主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師 作:理想の人形師
この回は Act:3 主の思い のリメイクです。
蒼星石との契約を果たした後、少しの時間が経った。
彼女の様子を見ているんだが…なんか、妙に寂しげというか…姉妹と殺し合う、アリスゲームに関して何かを考えているのか…。
姉妹なんだから寂しく、悲しくなるのも無理はないと思っている。だから…
「蒼星石。」
「…あ、うん?どうしたんだい?」
隣に座っている彼女の名前を少しを呼んでみて、その後にまたさっきのように頭に手を置く。丁寧に、あまり髪をぐしゃぐしゃにしないように優しく、この手で彼女の頭を撫でてみた。
この手で彼女の心を癒せるわけじゃないけど…でも、何となく。俺は自然と頭を撫でていた。
「ん……頭を撫でてくれてるのかい…?」
「……なんか、寂しげだったからな」
あまり動じていないように見えるが、その表情は柔らかくて、安心したように微笑んでいる。大丈夫だよ、と彼女は言っているが、なんとなく放っておけない。
静かに頭を撫で続けていると、蒼星石はとある事を話し始めた。
「そういえばまだ話してなかったけど、今回は僕の姉が一緒に居なかったんだ……」
「姉?ローゼンメイデンは全員が姉妹じゃないのか?」
俺はそう聞くと、蒼星石は自分の最も親しい姉の話を始めた。
彼女に最も近いローゼンメイデン…翠星石の話を。
「僕には、双子の姉がいるんだ。姉の名前は…ローゼンメイデン第3ドール…翠星石。いつもは翠星石と目覚めるんだけれど、今回は別々に目覚めたみたいなんだ。」
「別々か…確かに、俺の元に送られてきた鞄は蒼星石の物だけだった。本来であれば、その翠星石って奴の鞄も来るはずだったのか。」
「うん。翠星石と僕は2人でいて初めて意味を持つ…言わば、二人で一人って事なんだ。」
彼女の話によれば、蒼星石の持つ『庭師の鋏』と姉の翠星石が持つ『庭師の如雨露』が互いに無ければ意味を成さないらしい。彼女達は『心の庭師』。如雨露で水をやり、雑草を鋏で刈る。そういう意味で彼女達は二人で一人という事らしい。
俺はまた、酷いかもしれないがとある質問を投げかけた。
「……お前は、姉と戦うのは怖くないのか?嫌じゃないのか?」
「……もちろん、嫌だよ。でも…アリスゲームに勝つこと、それがお父様の望みであり、僕の望みだから。」
父の望みが、自分の望み。
彼女の答えはそう帰ってきた。
…それが、本当の望みと言えるのだろうか?
何も知らない、当事者でもない第三者の立場である以上、俺はそうかと単純な返事しか返すことが出来なかった。
俺が同じ立場で、同じ思いをしているとしたならば話は別なのだろうが。
きっと、全員が戦わずにゲームを終わらせる方法がある…
そう思いたいんだ。きっとそれは…叶わぬ幻想だけれど。
心は痛みながら、その傷口を抑えながら、その夢を見続ける。
俺が、この辛いゲームを終わらせられたらいいのに。
「………俺は…………いや、何でもない」
「?何か言いたいんだったら言ってくれても大丈夫だよ。」
彼女の心遣いが逆に心に刺さる。
きっと俺の心を出してしまえば彼女にとってまた酷いことを言ってしまうのかもしれない。だから俺は何も言えなかった。
「………マスター?」
「…ああいや、悪い…本当に何でもない。」
俺は心の中で、ローゼンと言うのは何がしたいのかと言うのが全く分からなかった。完璧な物を作り出したいがために、自らが生み出した者達を殺し合わせる…彼はきっと、どこかが欠けている。何かの感情か、何かの心か。
俺からしてみれば、いくら完璧でなかろうがそんな事をさせるなんて出来るわけがない。自分の生み出した物を壊させること自体に、怒りを感じるのに。その行動が、どういう考えをしても可笑しいと感じる。でも、それは所詮俺の考えであり、他の奴の考えではない。だからこそ俺はそれを強く言えはしなかった。
「………マスター、凄く気難しい顔をしてるよ」
「……そうか?」
段々、彼女に見透かされてきているかもしれない。
表情に出してしまっている俺も悪いのだろうが…
なぜ俺は、彼女と対等ではないのだろうか。
なぜ同じ『モノ』では無いのだろうか。
俺は辛い。主として、彼女の気持ちもわかってやれないのだから。
「……?どうしたの、また僕の頭に手を乗せて…」
「…悪いな、俺はお前を傷つけてたりしないか?」
「何を言ってるのさ、僕はそんなこと全く思ってないよ」
「そうか……それなら、良かった。俺はお前の主として…お前の気持ちを分かってやれてないんじゃないかって思って」
俺は少しの心の中を明かした。
ほんの少しだけれど、紛れもない本心で。
きっと、俺は主として相応しくないかもしれない。
でも、蒼星石は答えてくれた。
「何を言っているんだい?さっきのマスターらしくないよ」
「だが…」
「そういうのを気にするなって言ったのはマスター自身だよ。それに、まだ逢って間も無いんだから、そう簡単には分からないよ。」
…そうだ。まだ逢って時間も経っていない。
それでわかると思う方が可笑しいわけだ。
どうも俺は、先走り過ぎて盛大に転んだらしい。
よく転ぶドジっ子じゃないんだからよと内心思って、深呼吸する。落ち着かなきゃいけない、そう思いながら目を瞑る。
「…悪かったな、変な事言っちまったよ」
「いや、大丈夫だよ。むしろ…ありがとう。僕の気持ちをわかってくれようとしただけでも僕は嬉しいよ。」
嬉しそうに微笑んでくれる蒼星石。
可愛らしいな、もう。
…こんな物を見せられるから、余計に考え込んでしまうのかもしれない。でも、その為に悩み、探し続けるのは決して間違ってはいないはずだ。俺はそう信じている。
今はまだ、ゲームは始まってはいない……
開幕前の時間だ、まだ、焦る時間ではないはずだったな。
「わわっ、また急に頭を撫でて……」
「ふふ、悪い悪い。お前が少し可愛らしかったから、つい頭を撫でたくなっちまって」
「急にするのはやめてよ…」
「……ダメだったか?」
「だ、ダメじゃないけど…」
こんな時間が、ずっと続けばいいのに。
こんな平和な時がずっと続いてくれれば、こんな辛い思いをせずに済むのに。宿命や運命という物は、いい物などでは絶対にない。偏見なのだろうが、決まった運命と言われるものなど結局は哀しい結末しかないのだから。
…だからこそ人は考えるという事を覚えた。
運命や宿命など、その思考や行動でいくらでも変わるということに気づいたはずだ。
宿命なんてものは、決まってなどいない。
だからこそ人は探し続ける。
自分の望んだ解を手に入れるために。
……こんなことを考えていてはいけないな。
今は、少しリラックスしよう……
「…………すぅ……」
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「……マスター、寝ちゃったかな」
マスターは疲れていたのか、寝てしまったようだ。
朝からあんな事があって、疲れるのも仕方ないかな…
それにしても、僕にはマスターのあの表情がどうしても気にかかった。
僕には何でもないと言っているけれど、確実に内心でなにか悩んでいる…そんな感じがした。
きっと悩んでいるのだとしたら、僕達のアリスゲームに関してだろう。姉妹で、僕達の心臓とも言えるものを奪い合う。あのマスターなら、きっとそれで悩むだろう。何となくそんな感じがするんだ。
『俺はお前の主として…お前の気持ちを分かってやれてないんじゃないかって思って』
その言葉は、僕にとってはすごく響いた。
初めて逢って間も無いのに、そんな事を言ってくれた。
そういう顔も、凄く暗くて。
きっとあれは本心だと、僕でもわかる。
何となく同じ感じがするのに、その心はきっと違う。
僕達ドールとは違って、彼はきっと…本当に持つべき物を持っている人だと思った。あそこまで他人を思える心を持てたらいいなって、ただそう思うしかできない。
アリスゲームに勝つこと…それは本当に、正しい事なのか。父の願いは、僕の願い。きっとその言葉はマスターにとっては疑問だろう。今日の感じを見ていると、そんな感じがする。…とにかく、このマスターはきっといい人だろう。
そうじゃなきゃ、おかしいと思えた。この人が僕のマスターになってくれたのは、幸先が良かったかもしれない。
でもきっといつか、対立してしまうかもしれない。
でも………
「……仕方ないな、もう………」
まだ、ゲームは始まっていない。
束の間の平和な時を…感じるとしよう。
そう思いながら、ソファーで寝てしまったマスターに薄い布団をかけて、起こさないように自分の鞄に入った。
「お休み、マスター……」
今回は短くなってしまいました。
文面など拙すぎるかも知れませんが、ここまで見てくれてありがとうございます!
次回は……どうなるのか自分でも予測していません←
次回を楽しみにしていただけると幸いです!
『だからこそ人は探し続ける。自分の望んだ解を手に入れるために』