side神崎
「けほっ、けほっ」
咳が止まらない、身体もふらつく……
体温計で測ると37.5度……うぅ、私普段体温低いし、熱だコレ……。
お母さんもお父さんも九州に帰っちゃったし……
「……そうだ、電話しなきゃ」
「体調不良になったらすぐ報告、仮に休みでもな……もし隠してたら……まぁ、それ相応な覚悟をしておけ」とか言ってたし……
電話を掛けるとワンコールで直ぐに出る。
こういう所に思わず偉いなぁ、と思ってしまう。
『どした、なんかあったのか?』
今日がオフなのは知ってるし、私は基本的和也とは電話はしない。
電話すると和也のやってる作業を邪魔しちゃうと悪いと思ってるし……
何よりラインの方が、会話しやすい。
「……その、風邪ひいちゃって」
『何度?あと寒気とか咳とか鼻水とか症状あるなら言って?』
「37.5分で、咳がちょっと止まんない」
『………そういや、家に誰か居たっけ?』
「お父さんもお母さんも帰っちゃって誰も居ない」
『オーケー、30分くらいしたら家に行くから、ちょっと待っとけ』
「うん、分かった」
電話を切ってバタンと腕下ろすと安心感と同時に疲労が一気にくる。
「やっちゃったなぁ」
風邪を引いたことに思わずネガティブな思考になってしまう。
「(もしこれが仕事にあった時だったら、ディレクターさんに、スタッフさんに、プロデューサーさんに、他のアイドルに、和也に迷惑かけちゃうのかな……)」
どんどん良くない考えと不安が頭の中でぐるぐるとループする。
悲しい感情が溢れてきてしまうのを抑え込もうと布団の中で丸くなる。
「さて、食材よし、風邪薬と対策グッズもよし……まさかこんな時に神崎のお母さんの合鍵が役にたつとはな」
何度か送り迎えをしてたら、「一応なんかあったら助かるでしょ」という理由で合鍵を貰ってしまった。
最初は断っていたが「あーこのために合鍵作ったのになー、結構高かったのになー」とか言うので渋々貰うことに。
普通アイドルの家の合鍵貰うってどうよ……
一応チャイムを押して1分くらい経つが反応なし、まぁ寝てるか。
「お邪魔します」
少し玄関で待つが反応なし、うーんやっぱり部屋かな。
神崎の部屋にノックをするが反応がない、流石にトイレって訳じゃねぇよな?
なるべくトラブルは避けるようにしてるけど今回は緊急事態だしな。
ノックして「入るぞー」と声かけをしてから入る。
ベットを見ると丸くなった布団が一つ。
ほんの少し耳を澄ますと、グスッグスッと声が聞こえる。
「神崎どうした?どっか痛いのか?」
泣いてる所を見て一瞬気後れしてしまったが直ぐに声をかける。
「か、和也ぁ?」
「どうした?」
というか布団から顔を出してくれ、一応熱の有無の確認したいんだけど。
グスッグスッとしたまままた無言になる。
落ち着くまで待つか……いや、多分だけど不安になって泣いちゃったのかな?
だとしたら落ち着いたら落ち着いたでまた無言モードになりそうだな。
さっきより泣き止んでいるが、気まずい空気が流れそう。
「神崎、腹減ったか?」
「………うん」
「とりあえず俺一回部屋出てお粥作るからさ、その間に顔拭いて、体温もう一回測って待っててくれるか?」
「………うん」
「うんじゃ、タオル置いて出るからな」
「………待って」
「ん?」
もぞもぞと布団から手だけが出てくる。
細っそりとした指は普段より赤く、少し震えてる。
一瞬タオルが欲しいのかと思ったが、それはなんとなく違うなと思った。
顔も見えない、言葉も発してない、ただその手は少し震えてるだけ。
右手だと握りにくいかな……?
そう思って左手をそっと神崎の右手を握る。
キュッと握り返されたから、痛みが出ない程度に握り返す。
キュッキュッと握ってきたので、少し手を離すとおずおずと指を絡めてくると小さくて柔らかい手だと改めて実感する。
お互いの体温のせいかじっとり手が汗ばんでくるが、不快感はない。
むしろずっとこうしていたいと思うくらいに安心感はある………が、ずっとこのままではいけない。
そんな空気が神崎も手を伝って感じたのか、さっきよりキュッと握って、ゆっくり手を離す。
少し気恥ずかしい空気が流れるがいつまでもこのままではいけない。
「うんじゃメシ作ってくるからちゃんと顔拭いて、体温測っとけよ」
神崎が布団に包まってて良かった。
「………うん分かった」
少なくともこの火照った顔は見られることはないかならな。
「飯できたぞー」
仰向けで目を閉じてる神崎をみて少し安心する。
ほんの少し目元が赤いのは分かるが仕事じゃないので指摘もしなくていいや。
「起きれる?」
「うん」
のっそりと動く様子をみると節々も痛いみたいだな。
「スプーン持てる?」
「うん……あっ」
渡してみると、プルプルと受け取ってすぐに布団に落とす。……やっぱ力入らないか。
落としたスプーンを拾って、ある程度こうなるじゃないかと思いながらも覚悟を決める。
「無理そうだから俺が食わせるな」
普段なら反射で断ると思うが、風邪を引いて神崎の思考は遅い。
俺の言葉を理解してから、小声で「ぅぅ……お願い」と言われた時に何も表情を変えなかった俺を誰か褒めてほしい。
「ほれ、あーん」
小さな口がゆっくりと開けられ、カプリと食べる。
咀嚼する必要はほとんどないので軽く喉が動く。
「味付けは薄い?」
「ううん、美味しい」
再びお粥よそって食べさせる。
半開きの口に赤くなった頬、浅い呼吸に飲み込む白い喉、ねだるような目とお粥食べる赤い舌。
早く食べたいのか、それとも首を動かすのが億劫なのかどんどん神崎との距離が近くなる。
……うん考えるな、邪の気持ちは捨てろ、無になるんだ、無に。
「……和也まだ?」
「はいはい、ちょい待って」
彼女の動作に一つ一つに脳を揺らすような魅力がある。
弾けるような笑顔も、怒ったときの顔も、不機嫌なときの顔も、気が抜けてるときの顔も全部に魅力がある。
「……あむ」
「はい、完食。食器片付けてくるから横になってな」
「うん」
その魅力を余すことなく直で受けとめるには男子中学生には厳しいんですけどどうにかなりませんかねぇ!!!!
「他に何かして欲しい事とかあるか?」
といっても本当にもうやることも実際ないしな。
せいぜい神崎の夕食を作るくらいかな。
少し時間が経っても返事がない。
だけどひょこっと布団から手を出してくる。
なんというか………可愛いなこいつ。
特に許可を貰わず手を繋ぐ。
少しキュッと握ってきて、指を絡めにぎにぎと確かめるように力を込めてくる。
色々と頭の中に邪念が駆け巡ったけど、大きくため息。
緩く行こう。
1挙動1挙動にクラクラしてたらとてもじゃないけど神崎のマネージャーをやっていける気がしないわ。
…………その後の汗を拭いたり、夕食をまた食べさせたり、和也の精神を多大にすり減らすが話があるが、それはまた別の機会に
まー、まー、とりあえず話を聞いてくださいよ(毎度おなじみの言い訳タイム)
まぁ、はいちょっとやる気がね?……ね?
いやプロット紛いのものは書いてるんですけど、細かい描写とか書いてると三文字で止まるみたいな……。
あとエロね、エロ。
これ書いててる途中で何度R18の展開になりかけたのやら………
というかね、番外編のプロットもエロ展開になりすぎてね……ねっ!!!!
まーね、こういうのは脳内補完でやるのがいいというか、あられもない姿のアイドルを想像するのは容易くけど、書くという労力がとてつもないというのが本音で……
「思い切ってエロ前面で書くかー」と思ったら5000文字くらいでメンタルが折れたり。
と、とりあえずこれからも書くんで暖かい目で……暖かい目で見てくださいっ!!!!←大事だから2回
ここまで読んでくださってありがとうございましたっ!!!
感想、評価等お待ちしておりますっ!!!!