神崎蘭子のマネージャーは通訳?   作:スレ主

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勢いで書いた後悔はしている


25話

「なぁ、神崎蘭子って知ってる?」

「あーあのゴスロリの子でしょ?最近テレビでよく見かけるよねー」

「あのバラエティの時の珍回答が好きでさー」

「私はどっちかというと雑誌のモデルのイメージ強いな、ゴスロリのイメージ強いけど普通の服もすっごく似合ってるし」

「やっぱライブでしょ、あの盛り上がり方はやっぱ人気があるから……」

 

 

雑踏の中でも神崎の名前を聞くことが増えてきた、それだけ神崎の人気が周知してきたのはやはり嬉しい。

 

「おはよーごさいまーす」

「和也くんおはようございます、朝一から申し訳ないですけど蘭子ちゃんのスケジュールを聞きたいっていう電話が沢山きてて、これ番号です」

「了解です」

 

仕事を捌きスケジュール帳を管理するとどんどん真っ黒に埋まってくる。

 

「ユニットの話題性のピークは過ぎた……単純に人気があるからか」

 

芸能界というのは入れ替わりが激しい。

1発当てることが出来たとしてもそれは三ヵ月埋まれば充分上出来だ。

 

「煩わしい太陽っ!!」

「お、神崎おはよ、今週のスケジュールは予定通りだけど、来週のスケジュール変わったから古いのちょうだい」

「時の悪戯により我が運命も変わるのか……闇の宣告は如何なるものになった?」

「うーん、テレビ系の仕事が増えてるね、あ、あとアニメの吹き替えとかも入ってるし、今週だけじゃなくて来週も忙しくなってきたぞ」

「くっくっくっ、堕天使を統べる戦いの前に我の力を見せしめておかなければな!!」

 

……なんというか意外だな、総選挙とかあんまり気にしてる風だと思ってなかったんだけど。

少し目をパチクリしてると、むぅっと怒った顔をする。

 

「何を意外そうに見ている……そもそも和也が約束したんじゃん」

「後半は何を言ったが知らんが、向上心があるのはいいことだし、なによりその結果がこういった仕事に繋がるからな、あくまで総選挙は指標程度にしとけよ、思った以上に順位が低くてモチベーションの低下にもなりかねんし」

 

これはアイドル全員に言ってる。

確かに総選挙にて順位づけをするが、それはあくまで認知度や年間の人気の結果のようなものだ。

確かに十時愛梨さんが初代のシンデレラガールを取った。

しかし今年も取るかとといえば少し難しい。

ファンの方針的にも「みんなにシンデレラガールの称号を与えたい」という気持ちも強く今回の第2回の選挙は十時さんの結果は振るわないと予想する。

それで順位が低くなり十時さんのアイドルの仕事に対してのモチベーションが低くなったりしたりしたらそれは困るし、この総選挙の結果でファン同士で順位のマウントの取り合いやアイドル同士の仲が悪くなったら元も子もない。

 

「分かっておる……が、競うならば当然力は振るうだろう?」

「まぁな………そろそろレッスンだろいったいった」

「うむ、今宵も我が力を蓄えようふぅーはっはっは」

 

高笑いして出て行った。

 

「相変わらずですねぇ……」

「ん?あーさっきの会話ですか?相変わらずというよりかはちょっとだけ調子はいい感じじゃないですか?まぁ調子乗ってるなら厳しく叱りつけますけど」

「年が明けてから大分認知度上がりましたからね」

「年始の特番が着火材でしたね、着物でゴスロリっていうイメージが払拭されたし、それ以降からは普通の服のモデルの仕事が結構入りましたしね、本人も結構楽しそうにやってますしいい傾向ですよ……ただ」

「どうかしたんですか?」

「総選挙を意識しすぎってのはありますね」

「まぁ、アイドルはみんな意識はしますよ」

「仕事が増えて、結果も出して、認知度も上がってる。自信を持つことは大事ですけど、謙虚の心も忘れちゃいけないもんですから」

 

北原プロデューサーが後ろから来る。

 

「中道。一方に偏らないない考え方だね、和也くんも含めてプロデューサー達は意識的にこれをやってるね」

「へー、そうなんですか」

 

 

ちひろさんが関心した声をあげる。

夢を与えるという仕事は、突き詰めれば現実の積み重ねだ。

例えばライブ、そのアイドルにあった会場、音響資材、スタッフ、レッスン、アイドル、そしてお金。

生々しい数字が羅列する書類を扱う度に俺もプレッシャーと同時にやりがいを感じる。

 

夢と現実、その間にあるのがプロデューサーや俺のような人間だ。

夢だけに振り回されない、現実だけに振り回されない。

あくまで中間、これが大事なの。

 

「とはいっても自分はまだまだですよ、アイドル達に振り回されてますから」

「はっはっ、それが悪いわけでもない。大人になれば自然と現実の方ばかり意識してしまう、僕たちもどちらかというと現実に偏ってるからね、だから感謝してるんだよ和也くんには」

「そういった役割ですからね」

「そういう現実的な打算もしっかりと認識できる子は普通いないからね、武内くんもいい子を見つけたよホント」

 

ぐしくしと頭を撫でてくる。

……むぅ、子供扱いされてるのは若干気に食わないけど実際子供だからな、くそう。

 

「和也くんの今日の仕事は僕がやっておこう、今日はなるべく多くのアイドルのレッスンを見てきなさい」

「……いいんですか?」

「本来はこういった仕事までさせるつもりはなかったんだけどね、君が思った以上に優秀だったから任せてしまったんだ、本来のメインはこれじゃないからね」

「了解です、それではお言葉に甘えて」

「ああ、いってしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

side神崎

 

今日は蒼の楽団のメンバーでライブ。

 

普段より小さいライブハウスだが、今回は何か熱気じみた何かを感じた。

 

「シンデレラガール総選挙前の前哨戦ってことでしたけど、ぶっちゃけると他のユニットよりこのユニットは人気です」

 

和也がライブ前に私達にそう言った話をする。

 

「あら、そうなんですか?」

「薄々は気づいてた」

「ふむ、やはり蒼の力か」

「正直私は自分の力不足を感じるかな」

「美波さんと同じく……」

 

「新田さんと多田さんはチャンスだと思ってください、力不足だと思うなら力がある奴に便乗しちゃえばいいんですよ、少なくとも僕はそこの3人と対して変わらない伸び代を持ってることは絶対に保証します、んで楓さん、凛さん、神崎は自信を持ってやってください、この一年伸び代を最大限に発揮したんですからちゃんと結果を狙ってください、んで最後に」

 

「「「「「あくまでシンデレラガール総選挙は指標だからこれで燃え尽きない」」」」」

 

ピタリと一言一句皆同じことを言う。

やっぱり皆んなにも口酸っぱく言ってたのね。

 

「ふふっ、マネージャーさんはここ最近ずっとこれですね」

「耳がタコになるくらい聞いたよ」

「我が盟友よ、いくらなんでも心配しすぎだぞ」

「大丈夫です、仮に今回振るわなくてもまた来年頑張りますから」

「ロックは永遠に不滅なんだよ?」

 

少し呆気を取られたのか、一瞬固まった和也。

もう心配してくれるのは嬉しいけど大丈夫だから。

 

「なら僕に言うことはありません、このライブしっかり楽しんでくださいっ!!」

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

 

 

 

ライブは始まった。

確かにそれは感じる、みんなの応援が凄くてもっと会場が狭く感じる。

一人一人の顔が見える、一生懸命に声を上げてくれる顔が見える。

私キラキラしてるかな?ちゃんと答えてあげてるかな?

釣られるようにユニットメンバーもパフォーマンスが向上している。

練習の時よりダイナミックに。

練習の時よりクールに。

練習の時より可愛く。

 

この一体感が心地がいい、心地良すぎて……

 

気がつかなかった。

 

ダンスの関係上、フロアの汗を踏んでしまう。

 

足首を捻る。

 

結構痛いけど顔にもパフォーマンスに影響はない。

 

大丈夫、この空気は壊れてない、大丈夫。

 

最後までユニットのダンスは踊りきる。

それがこのメンバーでいる最低限のマナーだ。

 

下の歌詞画面から予定変更が見える、本当だったらこのままラストまで通しでやるのに、1つ間を挟むみたい。

 

視線を横に動かすと、テーピングを用意してる和也。

 

あはは、敵わないな……

 

だけどこれは最後まで踊り切ろう。

 

 

 

 

 

 

「蘭子大丈夫?」

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

痛い、痛い、痛い。

 

「大丈夫だ、みんながMCで繋いでるから呼吸を整えろ」

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

痛い、痛い、痛い。

 

早く、早く、早く、みんな待ってる。

 

はやく、はやく、はやくっ!!

 

「ひゅう、ひゅう、ひゅう」

 

「っ!?蘭子、過呼吸!!スタッフさん紙袋!!!!」

「か、かずや、い、息が」

「ゆっくり息を吐けっ!!…………っう、凛さんこれは見なかったことにしてください!!」

「何が!!」

「ゆっくり息を吐けよ」

 

か、かずや、か、かおちかい

 

………き、きす??きす??な、なんで?

 

「蘭子!!ちゃんと息吐いて!!」

 

あっ、息、入ってくる、息できる。

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ」

「よし落ち着いたな?」

「う、うん」

 

なんか凄いことしちゃった気がする。

 

「テーピングは一応巻いたけど、こんなの応急処置だし、ぶっちゃけ一時中止かお前抜きでやりたい」

 

だけど和也のその真剣な目に私はここがライブの現場だとはっきりする。

 

「蘭子どうする?」

 

そうだ、ライブだ。

 

「出る、出させてライブする」

「……分かったやるからには最後まで真っ当しろよ」

「うんっ」

 

立てる、大丈夫、歩ける、大丈夫、走れる、大丈夫、踊れる。

 

うん痛くないっ!!

 

「よし行ってこい!!」

 

そのまま私はフロアに向かった、その後記憶は少しぼんやりしてよく覚えてないや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




凛「紙袋持って来るようにお願いしたおかげでスタッフさんにはバレてなかったよ」
和也「よかったぁ、緊急事態とはいえバレたら洒落にならなかった、あの場面は凛さんにやらせた方がよかったかもですね」
凛「……ねぇ?もし私が…いやなんでもない」
和也「???」
凛「別に、ただそっちの方がお似合いだと思ったのよ」
和也「どういう事ですか?」
凛「なんでもないよ……バカ」


人間の関係なんて劇的に変わることもある。


ここまで読んでくださり本当にありがとうございますっ!!
感想、評価等よろしくお願いしますっ!!

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