神崎蘭子のマネージャーは通訳?   作:スレ主

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語彙力が欲しい


19話

キュッ、キュッとスキール音がレッスン室から聞こえる。

 

「ワン、ツー、スリー、フォー」

 

大きな声ではなく、確かめるような声で彼女は一人で踊っている。

 

「ファイブ、シックス、セブン、エイトっ!!」

 

何度も繰り返した最後の決めポーズ、しかしその顔には笑顔よりも疲労が強く見える。

 

「はい終わり、柔軟するよ」

「ぴぃっ!?」

 

いきなり声を掛けられて本気で驚く神崎。

ダンスに集中しすぎて俺が入ったことに気づいてないみたいだ。

 

「ま、まだ我が舞の修正点が」

「身体に疲れを残さない程度なら許すけど、それ以上は駄目」

「………まだ疲れてないもん」

 

ぷくっと頰を膨らませてふいっと顔を背けるがこっちもジトっと睨む。

 

「最後の決めポーズの笑顔に疲労が入ってなきゃ止めなかったよ」

「むーー」

 

神崎自身もそれに気づいているのか、唸ってこっちを睨むだけだ。

 

「はよこっち来い、柔軟手伝ってあげるから」

「うん………はっ!?しばし待たれよっ!!」

 

タオルを持って一生懸命身体を拭いて、自分の匂いを嗅いでいる。

 

「あー、そんなの気にしなくていいぞ」

「我が気にするのだっ!!」

 

ある程度汗を拭き終わったのかおずおずとこちらに来る。

 

「ほれ座って」

「お、お願いします………って痛い痛い痛いっ!!」

「はーい反対側」

「待たれよ我が盟友、本当に痛いっ!!って痛い痛い痛い痛いっ!!」

「前屈ー………身体ちょっと硬くなってるな、お前サボってただろ」

「サボってないっ!!サボってないっ!!」

「うんじゃ相方が力が弱いのをそのままにしてたな」

「うぐっ」

 

図星を突かれたのか一瞬肩をビクッと震わせる。

ため息をついて「次からもうちょっと強く押して貰え」と言う。

 

さて、上半身は終わり下半身に向かう。

 

「ほれ次は下半身………はどうする止めとくか?」

「か、構わない」

「うんじゃ」

「………んっ」

「………こっちは柔らかいな」

「はぁーーー」

 

単純に一生懸命息を吐いてただけだった。

 

「はい次反対」

「………我が盟友よ、気のせいか手慣れていないか?」

「んー、割と大人組とストレッチの相手してるからな」

 

息を吐いてるせいか、答えられないが目で「何故だ」と送られた。

 

「曰く、「ストレッチ中は痛いけど、終わった後、物凄く身体が軽くなるから」だそうだ」

「ふぅ、そうなのか」

「あぁ、トレーナーさんからもストレッチの見極めが上手いって言われたし、ホレ立ってみろ」

「うむ…………あれっ?」

「このままもう一回通しで踊れるくらい身体軽くなってるだろ?」

 

身体のあちこちを確かめるようように立ち上がる神崎。

 

「おぉ」

「うんじゃ汗流してこいよ、俺は下のロビーで待ってるから」

「うむ………ウンディーネとの戯れを覗くなよ」

「逆に何故覗くと思った」

 

こっちが呆れ顔をすると、クスクス笑って神崎はシャワールームに向かった。

 

………なんか最近神崎にからかわれている気がする。

 

 

 

 

 

ロビーで少し待っていると、階段から少女が降りてくる。

格好はPUM●のジャージに少し大きめなスポーツ系の帽子。

いつもは巻いてある髪は巻いておらずに下ろしている。

 

身長と帽子のツバのせいかあまり顔はよく見えなく、表情は分からないが、足取りが軽そうのを見ると恐らく上機嫌だと思う。……多分

 

「待たせたなっ!!」

「おう、うんじゃ行くか」

「うむっ!!」

 

既に時計は22時を超えている。

一応神崎の母親に遅くなることの電話はしてあるが、なるべく早めに帰ってきた方が安心するだろう。

 

駅前の信号を待っていると徐々に人が駅前に集まってくる。

道幅の関係で神崎も人に押され始め、彼女は少し苦しそうな顔をしてからこっちを見る。

 

「ほい」

「んっ」

 

スッと腕を出すと彼女は服の裾を掴む。

前までは「危ないから服の裾掴んで」と言っていたが最近は向こうから「掴んでいい?」という目線を送るので特に何も言わず腕を出すようになった。

普段ならこれで多少バランスを崩してもコケる心配はない。

 

が、偶然にも今日は違った。

 

「っ!?」

 

後ろに突然押され、さらに段差につまづいた神崎はとっさに俺の腕を掴む。

 

「大丈夫か?」

「う、うん」

 

そのまま離れようとするかどんどん人が集まり離れるスペースがなくなってしまった。

 

「とりあえずこのままで行くか」

「し、仕方あるまい」

 

ギュッと俺の腕を掴む神崎。

ピクッと一瞬だけ動揺するが、人混みのおかげかバレてない……はず。

 

ホームまで行くと丁度電車が来るが。

 

「「………うわぁ」」

 

思わずお互い声を出してしまった。

ぎゅうぎゅうに詰め込んだ電車は朝の通勤ラッシュより酷い。

 

「次の電車………も同じだろうね」

「覚悟を決めるのだな」

「そうだね」

 

電車から降りる人も多いおかげで電車には素直に入れた。

 

そのままドア付近の場所に向かい、神崎をドアを背にするようにすると、後ろからどんどん押し込められる。

 

「わ、我が盟友大丈夫か?」

「む、無理かも」

 

なるべく神崎に触れないように両手でスペースを作っていたが徐々に押され、腕はプルプルと震え始める。

 

「………い、いいから」

「な、なにが?」

「わ、我は別に気にしない………だから」

 

彼女は腕をクイクイと引っ張って下ろすようにする。

 

「でもな」

 

俺が断ろうとすると、彼女はギュッと服を掴む。

ジッとこっちを見る目に根負けして腕を下ろすと、空いていたスペースは後ろの人に押されてなくなり神崎との距離は無くなった。

 

帽子のツバが俺の胸に当たると神崎はすぐに帽子を斜めに被りツバが俺に当たらないようにする。

 

そのことによって今までツバで守られた神崎の顔が見える。

彼女はその視線に気づき、フイっと首を横に向けるが赤くなっている頬を見てほんの少し笑ってしまった。

 

「な、なにがおかしい」

「なんでもないよ」

「むぅー」

 

ポスポスと胸を軽く叩いてくるが全く痛くない。

普段だったらある程度叩いたら満足するのだが今回はそのままギュッと服を掴まれる。

 

「神崎さん?」

「掴むところがないから………迷惑か?」

 

むすっとしつつも、こちら側をチラっと見上げる。

 

「いいや」

「………そうか」

 

そのまま駅を降りるまでお互い黙っていた。

 

 

 

しかし、居心地の悪い沈黙ではなかったのはよく覚えている。

 

 





蘭子母「そろそろ帰ってくるかなー……って、蘭子帰ってきてたの?」
蘭子「あっ……ただいま」
蘭子母「もう、玄関で立ってたら身体冷えちゃうじゃない………顔赤いけど風邪引いた?」
蘭子「ううん………ただ」
蘭子母「ただ?」
蘭子「胸がほんの少し痛い」
蘭子母「………今日、和也君に送って貰った?」
蘭子「うん」
蘭子母「そう………頑張ってね蘭子」


なんて話があったりなかったり。

という訳で皆さん明けましておめでとうございます←遅い

今回は年末年始ずっと満員電車の中に乗ってた作者がふと思いついたシチュエーションです。

本当はもっと蘭子の可愛さを出したいのですが、作者の語彙力ではこれが限界でしたっ!!
作者の頭の中ではさらに可愛い蘭子が居るんですっ!!
だけど言葉に出来ないですっ!!

ということで誰か作者に語彙力を鍛える方法を教えてください。

それとお気に入り登録者が3000人超えてましたっ!!
本当に胃が痛いですっ!!
ですけどめっちゃ嬉しいですっ!!
これからも頑張る所存でございますっ!!

ここまで読んでくださりありがとうございましたっ!!
感想、評価等お待ちしておりますっ!!

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