GATE:Modern Warfare   作:ゼミル
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こういう展開になると妙に筆が早くなります。


14:Final Wave/狂乱の嵐、来たる

 

 

 

<02:27>

 嘉納太郎

 市ヶ谷・防衛省/広域指揮運用センター

 

 

 

 

「セイバー、バイタルが急激に乱れています。セイバー、応答してください!」

 

『セイバー、大丈夫か! クソっ剣崎しっかりしろ!』

 

 

 セイバー(剣崎)の管制を担当するマスター、現地でセイバーとペアを組んでいたアーチャー(赤井)の悲鳴じみた呼びかけを嘉納もまた一部始終聞いていた。

 

 

「一体こりゃぁどういう事だ!?」

 

 

 驚きのあまり椅子を蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がった嘉納の口から怒号が飛び出した。

 

 彼の隣に控えていた竜崎もまた冷静さは失われていないが興奮した声色で、無人偵察機を担当するオペレーターらへ詰問の声をあげた。

 

 

「観測班、何故砲兵部隊の布陣に気付かなかった!」

 

「観測範囲の外側からの砲撃です! 主要な索敵範囲を護衛目標の建物周辺に集中していたのが裏目に出ました! 現在高度を上げ観測範囲を拡大中!」

 

 

 スクリーンに映し出されていた箱根山中の一角の現在の映像、山の斜面を植生諸共掘り返す砲弾の爆発の瞬間や、彼方からの砲撃に動きを封じられている真っ只中の特戦群隊員らのシルエットが急速に小さくなり、代わりに広い範囲に渡って見渡せるようになる。

 

 

「――っ、敵砲撃部隊を発見! 南南西の方角、国道○○号線付近、数は約10名前後。迫撃砲も数門確認できます!」

 

 

 砲撃を浴びる側にとって迫撃砲が厄介な点は、迫撃砲弾の弾道が極めて大きく急角度な曲線を描く事である。砲弾が防御の死角となりがちな直上から降ってくる形になる為、塹壕を掘ろうが直接塹壕内に落ちてきたり、強固な防壁を構築してもその上を通り過ぎて後方に着弾し被害が発生する、この様な展開が発生しやすいのだ。

 

 また頭越しに攻撃できるのは敵の塹壕や防壁だけではない。極端な弾道特性上、山や谷、森林など、敵を直接視界に収める事が出来ない地形を飛び越えて砲弾を撃ち込む事が出来る。射程もキロ単位と歩兵の小火器に比べ圧倒的に長い。

 

 一方特戦群隊員らの装備は、護衛目標の山海楼閣以外にも旅館と観光客がひしめく観光地が舞台とあって、サイレンサー付きのアサルトライフルと手榴弾が精々だ。

 

 囮によって隠れ場所から引きずり出され、不意も突かれ負傷者まで出してしまった現在の特戦群に、砲撃に対抗できる術はない。

 

 

「現地の特戦群では対処不可能です! 大臣閣下、増援の部隊を送り込む許可を頂きたい!」

 

 

 非常時に備え、日本政府は箱根近辺の駐屯地にヘリ部隊を配置していた。

 

 当初の計画では「真夜中の温泉地にヘリを飛ばしたら流石に誤魔化しや言い訳が…」と予定していなかったのだが、伊丹からの強い要望に折れた嘉納が急遽配置しておいたのだ。この判断は正解だった、と思う嘉納である。

 

 

「ああもちろん認めるぜ。今すぐ待機させておいた増援を送り込むんだ! これ以上被害が拡大する前に急がせろ!」

 

 

 と、嘉納もすぐさま許可を下す。

 

 

「なぁ竜崎一佐。配置させておいたヘリ部隊の位置と所要時間はどれぐらいになりそうなんだ?」

 

「増援のヘリ部隊は箱根山から芦ノ湖と三国山を挟み西方の駒門駐屯地より出動を行います。本来ヘリは配備されておりませんが、急遽木更津から中央即応集団隷下の第1ヘリコプター団からロクマル……UH-60JAブラックホークを3機、習志野から派遣した第1空挺団の隊員30名と共に待機させております」

 

 

 日本唯一の空挺部隊である第1空挺団は中央即応集団に属する部隊の1つだ。あまり知られていないが、現在箱根山中で交戦中の特殊作戦群もまた中央即応集団隷下の部隊に当たる。

 

 ちなみに中央即応集団には中央即応連隊という、アメリカ陸軍第75レンジャー連隊を参考に設立されたより攻撃性の高い部隊も存在するのだが、こちらは栃木県の宇都宮駐屯地に部隊を置いている。

 

 第1空挺団が今回選定された理由としては、急遽増援用の部隊を編成したので、同じ県内の駐屯地という近場から兵力を調達したという事情からであった。もちろん第1空挺団も自衛隊の中ではトップクラスの練度を誇る部隊だ。標語も『精鋭無比』である。

 

 また第1ヘリコプター団が置かれている木更津駐屯地には、『銀座事件』で『門』から出現した帝国軍の飛竜部隊相手に活躍したAH-1S・コブラ対戦車ヘリを主力とする第4対戦車ヘリコプター隊も配備されているのだが、虎の子の対戦車ヘリまで持ち出しては騒ぎが大きくなってしまうという判断から、そちらまでは動員していない。

 

 しかし敵が砲兵部隊まで連れてきたのを見せ付けられると、無理してでも対戦車ヘリも用意しておくべきだったのでは? そんな思いと後悔が嘉納の脳裏を過ぎるのであった。

 

 ちなみに増援部隊を待機させていた駐屯地と同じ名前を持つ公安からのオブザーバーがこの場にいるが、もちろん彼とは無関係である。

 

 

「駒門駐屯地から箱根まで、ヘリを使えば移動だけなら10分とかからない距離です。それまで現場の隊員が持ち堪えてくれると良いのですが……」

 

 

 竜崎が憂慮交じりの説明を語り終えようとしたその時、駒門駐屯地との連絡役を務めていたオペレーターが、突如として悲鳴を上げた。

 

 

「竜崎一佐! 駒門駐屯地が!」

 

 

 

 

 

 

 

 

<02:35>

 第1空挺団/特地来賓護衛部隊・緊急支援チーム

 駒門駐屯地

 

 

 

 

 

 

 駒門駐屯地にはヘリ部隊が配備されていない為、専用のヘリポートが設けられていない。

 

 急遽この駐屯地に送り込まれたブラックホークヘリ3機は黄瀬川に隣接する演習用グラウンド上に並んで待機し、そして今防衛大臣からの直接命令を受け、盛大なエンジン音と思い羽音の三重奏を夜空へと鳴り響かせていた。

 

 西側には東名高速道路が走っているが、川を挟んで東側には住宅地が広がっている。真夜中に突如としてブラックホークのターボシャフトエンジンが高速を走る車両よりも遥かに強烈な轟音を鳴らし始めたものだから、睡眠から叩き起こされた住民らの大半は、当然ながら川向こうの自衛隊駐屯地へ非常に迷惑そうな視線を送っている。

 

 しかし出動を命じられた第一空挺団、ならびに第1ヘリコプター団の隊員らにとって、近隣住民への騒音公害など些末事でしかない。

 

 部隊予算(一部隊員の私費)によってドットサイトやフォアグリップといった空挺団独自のカスタマイズを施した89式小銃を筆頭に完全武装した空挺隊員らが、アイドリング中のブラックホーク目指して猛然とダッシュする。

 

 

「現地では既に戦闘が開始され、敵部隊の砲撃によって特殊作戦群の隊員らが危険な状況に陥っている! 各員気を抜くな! 我々も彼らに負けぬ精鋭であるのだと教えてやるぞ!」

 

 

 特地に派遣された健軍前大隊長の後任でもある増援部隊の指揮官が部下らに発破をかける。

 

 その直後だ。怒鳴らなくては会話もままならないと評されるほど凄まじいエンジンの騒音の合間からでも聞こえるほどの異音が生じたのは。

 

 

「何だ……」

 

 

 音が聞こえたのは今向かおうとしていたヘリからだ。見てみると、何と最も川寄りの位置にいたブラックホークのメインローター、その真下に存在するエンジンが夜闇でもハッキリと視認できる程の黒煙を吐き出していた。

 

 また異音。今度こそ機体の内外がひしゃげ、稼働中のエンジンが重度の損傷を負った時特有の、金属同士が不気味に食い込む音もしっかりと耳に捉えていた。それどころか破壊が発生した部分から小さな爆発まで起きた事まで感じ取れた。

 

 それだけではない。指揮官は確かに聞いた。異常をきたし始めたエンジン音に紛れ、駐屯地の外側から奇妙な破裂音が聞こえたのだ。サイレンサーを使っているのだろうが、あれはおそらく銃声――

 

 

「狙撃だ! パイロット! 基地外から攻撃を受けているぞ! 今すぐ機体から離れろ!」

 

 

 軍隊のヘリにとって危険な瞬間とは離着陸、もしくは歩兵を積み下ろしする間の時間である。地表近くで静止状態を維持せねばならず、地上に潜む敵にとって絶好の攻撃チャンスとなるからだ。

 

 古くはベトナム、最近ではアフガニスタン、挙句は昨年の第3次大戦でも、米軍のヘリが乗員ごと撃墜され多大な被害を被っている。だがまさか日本国内で、しかも自軍の基地から飛び立とうとしているこの瞬間に攻撃を受けるとは――!

 

 驚愕に襲われながらも訓練で叩き込まれた通り、指揮官を筆頭に空挺隊員らは身を低くして素早く遮蔽物へと逃げ込んだ。

 

 被弾したブラックホークのパイロットと搭乗員も被害の拡大を防止すべく、エンジンと燃料供給の強制カット処置を行った上で黒煙を吐き出す機体から慌てて離れていく。まだ無事な残り2機のヘリパイロットらも同様だ。

 

 そこへ3回目の攻撃。やはり攻撃はヘリに集中していた。更なる小爆発と共にとうとうエンジン部分が炎上した。

 

 抑制されていてもここまで伝わる程大きな銃声、ある程度の耐弾能力を有する軍用ヘリのエンジンを一撃で損傷させる威力、連射感覚の短さから判断すると、狙撃に用いられているのはセミオートの対物ライフルに違いない。

 

 また銃声の響き具合と着弾までのタイムラグの少なさから、狙撃地点は比較的近距離であるとも読み取れた。そして命中時の弾痕の様子からして飛んできたのは川向こうの住宅街である事も。

 

 炎上したヘリは直前に供給をストップしたので燃料に引火し大爆発する可能性は低いだろう。しかしそれは適切に消火活動を行えればの話だ。下手に消火隊が炎上するヘリに近づいたら今度は彼らが狙撃の餌食になってしまう。

 

 反撃しようにも具体的な敵の狙撃地点は不明。何より厄介なのが敵がいそうな方向に発砲しようものなら、間違いなく民家に流れ弾が飛び込んでしまう。それだけは絶対に避けねばならず、そのような理由から指揮官は精鋭無比の空挺隊員を率いていながら絶対に攻撃許可を下すわけにはいかなかったのである。

 

 救いだったのは狙撃のタイミングがヘリが地面に接地している状態で行われた点か。これが離陸途中であったなら、コントロールを失って乗り込んだ空挺隊員らごと墜落していた可能性が非常に高い。損害が自衛隊員だけで済めばまだ良い方で、最悪住宅街を巻き込んで炎上・大爆発してもおかしくなかったのだ。

 

 炎上した機体の炎と煙に視界が悪化したせいか、いつの間にか狙撃が止んでいた。ブラックホークはまだ2機健在である。だが下手に離陸を強行しようものなら今度こそ最悪の展開を生み出しかねない。

 

 狙撃手の正体は何者か。狙撃手の目撃は何なのか。連中は今も狙撃の機会を虎視眈々と狙っているのか、それとも既に逃げ去った後なのか。

 

 分からない事は山ほどあったが、1つだけハッキリと判明している事がある。

 

 それは、

 

 

「指揮所へ、こちら駒門のセイヴァー。輸送用のヘリが不明勢力の攻撃を受け1機破壊された。敵は対物ライフルを所持、正体と正確な位置は不明。

 被害拡大の危険性が高く、ヘリによる出動は困難……我々が現地へ救援に向かう事は出来そうにない」

 

 

 仲間の窮地へ駆けつける事が出来ない自分への苛立ちと無力感、元凶たる狙撃者への怒りのあまり、指揮官は作戦本部へのそう告げるや無線機を毟り取って足元へ叩きつけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 一方、川を挟んで駐屯地の反対側に広がる住宅街。

 

 ヘリの爆音に続いて謎の破裂音、挙句の果てに自衛隊の基地でヘリが炎上し夜空を赤く染めているのに気付いた住民らがぞろぞろと家の中から出てきつつある、そんな最中。

 

 川向こうの駐屯地のグラウンドを見渡せる建物の屋上に蠢く、数人分の人影があった。全員がそれなりに体格の良い外国人である。

 

 

「これで十分だ。日本の警察が駆けつけて一帯を封鎖する前にさっさと引き上げよう」

 

「武器はどうする?」

 

「使った銃はここに置いていけ。もし検問に引っかかった場合、まず誤魔化しが効かないからな」

 

 

 狙撃に使用したサイレンサーを装備した対物ライフルを見下ろしながらリーダー格の男が告げた。

 

 ブラックホークの狙撃に用いられた銃はGM6・リンクス。作動機構はブルパップ方式のセミオート。50口径ながら従来の対物ライフルよりコンパクトで連射性能も高い。

 

 強力な対物ライフルであり、勿論日本国内には滅多に持ち込めない類の銃の1つである。それもあってか狙撃担当の男は残していく銃を名残惜しそうに見やりはしたが、結局は命令通り手ぶらで建物から離れていった。

 

 

「確認しておくが、ちゃんと日本の兵士には当てないようにしただろうな」

 

「川1本挟んだ程度の距離からヘリなんて大物を狙ったんだぞ? むしろ外す方が難しいさ」

 

 

 

 そこに双眼鏡で観測手を務めていた3人目の男が疑問を挟んだ。

 

 

「だがヘリを攻撃するならSAM(携行型対空ミサイル)の方が良かったんじゃないか?」

 

「ミサイルでは与える損害が調整できないだろう。最悪燃料に引火して爆散したら日本側の人間に多数の死者を出す羽目になりかねん。表立って同盟国の兵士を殺してしまっては流石に大問題になるからな……」

 

 

 男達を乗せた車は騒然となった真夜中の住宅街から悠然と走り去っていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<02:48>

 嘉納太郎

 市ヶ谷

 

 

 

 

 受話器の叩きつけられる音がセンター内に響き渡った。

 

 激しい感情の昂ぶりに嘉納の顔は今や真っ赤に染まり、顔つきも浅草は雷門に置かれた2対1組の鬼神像もかくやな形相と化していた。その恐ろしさは、受話器を叩きつけた音にまず振り返ったオペレーターらが、嘉納の顔を見るなり慌ててまた視線を逸らしてしまったぐらいである。

 

 その中の1人、主にJADGEシステム―航空自衛隊の防空指揮管制システムの通称―より送られてくる情報管制を担当していた女性自衛官が意識を手元のモニターに戻した途端、その目を大きく見開いた。

 

 

「あ、あのっ」

 

「今度は何だぁ!!」

 

「ひぃっ!?」

 

 

 栗林ほどではないが小柄な体つきでちょっと小動物っぽい雰囲気を漂わせるそのオペレーターは、大臣閣下から怒声を浴びせられて竦み上がってしまった。「あうあうあう」と、ちょっとだけ目に涙を浮かばせてすらいる。

 

 プルプルと涙目になって震える女性自衛官の姿に、頭に血を上らせていた嘉納も流石に冷静さを取り戻す。生まれたばかりの動物の赤ちゃんをイジメてしまったかのような罪悪感であった。

 

 幾分落ち着きを取り戻した彼は改めてオペレーターへ改めて尋ねる。

 

 

「すまない、そのまま報告を続けてくれ」

 

「く、空自のレーダーサイトが作戦地域より約20キロ離れた相模湾上空に所属不明機を複数探知しましたぁ! 反応は捕捉と消失を繰り返しており、おそらくこちらのレーダーの探知範囲以下での高度で飛行を行っている模様!」

 

 

 それは新たな凶報であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<02:53>

 貨物船『ルサルカ』号

 相模湾

 

 

 

 

 

 貨物船と一口に言っても種類は様々である。

 

 運ぶ荷物の種類に、輸送時にコンテナを使用するか否か。荷物だけでなく旅客も載せるのか。搭載するときは港湾設備を利用するのか、それとも船そのものに搭載した自前のクレーンを使うのか。搭載可能な荷物の重量数によっても船種は区分される。

 

 冬の相模湾、熱海から数キロばかり沖合に出た夜の海原に佇む貨物船『ルサルカ』号は、いわゆるハンディマックス級のクレーンなしばら積み貨物船であった。

 

 ちなみにこの『ルサルカ』号という船名、数十年前にも同じ名前を与えられた船が存在したらしく、その初代『ルサルカ』号は冷戦期真っ只中にアメリカへの破壊工作を目論んだ当時のソ連とキューバの工作船として活動し、最終的にアメリカの秘密部隊によって撃沈されたという逸話があるとかないとか。

 

 全長190メートル弱、船体の幅は約32メートル。上部構造物の大部分が船体内に区分された貨物スペースに蓋をする巨大ハッチによって占められている。

 

 この『ルサルカ』号。かつて同じ名前を与えられた工作船と同じく、実は真っ当な貨物船からは程遠い存在であった。

 

 貨物船であるのはまぎれもない事実である。だがその積み荷と、今回日本は相模湾までやってきた理由について、日本の役所に申請された内容は完全に嘘っぱちだ。

 

 真夜中の海上。積み荷を降ろす陸地など周囲数キロに存在しないにもかかわらず、船倉のカバーがゆっくりと開いていく。『ルサルカ』号は普通の同型貨物船に比べ、ハッチと船倉の1辺が縦横ともに長く設計されていた。

 

 全てのカバーが開いていくにつれて船の周囲に航空機のエンジン音と羽音が広がっていく。音の出所は船倉だ。

 

 まず姿を現したのは2機のMH-6・リトルバード。名前の通りヘリの中ではかなり小型の機種で、乗員数は少ないが機動性に非常に優れる。原型機であるMD-500当時から各国の軍隊でも偵察用ヘリとして愛用されていた程だ。

 

 武装も搭載可能であり、船倉から姿を現した機体の両側面にはM134・ミニガンが1丁と70ミリロケット弾ポッドが1つずつぶら下がっていた。

 

 次に姿を現したのは、リトルバードよりも大型の攻撃ヘリ。Mi-28・ハヴォック。標準装備の30ミリ機関砲を筆頭に兵器を搭載する為のスタブウイングにロケット弾ポッドと対戦車ミサイルをぶら下げた、対地攻撃に特化した重武装機。これは1機だけであった。

 

 最後にMi-28よりも更に大柄な機体がのそり、と船倉から上昇してきた。ローターを含めた全長がリトルバードの倍にも達しようかという、寸胴な形状が特徴的な大型ヘリだ。

 

 Mi-8・ヒップ、30名近い乗員を乗せる事が可能な輸送ヘリ。原型機が初飛行したのが半世紀前という古参ながら、現代でも世界各国で運用されている名機である。

 

 人員を満載した上に機体両側下部にロケット弾ポッドまで追加した機体がこちらも2機、それぞれのローターが発生させる強風が干渉し合わないよう、若干の間隔を置いて船から離陸した。ローター込みで20メートル近い全長の機体だが、『ルサルカ』号のハッチ開口部はヘリの運用を前提に更に大きく設計してあった。

 

 日本の空には相応しくない東側の武装ヘリの編隊は一旦上昇したのち急降下。海面ギリギリまで高度を下げると、まっすぐ陸地目指して船から離れていく。

 

 積み荷を降ろし終えた『ルサルカ』号はヘリの編隊とは逆、日本本土から離れるコースへ舳先を向けた。

 

 

 

 

 だが彼らの役目はまだ終わっていない――

 

 

 

 

 

 

 

 

<02:58>

 嘉納太郎

 市ヶ谷

 

 

 

 

 新たな報告にまた嘉納の血相が変わる。

 

 嘉納だけではない。竜崎も、駒門も、作戦指揮に携わるこの場全員の制服自衛官らの表情が驚きに打ちのめされていた。

 

 

「何だと。どこへ向かって飛んでやがる!?」

 

「……だ、断続的な反応ではありますが、作戦区域へ向かって飛行しています……」

 

 

 砲兵部隊、別動隊の狙撃によるヘリ撃墜、挙句の果てに航空戦力まで出現――

 

 敵は一体どれだけの戦力を繰り出してくるというのか。これから一体何が起こるというのか。最早嘉納らには想像もつかない。

 

 

「……こりゃあもう秘密作戦だなんて範疇を完全に超えてやがる。ヤツら、とうとうこの日本でまで戦争をおっぱじめやがるつもりだ……!」

 

 

 そう力無く呻く嘉納。

 

 彼は震える手でもって総理へ事情説明と更なる増援の許可を求めるべく、叩きつけたばかりの受話器へ再び手を伸ばすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてもちろん()も――

 

 

「おい起きろ。皆、今すぐ起きてくれ」

 

「ん~、ちょっと何ですせんぱぁい、まだ夜中じゃないですかぁ」

 

「良いか梨紗、今から俺の言う事をよく聞いてくれ」

 

「せ、先輩?」

 

 

 

 

「敵が来た。もうすぐここは戦場になる」

 

 

 

 

 

 

『疾きこと風の如く、静かなること林の如く、侵略すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動かざること山の如く、動くこと雷霆の如し』 ――孫子

 

 




欧州や北米大陸よりは近い分インナーサークルならまだこれぐらい動員できる筈!(強調)


批評・感想大歓迎です。


7/3:リトルバードの武装にロケット弾追記



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