いつも通り……それが俺が彼女に求めたことだ。
「煩わしい太陽っ!!」
「おー、おはよ神崎」
「おはよう蘭子ちゃん」
学校のいつもの挨拶。
彼女がいつもより元気なのは誤差の範囲。
が、その後の行動が良くなかった。
ほんの半歩近いのだ。
普段の距離より。
一瞬藤井さんも「……ん?」と考えるそぶりを見せたけど、にっこにっこの蘭子を見て「……まぁ可愛いからいいかー」と放置している。
うーんでも見てる人は気付くよな……
半歩だけ距離を取る。
半歩詰めてくる。
さらに半歩だけ距離を取る
また半歩詰めてくる。
そこで俺は諦めた。
前の関係でも普段の距離は気持ち近めだったけど、今は完全に近い。
具体的に言うとちょっとよろけるだけで身体触れる距離。
「あっ、私提出物があるから先行ってて」
「おうよー………なんか近くない?」
「えっ?……そうかな?」
無自覚かー、全くもって無自覚なのね……
「で、でもバレてないから大丈夫だよね?」
バレバレなんだよなぁー、流石にこれは気付くと思うんだよなー
「あー、でも……」
否定しようとするが、彼女の顔が目に入る。
上目遣いと潤んだ瞳、そして悲しそうにこちらを見てくる。
……誰かこれに勝てる人いるか?
「注意されたら、ちゃんと離れるんだぞ」
「うー……分かった」
譲歩に譲歩してこれだ。
まぁ、うちのクラスならすぐに「おいテメェ蘭子ちゃんと距離ちけぇぞゴラァ!!」くらいは言うから大丈夫なはず。
……俺も蘭子に甘くなってる気がするなー
まぁ、もちろんこの後すぐに男子からチェックが入ったけどね。
side蘭子
授業中の時、空想の世界を考える時間が減った。
……和也のせいだ。
ふとした時に目で追っちゃう。
クラスの子と喋っているのに視界に入ると、つい見てしまう。
流石に見すぎて、藤井さんに「熱い視線送ってるねー」と言われて見ないように意識したけど、やっぱり駄目だ。
……あっ、和也消しゴム落とした。
わっ、こっちに気づいた。
……口パクで集中しろって言われた。
うぅぅ、まぁ、確かにそうだけど……
もっと色々あるじゃん、ちゅーもしたのにっ!!
ちゅーしたなぁ…………
…………ちゅーしたい。
いやいやダメダメ、だって学校だし。
うー、でもなんか口が寂しいというか……
……すっごくちゅーしたい。
「蘭子ちゃん次移動教室だよー」
……はっ、いつの間にか授業終わってた。
うぅぅ、どうやってちゅー出来るかで終わっちゃった。
……待ってでもこれはチャンスだ。
「すまぬ、少し我が盟友に相談事ができた」
「ありゃ?なんかお仕事関係かな?それじゃさっき行ってるよー、和也くん蘭子ちゃんがお仕事の事で用事あるってよー」
「ん?んー?……おう、分かった」
一瞬考えるそぶりみせた和也。
まぁ、基本的にお仕事は和也に回ってくるようになってるから、私に仕事関係のメールはあんまりない。
和也もだから一瞬「あれ?」って思ったんだど思うけど。
「んで、どうかしたの?」
「す、少し場所を変えていいか?」
「まぁ、一応スマホ禁止だしな」
学校にスマホの持ち込みは基本的に禁止だけど、お仕事の関係で私と和也は持ってていいことになってる。
だからといって堂々と出す訳にも行かない。
私は和也の袖を引っ張って人気のない所にいく。
「んで、なんだって?」
「……うぅぅ」
なんか急に恥ずかしくなってきた!?
えっ、なんで私、和也と2人きりになろうとしたの?
「ん、どうかしたか?顔も赤いし?」
和也が私の顔を覗き込む。
……あっ、唇。
「………ちゅーしたい」
「………………もしかしてその為に呼んだ?」
コクリと無言でうなづく。
「…………駄目、節度を保つって大事だろ?しかも学校だし」
分かってるっ、分かってるんだけど……
ぎゅーって和也の袖を握ってしまう。
「………ちゅーしたいもん」
和也を見つめる、私は我儘を続ける。
和也もほんの少し顔を赤くした、握ってない左手で顔を覆う。
「………1分だけな」
示し合わすように和也のおでこと私のおでこがくっつく。
目をつぶって、ゆっくりと唇を合わせる。
幸せな気持ちが胸の中から溢れて、身体全部に流れていく。
頭がふわふわして、胸がじんわりと暖かい。
「ねー、もっと」
甘えるように彼の唇に啄むようにキスをする。
もっと彼を感じたい。
自然と舌が和也の唇をなぞってしまう。
ほんの少し和也は唇を固くしたけど、諦めたように唇を開けてくれた。
舌先を彼の舌先に絡め合わせる。
くるくる舌が回って気持ちいい。
だけど少ししてすぐ離れる。
「……時間、もう駄目」
「……分かった」
名残惜しいけど、これ以上は時間が取れない。
袖を掴んだまま少し離れる。
……恥ずかしくなって、和也の顔が見れなくなった。
うぅ、私ほんとなにやってるんだろ……
「さ、戻るよ……あー、あともうちょい顔は引き締めてくれ、ゆるゆるだぞ」
「えっ?」
自分の頬を触るとずっと口角が上がってた。
「うーー……ごめんなさい」
もうなんか色々だ、色々ごめんなさいだ。
「あー、俺も、その、な?悪い気じゃなかったからさ……」
……それって
「だー、行くぞ、次の授業に遅れちまう」
「わっわっ、待って和也」
その時握ってくれた和也の手は私より暑かった。
なんだろう……
なんか砂糖が出来上がってたんですよ。
世の中不思議ですね?
蘭子可愛い。