主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師 作:理想の人形師
この回は Act:4 開演前の静けさ のリメイクです。
一部変わっているところがあるかもしれません。
「……ん………あれ……?」
昨日のように、いつもと同じように目が開く。
眩しい光が目に入ってきて、嫌でも目が覚める。
俺が戸惑っている理由は、ソファーで寝ていたからだ。昨日は確か……色々ありすぎて、思い出すのも面倒だ…
昨日は確か、そう、蒼星石と出会った日だ。
突然、意味のわからない手紙が来て、それに返事をしたら彼女が送られてきて…突然、残酷なゲームの話をされて。他にも彼女の敵となる奴がここを荒らしていったり何なりで…
俺は疲れてしまって、そのまま寝てたのだろうか。この掛かってる布団は多分、蒼星石が気を使って掛けてくれたんだろう。ちょっと申し訳ない気持ちだ。
……いや、夢だったのか?昨日の光景は。
もし夢だとしたら、俺は昨日の発言を忘れたい。
そうじゃなければ俺が恥ずか死ぬ!誰得だ、本当に!……周りをよく見てみると、しっかりと彼女の物であろう鞄が置かれていた。良かった、これは現実か……
いや、一概に良かったとも言えないかもしれないな…いや、今は取り敢えず、その体をソファーから起こさなければ。
時計に目をやれば、時刻は午前6時。
早めに疲れて眠ってしまったからか、随分と早く起きてしまった…彼女はもう起きているのか?
「あ、目が覚めたんだね。おはよう、マスター」
「ああ…早いんだな、蒼星石」
予想より早く起きていたみたいだ。
もう少し寝ているかと思ったんだが…まぁ、そこら辺はプライベートに関する事だし、俺が突っ込んではいけないだろう。
「うん、あと…昨日は、ありがとう」
「…俺は俺の思ったことを素直に話しただけだ」
「…それでも僕は、その言葉で気が楽になったよ。たった一つの言葉だけでも、それは癒すものになり得る。そんな言葉をかけてくれたのが君だよ…だから、すごく感謝してるんだ」
たった一つの言葉が、人を癒すものになり得る、か…
本当に辛いのは彼女達なのに、俺はたった一つの言葉しか掛けてやれなかった。それでも感謝してくれることが、俺は嬉しかった。
……突然、胃の痛みを感じた。
…多分、腹が減っただけだろう。
こんな状態でそんなことを言い出せない…
グゥー…
なんて思ったら、腹の虫がなってしまった…
蒼星石は苦笑していた。
俺も苦笑するしか無かった。
「蒼星石は人間の飯って食べれるのか?」
「うん、よく食べたり飲んだりはするから大丈夫だよ」
「……そうか、ちょっと待ってろ。朝食の用意をしてくる。」
そう言って近くのキッチンに足を運ぶ。
この家には本来俺以外はいないので、一応出来る限りの家事は出来るようにしてある。……と言うより、気付いたら出来るようになっていた、が正しいが。
冷蔵庫から適当な物を取り出し、適度に凝りながら、適度に手を抜いて作る。……流石に手を抜くのは冗談だが。
「こんなもんでいいか?流石に寝起きに手の込んだものは作れない……」
単純でそこまで凝ったものではないが、適当に作ったものをテーブルに置く。なんと言うか、こんなものしか作れなくてすまないと言いたいが、仕方ないのもまた事実。
蒼星石はそれでも貰えるんだから嬉しいよ、と微笑んでいってくれる。何だろうな、目の前に人形の天使が見えるよ…
「悪いな、人に出すもんなのにこんなんで」
「僕は美味しいと思うから、そんな事言わなくても大丈夫だよ」
「そうか、なら良かった」
微笑みながらそう言ってみせる。
俺のドールは天使のような感じがする…
……何を思っているんだ俺は!ついに疲労で頭のネジが飛んだのか?阿呆なことを思っている俺の頭の中はとりあえず置いておいて…妙に不審な感じがした。
一日時間が経ったんだ。そろそろすべてのドールが目覚めていてもおかしくないと思ったんだが。
いや、それはそれでゲームが始まらなくて良いのだが。
「……マスター?」
「…ん?ああ、どうした?」
「また神妙な顔をしているよ」
「そうだったか?……顔に出てたかな…」
どうも顔に出てしまっていたらしい。
隠し事をするのは苦手だと思ってはいたが、まさか直ぐにバレるほどに下手くそだとは思わなかった。
「僕はマスターのドールなんだから、もし何か悩んでたり考えてるんだったら言って?助かってばっかりだから…恩は返さないと。純粋に力になりたいから。」
「……ありがとな。」
少しその気遣いの笑顔に顔を赤くする。
ちょっと、恥ずかしかった。礼なんてふだんあまり言わないものだったから、いざ言うと恥ずかしい。
ふるふると頭を振って、本題へ戻った。
「……なんだか、静かすぎると思ったんだよ」
「…言われてみれば、確かに。まだゲームも始まっていないみたいだし…」
「…まだ目覚めてないドールがいるってわけか?」
未だゲームが始まらないという事は、まだ誰かが目覚めていないという可能性がある。ただ、時間としては長い筈だ。
または契約していないから始まらない……ということもあり得る。しかし蒼星石は全員が目覚めればと言っていることもあり、その可能性は極めて低いはずだ。
「…いや、どうだろう。僕の今の感覚だと全員がいるはずなんだけど…」
「……目視出来ない何か、それがまだ目覚めてないかもってことか」
「どうかな……でも、今の所は全員目覚めてると思うんだけどな…」
「……始まらない以上、何もアクションは起こせない。様子見に徹するしかないってことだな」
「うん、開演してない舞台に1人だけたって騒いでいるような状態にはなりたくないからね」
アリスゲームは未だに始まらない。
不穏な静けさだけがその場を包んでいた。
ただ、迂闊に動くのは得策ではない。
蒼星石の言うように本番が開演するまで、舞台には出るなということだ。
「…そういえばマスター、昨日の傷は大丈夫なの?」
「ん?ああ、昨日の傷か……」
昨日の戦闘の時、肩に何本かの鋭い羽が刺さった。
その傷口に触れてみるが……
「……?」
何かがおかしいんだ。
痛みはなくて、血も出ていない。
なのに…傷口はそのままだった。
傷口に少し爪を立ててみるが、それでも痛みがない。
何なんだこれは?普通であれば痛いと思うのに。
少し、自分の体は大丈夫かと怖くなった。
「…マスター?どうしたの?」
「い、いや、大丈夫。何ともない。」
人の体であるはずなのに、何故だ?
それ以前に、前にも怪我をすることくらいはあると思っていたが、その時の傷口が全くない。
これじゃ、まるで新しく作られた無機物のような……
そんな感じがした。
…そんなふざけた話があるはずがない。
俺は何を馬鹿なことを考えているんだ。
「……俺の体は、どうなっちまったんだ…?」
…今になって新しい疑惑というものも出てきた。
流石に理解出来ないものだらけで頭がパンクしそうだ。本当にしたら怖いんだがな。
幸い、蒼星石には聞かれていなかったようだ。
…今回のこの『アリスゲーム』……
これはローゼンメイデンの姉妹たちだけでなく、俺にも何か関わってくるかもしれない。もしかしたら、俺がこんな力を持つようになった原因も、俺が何者なのかもわかるかもしれない…いや、そんな事はきっとないんだろうが、それでもそんな気がしてならない。
「マスター、早く食べないと冷めちゃうよ」
「おっと、そうだな。暖かいうちに食べたいしな。」
真面目なことを考えていて食事のことをすっかり忘れていた。…今は深刻に考えたとしても、その答えがすぐに出る訳では無い。ゆっくりと時間をかけて、落ち着いて処理していこう。そうじゃなければすぐに疲れきってしまう。そうしたらいざと言う時に動けもしないだろう…
そう考えた俺は取り敢えず、今は深く考えないことにした。すべてが動き出すのは、アリスゲームが始まってからだ…
食事を終えたが、まだすごく眠い…
「悪い、まだ俺眠いんだわ……少し寝てもいいか?」
「うん、分かったよ…いつくらいに起こせばいいかな?」
「んー……昼くらいか?」
「了解したよ。」
近くにあるベッドの上に寝転がり、掛け布団を自分の体にかける。流石にうたた寝程度しかしていなかったら、眠気がひどくなるに決まっている……すぐに微睡んできて、目を瞑ればすぐに夢の中、なんて感じだろう。
「僕も隣にいようかな…お休み、マスター。」
蒼星石はベッドの上に乗っかり、隣に座って寝顔を見ようとしている。と言うより、多分昨日あたりに見られたと思ったんだが。細かい事は気にしてはいけないと思った。
そろそろ……眠気……が………
「すー……すー……」
1日に1話なんて無理な目標を立てて爆散しそうになってます。今回は話をどうやって立てようかなどがたがただったため、そこまで内容があまり…って感じになってしまったかもです。
『たった一つの言葉でも、それは癒すものになり得る』