主(マスター)は絡繰仕掛けの魔術師   作:理想の人形師

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この回は Act:8 選んだ道は のリメイクとなります。
文章が一部違うところがありますのでご注意を。


Re.Act:8 選んだ道は

「…I sword of imitation , disturbance shoot!!(幻影の剣よ、乱れ撃て!)」

 

透き通った蒼い水晶の剣は、水銀燈に向かって放たれた。

 

「っ!?」

 

その剣が捉えたのは彼女自身ではなく…

彼女の持っていた『剣』だった。

もちろん、早いスピードで向かってきていた剣を受け切れるわけがなく、その剣は弾かれ、遠くへ飛ぶ。

 

「誰!出て来なさい!」

 

その一言をいう前に、その場に1人の青年が出てきた。

 

「……他人の部屋で、他人のドールに手出した挙句その言い様か…常識の成ってないやつだぜ、全く」

 

「…!マスター…」

 

それは俺だ。

どうやら、ギリギリ間に合ったようだ。

蒼星石は、潤んだ目でこちらを見ている。

大丈夫と言わんばかりの視線を送り、また目の前にいるやつに目を向ける。

 

「……よく頑張ったな。後は…俺に任せろ」

 

「また貴方が邪魔をするのね……いいわ、貴方もジャンクにしてあげるわぁ!」

 

「……やれるもんなら、やってみな!」

 

その怒りの篭った声にびくともせず、俺は答えた。

 

「えぇ!その気なら本気でやってあげるわぁ…私のフィールドで、ね!」

 

水銀燈は思い切り俺に突撃してきた。

あの速さでは流石に防ぎ切ることは出来ない。

いや…気を抜いていたからか防げなかったんだ。

俺は思わず目を瞑ってしまった。

 

瞬きするかのような一瞬で、俺の目の前の光景は変わっていた。

 

周りは何も無い。

ただ空の空間。

周りはただの白一色で何処が床か、何処が壁か、どこが天井かもわからないような空間に俺は放り出された。

ただ足元に、水の波紋が広がるだけだ。

 

「……何だ、この空間は………」

 

「ここは、Nのフィールド……ここでなら私は全力で戦える」

 

Nのフィールド。

それはローゼンメイデン達のホームグラウンドのような場所らしい。つまり俺はまんまとその場所に嵌められたようだ。

しかもこれは、俺がどんな存在であるか、を認識しなければ実態を持てないようだ。

だが、俺の身体、服には少しだけ変わりがあった。

 

俺の右腕が、金属の義手のようになっていた。

 

俺は義手ではなかったのだが…まあいい。

あいつもどうやらやる気のようだ。

……面白い。奴の戦意が根こそぎ無くなるまで、やってやろうではないか。

 

「さぁ……貴方をジャンクにしてあげるぅ!」

 

「…やってみろよ!」

 

水銀燈の背中についている羽は、瞬く間に巨大な黒龍へと姿を豹変させる。まるで、リアルのゲームでもやってるかのようだ。そうだな。本気でやるのであればこうでなければ面白くない。…さぁ、始めるとしよう。

 

「Its massive sword to create in alchemy(錬金術にて作り出せ 仇なすものを叩き切る重剣を)」

 

普段の詠唱よりも効果を薄くするが、その効果の発現が早い『略式詠唱』の錬金術によって俺の手に重厚な片刃の大剣が生み出される。無骨なデザインだが、その刃が出す威圧感は相当なものだ。その剣を軽々と持ち上げ、奴に突きつける。

 

 

 

 

 

「来な。半端なまやかしには負けねぇよ」

 

 

 

 

 

その言葉を放った瞬間、翼の黒龍は俺に向かってきた。安易な突撃は逆にカウンターのチャンスということを知らないようだ。

スウェーの容量でスキを少なくして回避する。無駄のない動きという事は、即座に攻撃のアクションに入れるという事だ。その巨大な剣を構える。

 

「デカブツ如きで俺はやられねぇさ」

 

一言を放ち、麓へと足を踏み込む。

その踏み込んだ勢いのままその剣を思い切り振るう。重量のあるその剣の切れ味は凄まじく、斬られた部分は両断されていた。しかしもともとは細かいものの集合体、斬られた部分がまた頭となって襲い来る。

 

「無駄よぉ、私のこの翼がある限り、相当なことがない限りは負けないわぁ」

 

…何を言っているのやら。

誰が『勝つ』となんて言った?

それに、ある意味もう奴は負けている。

本当の目的を忘れるだなんて滑稽だな。

取りあえずは、遊んでやるとしよう。

手に持つ大剣を構え直す。

 

「退きな!」

 

力強く疾走する。その剣を前に構えながら。

ある程度のスピードが出た所で、自分の体がホバー移動しているかのような感覚になる。高速のスピードのまま、思いきり剣を振り上げながら跳躍する。

 

「上に注意だ」

 

跳躍の最高点に達した所で、急降下を始める。

思い切り地面に叩きつけるかのように剣を振り下ろしながら。もう1度龍は三枚に卸された。

地面に叩きつけられ、

衝撃が走る。

 

「おばかさぁん、隙だらけよぉ!」

 

その一言で気づいた。この剣はもちろん重量がある。しかも思い切り振り下ろしたという事は持ち上げるときに隙が出来る。相手の再生能力が凄まじく、攻撃を止められそうにはない。

 

「ぐわぁッ!」

 

防御の姿勢を取ろうとするも遅く鈍い。

剣は弾かれ、自身は吹き飛ばされ叩き付けられる。

鈍痛が全身を襲い、少し動きが鈍くなる。

 

「まだ終わりじゃないわぁ!」

 

間髪を入れず無数の黒い羽が俺を捕捉する。

剣は遥か向こうへ飛ばされてしまった。なら…

自分の周りに蒼い水晶の剣を何本も生み出す。

飛び交う黒い羽に向け打ち出し、互いに消滅させ合う。

 

「っ、しつこいわねぇ……」

 

「んなもんお互い様だ」

 

そう言い放ち、飛ばされた大剣を魔力に還元する。

さらに新しく、詠唱を始める。

 

「A sword that kill all able to create in alchemy(錬金術にて作り出す 風すら斬る鋭き刀を)」

 

次に手に握られたものは、長い東洋の刀。いわばこの国の伝統的な武器だ。ご丁寧に鞘までついている。

まだ状況は変わっていないが、やってやろう。

 

「武器を持ち替えたところで、何が出来るのぉ?」

 

「んなもんは、後の楽しみだ…!」

 

 

いや、ここから直ぐにカタをつける。

 

静かに、全ての神経を集中させる。

目を瞑り、気配を感じる。

 

集中(コンセントレイション)……!

 

 

「おばかさぁん、無防備よぉ!」

 

黒龍はこちらへ向かってもうその肉を食らいつくさんとしていた。…自身の危機も知らずに、間抜けなものだ。

 

「せいッ!」

 

鞘から刃は抜かれ、刹那のうちにまた斬撃は飛ぶ。

まだ足りない。奴の根を抜くには。

だが、集中の力はまだ続いている。

そのまま、加算するかのようにもう1度…

今度こそと黒龍は周りを囲む。

 

だがもう遅い……

 

「……終いだ!」

 

ただ一振り。

鞘から抜かれると同時に振られたその刃は、一瞬にして無数、一振りにして無限の斬撃を生み出した。

集中の力が強ければ強いほど、切れ味は鋭くなる。

 

 

 

 

「嘘、でしょう……?」

 

デカブツは、あまりに一瞬のこと過ぎたのか再生していない。無数の斬撃で、もはや再生するだけの物量はなくなったのだろうか?翼の黒龍は、姿を現さなかった。

 

「……もう、打つ手は無いな?」

 

その剣の鋭さは形を潜め、鞘へと収まる。

彼女からしたら不思議だろう。

 

なぜ、止めを刺さないのか…

 

そう思うはずだ。

 

「どうして……斬らないの?」

 

「…そんなもん、俺の勝手だろうが」

 

ぶっきらぼうに言い放つ。

止めを刺さない。

そうだ。俺は最後の一撃を入れない。

 

「…トドメを刺さない」

 

そう、

 

「それが、俺の答えだ」

 

ただ一言。それだけで十分だった。

 

「…覚悟のある目ねぇ…あまり見たくないわぁ」

 

「……そういうお前は…悲しい目をしているな」

 

そう言っていると、あの2人が後を追ってきてくれた。

 

「マスター!大丈夫!?」

 

「私も来てやったですよ!」

 

翠星石は気づかないふりをしているのかもしれないが、蒼星石は俺の右腕を見て少し考えていた。いや、別のことかもしれないけれど。

 

「二人共……俺は大丈夫だ。取り敢えずここから出るとしないか?」

 

「…水銀燈はどうするの?」

 

「連れてく。今のアイツは戦えるほどの体力は残ってない」

 

何かを察したかのように、蒼星石は何も言わずうなづく。

翠星石はまだ少し納得がいかないようだが、こっちだと誘導してくれる。

大きな出口の扉を、俺の手で開ける。

その先に広がったのは、いつもいた俺の家だった。

 

「……やっと戻ってきた…」

 

疲れきった表情を顕にする。

あそこまで動いたら仕方ないとも思うが。

そんな中、水銀燈はさっきの言葉を思い出した。

 

「ついさっきの言葉……私の気を惹こうって気?」

 

「……いいや?俺はただ、思ったことを口にしただけだ」

 

水銀燈はペースを崩されたかのように戸惑い、まだ戦おうとする。その状態では勝ち目がないとなぜ分からないのか?理解が早くなってくれれば苦労はしないんだが。

 

「……何もかもを見透かしたようなことを言って…虫唾が走るわぁ。」

 

「……ムカついてたら自分の置かれてる状況すらもわからないだろう?俺達に勝ちたいのであれば…まずはその熱くなりすぎた頭を冷やすことだな。」

 

半ば挑発とも取れるセリフを吐いて、さらに相手がペースを崩すのを狙う。上手く乗れば、本当に奴に勝ち目はない。

 

「っ、調子に乗らないで…!」

 

そう言って羽を飛ばそうとするが、もう残弾はない。

……完全にこれは、チェックメイトのようだ。

 

「……はぁ、そろそろ諦めろ。今の状態じゃ俺らは倒せない」

 

「そんな事は…ないわ!私は…」

「はーいはい、分かったから。今日の所はお開きだ。お前ももう戦えないから。」

 

「っ、いい加減に……」

 

完全に水銀燈はペースを掴まれている。

ぶんぶん振り回されてる。

蒼星石が笑いをこらえてたり、翠星石はチラッと見ては噴き出してる。…よほど滑稽なんだろうな、この状態は。

戦っている時の俺とは全く違って見えるのも原因だろう。

 

「ほらほら、勝ちたかったら明日にでも来てみろ。適当に茶でも用意しといてやる」

 

「何だか、すごく遊ばれてる気分だけど……仕方ないわ。今日の所は私も本調子が出ないから引いてあげるわ。さっきのセリフ、覚えていなさい!」

 

そう言うと水銀燈は窓から出ていった。

…案外素直なんだな、あれは。

隣では蒼星石は完全に笑い過ぎてて床をパンパン叩いてたり、翠星石は完全に抱腹絶倒状態だった。

 

「お、お前ら?いくら何でも笑いすぎじゃねぇか?」

 

「だ、だってマスタ……フフッ……あ、あんな無理やりなやり方……プフッ……!」

 

「アハハハハ!ハハ、や、やめてくれですぅ!さっきの光景が……あまりに可笑しすぎて!ハハ、ハハハ!」

 

「俺がああいう手を取ったのがそこまで面白いか!?」

 

今度は俺が遊ばれてる気がする。

こんなにも早く敵方の水銀燈に同情するとは思わなかったぞ…こいつら、流石に笑いすぎだ!

 

「は、はぁー……やっと収まったよ……」

 

「わ、私は…腹筋痛いですぅ……」

 

「笑いすぎなんだよいちいち!」

 

怒ったようにいうと、二人共ごめんごめんと言うふうに謝ってきた。内心俺を弄って楽しんでるんじゃないのか…?

 

「……さっきはありがとう、マスター。」

 

「……別にいい。子を守るのが親の役目だとするならば、契約した者を守るのが主の役目だろう?」

 

微笑みながら蒼星石は礼を言ってくれた。

翠星石も、ひょこりと姿を現した。

そんな彼女は少し偉そうにいう。

 

「そ、その……感謝してやってもいいです!」

 

「随分と上からだな……どういたしまして、と言うべきか?」

 

少し表情を緩め、いつもの声で答えて見る。

こいつは随分と素直じゃないんだな。

 

「か、勘違いするなです!感謝してやってもいいだけです!」

 

「はいはい、分かったよ…」

 

感謝してくれているのを察さなくては行けないな、これは…少し面倒臭いと思うが、別にそういうのも悪くないか、と心の中で思う。

 

「翠星石、素直に感謝の言葉を言ったらどうだい?」

 

「べっ、べつに感謝なんてして…」

 

姉妹で微笑ましい光景が俺の目に映る。

…こんな光景を、ずっと見ていたい。

ずっとこうであればいいのに。

 

現実を認め、たった1人だけを勝たせるか。

 

幻想を見続け、全員が残れる道を探し続けるか。

 

 

俺の選んだ道は…

 




今回は戦闘シーン長めでした。
……長めでしたよね?(不安)

秘めたる覚悟を垣間見た所で、そろそろUA数が1000を突破しそうです!これでも全然多いと思っているので、すごく嬉しいです。この小説を見て頂いてる方、ありがとうございます!



『それが、俺の答えだ』


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