主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師 作:理想の人形師
変更点等がありますので気をつけて。
「つまり……私はまだ契約していないのですよ。」
「……!」
俺は思わずビクリとなってしまった。
「待ってくれ…そりゃ、一大事じゃないのか!?」
俺は思い切り声を荒らげて言ってしまった。
契約者……
ゲームが始まっていた場合、確実に格好の的になっていただろう。随分とリスクの高い事をしたものだ、正直不安になった。
「な、何ですか急に!人間は黙ってるです!これは私の問題で…「翠星石!」……ご、ごめんなさいです…」
蒼星石の一喝で、翠星石は謝った。
…不器用ながらも、俺に心配をかけさせまいとしてくれたのだろうか?……なんて、あるわけが無いか。
でも、蒼星石に怒られて素直に謝る当たり、そんな感じはするが。俺は何とか話そうとする。
「……お前、契約者がいないとなれば丸腰も同然、というより自分の螺子を巻いた人と契約しなかったのか?そんな危ない状態でなんでここまで来た?」
「う……そ、それは……」
「…マスター、翠星石にも何かあって契約をしていないんだよ、きっと。」
何かあって……
よほど気に入らない人物であったか、もしくは……人道的に危うい人物だったか。どちらにせよ理由など探せば腐るほど出てきそうだが。
蒼星石と俺の場合は直ぐに契約できたから、俺になにか言えるだろうか……
「……悪い、こういうことを聞くのは野暮だったな。」
「ごめんね、翠星石…マスターは悪い人じゃないから許してあげて欲しいな」
「そ、蒼星石がそう言うなら許してやるです。あと…ついさっきは済まなかったですぅ。」
翠星石は若干偉そうだが謝ってきた。
俺が思ってることを察してくれたのだろうか?
でも、まぁ、俺も悪かったのだろう。人の事情に安易に首を突っ込まない方がいいと言う事がようやくわかった…
でも、やっぱり何処か放って置けない…
つくづく俺もお節介だな。
「いや、俺も何も考えずに酷いことを言ってしまったな…悪い。」
改めて俺は頭を下げる。
人の事情も考えず、自分の主観だけで首を突っ込んでしまったのだから。それは流石に言われても文句は言えない。
でも、俺だったら黙っていることは出来なかっただろう。
「……取り敢えず、本題に戻らない?」
「はいです、それで私はあの人間のところから逃げてきたのですが…これからどうしていいのかもわからないから蒼星石のところに来たです」
「……飛び出してきたは良いが行き先がない家出のようなものじゃないかと言いたいんだが…今回ばかしはそうでも無さそうだな」
蒼星石曰く、大概は自分を動かした人間と契約するらしい。それをわざわざ、しかも彼女から逃げるとはよほど危ない者らしいな。…深くは探らないでおこう。
俺と契約するのもあまり気が進まないだろうし、俺はとある提案をした。
「……マスターが見つからないなら暫くここにいればいい。お前としても俺と契約するのは嫌だろう?それに、俺はまだお前の信用には値していないだろうが隠れる程度なら別に大丈夫なはずだ」
「……」
無理に契約をしたとしても、本人が気分が悪くなるだけだ。その状態だと身を守るための力も十分に使えないだろう。そう思って俺はこの提案を出した。それに……
「………それに、下手にお前を一人にさせてローザミスティカを他の奴らに奪われるのは嫌なんでね…」
俺はこの言葉をただの善意として放った。
俺は口下手だ。あまりいい表現など知ってはいない。不器用ながらに善意を口にしたつもりだった。でも、俺に帰ってきたのは…
「それは、私のローザミスティカを狙ってのことですか!やっぱり、この人間は…!私のことを狙っていた人間だって!同じように私を騙して!言葉という狡猾な手を使って!大切なものを奪おうというのですか!」
その一言に、俺の何かが切れた感じがした。
堪忍袋の尾だろうか?頭が熱い。
痛い。
それは、一種の怒りだろう。
「………ざけんじゃねぇ……」
「何を言ってんですか!」
気づけば荒い言葉を放っていた。
「ふざけんじゃねぇっつったんだよこの馬鹿がッ!誰が…誰がお前の命を狙うって言った?いつ言った!?言ってみろよッ!」
俺は強い言葉で思い切り怒鳴りつけていた。
今まで抑えていた物を放すかのように。
心の中を思い切り吐き出すかのように。
彼女に怒鳴りつけても何も変わりはしないのに、俺はただただ言った。
「俺はな…!お前らのことを聞いてどれだけ苦痛だったか分かってんのか!?人のやる事じゃねぇようなゲームをやらされて!その挙句負けたら死ぬも同然!そんな話を聞いてまでそれを狙う馬鹿は何処に居やがる!?当事者なら死なないためにやるだろうな!でもな…俺らのような第三者側の立場からしたら聞いてるだけでも苦痛極まりねぇんだよ!」
俺はただ、顔を伏せながらそう言った。
さっき、彼女に悪い事をしてしまったと言ったばかりなのに、俺はまた…
ここまで行っても、俺の気は済んでいない。
全てを出し切るまで、俺自身でも歯止めが効かなかった。
「俺は……俺は……そんなもの間違ってるって思ったんだよ…だから俺は!お前らのソレを誰にも奪わせずにこれを終わらせる方法がないかと考えたんだぞ!それを伝えたいがために下手でも善意であの言葉を放った!それでなんでお前にそんなことを言われなければならない!?」
俺の感情があまりにもごちゃごちゃになる。
相当、頭に来たんだ…きっと。
「他人の心も分かろうともしねぇ奴が!そんなふざけた事を言うんじゃねぇッ!」
なぜ…こんな事を言ってしまった?
何故、何故。
俺だって、彼女達の心は分かりもしないのに…
彼女が悪いわけでもないのに、俺は…
「……悪い…少し、可笑しくて馬鹿で酷いことを言ってしまった……」
落ち着いて。
燃え尽きたかのように静かに言う。
蒼星石も、きっとこれには呆れてしまっただろう。
「……いいです。私も、少し考えなさすぎだったです…」
改めて謝罪を交わす。
俺がもともと誤解を産ませてしまったのが悪いのだろう…。頭の中で何をやっているんだと自分を責めた。
謝罪しても許してなどくれない。
いや、俺自身が許さない…
「……外出てくる。一応出入りは自由にしていい…出ていきたければ出ていけばいいし、隠れてたいなら入っていい…」
「マスター………取り敢えず翠星石はマスターが見つかるまでここに居るといいよ。」
「…分かったです……」
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……俺は、何をしてるんだろう。
何故あんな事を言ってしまったんだ。
何故突然酷く口走ってしまったんだ。
…わかっている。あんな事を言ってしまったとしても、あんな事を現実に出来ることがないんだ。
所詮、何も失わずに終わらせるなど夢のまた夢…泡沫の幻想なのだろう。それでも俺はそれに縋って、何とかできないのかと思った。深く考えた。それでも答えは出なかった。
俺は……現実を見てはいそうですかと言ってすぐに幻想を捨て去ることができるような奴じゃない。
せめて…せめて、夢を見させて欲しい。
そうでなければ、俺が俺じゃなくなる気がしてならなかった。現実を見て非情になるなんていうのは俺なんかじゃない…そう思いたいんだ。
そうでも無ければ、当事者にあんな言い方で、あんなに怒鳴りつけたりなどしないはずだ。いや、してしまったりなどしないはずだ。
そしてまた、考え続けていた問は出る。
その結末への答えを問い続ける。
「…俺は……どうするべきなんだ?」
現実を認め、たった1人だけを勝たせるか。
幻想を見続け、全員が残れる道を探し続けるか。
今回、自分でも文がひどいと自負しています…
なかなかどういう内容にするか迷いながら書いてしまったせいでしょうか?
あと、今回のがアンチ・ヘイトに入らないか不安です…
『言葉という狡猾な物を使って、大切なものを奪おうというのですか!』