……おかしい。

俺の身体は自然に動いていた。無意識に。

彼女を護るかのように。

 

「蒼星石!危ないッ!」

 

「えっ、何だい……!?」

 

咄嗟に蒼星石を抱えて庇う。

鋭く羽はいくつもの場所に刺さっていく。

急な襲撃で、彼女も理解はできていないだろう。

そして彼女を物陰に隠そうとした瞬間……

 

「……ぐっ……!」

 

鋭い痛みに顔を歪ませる。

羽の何本かが肩に刺さっていた。

それは、痛みも伴うわけだ。

その痛みを耐えながらも蒼星石を物陰に隠れさせる。

 

「マスター…!あれは僕が……!」

 

「聞け、今はまだお前のマスターじゃない」

 

「!……」

 

突き放すような言い方で、そう言う。

だが俺が言いたいのは、彼女と契約をしたくないということではない。俺が言いたいのは、まだマスターじゃないならば、俺の自由は効くはずだ。

だから俺は、静かにこう答えた。

 

「だから、今は俺が守ってやる。…飛び出すなよ、危ないからな」

 

蒼星石は静かに頷き、その物陰に隠れる。

 

「気をつけて、マスター」

 

…これでお構いなく使える、と小さく呟く。

肩に刺さった羽を無理やり引き抜き、動きに支障がないようにする。

 

「……大丈夫だ、お前は俺が…」

 

まだ遠くから飛んでくる羽を見透かし、目を瞑る。

静かに、集中し…

自分自身のリミッターのロックを一つ一つ解除していく。只者ではないこの力は、ずっと疎まれていた。こんな平和な時に使うはずが無い。だが、俺は……

 

自らの眠る『力』を集わせる。

自分のかける今の願い。それは彼女を守ること。

それだけでもこの力を使う理由には十分だ。もう一度、その力を集中させて形作る。

 

「I light , we bless the defense to the…(光よ、我々に護りの加護を…)」

 

呪われている。そんな言葉をかけられたことがある。

そんな力でも、何故だろう。彼女の前では…これも軽いものじゃないかと思えてくる。いや、彼女の運命と、何かを重ねているんだろうか?

 

「His magic is pay as my consideration(我が対価として払うは、自らの魔力なり)」

 

ローゼンメイデン……その哀しき運命に同情でもしたのだろうか?

ただ…そのゲームとやらに、勝たせてやりたい。

でもそれはきっと間違っている答えだ。

 

「Exercise the alchemy able to create the substance(この錬金の力を行使し 作り出せ その物質を)」

 

でも、今の答えは出ずとも……

護り続け、その答えを探し続けることは出来る。

 

「……Summons Shield of light!(現れよ、光の盾!)」

 

黒い羽を次々とかき消して行くその光。

神々しく眩しいその光は、二人を驚愕させた。

 

「!!あれは……!まさか……」

 

相手は困惑するだろう。

今目の前にいる人間は、幻の力を使っているのだから。

この世にあるはずのない力……

 

 

 

『魔術』を行使していたのだから。

 

 

 

俺の足元には光で描かれた魔法陣。

その柄や描かれた文字のひとつひとつに意味を成すもの。

燐光が舞い、光が伝う先を見れば…そこは俺の腕。

その腕から出されているものは、似た魔法陣による反射の盾。疎まれていた力はここに開放したのだ。

黒い羽は光にかき消され、跡形もなく消滅していく。

 

「……チッ、面倒ね………せっかく貴女を見つけてきたのに……ねぇ?蒼星石?」

 

「!」

 

「何か知ってるのか、奴のことを」

 

蒼星石の名前を出したこと、そしてそれに関して彼女が反応したことがどうしても気になる。まさかとは思うが……

でも俺は確証を得なければ済まない質だった。

だから俺は、彼女に問う。

 

「……あれは、ローゼンメイデン第1ドール…」

 

「「水銀燈」」

 

ローゼンメイデン第1ドール、水銀燈…

こんな奴があいつと違うやつが、姉妹だとでも言うのか……?

 

「あーらあらぁ?そんなに物陰に隠れて…腰が引けちゃったのぉ?それとも……この魔術を使える人間に頼みっきりかしらぁ?」

 

「蒼星石に隠れろと言ったのは俺だ。あいつが弱気なんじゃねぇ」

 

彼女を馬鹿にされ、少し気が立ったのか口調が若干荒くなる。ずいぶんとローゼンメイデンの長女様は人を煽るのがお好きなようだ。

 

「貴方には聞いてないわぁ、マスターでもない人間が口を出さないでちょうだい?」

 

「っ、マスターを馬鹿にするな!」

 

蒼星石は声を荒らげて言った。

だが俺は…腕を彼女の前に伸ばし、静止のサインを送った。それを汲み取ってくれたのか、彼女は落ち着きを取り戻す。

 

「……ああ、そうだな。俺は確かに、マスターじゃねぇな。」

 

「そうよ、だから…」

 

「だがそれは、『今は』なんだけどな。」

 

意味ありげに俺はその言葉を言い放つ。

口角を釣り上げ、不敵に笑う。

水銀燈は不服そうな表情をした。

 

「……その前に、だ。ルール上はまだ…アリスゲームとやらは始まってねぇはずだ。抜け駆けは無粋なんじゃねぇのか?」

 

「……そうねぇ、それに…貴方みたいな変わった人間がいるって言うのが分かっただけでも収穫かもねぇ……いいえ、もしかしたら……」

 

水銀燈は少し考えると、踵を返していく。

俺と同じ、不敵な笑みを見せながら。

 

「まだ、別のドールたちは目覚めていないようよぉ?だからまだゲームは始まらない……そのローザミスティカはしっかりと持っておきなさいよぉ?それは、私のだから…ふふふ。」

 

黒い翼の人形は、その翼をはためかせ戻っていった。

取り敢えず、なんとかはなったようだ……

 

「……なんとか、なったか…」

 

「はい、マスター…大丈夫ですか?」

 

肩に刺さっていた羽の傷跡がある。

そこからまだ鋭い痛みが走っている。

でも……彼女が無事でよかった。

俺の意識が……遠……のい……て……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「………と……」

 

俺を呼ぶ、声………?

誰だ……

誰なんだ……俺を呼ぶ声は……

この声……何か可笑しい……

気持ちが悪い。気分が悪い。

歪んだ声だ。

これは何なんだ…?

 

「……リント……お前は………」

 

俺の何かが拒絶している……

この声に、耳を傾けてしまってはいけない。

この夢は何なんだ?

この場所から、どうしたら出られる……

どうしたら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

「わっ…!?だ、大丈夫、マスター?」

 

冷や汗をかきながら目が開いた。

俺はまた夢を見ていたようだ。

でも、今度の夢は何かが違った。

なんだろう、思い出すのも嫌だ……

そんな夢だった。

 

 

「……悪い、驚かせちまったな。俺は大丈夫…」

 

「それならよかった……マスター、あの後にすぐに倒れて…」

 

水銀燈を迎撃した後、その傷と魔力の消費で倒れてしまったらしい。我ながら情けないと思う。

でも、蒼星石が無事なら良かった……

そんなことを思って、安堵のため息をついた。

 

「ごめんなさい、マスター…僕は……」

 

そう言おうとした蒼星石の頭にぽんと手を置いた。

 

「いいんだよ。それにまだ、契約はしてない。蒼星石が負い目を感じることは無いっての」

 

「でも…」

 

「俺がいいって言ってるんだ。だから、大丈夫だよ…安心しろ」

 

蒼星石はこの言葉を聞いて、表情を緩めて見せた。

見ていると可愛らしい。まるで、やっぱり生きているようだ。

 

「それで、マスター」

 

「契約……だろ?俺はどうしたらいい?」

 

彼女の言葉を聞く前に、言おうとしたことを言った。

あそこまでしておいて契約しないなんて言うのは、流石に酷いだろう。

 

「でも、契約した人は力を僕達に分け与えることになるんだよ?力が大きくなれば、負担も大きくなるし、最悪…」

 

「大丈夫だって言ってるんだよ。俺は前から体の丈夫さは取り柄でね。それに……生まれつきの魔力があるんだ。好きに使ってくれても構わない」

 

蒼星石はこくりと頷くが、俺はもう一つ二つ、追加で話した。

 

「ただし、条件付きな?」

 

「条件…?」

 

俺は蒼星石の方を向いて、微笑みながらこう言った。

 

「上下関係とかは無しな?守り守られ、立場は対等。これを承認してくれるなら、俺はお前のマスターになる」

 

「……でも…」

 

「堅苦しかったら一緒に居づらいだろ?それに、対等な方がより仲良く出来るし、より楽しい。そしていざと言う時も助け合える。俺はそのほうがいいと思ったんだ。…ダメか?」

 

少し、寂しそうに俺は言う。

そういう事は、今まで無かったのに。

何故かそんなことを口走っていた。

 

「はい……、マスター。」

 

「んー……そのちょくちょくある敬語も無くていい。普通に話してくれれば俺はそれでいい。」

 

「……うん…わかったよ、マスター」

 

二人とも微笑みながら話す。

思い出したかのように、蒼星石はとあることを聞く。

 

「そういえば……マスターの名前を聞いていなかったね。

マスターの名前は何って言うの?」

 

 

「俺の名前か?俺の名前は葉桜リント。」

 

 

「葉桜……リント……いい名前だね。」

 

「ふふ、ありがとな」

 

また微笑み、傍から見れば仲のいい少年と少女のように見えなくもない。そしてまた、本題へと話を戻す

 

「契約の方法は簡単だよ。この指輪をはめて、その指輪にキスするだけ。」

 

「了解……」

 

自分の薬指に指輪をはめて、その指輪に口付けをする。

その時、指輪が熱を持つ。焼けそうなくらいの熱さで、少し表情が歪むが…すぐに元に戻った。

 

「これで、改めて僕のマスターだね……これから、よろしくお願いします、僕のマスター、リント…」

 

「ああ、よろしくな…俺のドール…蒼星石。」

 

こうして、1組のマスターとドールが契約を交わした。




今回、主人公の名前と、魔術使用シーンが初出しました!
正直描写とかがすごく上手くいっていない気がするのですが…誰か教えてください!(懇願)



『今の答えは出ずとも…その答えを探し続けることは出来る』



追記
悪夢のシーンを大幅に変えました。
本来ならあそこは…(ネタバレのため伏せ)だったのですが、展開を変えようと思い、別の悪夢にしました。
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