主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師 作:理想の人形師
この回は Act:4.5 泡沫の夢想 のリメイクとなります。
「……ここは…………」
重苦しい空気に圧迫され、嫌でも目が覚めた。
いつもの目覚め方のようでなく、寝苦しいというか、なんというか。それに、今日は蒼星石に起こしてもらうと言うことで寝ていたんだが…
自然に目覚めたにしては、目覚めが悪い…
それどころか、空気も悪く、いる場所もおかしい。
何処かの家のようで……いや、どこかの工房か?
人と同じくらいのサイズの人形……いや、どちらかというとマネキンと言った方がいいのだろうか。
その等身大の人形の首や身体が大量に置かれていて、手や足の形をした金属の機械の様なものまである。周りにはなにかの道具が置かれている。これを組み上げるための工具かなにかなのか?
詳しくはわからないが、一つだけ言えることがある。…見ていて気持ち悪い。この光景もそうだが、ここを見ていると頭の中がまさぐられるような…そんな感覚がして、非常に嫌だ。それに、何故か見たことのあるような…
いや、抜けていない記憶の中にはこんな光景はある訳がない。こんな古ぼけている工房のような場所は、今にはもうないんじゃないかと思える。
「……一体、ここが何なんだ………?」
ここに俺がいる理由がわからない。
第1、俺はまず家にいたはずなのにいつの間にかここにいた。また変な夢か?でも、それにしては前よりもあまりにも鮮明過ぎる。完全に俺が起きていて、ここに居るという事が俺自身でも認識できるのだから。だから余計に不可解だ。
このような場所に来た覚えはないのに、来た気がする。いや、正確には…『居た』気がするんだ。
こんな場所に、俺がずっといたような気がしてならない。妙な懐かしさがある気がして、この光景は気持ち悪いはずなのに、本能の何処かでは安心するような。
不思議な感覚に頭を悩ましていた。
「………ここに、俺に関しての何かがあるのか…?」
抜けている空白の記憶。
俺はその時間が今までどれくらいまであったのかわからない。親の顔も知らない、兄、弟、または姉か妹か……いや、まず家族というものが居たかすらもわからないし、だからこそ俺は何者なのかも知らない。本来有るはずのない力、『魔術』がなぜ俺が使えるのか。こんなことが積もり積もった結果、俺は様々なものから隔離された。
隔離され、誰もいなくて。
俺に近い人物すらも、俺自身が知らないのだから。普通の『人間』である筈なのに、誰もが俺から逃げていく。孤独だった。その原因に近づく鍵は、ここにあるのかもしれない…なんて、そんなことがあるわけがないと頭の中で振り払いながらも、その可能性がないとは言いきれなくて。
この場所は、夢の中なのかもしれないが…また来る気がする。……いや、むしろ、もう一度来なければならないだろう。ここは、俺に関しての何かがある気がする。
もう一度行けなければ、困る。
きっと有りなどしない。こんな偶然に過去に関わりそうなところに行き着くはずはない。そう自分に語りかける。それでも…
「俺の過去にたどり着けるのなら…」
闇に隠れた過去にたどり着けるのなら、儚い光に縋ってでも探し出してみせる。可能性程度の泡沫の光でも……
確実なものではないと知りながら、それでも俺は、忘却の過去を探すために、深い闇の中へと足を踏み入れる…
その起源に、辿り着く為に。
今回は夢の中の話だったのですが、そこまで長く内容を続けさせることが出来ず、あまり5話として投稿するにはなぁと思ったので、4.5話として投稿させてもらいました。
『その起源へ、辿り着く為に』