はい、作者の大天使しまむーの話です。
島村卯月は頑張りすぎる
何度も何度も同じ曲が部屋の中をループする。
俺はその曲を踊る彼女をジッと見て、休憩を兼ねて改善点を言う。
が、ここ数回のダンスは「呼吸を整えてください」しか言っていない。
そして曲が終わる。
「はいおしまいです」
なるべく事務的に、冷たく言い放つ。
あまりアイドルにこういった態度は取りたくないが、こう言わないと島村さんはやめてくれない。
「………でもっ!!」
今回の出来にまだ満足出来ないのか、続ける意志を見せるが、俺が大きく溜息を吐くと、島村さんは少し狼狽える。
「これ以上やるなら外で走った方がまだ意味がありますよ、ラスト三回なんてとてもじゃないですけどファンの前では見せられません、ターンのキレ、腕の振り、足の踏み込み、表情、どれも疲労でちゃんと出来てません」
一つ一つダメだった所を突きつける。
彼女もそれを分かってるから「ううっ」と唸るだけである。
「さっ、体が冷える前にダウンして、シャワー浴びて帰りましょう」
「………はい」
ふらつく足で俺の前で背中を向け座る。
最初の頃はストレッチをするたびに大声を出していたが、ここ最近は身体が以前より柔らかくなりそういったことはなくなった。
「うんじゃ、下行きますよ」
「はいどうぞ」
仰向けになり無防備に足を掴み彼女の方に圧する。
「………んっ、はあっ」
「ちゃんと息吐き続けてください」
「は、はいぃ」
「返事しなくていいですから」
今度は膝を身体の反対側に持っていき、膝と肩を圧する。
この時のストレッチが彼女と一番近い。
大声を出してた時は目をつぶっていたのだが、最近は俺の耳元で「……んっ、あっ」と艶かしい声を出すのでかなり恥ずかしい。
「はい、反対です」
そう声をかけて同じ要領で反対側もやる。
「うつ伏せになってください」
クルンとうつ伏せになると膝下だけはぷらぷらとさせる
足首のストレッチをして、最後にふくらはぎのストレッチ。
足首を掴んでから膝を少し浮かせ、ふくらはぎが揺れるように振る。
決められたルーティンでストレッチをやっているのでこのふくらはぎのストレッチが最後のストレッチ。
「はい、おしまいです」
ゆっくりと膝を下ろすと、完全に脱力した状態になる。
体力も使い果たし、ストレッチも終わりしばらく起き上がらないのだろう。
………が、さっさとシャワー浴びて欲しいので動いてもらう。
「うつ伏せの状態が長く続くと胸の形が悪くなるって川島さんが言ってたなぁー」
そういうと、バッと立ち上がり胸を押さえる。
「マネージャーさん意地悪です」
「むー」と擬音が付きそうな表情でこちらを見てくる。
女の子のそう言う表情ってすっごくずるいと思うんですよね。
まぁ、顔には出しませんが。
「意地悪されたくなければさっさとシャワー浴びてくださいね」
ひらひらと手のひらで行くように促すと「もー、デリカシーがないんですから!!」とぷんぷん怒りながらルームから出ていく。
………俺もアイドル並みに仮面が出来てる気がする。
自分の手で自分のほっぺを握り、ニヤつきそうな表情を止め、事務室に戻り報告する。
「どうでした?卯月ちゃんの様子は」
「最初の方よりかは全然マシですね、暗い表情も少なくなって来ましたよ」
「それはよかったです………和也くんはこれから付きっ切りになりますが……」
「いいんですよ、他のプロデューサー達は冬のイベントで忙しいですし、それに今の島村さんは少し目が離せませんから………それじゃ、送りに行ってきます」
「はい、それと和也くんはそのまま帰宅していいですよ、こちらもひと段落付きましたし」
「分かりました、それじゃあ今日は失礼します」
「はい、お疲れ様です」
「あっ、マネージャーさん」
事務室から出てすぐ近くに島村さんが待っていた。
「お待たせしました、さっ、今日は帰りましょう」
「………なんか今日のマネージャーさんはご機嫌ですね」
「えぇ、プロデューサーの仕事も終わったのでこのままアガリです」
「そうなんですか、それなら今日は一緒に帰らなくても大丈夫ですよ?」
「島村さんが帰るまでが自分の仕事なんで、その辺は諦めてください」
「あはは、その辺は相変わらずですね」
他愛の無い会話を弾ませると彼女の家の前に着く。
「それじゃあ………」
「あ、あのっ!!今日お時間あればなんですけど、夕飯頂きませんか?」
俺が少しキョトンとすると彼女は慌てて
「いや違うんです!!そのお母さんが『毎回毎回送ってもらってるのにご飯も頂かないで行っちゃうから』って言ってて……だから……そのぅ………駄目ですか?」
計算づくなのか、それとも天然なのか、男の感性を激しく揺らすような上目づかいと不安そうな表情は決して「ノー」とは言えなくなってしまう。
「いいですよ」
「本当ですかっ!!すぐにお母さんに言ってきます」
ぱあっと表情が明るくなるとすぐに家に入って行く。
「それじゃあそろそろ」
「あら、もう行っちゃうの?どうせなら泊まっていけばいいのに」
「お母さんっ!!」
からかわれると真っ赤に否定する島村さん。
まぁこの手のからかいには慣れるしかないからね………
「半分くらい冗談よ、じゃあお母さんお皿下げるから、卯月は和也くん見送っておいて」
「うー、もうっ、マネージャー行きましょっ!!」
そのまま玄関に強引に連れて行かれて少し驚いてしまう。
いや、別に手なんて繋いでないし、服の袖をちょんと摘んでいるだけど、こうした強引なことも出来る人ではないと思ってた。
思わず少しフリーズしてしまうと。
「ご、ごめんなさいっ!!そのお母さんがあまりマネージャーに失礼な事ばっかり言うので………そのぉ、つい」
「いえ、全然気にしてないので大丈夫ですよ、それじゃあ自分はこの辺で」
「あっ、家の前まで……わっわっ!!」
慌てていた所為なのか、はたまた今日のダンスレッスンの疲れの所為なのかは分からないが、目の前で転びそうになる島村さんを受け止める………勢いがあったから思わずぎゅっと抱きしめてしまったけど。
「大丈夫ですか、島村さん?」
とんとんと背中を叩くと、何故かぎゅうと抱きしめたまま動かない。
「島村さん?」
「………もう少しだけ、このままでいいですか?………そしたら明日も頑張るので………だから、もう少しだけ」
「………はい、いいですよ」
さらにぎゅっと彼女を抱きしめ、ゆっくり背中を撫でる。
「………また明日から頑張りますから、だからもう少しだけ」
「…………いいですよ、満足するまで、明日が少しでも頑張れるなら」
その後少しして離れる。
そしたらポンと赤くなってワタワタし始める。
「あ、あの、これはその、なんというか、思わずというか」
「落ち着いてください島村さん、余計に恥ずかしいこと言ってますよ……」
「あぅ………」
頰抑えて「うぅぅ……」と唸っている。
………なんだこの可愛い生物?
「でも良かったです、島村さんはなんでも1人で抱えるからこうやって頼ってもらえると僕も嬉しいですよ」
「うぅぅ、もう忘れてください〜」
「………うーんと割と真面目な話、島村さんって誰かに弱みを見せるのが苦手な人じゃないですか?」
「そんなことないですよ、プロデューサーやマネージャーにも沢山お世話になってますし………今だって」
「あはは、島村さんがお世話になってると思いますけど、実はアイドルの中でも大人組並みに手がかからないですよ……」
「そ、そうですか?」
「そうですよ、だから島村さんが思っている以上にワガママ言ってください」
「ワガママ……それじゃあ一ついいですか?」
彼女はそう言うと顔を赤く少しそっぽを向く。
「…………もう一回お願いしてもいいですか?」
そっぽを向きながら両手を広げるので少し笑ってしまう。
「はい、いいですよ」
笑ったことに少しムッとした彼女だが、ゆっくり確かめるように抱きしめると雰囲気は少しづつ柔らかくなる。
彼女も遠慮がちだがしっかりと背中に手を回し、徐々にこちらに身体を預ける。
なんでもないように振舞ってるがやはり何もない訳ではない、頭の中の煩悩をうち払っているがダイレクトにくる感触は思春期の中学生には刺激が強すぎるんですけどねー
………今日だけだ、今日だけ頑張ろう。
…………後に彼女のハグ癖がついて和也の精神をすり減らす話があるのだが、それはまた別の話である。
はい実はこれはハロウィン限定ガシャの時に大天使の為に天井まで回してしまむーの為に一本書こうと思っていたものを今更完成させたものです。
時系列的にはアニデレのしまむーが自分を見失う時の頃の話ですね。
でもここのプロデューサー達は優秀ですから、アイドルを悲しさで泣かすなんてさせませんからっ!!
というか作者が重たい話が嫌いですからっ!!
さてさて話は変わって割と作者の悩みなんですけど…………
他のアイドルを書きたいっ!!!!!
いや、別に蘭子が嫌いになったとかそういう訳ではないんです。
ただネタが出てこないっ!!
割と真面目にタイトルを変えようかと思ってます。
正直どうしようかは皆さんの感想を見てから決めたいと思います。
ということで、普段は感想とか書かない人とかも是非とも感想お願いします。
ほんの一言二言でいいんです「このまま蘭子主体で」「蘭子可愛いけど推しが別のアイドルだから他のアイドルも書いて」みたいな感じでいいです。
色んな人の意見を聞いて今後の話を考えていきたいと思いますっ!!
ということで、ここまで読んでくださりありがとうございますっ!!
感想、評価等お待ちしておりますっ!!