主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師 作:理想の人形師
文などが変わっているところがあるので気をつけて下さい。
現実を認め、たった1人だけを勝たせるか。
幻想を見続け、全員が残れる道を探し続けるか。
「………」
屋上へ出てただ1人思案している。
急な来訪者…翠星石との言い争いで、少し考え、頭を冷やさなければと考えて外へ出た。
目を瞑り、ただただ深く思考の水底へと潜り込んでいく。辺りの騒音をシャットアウトするかのように自分の私物のヘッドフォンを掛けて。
何を求めて考えるか?それは、俺自身がどう有るべきかに繋がる。小さい枝はその思考、大きな幹はそのあり方。……心の庭師がいたら、そんなことに気づくのだろうか?
……いや、そう言う事とはまた別のことか。
…心の中で考えている俺の表現じゃ、今の思考の空間を出したとすれば海に生えているマングローブのような感じだ。そう考えると、なんとなく簡単に想像がつきそうだ。
……いくら考えても、本当の答えというものが出てこない。
どれも不正解で、どれも正しく無くて。
どれほど考えても出てこない。…それこそ、答えなんて無いように。
「……畜生!あいつにここまで考えさせられるなんて思ってもなかった……しかも、答えがまるで無いような気までしやがる…何なんだ、いったい。」
いや、あいつのせいではないな…元々あった火薬が翠星石がたまたま意図せずとして火を付けてしまっただけであり、大元の思案する物は既にあったんだ。それを彼女のせいにするのは良くない…
もう一度深呼吸しようと思ったが、出てくるのは溜息だった。もう一度深く呼吸して、自分の心を鎮める。
……その途端、窓が割れた音がした。
マンションの一室のような場所だったが、その部屋の位置をしっかり覚えていた。あの音の位置は確実に、俺の部屋だったはずだ。
「!……まさか、もう始まったって言うのか…!」
俺の選べる道など…
俺は、急いで自らの部屋へと駆けて行った。
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「……1日ぶりかしらぁ?蒼星石…今度は翠星石も連れているとは好都合だわぁ、まとめてローザミスティカを奪ってあげる!」
突然の襲撃だった。
マスターが外へ出ている間に、最悪の知らせが届いた。その知らせの内容は……全てのドールが目覚め…
アリスゲームが始まった。
そう、ついに幕は上がってしまったんだ。
アリスゲームという名の『殺し合い』が…
マスターを呼び戻そうとも思ったが、少しそのままにしておいた方がいい…そう思ったのが間違えだったかもしれない。すぐに反応を察知したのか、昨日襲撃してきたあの黒い翼……
水銀燈がこちらへと攻めてきた。
こちらは今マスターが近くにいない。さらに、契約をまだ果たしていない翠星石がいる以上、上手く動けない。
今目の前にいるやつだったら、まとめて奪いかねない。彼女は敵だ。姉だとしても敵なのだ。だから守らずにいる方法だって取れる…でも。
『俺はな…!お前らのことを聞いてどれだけ苦痛だったか分かってんのか!?人のやる事じゃねぇようなゲームをやらされて!その挙句負けたら死ぬも同然!そんな話を聞いてまでそれを狙う馬鹿は何処に居やがる!?』
マスターの言葉が脳裏に過ぎる。
あの言葉は、紛れもなく善意の本心からの暴言だった。あの人なら、今どういう命令をするか…なんとなくわかる気がする。あの言葉を聞いたなら…
僕に迷いなんてなかった。
「……わかってるよ、レンピカ」
人工精霊の名を口ずさみ、その手に乗せる。
その精霊は、金色に輝く鋏へと変わる。
これが僕の武器……『庭師の鋏』。
本当の使い方ではないけれど、やるしかないんだ。やれるかどうかはわからない。でも、やるんだ。
僕の心を響かせた、あのマスターのために。
「翠星石、下がってて。ここは、僕が行く」
「だめです!蒼星石だけじゃ危ないです!」
「……僕は、マスターの思いのままに動く。」
その言葉は深く。
僕の原動力となる言霊。
僕の望みにもなりうる願いのために。
「だから……!」
「あらあらぁ、一人はマスターがいない状態、その状態で翠星石を守りながら私に勝てるとでも?」
「…やってみせるよ。僕は!」
「……いいわ。二人諸共、壊れた子にしてあげる!」
水銀燈のその叫びを合図に、無数の黒い羽が飛んでくる。この程度なら、避けられ葉しなくても鋏で受ける事は出来る。
鋏を盾替わりにして翠星石を避難させる。
「翠星石!下がって!」
「でも!」
「いいから早く!」
この状況を理解してくれたのか、安全な所へと逃げていく。そのまま、安全な所へ行ってくれれば助かるけど…
「っ!逃がさないわよ!」
続け様に羽を翠星石の方に放とうとする水銀燈。そんなことは絶対にさせないと言わんばかりに僕は鋏で斬りかかる。
避けられたとしても少しの隙はできるはず…
いや。むしろ当たってくれないで欲しい。
「やめるんだ、水銀燈!」
「何よ…アリスゲームは戦い、今更やめるもなにもないわよ!メイメイ!」
水銀燈は羽を飛ばすのをやめる。人工精霊メイメイの力を借り、翼から特徴のある剣を作り出す。その剣を握り、僕の鋏の斬撃を剣で受ける。
鍔迫り合いかのようになり、どちらの刃にも熱が篭もり始める。どちらも力が入り、下手したらその刃が折れるんじゃないかと言うくらいに。
「それでも……!僕は…」
「っ……!邪魔よ!」
「うわぁっ!」
力が足らなかったのか、そのまま吹き飛ばされる。鋏も遠くに飛ばされてしまった。このままじゃ、僕の対抗する手段はない。どうすればいいの?
これでは、マスターの希望は脆く崩れ去ってしまう…そんな事は、あってはならないのに…
「ふふふ……哀れね、マスターがいながら、一番最初に脱落するのが貴女だなんて…貴女のローザミスティカを奪えば、必然的に翠星石のローザミスティカも奪える…まさに一石二鳥よね、キャハハハハ!」
「っ……僕は……倒れちゃいけないのに……」
僕は、マスターのドール。契約した人の命令は絶対。でも、今回は命令を受けていない。でも、僕自身が命令した。彼ならきっと、なんて言うか…
その予想なんて、簡単に出来た。
だから僕は直ぐには動けなかった。
「あらぁ?もう終わりなの?」
「僕は、マスターの命令に従う…」
そう、あの時、この襲撃の時、この状態ならなんて言うか…容易に想像はついた。だから、動かない。下手に動けば僕も壊れる。だから。
「マスターマスターって…そんなにあの人間が大事なのぉ?」
「そうだ…!マスターは、僕達に大切なことを気づかせてくれた…僕は、誰も失わずにこのゲームを終わらせる!」
この言葉を思い切り言い放つ。
それでもまだ水銀燈は冗談だと思い笑っている。
「キャハハハハ!そんな事、本当に出来ると思って?」
「……出来るか出来ないかは関係ない。今は道は見えない、でも、それを探し続けることに意味はあるんだ!だからマスターはこう命令するはず…!」
あの夢見がちで、それでも尚儚い光に向かって手を伸ばすようななマスターの事だから、きっと……
「「誰も失わずに、この戦いを終わらせろ」」
…その時、1人の少年、いや、青年らしき声が重なった。
「…I sword of imitation , disturbance shoot!!(幻影の剣よ、乱れ撃て!)」
蒼い水晶のような剣が、あの黒い翼の方へと飛んだ。
今回は再び蒼星石対水銀燈の戦いでした。
少し短めでしたが、どうしても次の話に回してみたかったんです……←
次はもうお察しのとおりの人物が…
『それを探し続けることに意味はあるんだ』